2008年度公務労協情報 45 2008年8月11日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が給与を据え置く一方、勤務時間見直しの勧告−8/11
−公務員連絡会は「声明」を発し、政府に勤務時間見直しの早期実現を要求−

 人事院は、11日午後3時30分、内閣と国会に対して、@月例給・一時金の改定を見送ることや来年度から医師の初任給調整手当を引き上げるとともに、本府省業務調整手当を新設するなどの給与に関する報告・勧告A勤務時間について来年4月から1日当たり7時間45分とすることや超過勤務の縮減方策の検討を行うことなどの勤務時間に関する報告・勧告B新たな人事評価制度の導入や高齢期の雇用問題など公務員人事管理に関する報告を行った。政府はこれを受けて15日に第1回目の給与関係閣僚会議を開いて取扱い方針を協議する予定。
 公務員連絡会は、人事院勧告・報告が内閣・国会に提出されたことを受けて、@月例給・一時金と交通用具使用者の通勤手当の改善が見送られたことは不満A本府省業務調整手当を一方的に勧告したことは遺憾B所定勤務時間の見直しは取組みの成果であり、勧告通り実施する閣議決定を行い、法案を国会に提出すること、などを内容とする声明(資料1)を発した。そして、委員長クラス交渉委員が、11日には総務大臣、15日には官房長官、厚生労働大臣に対して、@勤務時間見直し勧告について、勧告通り実施する閣議決定を行い、早期に勤務時間法改正法案を国会に提出することA新たな人事評価制度について、納得性の高いシステムとなるよう、十分交渉・協議し、合意することB非常勤職員について、位置づけや雇用確保について検討する場を設けることC公務員制度改革について、十分交渉・協議を行い、抜本的改革を実現することとし、直ちに公務の労使関係の検討に着手すること、などを求める要求提出を行うことにしている。
 また、公務員連絡会は、11日の人事院勧告を踏まえ、12日に職場集会を中心とした第4次全国統一行動を実施し、意思統一を図り、秋の取組みに結びつけていくことにしている。

 本年の勧告に至る経過の中では、人事院総裁が5日の委員長クラスとの交渉の中で「勧告は7日の予定」と回答したあと、6日夕刻になって突如それが変更されるという事態となった。総理の日程調整の関係とはいえ、勧告の予定が直前になって変更となったことはこれまでにないことであり、結果として組織混乱を生じたことは遺憾といわざるを得ない。
 公務員連絡会は、すでに公務労協情報No.44でお知らせしたように、8日午後、事務局長等が給与局長と交渉を持ち、遺憾の意を表明するとともに、経緯の説明を求めた。これに対して人事院は、総理の日程の関係で急な変更となったと経緯を説明し、「現場で混乱が生じたことは重く受け止めている」との見解を示した。公務員連絡会は、この交渉を受けて8日夕刻、代表者会議を開いてこの間の経過を確認し、11日の勧告に臨む対応方針を決定した。
 あわせて代表者会議は、こうしたことが「無駄ゼロ」等の総人件費削減の動向や政治的思惑と結びついたものであっては絶対にならないことから、勧告の取扱いをめぐる秋の情勢がとりわけ厳しいことを踏まえ、不退転の決意で秋季闘争を進める決意を全体で確認し、19日の企画・幹事合同会議で秋闘方針を具体化することとした。また、各構成組織は12日の第4次全国統一行動の中で、こうした経緯を含め厳しい情勢を全体で共有することとした。


資料1−公務員連絡会の声明

声  明


(1) 人事院は本日、月例給・一時金の改定を据え置く一方、所定勤務時間を1日当たり7時間45分とすることなどの報告・勧告を行った。
 2008人事院勧告期の取組みに当たってわれわれは、公務員給与の社会的合意の再構築と交渉による賃金・労働条件決定制度の確立を基本的課題と位置づけながら、@月例給与の改善勧告A非常勤職員の処遇改善B所定勤務時間を7時間45分とする勧告、などの実現を重点課題に設定し、2次の中央行動や3次の全国統一行動を実施して、公共サービスキャンペーン、公務員制度改革に対する取組みとも連携した闘いを進めてきた。
(2) 本年の勧告において、民間実勢を反映したものとはいえ、月例給与の改定を見送ること、交通用具使用者の通勤手当の引上げを見送ることについては、ガソリンの値上げ、諸物価高騰の下で組合員が生活改善への強い期待を持っていたことからすれば、不満といわざるを得ない。他方、人事院が厳しい見解を示していた中で、一時金の水準が維持されたことは、われわれが最終段階まで粘り強く取組みを進めてきた結果である。
 また、本府省業務調整手当は、@恒常的長時間勤務の解消を優先して取り組むべきであることA職務給の原則から見ても給与制度上大きな問題があること、などから反対してきたことを無視して、一方的に新設勧告を行ったことは遺憾である。住居手当の本年見直しを見送ったことは、われわれの取組みの結果であるが、人事院が報告で来年勧告の強い意向を示したことを踏まえ、より厳しい情勢の下、引き続き十分な交渉・協議と合意を求めていかなければならない。
(3) 本日、人事院が行った所定勤務時間の見直し勧告は、91年の週休二日制勧告以来の勤務時間短縮勧告であり、われわれが休憩・休息時間見直しの際に一体的解決を求め、本年の最重要課題として取り組んできた成果である。公務を巡る情勢は厳しいが、公務員の所定勤務時間を民間企業の勤務時間に合わせるものであり、人事院勧告が労働基本権制約の代償機能であること、政府が進めるワークライフバランス確保の観点からも、政府は直ちに勧告通り実施する閣議決定を行い、勤務時間法の改正法案を臨時国会に提出すべきである。
 超過勤務の実効ある縮減も重要な課題である。本年報告で他律的業務の縮減策として指摘されている「上限目安」は実効性に疑義があることから、幅広い角度から、われわれと十分交渉・協議を行い、合意のもとに実効性のある縮減方策の検討を行うべきである。
(4) 報告で指摘されている非常勤職員の給与決定の指針の発出は、われわれの3年間の取組みの成果として確認できるが、これは問題解決に向けた一歩に過ぎず、非常勤職員等の位置づけや雇用確保に向けて、さらに取組みを強化していく必要がある。
 給与の地域間配分や能力・実績主義への対応、高齢雇用の実施に伴う給与のあり方の検討が報告されているが、政府の総人件費削減の要請に応えるものであってはならない。とりわけ、高齢雇用の実現は極めて重要な課題であり、研究会における施策の取りまとめを含めて、われわれとの十分な交渉・協議、合意を強く求めるものである。
(5) 秋の臨時国会をめぐっては、与党の「無駄遣い撲滅」を背景とした公務員給与バッシングが強まり、公務員労働者にとって厳しい情勢は継続すると見ておかなければならない。財政再建路線を明確化した第2次福田内閣の下では、公務員給与・総人件費削減政策が強まることは必至である。また、地方分権改革に関わる国の出先機関見直しも年末にかけて大きな山場を迎えることになる。透明で納得性のある人事評価制度の確立も来年の本格実施に向けて、引き続き重要な課題である。
 われわれは、秋季闘争でこうした厳しい情勢を十分認識し、@雇用確保と総人件費削減政策に対する取組みA勤務時間見直しの実現B地方財政危機下にある地方公務員給与の確定、の3つを大きな柱として、取組みを推進する決意である。これから本格化する独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても統一闘争体制を堅持した取組みを進めることとする。
 また、連合・公務労協に結集し、労働基本権の確立を含む公務の労使関係制度の抜本的改革など公務員制度改革と良質な公共サービス確立の取組みを全力で進めていくものである。

2008年8月11日

公務員労働組合連絡会


資料2−連合事務局長談話

2008年8月11日


人事院勧告に対する事務局長談話


日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明


1.人事院は11日、政府と国会に対し、本年度の国家公務員の給与について、官民給与はほぼ均衡しているとして月例給改定(ベア)は見送り、一時金も同様に4.5ヶ月で据え置くとする勧告を行った。本年の勧告は民間賃金の動向を反映したものとはいえ、食料品やエネルギー価格など生活必需品が高騰している中で低下している組合員の生活を改善することへの期待を裏切るものであり、不満といわざるを得ない。

2.今回の勧告では、所定勤務時間を民間企業の実態にあわせ1日当たり15分短縮し7時間45分とする勧告を行った。所定勤務時間の見直しは、1991年の週休2日制勧告以来であり、本年の最重要課題として取り組んできた成果といえる。勤務時間の短縮は、政府が進めるワーク・ライフ・バランスの実現の観点からも有用である。人事院勧告は、労働基本権制約の代償措置であることから、政府は速やかに勧告通り実施するため閣議決定を行い、勤務時間法の改正法案を臨時国会に提出すべきである。

3.公務における非常勤職員の処遇に関し、給与決定に関する指針を策定することになった。これは、これまで3年間にわたって取り組んできた労働組合の成果といえるが、非常勤職員の現状を考えれば早期に策定すべきであった。また、指針の策定は問題解決に向けた第一歩にすぎず、格差を是正し均等待遇の実現をはかることや雇用確保に向け、取り組みを強化していかなければならない。

4.連合は、公務における労使関係の根本的な問題解決のためには、労働基本権の回復によって、団体交渉による労働条件決定をできるようにすべきと主張してきた。連合は、関係産別とともに、ILO勧告に沿う労働基本権の確立による公務員制度改革と良質な公共サービスの確立のため、引き続き全力で取り組んでいく。

以上