2008年度公務労協情報 48 2008年9月4日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人勧の取扱いで総務省人事・恩給局次長と交渉−9/4

 9月1日に福田総理大臣が突然の辞意を表明したことから、年末にかけて総選挙を含めた極めて流動的、不透明な政治情勢となっており、本年の人事院勧告取扱いについて政府の方針決定の見通しが立てられない情勢となっている。少なくとも、現政権での方針決定は行われず、新政権に委ねられるものと思われるが、閣議決定の時期は相当ずれ込むことも予想される。しかし、すべてが総選挙がらみで推移していくことから公務員給与をめぐる厳しい情勢には変わりはなく、それらを踏まえた秋季闘争を進めることが必要となっている。こうした情勢を踏まえ、公務員連絡会は4日午後、総務省人事・恩給局次長交渉を行い、政府としての検討状況を質した。
 総務省との交渉は、13時30分から行われ、総務省側からは笹島人事・恩給局次長ほかが出席し、公務員連絡会側からは岩岬副事務局長ほか幹事クラス交渉委員が交渉に臨んだ。
 交渉の冒頭、岩岬副事務局長は「8月11日に人事院勧告に関する要求書を総務大臣に提出したところであり、本日は、5点について中間的な検討状況について回答願いたい」として、@勤務時間見直し勧告の取扱いAリハーサル試行を踏まえての政令の具体化に向けた交渉・協議B非常勤職員問題についての政府としての対応C退手検討会報告を踏まえた法改正の作業状況D公務員制度改革への対応、について総務省の回答を求めた。これに対し、笹島次長は次の通り見解を示した。

(1) 人事院勧告が8月11日に行われ、15日に第1回給与関係閣僚会議を開いた。人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢を堅持してきたところである。国の財政事情をはじめ国家公務員の勤務条件を取り巻く環境には極めて厳しいものがあるが、総務省としては、従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られるような結論を得るべく国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討を進めてまいりたい。
 今回の人事院勧告には、給与と勤務時間が入っており、どちらも勤務条件として重要と認識しているが、政治情勢が流動化しており、今後の見通しは立っていない。
(2) 人事評価制度については、組合の皆さんと話し合いながら進めてきたところであり、リハーサル試行については、7月3日付の「人事評価のリハーサル試行実施要領」に基づき、現在、各府省において進めているところであり、総務省でも開始している。これから、政令の作業があり、政令の策定は行革事務局において行われるが、総務省としても、今後とも職員団体と十分に話し合うことは必要であるものと考える。
(3) 非常勤職員の職務の内容や勤務形態は多種多様であり、その処遇等について一律に取り扱うことにはなじまないことから、まずはそれぞれの職員の勤務実態をよく知る各府省において給与法等の趣旨に沿った適切な対応がなされるべきものと考える。その上で、本年の人事院勧告時の報告において、人事院において、給与に関する指針の策定に加え、休暇及び健康診断の在り方について検討を行うとともに、任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識を持って考えていきたいとされているところであり、総務省としても、人事院とよく話し合いながら、適切に対応してまいりたい。
(4) 退職手当の見直しについては、6月4日にまとめられた退職手当検討会の報告書を踏まえ、早急に法制化の作業を進め、制度の整備を行ってまいりたいと考えている。退職手当については、職員の重要な関心事項であり、今後とも職員団体からの意見は十分承ってまいりたい。
(5) 公務員制度改革については、顧問会議も開かれると聞いており、内閣に置かれた国家公務員制度改革推進本部を中心に検討が行われるものと考えるが、公務員制度を所管する総務省としても、今後とも国家公務員制度改革の推進に連携・協力をしてまいりたい。

 これらに対し、公務員連絡会側はさらに総務省の見解を質した。
(1) 勤務時間短縮についても、「重要な勤務条件」であるとの考えが示されたが、給与関係閣僚会議で給与と一緒に取扱いを検討するのか。要求書を提出した際、官房長官は極めて慎重な姿勢を示したが、総務省としては、勧告を尊重するという立場で使用者としての責任を果たしていただきたい。
(2) リハーサル試行について、評価結果の開示、苦情処理など、労使が共同で総括を行い、それを政令に結びつけていく姿勢で対応していただきたい。
(3) 非常勤職員の問題は、各府省に取扱いを任せた結果、指摘されているような問題を生じたのであり、そうした認識は改めていただきたい。政府全体として、主体的に取り組むという認識を示していただきたい。非常勤職員の任用、勤務条件は確かに多様なので、まずは実態把握をきちんと行っていただきたい。本年の人事院報告を受けて一歩前へ進む姿勢を示していただきたい。
(4) 退職手当については、一定の段階、節々で、意見交換をさせていただきたい。

 以上の追及に対し、笹島人事・恩給局次長は、次のとおり総務省の見解を示した。
(1) 8月15日の給与関係閣僚会議では給与と勤務時間の両方を勧告事項として説明したが、政府としてどういう形で意志を形成していくのかは、まだはっきりしていないが、別途の場で検討するという議論にはなっていない。給与は、財政との関わりが重要になるが、勤務時間については、行政サービス、超過勤務などをどうしていくのかという課題があり、そうした点を含めて政府部内で検討していくことになる。いずれにしても、国民の理解を得るよう努めなければならないし、代償措置である人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に変わりはない。
(2) 政令については、リハーサル試行までの議論やリハーサル試行の実施状況を踏まえて組合とも再度議論した上で、年度内に制定できるよう作業を進めていきたい。
(3) 非常勤職員について、問題意識を持っているが、勧告が出たばかりなので、人事院の話をよく聞いた上で、総務省としてどう対応していくのか検討していきたい。
(4) 退職手当については、まだまだ詰めるべき点があると認識しており、もう少し全体像が固まってから、皆さんと議論していきたい。

 これらの回答に対して、公務員連絡会側は、@地方をはじめとして勤務時間の短縮について組合員の強い期待があることAリハーサル試行は全員参加であり、多くの意見集約や問題把握ができることからそれを政令に反映することが重要であることB非常勤職員については、各省ともきちんと把握していないことからまずは実態調査を行う必要があること、などを訴え総務省の努力を求めた。
 最後に岩岬副事務局長が、「公務員を取り巻く情勢は厳しいが、人事院勧告を実施することが使用者の責任を果たすことになる。国民の理解を得ることは当然のことであるが、勤務時間短縮勧告をきちんと実施していただきたい。情勢が流動的で明確な回答は難しいことは理解するが、下旬に予定されている書記長クラスと局長の交渉の際には、非常勤問題への対応を含め、政府としての具体的回答を示していただきたい」と強く申し入れ、交渉を終えた。

以上