2008年度公務労協情報 43 2008年8月5日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答引出し−8/5
−勧告日は8月7日、ベア見送り、一時金は維持、勤務時間見直しを勧告−

 公務員連絡会福田議長ほか委員長クラス交渉委員は、5日午前11時から人事院総裁と交渉を持ち、本年の勧告内容に関わる回答を引き出した。公務員連絡会は、この回答を受けて明日、代表者会議を開いて公務員連絡会としての勧告に対する態度を確認し、当面の取組み方針を決定することとしているが、7日に予定される勧告後、官房長官や総務大臣など主要な給与関係閣僚に対して、直ちに勤務時間短縮の勧告を実施する閣議決定を行うよう要求する予定。
 秋季確定闘争を巡る情勢は、第2次福田内閣の下で、政府・与党が「無駄遣い撲滅」など公務員バッシングを強めてくることが十分想定され、予断を許さない情勢にある。公務員連絡会としては、そうした厳しい情勢を踏まえた闘争態勢を確立し、秋季確定闘争を全力で進めることとしている。

<人事院総裁との交渉経過>
 午前11時から行われた人事院総裁交渉の冒頭、福田議長が「6月20日に本年の人勧期要求を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答をいただきたい」としたのに対し、総裁は次の通り回答を示した。

<勧告日>
 勧告日については、8月7日となる予定である。

T 今年の給与改定関係
1 官民較差
 官民較差は、極めて微少なものであり、官民給与はほぼ均衡している。したがって、月例給の改定は見送る予定である。
2 特別給
 特別給についても官民の支給月数は概ね均衡しており、支給月数の改定はない見込みである。
3 医師の給与改善
 国の医療機関に勤務する医師の給与が民間病院や国立病院機構に勤務する医師の給与を大きく下回っていることから、国の施設における勤務医確保の必要性を考慮し、初任給調整手当の最高額を引き上げる。これに応じて各手当額を改定するとともに、国立高度専門医療センターについて、現在適用されている初任給調整手当の職員の区分を一段階高い段階に引き上げる。
 以上の措置は、平成21年4月から実施する。
4 その他の手当
 その他の手当に関しては、給与局長の回答で申し上げたとおりである。 
5 給与構造改革関連
 (1) 本府省業務調整手当の新設
 国家行政施策の企画・立案、諸外国との折衝、関係府省との調整、国会対応等本府省の業務の特殊性、困難性を踏まえ、また、近年各府省において本府省に必要な人材を確保することが困難になっている事情を併せ考慮し、本府省の課長補佐、係長、係員を対象とした本府省業務調整手当を新設する。
 これについては、平成21年4月から実施する。
 なお、手当の支給額の設定は、平成21年度及び22年度にわけて段階的に行う。
 (2) 地域給の支給割合
 平成21年度の地域手当の支給割合について、暫定支給割合を定めることについて報告を行う。
 (3) 給与構造改革期間終了後の取組
 給与構造改革終了時点において、これまでの改革の効果を検証するとともに、地域における民間給与の状況等を踏まえ、引き続き地域間の配分の在り方を検討することに加えて、給与における能力・実績主義を一層推進する観点から、新たに導入される人事評価制度に基づく評価結果の給与への活用状況を踏まえつつ、必要に応じ更なる見直しを検討することとしたい。さらに、近時、雇用と年金の連携を図るため、60歳台前半における雇用問題が重要な課題となっており、これに対処するに当たっては、60歳台前半のみならず60歳前も含めた給与水準及び給与体系の在り方について、人事施策の見直しと一体となった検討を行うことが併せ必要となっている。
 以上のような諸課題に対応すべく総合的な検討を行っていく必要があると考えており、今後具体的な問題点を整理しながら、その準備を進める旨報告で言及したいと考えている。
5 非常勤職員の給与等
 非常勤職員の処遇に関して、給与決定に関する指針を策定し、発出することする。これに加え、休暇及び健康診断の在り方について検討を行うとともに、任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識をもって考えていきたい。
 また、非常勤職員の問題は、業務運営の方法、組織・定員管理、予算、人事管理方針などと密接不可分の関係にあることから、今後は、政府全体として、必要に応じて職務の実態把握を行いながら、その在り方をどのようにしていくかについて幅広く検討を進めていくことが必要と考える。
 以上について、報告において言及したいと考えている。

U 所定勤務時間の見直し関係
 民間企業の所定労働時間は、本年の民調によれば、公務と比較して1日当たり15分程度、1週間当たり1時間15分程度短くなっており、平成16年から本年までの5年間の調査結果によっても、その水準で定着している。
 これとの均衡を図るとした場合、業務の合理化・効率化や勤務体制の見直しを行うなど、公務能率の一層の向上により行政サービスやコストに影響を与えることなく勤務時間の短縮を行うことが可能であると考えられる。
 人事院としては、以上のような点を考慮し、職員の勤務時間を1日当たり7時間45分、1週間あたり38時間45分に改定することが適当であると考え、改定に関する勧告を行う予定である。
 実施時期は平成21年4月とする。
 職員団体においても、勤務時間を短縮した場合において、公務能率を一層向上させ、行政サービスの維持・向上が図られるようご協力をお願いしたい。

V 公務員人事管理関係
 国家公務員制度改革基本法が制定され、今後具体的な公務員制度改革が進められることとなる。人事行政の中立・公正性の確保などを担う第三者機関・専門機関の立場から、真に実効性があり、問題の解決に資する国民本位の公務員制度改革が行われることを期待し、本院としての基本認識を報告の冒頭において示すとともに、従来どおり組合からの要求事項も含む個別課題への取組について言及することとしている。
 具体的には、
○ 採用試験の基本的な見直し
○ 幹部要員の確保・育成
○ 新たな人事評価制度の導入と評価結果の活用 
○ 超過勤務の縮減
○ 両立支援の推進
○ 心の健康作りの推進
○ 高齢期の雇用問題を中心とした退職管理
などの課題について報告する予定である。

 以上の回答に対し、福田議長は次の通り公務員連絡会としての見解を述べた。
(1) ただいまの総裁回答のうち、民間実勢を反映したものとはいえ、月例給与の改定を見送ること、交通用具使用者の通勤手当の引上げを見送ることについては、ガソリンの値上げ、諸物価高騰の下で組合員が生活改善への強い期待を持っていたことからすれば、不満といわざるを得ない。
 本府省業務調整手当については、@慢性的恒常的長時間勤務の解消を優先して取り組むべきであることA職務給の原則から見ても給与制度上大きな問題があること、などから本年の勧告に反対してきたが、それを無視し、勧告を強行することについては極めて遺憾である。住居手当については、本年の見直しを見送り、報告で来年に向けた意向を示しているが、引き続き十分な交渉・協議を求めておきたい。
(2) 本年の最重要事項として取り組んできた所定勤務時間短縮の勧告が行われることについては、休憩・休息時間見直しとの一体的解決を強く求めてきたわれわれの要求を踏まえたものとして、評価したい。ただ、この時短をめぐる情勢には極めて厳しいものがあると認識しており、ワークライフバランスの実現という観点も踏まえ、われわれも全力で早期実施に向けてがんばるが、人事院としても勧告通りの実施に向けて全力で努力するよう求めておきたい。
 非常勤職員について、給与決定のガイドラインを設定することについては、評価する。しかし、これは問題解決に向けた一歩に過ぎない。次のステップである非常勤職員等の位置づけや雇用確保に向けて、政府と一体的な態勢を確立し、さらに取組みを強めてもらいたい。
 その他、他律的業務の超勤縮減策、新たな高齢雇用施策とそれに関わる給与制度や体系の検討、なども極めて重要な課題であり、十分われわれと交渉・協議を積み重ね、合意に基づいて作業を進めてもらいたい。
(3) ただいまの総裁回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定するが、政府に対しては労働時間短縮勧告を直ちに実施するよう求めていきたいと考えている。
 第2次福田内閣が発足したが、われわれ公務・公共部門を巡っては、総人件費削減政策が強められ、厳しい情勢が継続するものと認識している。政府・与党が、ますます公務員バッシングを強めることも十分に想定され、勧告の取扱いも予断を許さない情勢にある。
 今後、政府において労使関係制度のあり方を含む公務員制度改革の議論が本格的に進められていくが、現状では人事院勧告制度が公務員の唯一の賃金・労働条件改善の機能である。この点を十分踏まえ、われわれはわれわれで全力で取り組むが、人事院も、文字通り労働基本権制約の代償機関として、勧告通り実施されるよう最大限努力することを要請しておきたい。

 さらに交渉委員からは、「本府省業務調整手当を導入することで、税務や公安の給与が下がるのは問題であり、遺憾である」と強い抗議が行われたが、総裁は「皆さんの要求も熟慮し、現下の厳しい情勢も踏まえて、判断した報告・勧告なので、ご理解願いたい」と答えるに止まった。最後に、福田議長が、「公務員を取り巻く情勢が厳しいので、勤務時間短縮勧告が早期に実施されるよう、われわれも全力で取り組むが、人事院としても最大限の努力をしていただきたい」と、重ねて人事院の努力を求め、交渉を締めくくった。

以上