2009年度公務労協情報 13 2008年12月2日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公部会が地方財政確立等に関する要請を実施
−11/27各政党および知事会・市長会、12/2議長会3団体に要請−

 公務員連絡会地公部会は、11月27日および12月2日の両日、地方財政確立等に関する各政党、地方団体への要請を実施した。各政党要請には地公部会委員長クラス、全国知事会・全国市長会に対しては書記長クラスが、各議長会要請には幹事クラスが参加した。各政党、地方団体へは、@地域公共サービスの実態に見合った財源保障、A地方税財源確保のための制度改革など地方自治の確立、B自治体の自主的・主体的な財政健全化の支援、C地方公務員の総人件費の十分な確保の実現に向けて、関係省庁・政党へ働きかけるよう申し入れた(別紙要望書参照)。
 要請の概要については以下の通り。

<各政党要請の経過>
 民主党・社民党・公明党への要請は27日午後に実施された。要請には、地公部会から議長の佐藤全水道委員長、同副議長の岡部自治労委員長、中村日教組委員長、武田都市交委員長、小池日高教委員長が出席した。

(1) 公明党への要請の概要
 公明党からは、谷口和史労働局長、弘友和夫団体渉外委員長が対応した。冒頭、佐藤議長から「厳しい経済情勢の中で、地方財政はさらに厳しさを増している。鳩山総務大臣もこの間の地方財政の圧縮について、やりすぎとの認識を示している。公明党は与党として責任のある対応をしてほしい」と挨拶、続いて、藤川事務局長が要望書に基づき、4点にわたって要請を行った。
 これに対し、谷口和史労働局長は「地方法人税の大幅減収が見込まれるなど、地方財政の厳しい現状については認識している。第二次補正のなかで対応するつもりであり、年明けには国会に提出するつもりだ。また、財政健全化について、地方の自主性を尊重すべきことは当然であり、同意見だ」と述べた。また、弘友和夫団体渉外委員長は、「地方財政については全く同じ認識」とした上で、定額給付金の問題について「地方の皆さんには大変お世話をおかけする」との発言があった。
 岡部自治労委員長は「2011年にプライマリーバランスを黒字化するという目標を置いたままで、小手先の景気対策をしても、根本的な解決にはならない。このままでは、地域社会は崩壊しかねない状況だ。政策変更も含め対応すべきではないか」と指摘した。これを受け、谷口和史労働局長からは「公明党としても、プライマリーバランスの黒字化は金科玉条ではない。要請の4項目については基本的方向では一致している。しっかりと受け止めて頑張るつもりである」との見解表明があった。
 最後に地公部会側が、要請内容への最大限の努力を再要請し、要請を終えた。

(2)民主党への要請の概要
 民主党は、原口一博ネクスト総務大臣、黄川田徹・内藤正光同副大臣が対応した。
 冒頭、佐藤議長が「地方交付税の大幅削減などにより、地方財政は危機に瀕している。自治体立病院の問題など、公共サービスの縮小や質の低下が危惧されている。さらに、半分以上の自治体で独自の給与カットが行われている現状もある。公共サービスのあり方の議論と、公共サービスを担う労働者の労働条件の確立をお願いしたい」と挨拶した。
 要請に対して、原口一博ネクスト総務大臣からは、「いただいた要請の4点については、民主党としても同じように考えている」とした上で、「地方財政対策については、民主党としても通常国会に向けて法案を準備している。今の社会は、地方から富を簒奪するシステムが出来上がってしまっている。政権交代を成し遂げたら、地域から富が簒奪される仕組みを根本的に改めていきたい。公共サービス基本法の意義もまさにそこにある」との発言があった。これに対し岡部自治労委員長は「地方で財が回る仕組みをつくる、という発想は重要だ。たとえば、この間、自治体で独自の人件費カットが行われているが、各県の人事委員会勧告との差額を積算しただけでも、軽く兆は超える金額になるだろう。しかし、その財源はどこに消えたのか。社会保障に回ったわけでもなく、そこも削られている。まさに富が奪われて状況だ」と述べた。さらに原口ネクスト総務大臣は「中央政府の予算と決算は一致していない。分配すべき財源が確定できないシステムなので、社会保障や賃金など、本当に資源を分配すべきところに財源が回っていかない。システムを変えていく必要がある」と述べた。
 最後に、内藤ネクスト総務副大臣から、当面の地方交付税の確保などの地方財政対策とあわせて、政権交代にむけた決意が述べられ、要請を終了した。

(3) 社民党への要請の概要
 社民党からは福島みずほ党首、又市征治副党首、重野安正幹事長、日森文尋国会対策委員長、照屋寛徳企画委員長、菅野哲雄自治体委員長、辻元清美女性青年委員長が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長が、「地方交付税の大幅削減などにより、地方財政は危機に瀕している。さらに、半分以上の自治体で独自の給与カットが行われている現状もある。社民党としても地方財政の確立に向けて積極的に対応してもらいたい」と挨拶した。
 要請に対して、福島みずほ党首は「基本的認識は全く同じだ。要請の趣旨を受け止めて努力したい」との発言があった。また、重野安正幹事長は「全国町村会の大会で、麻生首相に厳しい野次が飛んだ。今までの大会に見られない緊張した雰囲気だ。それだけ、地方は厳しい状況にあるということだ。このような状況の中、労働側としても、何らかの在野にアピールする行動をとるべきではないか」と述べた。また、又市征治副党首は、「お互いの認識は完全に一致している。問題は、どのようにこの状況を打開するかだ。麻生政権が揺らいでいる今こそ攻め時だ」と述べ、今の政府・与党の姿勢を厳しく追及していくべきとの認識で一致した。
 その他幅広い意見交換の後、最後に、地公部会側から、地方財政の確立に向けて最大限の努力を行うことを再要請し、要請を終えた。

<首長会団体要請の経過>
 全国知事会、全国市長会への要請は、27日午前に実施された。要請には、藤川地公部会事務局長および地公部会各構成組織書記長が出席した。要請の概要は以下の通り。 なお、全国町村会への要請については、後日あらためて実施する予定である。

(1)全国知事会への要請の概要
 全国知事会に対する要請は9時30から行われ、重松調査第一部長らが対応した。全国知事会からの回答の概要は以下の通り。
○ 要請事項については、ほとんど同主旨の内容を政府・国会議員等に働きかけている。
○ 地方では財政縮減に一生懸命がんばっているのに、世間に認められないというのは残念である。職員の給与カットを行っているところでは、不本意なことであるという感を抱いている。
○ 地方分権というとお金や権利が欲しいという報道がなされるが、本来は、国と地方の金の取り合いではない。住民のニーズに応えるきめ細やかな政策と財政支出の実現である。権限が与えられれば責任も伴いしんどい話ではなるが、有効に活用できる財政の確立、地方分権を進めていく必要がある。
○ 住民の理解を得るべく、労使一体となって住民のために取り組んでいくことが重要だ。
 最後に地公部会から、地方財政の確立についての尽力を求めると同時に、「職員の給与カット提案に関して、組合との交渉において少し乱暴な対応を行う知事もいる。職員のモチベーションにも大きく影響する。プロセスをもう少し丁寧にやってもらえるよう、全国の知事に伝えて欲しい」と強く要望した。

(2)全国市長会への要請の概要
 全国市長会に対する要請は10時10分から行われ、杉田行政部長らが対応した。全国市長会からの回答の概要は以下の通り。
○ 毎年12月中下旬に集中して行っている地方財政計画の策定について、翌年の税収見通しが分からないと難しい面もあるが、中期的な視点に立って通年で国と協議させてほしいと求めている。
○ 補助金改革をはじめ一般財源化や税源移譲も求めており、まさにおっしゃる通りであるが、一般財源化については、さまざまな問題が絡んでくる。マクロでは3.4兆円の確保が前提でそれ以上を求めるが、ミクロの部分ではそれぞれの自治体での考え方がある。2006骨太方針があるなかそれをはずさないと増額はなかなか難しいが、一般財源の総額確保や地方交付税交付金の復元ということはこれまでも主張してきている。
○ 自治体財政健全化法の運用については、今後明確になると思うが、自治体に不利になるようなところは改善を求めていきたい。
○ 地方自治体ががんばっていることを、今後も広くアピールしていきたい。

<議長会3団体要請の経過>
 議長会3団体への要請は、12月2日午前に実施した。要請には、藤川地公部会事務局長はじめ地公部会幹事が出席した。要請の概要については以下の通り。

(1)全国都道府県議会議長会要請の概要
 全国都道府県議会議長会に対する要請は10時から行われ、松岡調査一部長らが対応した。冒頭、藤川事務局長から地方財政計画に策定にあたっての財源保障や地方交付税の総額確保など地方財政の確立、地方公務員の定数・給与の確保など要請の趣旨を説明し、公共サービスの充実のための財源確保の必要性を訴えた。
 それに対する全国都道府県議会議長会からの回答の概要は以下のとおり。
@ 要望書の4項目については基本的に同じ立場である。11月25日には、地方6団体全国大会を行い、地方財政の確立に向けた決議を行い、官邸・与党への要請を実施し、また、全国都道府県議会議長会としても要請行動を実施している。
A 議長会としては地方自治委員会で税財源対策を協議し、減収の補填や景気対策について政府に要請しているところ。しかし、現状の政治情勢において、今後の地方財政制度の改革の方向性が見えていない。
B 道路特定財源については一般財源化が前提であるが、生活道路や高速道路など整備が必要なものもあり、その使途等については議長会内でもさまざまな意見があるところと思われる。
C 職員の人件費について、直接の議論は行っていない。地方だけではなく国も行革が必要との要請にとどまっている。
 これに対し、最後に地公部会から、自治体はぎりぎりの行政運営を行っている現状にあり、今後、綿密な協議や課題の共有化が必要として具体的な行動を進めていくことを要請した。

(2)全国市議会議長会要請の概要
 全国市議会議長会に対する要請は10時35分から行われ、上市政務第一部副部長らが対応した。冒頭、藤川事務局長から、景気悪化による地方財政状況のさらなる逼迫が迫っていることから、国の対応を要請するなどの行動を求めるとともに、「これ以上の職員定数削減は、果たすべき住民サービスに支障が出かねない」と実情を訴えるなど、要請の趣旨を説明した。
それに対する全国市議会議長会からの回答の概要は以下のとおり。
@ 市議会議長会としては、地方財政の確立を求めるというスタンスは同様。要望書の1.2については11月25日の地方六団体全国大会で決議した。その後、市議会議長会は、26日に地方財政委員会で要望書を作成し、自民党政調へ申し入れ、27日に国会対策委員会では地方財政の確立を重点項目として、閣僚と国会議員に要請したところ。予算編成は不透明であるが、年末に向けて再度要請していきたい。
A 道路特定財源については、交付金なのか交付税なのかの議論が政府としてもあるようだが、配分基準が変わることによって各自治体の現行水準から削減されるようなことがあってはならないと考える。制度設計はこれからであろうが、議長会としては、総額確保と、それ以上の充実を求めている。
B 財政需要を地方財政計画に反映させることは大枠として求めているが、人件費を具体的に対象とした議論は行っていない。個別項目は各部会(ブロック)から全国の役員会に挙げられてくることが必要で、事務局としてはイニシアチブをとっていくことはできない。ただ、個人的な問題意識はある。
C 地域医療・社会福祉の問題は、例年になく議論項目として挙げられてきており、全国的な問題になっているとの認識は強くなっているのではないか。
 これらの回答に対し、地公部会から、就学援助水準や教材・図書の充足率の低下など教育の劣化や、解雇・失業率の増加などの雇用問題をはじめとして地方の閉塞感はさらに強まっているとして、それを打開するための地方税財政の確立の必要性を重ねて要請した。

(3)全国町村議会議長会要請の概要
 全国町村議会議長会への要請は、11時20分から行われ、美多企画調整部主幹が対応した。冒頭、藤川事務局長から「医療・介護・福祉など住民に不可欠なサービスを提供する上で、町村はとくに厳しい状況にある。住民サービス確保のためには交付税総額の確保が必要」と、要請の趣旨を説明した。
それに対する全国町村議会議長会からの回答の概要は以下のとおり。
@ 三位一体改革で大きく減収してきた地方交付税を復元することを強く求めており、11月25日の地方6団体全国大会では、6団体が同じスタンスに立って政府への要請を行ったところ。11月19日の全国議長会全国大会においても、地方交付税制度の堅持は不可欠との決議を行った。
A 財政健全化については、もともと町村のほとんどは財政基盤が脆弱であり、財政難から人員削減も実施してきたが、もはや当該町村だけでは対応できるものではない。
B 職員給与については、拡張村議会では問題になっているだろうが、町村議長会では全体の議論になっていない。むしろ、町村会のほうに挙がっているのではないか。
C 地域医療の存続や小中学校校舎の耐震対策費用については要望してきている。
D 市町村合併によって町村数が大きく減少するなかで、さらに「窓口自治体」といった行政機能の削減が議論されるなど、全国の町村はさらに厳しい状況におかれているが、町村存続への道を探りたい。
 これに対し地公部会からは、課題を共有化し、日常的な意見・情報交換の実施などを進めていきたいと要請した。


(別紙)地財確立等に関する地公部会の要望書(内容は各政党、地方6団体共通)

2008年11月27日


             様

公務員連絡会地方公務員部会
議長  佐藤 幸雄


地方財政確立等に関する要望書


 貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 地方財政は、国主導による景気対策に起因する地方債の増加や、三位一体改革以降の財政圧縮などによる5.1兆円の地方交付税削減により極めて厳しい状況となっています。さらに、金融危機に端を発した急速な景気後退は大幅な税収減につながり、地方法人税等の地方収入も大幅な減少となる見込みです。このままでは、来年度の予算編成ができない自治体も現出しかねないほどの地方財政危機となるのは明らかです。
 一方、年金・医療制度の劣化や景気後退により国民生活の不安感は増すばかりです。特に、この間追及されている規制緩和・構造改革路線は、医療・福祉・介護、教育、環境など安心・安全の国民生活と直結する地域の公共サービスの質の低下を招いています。
 地域の公共サービスを削減する政策からの転換をはかるとともに、危機的な地方財政の現状を踏まえて、地方自治体の一般財源の確保、国と地方の税財源の見直しと政府予算編成が求められます。
 貴職におかれましては、地方自治と地方分権を推進する立場から、下記事項の実現に向けてご尽力頂きますようお願いします。



1.地方財政計画の策定については自治体との協議のもとに、地方分権、少子・高齢化、地域医療確保、環境保全など地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障を行うこと。

2.抜本的な地方分権改革を早期に実現し、国庫補助負担金制度の改革、税源移譲など安定した地方税財源を確保するための制度改革を急ぎ、地方自治の確立を図ること。とくに道路特定財源の一般財源化については、地方財政の充実改善につながるような制度設計を行うこと。

3.自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化を支援すること。

4.医療・福祉・介護、教育、環境などの公共サービス水準を維持・向上させるため、地方公務員の総人件費(定数・給与)の十分な確保を行うこと。

以上