2009年度公務労協情報 16 2008年12月18日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

給与、勤務時間、退手法改正法案が明日参院可決へ−12/18
−参議院総務委員会で附帯決議とともに採択され、本会議へ送付−

 人事院勧告を勧告通り実施するための関連法案は11日に衆議院で可決され、参議院に送付されていたが、本日(18日)午前中の総務委員会で審議・採択され、あすの本会議で可決・成立する見込みとなった(19日午前中の本会議で可決され、成立した)。
 参議院総務委員会では、民主党の那谷屋正義、武内則男の両議員らが、人事行政の中立公正性と労働基本権制約の代償機能、超過勤務、非常勤職員、退職手当の返納、内閣人事局構想の問題などを追及した。

<那谷屋議員>
 国民主権のもとにおける人事行政の中立・公正性を確保することが重要と考えるが、人事院総裁の見解をうかがいたい。
<谷人事院総裁>
 現行の国家公務員制度は、戦前の官吏制度の弊害への反省に基づいて、公正平等に行政を執行し、忠実に内閣を支えることのできる職業公務員集団を確保・育成するために、内閣から独立した人事院を設けて任用等の基準設定、採用試験、研修の企画、実施等を担わせることにより、公務員人事行政の中立公正性を確保するための制度的保障としている。
<那谷屋議員>
 内閣人事局の担う機能や組織のあり方について様々な批判があり、内閣人事局のあり方について拙速に結論を出すべきでないと考えるが総務大臣の見解をうかがいたい。
<鳩山総務大臣>
 人事行政の中立・公正性とは、国家公務員が全体の奉仕者としてやる気を持って適正にあったポストに就いて国家に対して貢献できるような仕組みを作りあげることと考えている。例えば、人事院から内閣人事局にどういうものを移管するかなどは大激論が生じる。このように非常に難しい様々な問題があるので、与野党の垣根を越えて徹底的に議論すべき課題である。
<那谷屋議員>
 地方分権が推進される中で国から業務が移管され地方公務員の業務量が増加しており、国と地方の役割分担とそれに見合う業務、人員配置を考えるべきである。この意味において現在の地方公務員の純減は矛盾しており、行革路線を転換すべきではないか。
<鳩山総務大臣>
 行革・スリム化はまだ当分続けていかなければならないが、純減すればよいというようには考えていない。地方公務員は目標の5.7%を上回る6.3%ぐらいの純減が実現されそうである。さらに、何らかの形で給与を削っている地方公共団体は恐らく6割ぐらいあるのではないか。厳しい人員削減などによる人件費の抑制を行ってきていることは素直に認めなければならない。そうした中で人員削減によって地方公務員の仕事量が増えていることは間違いないので、削減が限界に近づいているかどうかの判断は真剣にしなければならないと思っている。
<那谷屋議員>
 志を持った方たちに公務員になっていただくたためにも今後の人材確保に向けての条件整備や待遇の向上などに取り組んでいただきたい。
<鳩山総務大臣>
 簡素で効率的な政府の実現とうい要請は満たしていかなければならない。国民から見てよりよい理想的な行政サービスを実現するために公務員に優秀な人材を登用することが重要である。そのためには、全体の奉仕者としての強い意識を持ち各行政部門に対しての適正を持った人に公務員になっていただかなければならない。また、公務員のモチベーションが高まるような人事行政が重要である。そのような観点で総合的な公務員制度改革に取り組んでおり、その実現に向けて努力している。
<那谷屋議員>
 人員削減を非常勤職員で補っているシステムが問題なので、必要な職員数を確保し、超過勤務の縮減も行うべきではないか。
<鳩山総務大臣>
 今のスリム化は一層進めなければならないが、一生懸命に大変な仕事量をこなし、超過勤務のあらしの中にある方々も多いので、そういう方々のメンタルヘルスの面も考えなければならない。非常勤職員は、事務の手伝いしていただく方などで2万人ぐらいいるが、役所で仕事ぶりを見ていると誰が常勤で非常勤か区別できないことがある。常勤代替として非常勤という考え方が平気になるのは好ましくなく、そのような非常勤職員は常勤であるべきである。短時間勤務ということで非常勤職員の方には補助的な仕事をしていただくのが理想だが現実的にはそうなっていない場合もある。各府省からよく話を聞いて、どういう職場や部署で行政需要が拡大して多忙を極めて超過勤務が増加しているのかを個別に精査し、適性な定員配置を行うよう努力する。
<那谷屋議員>
 昨年の附帯決議に基づく非常勤職員の勤務実態調査への対応はどうなっているか。
<吉田人事院給与局長>
 本年8月に発出した「非常勤職員に関するガイドライン」に則して各府省で必要な予算措置を行うなど必要な対応が取られていると理解している。
<村木総務省人事・恩給局長>
 人事院のガイドラインを踏まえた各府省の実態を聞きながら人事院も含めた制度官庁と連携して事務的検討を始めた。必要に応じて各府省の対応状況の把握や問題点を整理し人事院と協力しながら検討を進めていきたい。
<那谷屋議員>
 遅きに失した感のある勤務時間短縮の基本的な考え方と経緯についてうかがいたい。
<谷人事院総裁>
 既に昨年の勧告時の報告で本年を目途に見直すこと表明しており、本年春の調査でも民間勤務時間が公務を下回っていることを確認したので、今回勧告を行ったものである。また、勤務時間といえば所定労働時間のほかに超過勤務の問題もある。超勤は職員の健康や福祉、ワークライフバランスにかかわる重要な問題なので、縮減に鋭意取り組んでいきたい。
<那谷屋議員>
 勤務時間短縮に伴い超過勤務増加がおこらないように具体的な超過勤務縮減の工程表等を準備し対策に本腰を入れていただきたい。
<鳩山総務大臣>
 勤務時間が短縮されても超過勤務が増えることがあれば意味がない。また、超過勤務の縮減は公務能率の維持や職員の健康保持、人材確保の観点から喫緊の課題である。したがって公務能率の一層の向上を図り勤務時間を短縮し超過勤務を縮減するように努力したい。例えば、国家公務員制度改革基本法に「職員の超過勤務の状況を管理者の人事評価に反映させるための措置を講ずること」と書かれており、管理職の勤務時間管理能力という形で部下の超過勤務を減らすことにつながるのではないか。また、このこと以外にも総合的に対策を考えて行かなければならない。
<那谷屋議員>
 今後設置される退職手当・恩給審査会の公正・公平性の確保に向けての具体的な手だてをお尋ねしたい。
<村木総務省人事・恩給局長>
 審査会において処分対象者若しくは処分対象者が故人の場合は遺族に口頭で意見を述べる機会を与え処分者の権利保護を確保したい。また、審査会の委員には公正・公平な判断が求められるので、法律の専門家を中心に選任し公平・公正性を担保するように運用していきたい。

<武内議員>
 非常勤職員給与ガイドラインを下回ることのないよう、人事院として各府省を指導して欲しい。また、地方では、退職手当もなく低い賃金水準で勤めている実態がある。総務省として実態調査を行い、責任を持って改善していただきたい。
<吉田人事院給与局長>
 各府省の実施状況を把握し、点検して参りたい。
<鳩山総務大臣>
 非常勤職員制度は必要であるが、常勤と同じように使うのであれば常勤にすべきである。公務の非常勤も、新ワーキングプアという実態がなきにしもあらずであり、人事院の指針を受けてしっかりやらなければならないと思っている。
<武内議員>
 公務員制度改革について、労働者の権限をそのままに使用者の権限だけを拡大することは認められない。内閣人事局が勤務条件を決めるのであれば、労働基本権の問題とセットで解決をしなければならないと思うがどうか。
<谷人事院総裁>
 一般職の国家公務員についてその地位の特殊性や職務の公共性から労働協約締結権などが制約されているが、この制約に対しては相応の代償措置が講じられる必要があるというのが最高裁の判例であり、労使対等の協議による労働協約に代えて、労使の間に立った第三者機関である人事院の勧告に基づいて法律で給与を定め、法律の委任に基づいて人事院規則で基準を定めることは代償機能の重要な一部であり、使用者機関の性格を持つ内閣人事局が政令で給与の基準等を定めることや勤務条件の企画立案を行うことは憲法上の問題にも関わる恐れがある。現行の労働基本権制約の下にあっては、人事院が担う代償機能は維持される必要があると考える。
<谷本内閣府副大臣>
 顧問会議の報告では、内閣人事局は国家公務員全体の人事制度及びその運用の全般について企画立案等のPLAN機能、そして制度や運用の改善・改革であるACT機能を担うとされている。勤務条件については、人事院が意見申出を行う仕組みや必要な検討・勧告・意見申出を求めるような仕組みを例として挙げている。人事院が具体的な検討・勧告・意見の申出を行えば、労働基本権制約の代償機能は確保できるのではないかという顧問会議の提案であると認識している。報告の内容の具体化については、しっかりと関係機関と折衝を行っており、労働基本権制約の代償機能が損なわれることのないよう適切に対応して参りたい。
<武内議員>
 内閣人事局が人事行政の企画立案と実施機能を持ち、第三者機関が中立公正の観点から事後チェックをするという見直しを行うことが報告されているが、これは現行の中立公正性に関する考え方の大きな転換ではないか。猟官制の復活を危惧する。
<谷人事院総裁>
 現行の国家公務員制度は、戦前の官吏制度の弊害の反省に基づいて、公正平等に行政を執行し、忠実に時の内閣を支えることのできる職業公務員集団を確保・育成するために、内閣から独立した人事院を設けて任用、分限、懲戒の基準設定、採用試験、研修の企画立案、実施を担わせることにより、公務員人事行政の中立公正性を確保するための制度的保障としており、事後チェックのような仕組みで中立公正性確保の機能は代替できるものではない。
<谷本副大臣>
 顧問会後の提案は認識しているが、その具体化についてはしっかりと関係機関と折衝を行っているところであり、公正中立性が損なわれないようにしっかり適切に対応していきたい。
<武内議員>
 昨日の顧問会議で、給与制度の見直しが議題になったが、現行労働基本権制約の下での手続きを踏まえるか、あるいは協約締結権の検討の結果に応じて措置されるものだ。また、幹部職員の任用について、成績不良でなくても降任、降格、降給を可能する仕組みの提案があったが、幹部職員にも成績主義の下で身分保障が適用されるものであり、到底認められない。仮にこのような特例を設定するためには、憲法改正が必要ではないか。
<谷人事院総裁>
 国家公務員は憲法15条2項により全体の奉仕者とされており、行政の専門家集団として時々の内閣に忠実に仕えることを通じて全体の奉仕者としての使命を全うする。このような職業公務員については、その入り口で情実等による縁故的採用を遮断し、政治的な理由等によって降任されたり免職されたりすることのないよう保障すること、さらに昇進等についても恣意的な基準によらずに能力実績に基づいて行われることが必要である。スポイルズシステムを廃し、メリットシステムによることは近代公務員制度の基本原則であり、それを通じて行政の持続性、安定性が維持される。こういったことは憲法15条2項の趣旨の実現に深い関わりがあると考えている。
<武内議員>
 消防職員は休憩時間も自由に利用できず、24時間拘束されている。こうした実態についてどう考えているのか。また、勤務時間の短縮に伴い、無賃拘束が伸びることにならないよう、対策を講じるべきである。実態を調査し、どうしたら健康で働けるのか、しっかり対応できるよう、きちんと発信をしていただきたい。
<岡本消防庁長官>
 船舶など同様の問題を抱えているところで、どのような工夫が行われるか情報を集めて、国家公務員と均衡が図られるよう、市町村の具体的な相談に応じていく。
<鳩山総務大臣>
 できるだけ暖かく対応していくのが基本である。短縮が生きるよう考えていかないといけないと考えている。

資料1−参議院総務委員会の附帯決議(給与法等改正法案)
一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成20年12月18日
参議院総務委員会

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。

一、国の医療施設における勤務医確保が喫緊の課題であることを踏まえ、引き続き医師等の適切な給与水準を確保するよう努めるとともに、深刻な社会問題となっている医師不足解消のための抜本的な対策を講ずること。
二、本府省業務調整手当の導入に当たっては、必要な人材確保など手当の導入趣旨と本府省における勤務の実態を十分踏まえ、適切に支給対象範囲を定めること。
三、長時間にわたる超過勤務が、職員の心身の健康、人材確保等に重大な影響を及ぼしていることにかんがみ、その縮減を図ること。また、職員が超過勤務命令を受けずに相当時間にわたって在庁している勤務の実態について早急に調査し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
四、非常勤職員については、職務内容及び経験等を踏まえた適正な給与を支給するとともに、休暇その他の処遇の在り方に関して検討を行い、常勤職員との処遇の不均衡是正に取り組むこと。また、任用形態・勤務形態の在り方について検討すること。
五、公務員制度改革を推進するに当たっては、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の意見を十分聴取し、国民の理解が得られる結論を得ること。

 右決議する。



資料2−参議院総務委員会の附帯決議(退職手当法等改正法案)
国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成20年12月18日
参議院総務委員会

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。

一、昨今の一部幹部公務員の不祥事等に対し国民の厳しい批判が寄せられていることにかんがみ、綱紀の粛正をさらに徹底するとともに、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するための措置を引き続き検討すること。
二、退職手当・恩給審査会における公平・公正な審査が確保されるよう、委員の人選及び審査手続について配慮すること。また、退職手当の支給制限及び返納・納付に係る処分を行うに当たっては、特に遺族、相続人の取扱いを含め、十分慎重な対応を図ること。
三、退職手当制度の見直しの趣旨にかんがみ、退職手当の一部支給制限制度及び一部返納制度については、公務規律の弛緩を招くことがないよう、厳正かつ公正な運用に努めること。また、いわゆる諭旨免職についても、適切な対応を図ること。
四、今回法律上の措置が講じられていない非特定独立行政法人等については、各法人に対し、国家公務員の場合に準じた検討を行い、必要な措置を講ずるよう要請すること。

 右決議する。

以上