2009年度公務労協情報 15 2008年12月11日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

給与、勤務時間、退手法改正法案が衆議院で可決−12/11
−「非常勤職員の処遇の不均衡是正」などを求める附帯決議も採択−

 政府は、人事院勧告を勧告通り実施するための関連法案を12月2日の閣議で決定し、同日国会に提出していたが、本日(11日)午前中の衆議院総務委員会で審議が行われ、全会一致で採択され、あわせて資料1、2の附帯決議も行われた。採択された法案は、午後1時から開かれた衆議院本会議に緊急上程され、全会一致で可決、参議院に送付された。参議院では来週中に総務委員会で審議され、本会議で可決・成立する見込みである。
 衆議院総務委員会では、民主党の福田昭夫、森本哲生の両議員、社民党の重野安正議員らが、新たな人事評価や政府による人事院に対する見直し要請、非常勤職員、内閣人事局構想の問題などを追及した。

<福田議員>
 新たな人事評価制度について、試行が行われているが、地方機関では必ずしもスムーズに行われていないと聞いている。本格実施には納得性のある評価制度が円滑に導入されることが重要であり、全体評価だけではなく個別評価の開示と苦情処理制度の構築が必要だ。
<鳩山総務大臣>
 人事評価は大変難しい側面があると考えている。平成21年4月から始めるためにリハーサル試行を行っており、全体評語は見せることにしている。総務省としては、リハーサル試行の結果を踏まえて内閣官房に協力することにしている。
<福田議員>
 民間では惨憺たる状況もあったので慎重に進めてほしい。
 今回、勤務時間を短縮することになったが、超勤問題はこの30年間、なんら前進していない。国家公務員の数が足りないのではないか。この間、8万3千人の純減が行われた。ところで全省で常勤的非常勤職員はどのくらいいるのか。
<村木総務省人事・恩給局長>
 平成19年7月1日現在で一般職非現業で143,798人。うち、日々雇用の非常勤職員は約2万人。
<福田議員>
 昨年11月の付帯決議に基づいた調査を早急にやるべきだ。歳出の決算明細書を作っていないので非常勤職員の実態がよく分からない。今度の決算からやるべきだ。
<村木総務省人事・恩給局長>
 多種多様なので考え方の整理が難しく、正確な数を把握するのは困難である。
<福田議員>
 職務怠慢だ。人事院に聞くが、8月26日に非常勤職員の給与決定ガイドラインが出されたが、各府省の来年度予算編成に向けた対応は把握しているか。
<吉田人事院給与局長>
 各府省が予算要求できるように早めに発出したものであるが、各府省の具体的予算要求は把握していない。
<福田議員>
 政府は、人事院勧告取扱いの際、昨年の官民比較方法の見直し要請に引き続き、人事院に対し「来年の勧告時に地域別官民給与の実態を公表し、その状況も踏まえつつ、俸給表水準について必要な見直しを検討するよう要請」をしており、現在、俸給表水準を平均4.8%引き下げて地域手当として再配分する見直しを行っている最中に、この要請はさらに俸給表水準を引き下げろという圧力を、第三者機関である人事院へかけるものではないか。
<谷人事院総裁>
 5年間で給与構造改革に取り組んでいる最中であり、その一環として地域の民間賃金をより適切に反映させるため地域間給与配分の見直しを進めているところである。まずはこの改革を着実に進めていくことが肝要と考えている。内閣は行財政の責任者という立場と公務員の人事管理、使用者としての立場もあるので、人事院がこういったことを検討していく場合には当事者は当然、その他あらゆる方のご意見を十分お聞きした上で最終的には人事院が独立、中立、専門の機関として自己の責任においてしっかりとした判断をしていくという姿勢で臨んで来たし、今後ともそのように対処していく。
<福田議員>
 国家公務員制度改革推進本部顧問会議がめざす内閣人事局の役割について、報告では労働基本権制約の下でも、内閣人事局が国家公務員の勤務条件について法律に基づき政令で決めることができるとし、その際、人事院に意見の申出をさせる仕組みを作ることを検討するとしている。これは、第三者機関としての人事院の機能を弱める考えがあるようだがどうか。
<谷人事院総裁>
 基本権制約に対しては相応の代償措置が講じられる必要があるというのが最高裁の判例であり、労働協約に代えて、労使の間に立った第三者機関である人事院の勧告に基づいて法律で給与を定め、法律の委任に基づいて人事院規則で基準を定めることは代償機能の重要な一部であり、使用者機関の性格を持つ内閣人事局が政令で給与の基準を定めることや勤務条件の企画立案を行うことは憲法上の問題に関わる恐れがある。また、国家公務員法は、戦前の官吏制度の弊害の反省を踏まえて、公正平等に行政を執行し、忠実に時の内閣を支えることのできる職業公務員集団を確保・育成するために、内閣から独立した中央人事行政機関としての人事院を設けて公務員人事の中立公正性の確保に関する事務を行わせており、この中立公正性に関する企画立案機能も人事院の重要な機能である。現行国家公務員制度における基本的枠組みにおいては、それに相応しい慎重な検討が行われるべきである。とくに人事院が担う労働基本権制約の代償機能は現行の労働基本権制約が続く限り、維持される必要がある。
<福田議員>
 仮に内閣人事局が勤務条件を決めたいということであれば、労働基本権問題の解決とセットで行うべきである。

<森本議員>
 給与法等改正案の質疑が遅れているが、都道府県、市町村の現場では厳しい環境の中で事務を積み上げていることを認識してほしい。
<鳩山総務大臣>
 よく分かる。国が決めたことでいろんな仕事を処理しなければならず、大変なご苦労をおかけしている。給与法等の審議が遅れたのは、三度の給与関係閣僚会議を開くことになったためであり、反省すべき点もある。
<森本議員>
 地方の事務作業を考慮に入れてお願いしたい。医師の初任給調整手当の改善でどのような効果が期待できるのか。
<吉田人事院給与局長>
 勤務医を確保することは国民の健康な生活安心を守るため大変重要な課題と考えている。国立の病院では研修、研究面で有利なところがあり、これまでは若手医師を確保できていたが、民間や国立病院機構との間で格差が生じ看過できないことから、改善を図ることにした。医師を確保するためには、勤務体制を含めた総合的な改善が必要だが、その底支えになるものと考えている。
<森本議員>
 人事院勧告取扱い決定時の総務大臣談話では、地方公務員の給与について「地方における民間給与水準への準拠を徹底する」とあるが、地公法第24条第3項では5項目を挙げており、おかしいのではないか。地公法の条文を守るべきではないか。
<鳩山総務大臣>
 従来は国に準拠してきたが、地公法では「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮」となっており、それが正しい姿。民間賃金は考慮要素として定められており、住民の理解を得るためには地域の民間給与を反映することが重要と考えたものであり、地公法の条文に基づくことはおっしゃるとおりである。
<森本議員>
 民間準拠だけを強調すると地方での格差を深めていくことになり、教育を含めて人材確保が困難になる心配があるので、そうならないよう努めてほしい。
 非常勤職員の問題については、「同一労働同一賃金」という考え方で解決を図るべきであり、政府は良き使用者の立場で対応することが民間の問題の解決に繋がる。非常勤職員の給与決定の指針は同一労働同一賃金の考え方か。
<吉田人事院給与局長>
 職種や職務内容、地域などを考慮に入れて決めることにしており、各府省ではそういう点も配慮して決めることになるのではないか。
<森本議員>
 昨年の総務委員会附帯決議(いわゆる常勤的非常勤職員について、勤務形態の調査に基づき、職務内容、勤務条件等を速やかに検討)への対応状況はどうか。
<村木総務省人事・恩給局長>
 給与については、指針を踏まえて各府省が適切に対応するのが基本。本年の人事院報告では「給与に関する指針の策定に加え、休暇及び健康診断の在り方について検討を行うとともに、任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識を持って考えていきたい」とされており、総務省としては、人事院などの関係機関と連携して事務的な検討を始めたところであり、必要に応じて各府省の対応状況の把握や問題点の整理など鋭意検討を進めていきたい。

<重野議員>
 本府省業務調整手当を新たに設けることにしているが、本府省業務の困難性や人材確保は手当では解決できないのではないか。根本的問題は人員不足だ。手当を増やしても業務の軽減はない。相応しい人員を配置しなければ改善されないのではないか。また、地方の原資を持ってくることになり、地方の職員のやる気を失わせるのではないか。
<村木総務省人事・恩給局長>
 これだけで十分とは考えていないが、大きな支え、一助になると思っている。給与構造改革の一環であり、現給保障を行うなど、地方の職員の士気に配慮した方策を講じているところ。
<重野議員>
 非常勤問題に取り組むことは社会的にも盛り上がっている。綿密な調査を行って現状を把握し、いまの雇用情勢に対応した政策を出すべきである。
<鳩山総務大臣>
 もっともなこと。政府の中でも、具体的個別に精査していったらいいと思っている。

資料1−衆議院総務委員会の附帯決議(給与法等改正法案)
一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
1 医師不足が深刻な社会問題となっている中にあっては、医師等の初任給調整手当の増額は公務における医師確保のための対症療法に過ぎないことを銘記し、医師不足解消のための抜本的な対策を講ずること。
2 本府省業務調整手当の導入に当たっては、本手当導入の趣旨と本府省における勤務の実態を十分踏まえ過不足なく支給対象範囲を定めること。また、本府省職員が長時間にわたる超過勤務を余儀なくされていることが、職員の心身の健康と本府省ひいては公務全体における人材確保に重大な影響を及ぼしていることにかんがみ、本府省職員の超過勤務の実態把握を行い、早急にその適正化を図ること。
3 非常勤職員について、早急に勤務の実態把握を行い、公務における位置付けを明確にするとともに、常勤職員との処遇の不均衡の是正、任用形態・勤務形態の在り方の検討などに取り組むこと。
4 勤務時間の短縮に当たっては、これまでの行政サービス水準を維持し、かつ、行政コストの増加を招くことのないよう、公務能率の一層の向上に努めること。
5 公務員制度改革については、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の意見を十分聴取し、国民の理解を得るよう最大限努力すること。


資料2−衆議院総務委員会の附帯決議(退職手当法等改正法案)

国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
1 昨今の一部府省の幹部職員の不祥事等に対し国民の厳しい批判が寄せられていることにかんがみ、綱紀の粛正をさらに徹底するとともに、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するための措置を引き続き検討すること。
2 退職後、在職期間中に懲戒免職等処分を受けるべき行為があったと認められた場合の退職手当の支給制限及び返納・納付制度の運用に当たっては、自ら非違行為を行わず、反論の手立ても乏しい遺族、相続人の取扱いについては、慎重な配慮を行うこと。
3 退職手当の一部支給制限制度及び一部返納制度については、これにより、いたずらに制裁としての効果を希薄化させ、公務規律の弛緩を招くことがないよう、厳正かつ公正な運用に努めること。また、いわゆる諭旨免職については、今回の退職手当制度の見直しの趣旨にかんがみ、適切な対応を図ることとすること。
4 今回法律上の措置が講じられていない非特定独立行政法人等については、各法人に対し、国家公務員の場合に準じた検討を行い、必要な措置を講ずるよう要請すること。

以上