2008年度公務労協情報 50 2008年9月24日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人勧の取扱いで総務省人事・恩給局長と交渉−9/24

 公務員連絡会は、24日、総務省人事・恩給局長交渉を実施し、本年の人事院勧告取扱いについて政府の方針を質した。福田総理の突然の辞意表明により政治空白が生じ、勧告から相当経過をしたことから、勤務時間改定勧告について勧告通り実施することや非常勤職員問題への対応などを求めて行ったもの。
 総務省村木人事・恩給局長との交渉は、15時30分から行われ、公務員連絡会側からは書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 交渉の冒頭、吉澤事務局長は「8月11日に人事院勧告があり、同日要求書を総務大臣に提出したところであり、9月4日には次長から検討状況を聞いた。政治状況を踏まえつつも、現時点での検討状況について局長から回答願いたい」として、村木局長の回答を求めた。これに対し、局長は「8月11日に勧告があり、15日に第1回給与関係閣僚会議を開き、色々な意見が出された。その後、政治の判断を仰ぐ状況になかったため、9月4日の交渉の際、次長から申し上げた総務省のスタンスは変わっていないが、本日は、改めて考えを申し上げたい」として次の通り見解を示した。

(1) 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢を堅持してきたところであり、この考えに変わりはない。
 国家公務員の勤務条件を取り巻く環境、すなわち経済状況や公務員に対する国民の目など極めて厳しいものがあるが、総務省としては、勤務時間改定勧告についても、労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度を尊重するという従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られるような結論を早急に得るべく、国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討を進めてまいりたいと考えている。
(2) 新たな人事評価のリハーサル試行については、7月3日付の「人事評価のリハーサル試行実施要領」に基づき、各府省において進められているところである。
 政令の策定は行革事務局において行われるが、総務省としては、今後とも職員団体と十分に話し合うことは必要であると考えている。
(3) 非常勤職員の職務の内容や勤務形態は多種多様であり、その処遇等について一律に取り扱うことにはなじまないことから、まずはそれぞれの職員の勤務実態をよく知る各府省において給与法等の趣旨に沿った適切な対応がなされるべきものと考える。
 その上で、本年の人事院勧告時の報告では、人事院において、給与に関する指針の策定に加え、休暇及び健康診断の在り方について検討を行うとともに、任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識を持って考えていきたいとされているところであり、総務省としても、人事院における検討等の状況もよく聞きながら、われわれとして何ができるか、問題意識を持って検討してまいりたい。 
 なお、その際には関係者の意見も伺ってまいりたい。
(4) 総務省では、昨年11月以来、不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の取扱いについて有識者による検討会を開催し、6月4日に報告書が取りまとめられたところである。
 総務省としては、本報告書を踏まえ、早急に法制化の作業を進め、制度の整備を行ってまいりたいと考えている。退職手当については、職員の重要な関心事項であり、今後とも職員団体からの意見は十分承ってまいりたいと考えている。
(5) 国家公務員制度改革基本法に規定された事項については、内閣に置かれた国家公務員制度改革推進本部を中心に検討が行われているが、公務員制度を所管する総務省としても、法律の基本理念、方針の趣旨を踏まえつつ、今後とも国家公務員制度改革の推進に連携・協力をしてまいりたい。
 また、国家公務員の労働基本権についても、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」と規定しているところである。
 公務員の労働基本権についても、同法の趣旨を踏まえ、今後、国家公務員制度改革推進本部を中心として検討が進められるものと認識しており、総務省としても、同本部等と連携・協力して対応してまいりたい。

 これらに対し、公務員連絡会側はさらに総務省の見解を質した。
(1) 本年勧告には給与法に関する事項と勤務時間法に関する事項が含まれているが、一体のものとして扱うと理解してよいか。
(2) 人事院勧告が労働基本権制約の代償機能であることを前提とすれば、どういう政権、だれが担当大臣であっても勧告を尊重する姿勢で臨むべきであると思うが、総務省としてはどう対応するつもりか。昨年の不完全実施について、福田議長が遺憾の意を表明し、増田大臣からは人事院勧告制度を尊重するという政府の基本姿勢は今後とも変わりがないことが表明されたので、今年は昨年のようなことにならないようにしていただきたい。
(3) 人事評価の制度設計は行革推進本部事務局の担当であるが、総務省としても、リハーサル試行の実施状況・実施結果を公務員連絡会に報告し、政令策定に向け公務員連絡会と十分交渉・協議を行うよう努めていただきたい。また、国家公務員制度改革基本法第9条、第10条に人事評価の規定があり、国家公務員制度改革推進本部の議論がこれまでの経緯を無視したものであってはならない。混乱がないようにしていただきたい。
(4) 民間委託やアウトソーシングなどが進められる中、非常勤職員が増え、雇用や労働条件など総合的に考えた場合、このまま放置できない。非常勤職員なしには公務が回っていかないし、きちんとした処遇にしていかなければならない。任用、雇用について政府全体として取り組むとの報告であり、総務省としても積極的に対応してほしい。任用・雇用問題の解決に向けて、まずは政府として実態把握を行い、公務員連絡会も参加する検討の場を設置していただきたい。
(5) 公務員制度改革については、労使関係制度検討委員会が10月にも設置されることになっているが、これまでの経過を踏まえた対応をお願いしたいし、国家公務員制度改革推進本部との交渉・協議をしっかりとやらせていただきたい。
(6) 退職手当の具体的検討状況はどうなっているのか。法制上、難しい面もあるので、前広に議論をさせていただきたい。退職手当についても、国家公務員制度改革基本法に規定があるが、公務員連絡会と総務省の間で交渉・協議を行っていくということでよいか。

 以上の質問・要求に対し、村木人事・恩給局長は、次のとおり総務省の見解を示した。
(1) 給与も勤務時間も一つの勧告の中で出され、給与関係閣僚会議でも同一の議題として議論を行っているので、政府の方針決定は同一のものになると思う。法案も勤務条件の問題であるので一緒に国会に提出し、一体で審議してもらいたいと思っている。
(2) 総務省としては、新大臣、官邸にも、人事院勧告は尊重すべきであるという説明を行うことにしており、勧告が尊重されるよう対応していきたい。
(3) 人事評価については、微修正はあるとしても、これまでに積み上げてきたものの延長上で実施していくことが現実的と考えている。今のところ、国家公務員制度改革推進本部で具体的な動きがあるとは承知していない。
(4) 非常勤職員については、一義的には各府省大臣の責任であるが、任せただけでいいのかという問題意識を持っており、制度官庁として対応していきたいと考えているが、公務員制度全体、例えば定員や人件費の問題もあるので、人事院と相談し、データももらいながら検討し、総務省として何がやれるのか、問題意識を持って考えていきたい。
(5) 公務員制度改革については、総務省としても制度を所管している立場で皆さんと話し合っていくこととしたい。
(6) 退職手当については、検討会報告というグランドデザインはあるが、今、法律的な詰めの作業を行っており、全体像を示す段階には至っていない。ある程度整理された段階で示したいと考えているが、心配な点があれば言っていただきたい。退職手当は、一義的には総務省が所管官庁であり、総務省に意見を言ってもらって、総務省から国家公務員制度改革推進本部に持っていくことになるのではないか。具体的にどうかというようなことはまだ聞いていないので、出てきた段階で相談をしたい。

 以上の議論を踏まえて、最後に吉澤事務局長が「本日は現下の政治状況の下での見解を聞いた。どんな政権になっても人事院勧告を尊重すべきことには変わりはないので、本日、申し上げた内容が実現するよう努力をしていただきたい。また、非常勤問題については次回の交渉で具体的な回答を示すよう強く求めておきたい」と申し入れ、局長がこれに基本的に同意したことから、本日の交渉を終えた。

以上