2008年度公務労協情報 39 2008年7月8日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

公務員連絡会が人勧期第1次中央行動で集会や人事院交渉などを実施−7/8
−所定勤務時間の短縮勧告、賃金改善、非常勤職員の処遇改善を迫る−

 公務員連絡会は、8日、2008人勧期第1次中央行動を実施し、中央決起集会、人事院交渉及び交渉支援行動に取り組んだ。
 午後1時30分から社会文化会館でホールで開かれた7.8第1次中央決起集会には全国から900名の仲間が結集し、公務や公務員給与を取り巻く情勢が極めて厳しいなか、所定勤務時間の短縮勧告や民間の賃上げ動向等を踏まえた賃金の維持・改善、非常勤職員の処遇改善などの要求に沿った人事院勧告の実現に向けて取り組みを強化する決意を固めあった。
 この日の幹事クラス交渉委員と人事院職員団体審議官との交渉では、人事院に対し要求実現を求めたが、審議官からは作業中であることを理由に抽象的な見解しか示されず、極めて不満な回答内容にとどまった。

 午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会の冒頭挨拶にたった福田議長は、「公務員バッシングが沈静化せず、公務労働を取り巻く情勢は厳しく予断を許さない状況の中、2008人勧のたたかいは、生活防衛の実現に向けて、総力を挙げなければならない。公務員制度改革・労使関係システムの抜本改革の取組みも重要な課題であり、国際労働基準に基づいた労働基本権の確立に向け不退転の決意で取り組む。公務員バッシングに萎縮することなく果敢に運動に取り組もう」と主催者を代表して総決起を訴えた。
 激励挨拶には、連合を代表して山口洋子副事務局長が駆けつけ、「公務に働く全ての労働者の生活改善、ワークライフバランスの実現に向けて粘り強い交渉で要求を実現していただきたい。また、公務の臨時・非常勤労働者の賃金は低いと言われており、ストップ・ザ・格差社会の運動の中で均等待遇を進めて欲しい。公務員バッシングは連合全体に対するものと認識しており、ひるまず胸を張って対応していく。基本権の確立に向け、ともにたたかう」と連帯の挨拶を行った。
 続いて吉澤事務局長が、「職場組合員の具体的な実践で運動の積み上げを図っていこう。組合員の労働密度は限界に来ており、諸物価高騰で生活もますます困難になっている。まさに正念場であり、全力で取り組もう」として、労働基本権の確立と人勧期取組み方針の基調を提起した。
 構成組織決意表明では、自治労・加藤副委員長、国公総連・岡本全農林中央執行委員、都市交・浅野副委員長、国交職組・桑原近畿地本書記次長が登壇し、単産や職場の取組み報告も含め、力強くたたかう決意を表明した。
 集会を終えた参加者は、人事院交渉を支援する行動に移り、「所定勤務時間の短縮を行え」「公務員労働者の給与水準を改善しろ」「非常勤職員の格差是正を行え」「本府省手当は許さないぞ」と力強くシュプレヒコールを繰り返した。人事院前で行われた総括集会では、この日行われた職員団体審議官との交渉経過の報告を受け、団結ガンバロウで行動を締めくくった。
 この日行われた人事院職員団体審議官との交渉経過は次の通り。

<職員団体審議官交渉の経過>
 幹事クラス交渉委員と井上職員団体審議官との交渉は15時から行われた。
 冒頭、岩岬副事務局長が、「6月20日には、総裁に2008年人勧期要求を提出したので人勧に向けた作業状況と合わせて現時点での回答を示していただきたい」と審議官の見解を求めたのに対し、井上審議官は次の通り答えた。

(1) 民間企業実態調査は、5月1日から6月18日まで行われ、特段の支障なく終了した。現在、鋭意集計作業中である。国公実態については、例年ベースで集計作業を行っている。
(2) 本年の民間企業における春季賃金改定については、多くの調査結果において昨年と比べわずかながら伸び率はプラスとなっているが、その上げ幅は非常に小さく、調査によっては昨年比マイナスとなっているものも見受けられる。
 一時金については、各種調査から昨年の支給状況についてみると、夏季・年末ともに対前年比プラスであったが、年末のプラス幅は大幅に縮小している。また、現時点における20年夏のボーナス見込みに関しては、昨年夏季と比べ、対前年比の伸びは大幅に落ち込み、マイナスとなっている調査結果も複数みられ、厳しい状況にある。
 いずれにしても民間給与の実態は正確に把握し、勧告に反映させていく。また、配分などについては公務員連絡会と十分な意見交換を行っていきたいと考えている。
(3) 本年の勧告において、本府省手当(仮称)を新設することを考えており、職員団体を含め関係者と意見交換しながら具体化を進めて参りたい。
 措置案については、来週お示しする予定であるが、基本的には平成17年の勧告時報告でお示しした内容のとおりであり、本府省の業務処理の中心的な役割を担う課長補佐以下の職員について、本府省における職務の特殊性・困難性に配慮するとともに、各府省において必要な人材を本府省に確保することが困難になっている事情を考慮し、例えば行(一)の課長補佐に対しては現在の特別調整額の水準を維持した額を、係長には俸給月額の4%程度、係員には2%程度の額を職務の級ごとの定額で支給することを考えている。
(4) 特地勤務手当の見直しについては、その手当としての妥当性・合理性を単に公務部内だけでなく国民の目線からも理解を得られるものにするという姿勢で指定基準の見直しを行うこととしている。現在、4月1日現在の特地官署等の実情に関して行った調査結果の集計・分析中であり、その結果等に基づいて新たな基準案を作成し、秋頃には職員団体等関係者にお示しし、ご意見を伺いながら検討作業を進めていきたい。
(5) 住居手当の見直しについては、昨年の報告で言及したように、自宅に係る手当の廃止と民間における支給状況や高額な家賃を負担している職員への配慮を踏まえた借家・借間に係る手当の在り方について検討を行っている。
(6) 所定勤務時間の短縮については、総裁が春闘時に回答したとおり、新たな勤務時間に対応した適切な勤務体制等や関連諸制度の検討など、所要の準備を行った上で、本年の民間企業の所定労働時間の調査結果も考慮して、勧告時を目途として結論を出したいと考えている。なお、近時、公務員に対して国民から厳しい目が向けられ、様々な批判がなされており、所定勤務時間の見直しについても単に民間準拠を言うのではなく、行政サービスを低下させないよう、業務の合理化が必須であることは言うまでもない。
(7) 超勤縮減については、まずは各府省において、不必要な在庁時間を削減するとともに超過勤務を命ずべき業務についても、業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率向上の取組みを行う必要があると考える。本年4月から政府全体として、各府省において在庁時間削減目標やそのための具体的取組み事項を設定して取組みを進めており、人事院としてもその状況をフォローしながら、超過勤務縮減について検討を進めていきたい。
(8) 非常勤職員の処遇改善に関して、給与については、先月給与決定のためのガイドラインの案をお示しした。関係者のご意見を伺いながら本年勧告時を目途として結論を出し、勧告後早期に発出したいと考えている。
 人事院としても、非常勤職員の問題についてはその位置づけ等も含めて検討を行う必要があるものと考えている。この問題については、多岐にわたって検討すべき課題があることから、今後の取組みの方法について、検討しているところである。
(9) 新たな高齢者雇用施策については、昨年9月から「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」を開催し、本年7月の中間とりまとめ、来年夏の最終報告を目処にご議論いただいているところである。公務における高齢期の雇用確保対策の検討に当たっては、職員団体をはじめ広く関係者の意見を伺いながら進めていくことが重要であると考えている。
(10) 新たな人事評価制度の評価結果の活用に関しては、別途の場で議論をしているところであり、近日中に検討結果を取りまとめ、公務員連絡会の要求に対する回答を申し上げるとともに、改めて措置案としてお示しする予定である。

 これに対し公務員連絡会側は「本年の勧告・報告の全体像が示されず、抽象的な回答に止まったのは遺憾である」とした上で、次の通り、審議官の見解を質した。
(1) 物価高で生活が圧迫されていることに加え、職場では総人件費抑制政策の下で限界に近づきつつある。それだけに本年の勧告に強い期待を持っているので、昨年に続いて是非とも給与改善勧告を行っていただきたい。また、配分交渉は早めに行わせて欲しい。
(2) 交通不便地域で自家用車で通勤せざるを得ないところでは、ガソリンの高騰で月2万円の赤字になっているとの声もある。交通用具使用者の通勤手当の検討状況はどうか。
(3) 本府省手当は、@人材確保の面でやるべきは長時間労働対策と超勤の全額支給であり、手当で糊塗することは筋が違うことA本府省勤務の特殊性、困難性があるとすれば、何がそれに当たるのか納得のいく説明が行われていないこと、から本年の勧告には反対である。
(4) 特地勤務手当については、3年ごとに見直すというルールにしたがって作業を進めるべきだ。前倒しで見直すことの納得性がない。来年4月に見直すということではなく、十分議論させていただきたい。
(5) 自宅に係る住居手当については、財形貯蓄を利用している者が現におり、慎重な検討をしていただきたい。国家公務員だけでなく、地方公務員への影響、準拠している労働者への影響が大きいので、納得できるまで議論すべきであり、一方的に廃止すべきではない。
(6) 所定勤務時間の短縮については、状況が厳しい中、いろいろな環境整備は必要であり、労働組合としても努力していくつもりであり、人事院としても環境整備に努め、勧告に踏み切っていただきたい。霞ヶ関の恒常的な超勤はいろいろな意味で問題になっており、ぜひ実効ある縮減措置をお願いしたい。なお、在庁時間削減の状況を報告して欲しい。
(7) 非常勤職員については、まず、給与の最低ラインを引き上げ、給与上の処遇を確保することにしたことは評価するが、問題点もあるので、意見を提出する。別途、協議してもらいたい。位置づけや雇用のあり方についても今年の報告で専門機関としてどういう方向性を持って検討していくべきかについて提言し、組合を含めて検討するテーブルを作っていただきたい。
(8) 高齢雇用については、今年の報告で定年延長という方向を定めて欲しい。
(9) 人事評価結果の活用については、任用、分限、給与を一体のものとして、ぜひ段階実施を実現して欲しい。評価制度が不満な内容に止まっているだけに、信頼できるものとなるよう人事院としても努力していただきたい。

 これらの追及、要求に対し、井上審議官は、次の通り答えた。
(1) 官民較差については今の段階では想定がつかない。
(2) 通勤手当については、民間の支給状況を踏まえながら、公務の状況を見極めて、総合的に判断していく。
(3) 本府省手当については、給与構造改革の一環として措置することを表明したものであり、これ以外の措置は地域手当の段階実施を除いて完了しており、平成17年の報告を踏まえて検討していきたい。本府省の超勤対策も重要であり、在庁時間の削減を進めている。超勤手当の支給は当然のことだ。しかし、長時間労働のみならず、本府省勤務は政策の企画立案、予算作成、法案の立案など特有の負担感、緊張感があり、その大変さが人材確保の困難性を生じさせており、手当で措置する必要がある。
(4) 特地勤務手当は3年ごとに見直してきたことは承知しており、納得性を得ながら進めてきた。そのことを軽視しているつもりはないが、公務員給与を巡る国民の目は厳しく、公開性が高まっており、生活が不便であることに対する手当であることについて納得性のある基準にする必要があり、現行の基準の再点検を行うことにしたものである。
(5) 自宅に係る住居手当については、昨年の報告で廃止を含めた見直しに着手することを表明した。給与の中で1%を下回っており、独立の手当としての存在意義が薄くなっている。最初に見直しを提起した平成15年に比べても現在は財形貯蓄の利用者は激減している。検討せざるを得ない状況だ。
(6) 時短の要望は受け止めて対応したい。在庁時間の削減は取りまとめ中であり、ある程度まとまったところで情報提供する。
(7) 非常勤職員の問題については、「意見」を踏まえて検討する。位置づけや雇用のあり方について報告して欲しいとの話は分かったが、多岐にわたる影響がある難しい問題なので、引き続き検討していきたい。

 以上の審議官の見解に対し、公務員連絡会側は、さらに@地方公務員では自宅に係る住居手当を廃止するなという声が極めて強い。地公への影響に十分配慮し、今年の見直しは行わないでもらいたいA地方に在勤する公務員は本府省手当に反対だ。人が来ないのは地方も同じだし、超勤対策も不十分だB特地勤務手当は、前回見直しの時、次回は抜本的な見直しもあるということを確認しており、前倒し見直しは納得できない。現地の声も聞いたはずだC本府省勤務の特殊性と言うが、地方出先機関の職員の協力があって本府省の仕事ができているし、地方では少ない人数で幅広い仕事を行っているという特殊性があるD非常勤職員の問題は国会でも議論され、環境は整っているので、ぜひとも一歩を踏み出していただきたい、と強く迫った。
 しかし井上審議官は、冒頭の回答と同様の見解を繰り返すばかりで、それ以上具体的な見解は示さなかった。
 このため、岩岬副事務局長が、最後に「中間段階とはいえ抽象的な回答に止まっており、不満だ。本日申し上げた要望を踏まえ、23日には勧告・報告の全体像が明確となるような回答を示していただきたい」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。

以上