2009年度公務労協情報 44 2009年 4月13日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

本年勧告に関わる民間給与実態調査等について地公部会が全人連に要請−4/13
−夏季一時金臨時調査についても慎重な取扱いを要請−

 公務員連絡会地公部会は4月13日、本年勧告に関わる民間給与実態調査等についての全人連要請を実施した。
 午後2時から行われた要請には、佐藤地公部会議長(全水道委員長)はじめ地公部会幹事等が出席し、全人連側は、内田会長はじめ都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市の代表者が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長が要請書(別紙)を手交して「09春闘は、これまでの結果を見る限りでは、ベアゼロ。一時金は大幅な減額となっており極めて残念な結果である。各人事委員会におかれては、今後行われる民間の給与実態を精確に調査されるよう要請する。その上で、何点か申し上げる」として、以下の通り要請した。
(1) 地方自治体、地公賃金を巡っては課題が山積する中において、本年の最大の課題は、人事院が明らかにした夏季一時金の臨時調査についてである。春闘において製造業を中心とする民間大手を中心に前年比大幅マイナスとなっているが、これまでの勧告のルールを無視して勧告を行うとすれば、第三者機関としての人事院の存在を傷つけるとともに、人勧制度が歴史的、制度的にも限界であることを一層明らかにすることになる。
 地公に対する取扱いは明らかにされていないが、財政難によって特例条例による賃金削減の自治体は6割を超えており、到底許されるものではない。人事院の臨時調査においても、調査方法等、十分な精確性が担保されるものでなく、同様の調査を人事委員会で実施することはさらに精確性を欠くものと考える。
(2) 本年の人事院勧告では、国家公務員の住宅手当のうち持ち家廃止について、正念場を迎えることになる。地公の実態を十分ご理解の上、慎重な取扱いを要請する。
(3) 自治体には約60万人の臨時・非常勤職員が働いている。職種によってはほとんど全員が臨時・非常勤職員という職場も数多く存在している。にもかかわらず、多くの職員は年収200万円未満で働かされており、"官製ワーキングプア"という言葉も生み出されている。しかも労働関係法や公務員関係法も適用されない法の谷間におかれており、雇用安定と処遇改善のために必要な措置を講じて頂きたい。
(4) 各人事委員会においては、勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることから、引き続き、地方公務員の生活を守るという基本的な使命を十分認識され、民間調査をはじめ勧告期に向けて対応されるよう要請する。
 続いて、藤川地公部会事務局長は、「人事院調査では、事業所ごとの従業員数や一時金の支給の実態は調査対象とはなっておらず、この調査結果をもとに、特定の都道府県・市の夏季一時金の増減率を算定することは技術的に極めて困難である。従って、人事院の調査データの活用をすることは、調査の精確性に欠け、慎重な判断が必要である」と述べた。
 こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は次の通り回答した。

<全人連会長回答>

平成21年4月13日

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、役員県を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 なお、先週、事務局でお預かりした「夏季一時金の特別調査」に関する要請書につきましては、既に、全国の人事委員会にお伝えしております。
 さて、最近の経済情勢や春季労使交渉を巡る状況ですが、去る3月16日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」とし、「景気の先行きについても、当面、悪化が続くとみられ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念される。加えて、世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下振れ懸念、株式市場の変動の影響など、景気をさらに下押しするリスクが存在することに留意する必要がある」と、引き続き、厳しい見方を示しております。
 本年3月の春季労使交渉では、大手企業から、「賃上げの見送り」、「一時金の減額」とする回答が相次いでおり、製造業では、定期昇給の凍結に踏み切る企業も出ています。このような厳しい状況が、今後の中小企業の回答にも影響を与えるものと、本年の春季労使交渉の結果に注目しております。
 人事院は、去る4月6日、民間の一時金の支給状況を緊急に把握する必要があるとして、「民間企業における夏季一時金に関する特別調査」を実施すると発表し、現在、全国の企業から抽出した約2,700社に対して、4月24日までの間、郵送により調査を実施しているところです。
 過去におきましても、人事院は、民間企業における賃金や一時金が記録的な伸びを示した昭和49年に、今回と同様、特別調査を行った上で、当時の経済状況を考慮して、「期末手当の支給の特例に関する勧告」を行ったことがあります。
 このような中、各人事委員会におきましては、人事院の調査結果やその後の動向を注視しながら、それぞれの団体における対応について検討を進めているところです。
 また、本年も、各人事委員会は、5月初旬から、民間給与実態調査を人事院と共同で実施していくことを予定しており、民間の賃金水準の適切な把握に努めてまいります。
 要請をいただいた個々の内容は、各人事委員会において、その調査結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討をしていくことになるものと思います。
 公務員の給与を取り巻く環境は、これまで以上に厳しさを増しておりますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしてまいります。
 全人連といたしましても、人事院や各人事委員会との意見交換に、十分努めてまいりたいと考えております。


(別紙)

2009年4月13日


全国人事委員会連合会 
 会 長  内 田 公 三 様

公務員連絡会地方公務員部会
議 長  佐 藤 幸 雄


民間給与実態調査等に関わる要請書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 民間の2009春闘における賃金交渉は、サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機による実体経済への深刻な悪影響から、極めて厳しい結果となっています。
 一方、地方財政の逼迫から特例条例による賃金カットが多くの自治体で実施されており、職員は、相当の痛みをすでに受けています。これは、労働基本権制約の代償措置としての人事委員会勧告制度の空洞化が一層深刻化し、許すことのできない事態と考えております。
 ついては、民間給与実態調査実施などにあたって、下記のとおり要請しますので、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、要請事項の実現に向け最大限の努力を頂きますようお願いします。



1.民間給与実態を精確に把握し、地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保すること。また、一時金の公民比較は、同種・同等比較とすること。

2.公民比較方法のあり方の検討に当たっては、職員団体との十分な交渉・協議に基づくこと。

3.自宅に係る住居手当及び特地勤務手当の見直しに関しては、地方公務員の住宅制度や勤務の困難性を踏まえ、廃止または引下げを行わないこと。

4.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化や人事委員会相互の連携方策などについて、公務員連絡会地方公務員部会との意見交換を進めること。

5.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うこと。

6.「不払い残業」の一掃、超過勤務縮減の具体策、所定労働時間の短縮(変則・交替制勤務職場における労働時間短縮の重視など)に取り組むこと。

7.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、職員団体との交渉・協議、合意に基づき進めること。

以上