2009年度公務労協情報 47 2009年 4月30日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

夏季一時金削減で人事院総裁と交渉−4/30
−総裁の削減勧告方針表明に対し、公務員連絡会は厳しく抗議−

 公務員連絡会の委員長クラス交渉委員は、30日午後、谷人事院総裁交渉を行い、夏季一時金臨時調査に基づいた措置について、人事院の最終的な方針を質した。
 この交渉は、28日の給与局長との交渉で「5月の連休前にも所要の勧告を行う」との回答が行われたことから、総裁に直接人事院の考えを質すために実施したもので、総裁が明日削減勧告を行うことを表明したことから、公務員連絡会は遺憾の意を表明し、厳しく抗議した。交渉後に開催した企画調整・幹事合同会議で、勧告が行われた場合には抗議声明を発出し、人事院総裁に対する緊急抗議文書行動を実施することなどを決定した。
 交渉は午後2時から行われ、冒頭、公務員連絡会の福田議長が「夏季一時金調査やその結果の取扱いについて事務レベルで交渉を積み上げてきた。連休前にも勧告すると聞いているので、本日は総裁から、最終的な見解を示してもらいたい」と総裁の考えを質したのに対し、谷総裁は、以下の通り、回答した。

T 6月期特別給についての暫定(凍結)措置関係
 本年の民間企業における夏季一時金に関しては、春闘の回答、妥結状況において非常に厳しい結果が出ていることがうかがわれたことから、本院として、民間の夏季一時金の状況を緊急に把握するための特別調査を実施した。
 この調査によると、賃金改定期に決定した企業は全体の約2割であり、産業別にみると、製造業では20%を超えるマイナスであるのに対し、製造業以外では6%程度のマイナスとなっており、業種別による相違が大きい状況が見受けられる。
 夏季一時金の対前年増減率を調査対象となった企業の全従業員ベースで見ると、平均でマイナス13%台と厳しい結果になっている。
 公務の特別給は、民間企業における前年冬と当年夏の過去1年間の賞与の支給実績を精確に調査して月数換算したものと比較し均衡を図ってきており、この方法を変えるつもりはない。
 しかしながら、このような調査の結果をみると、民間企業における本年の夏季一時金は、平均で昨年より1割以上減少することがうかがえることから、本年6月期の特別給の支給月数について、給与法に規定する支給月数をそのまま支給することは適当でなく、このような状況に対応した何らかの措置を講ずることが適当であると考えられる。
 そのため、以下のように所要の措置について、明日5月1日、勧告を行うこととしている。
(1) 民調による官民比較の結果に基づくものでないことから現行の支給月数の変更は行わず、暫定的に、6月の特別給の支給月数の一部を凍結するものとする。
(2) 凍結分の月数は、マイナス13%台との調査結果を踏まえ、かつ、今回の措置が暫定的な性格のものであることから、一定の余裕を持たせることが適当であることも考慮しつつ、現在、最終的に調整中である。
(3) この凍結分の月数は、現行の6月期の期末手当及び勤勉手当の構成比に従い、それぞれ期末手当、勤勉手当に0.05月単位となるよう整理して配分することとする。指定職職員については、後で述べる特別給への勤務実績を反映させるための改正を行ったうえで、この特例措置を講ずることとする。
(4) この特例措置による凍結分の支給割合に相当する期末手当及び勤勉手当の取扱いについては、民間給与実態調査の結果に基づき、今年夏の給与勧告において必要な勧告を行うこととする。

U 指定職職員の特別給改正関係
 次に指定職俸給表適用職員の特別給に勤務実績を適切に反映させるための措置について、明日同時に勧告を行う予定である。
(1) 指定職俸給表適用職員の期末特別手当(合計3.35月)を、在職期間に応じて一律に支給される期末手当と、人事評価の結果等に応じて支給される勤勉手当に改めることとする。
(2) その支給割合は、公務部内における役職段階別の配分状況及び民間の特別給の配分傾向を考慮し、ほぼ同じとする。
(3) この措置は、勧告を実施するための法律の公布日から実施することとする。

 公務員連絡会からは、特に本年6月期の特別給の支給月数を暫定的に凍結する措置に関して、厳しいご意見をいただいているが、私としても、今回の措置が異例のものであり、職員にとっても予想しなかったものであることは十分認識している。
 しかしながら、公務員給与を社会一般の情勢に適応するよう随時必要な勧告を行うことは、本院の重要な使命であり、また、現下の厳しい経済情勢の下で、今次のように民間の一時金に大幅かつ急速な変動が生じていることがうかがえる場合に、このような状況の変化に適時に対応して適切な措置をとることは、公務員給与に対する国民の理解と納得を確保する上でも極めて重要であると考えられる。
 もとより、今回の措置は、これまで皆さんからのご意見もうかがいながら積み上げてきた給与勧告に基づく公務員の給与決定方式の枠組みを変更することを意図したものではなく、あくまでも、今次の民間の夏季一時金の急激な変化に緊急に対応するための暫定的なものであり、公務員連絡会におかれては、このような今回の措置の意義及びその必要性について特段の御理解をいただきたい。

 この回答に対し、福田議長は、次の通り述べ、遺憾の意を表明するとともに、厳しく抗議した。
(1) 本年夏の一時金の一部の支給を凍結する勧告を行うという、ただいまの総裁の見解は極めて遺憾である。
(2) たしかに、本年夏の民間一時金は景気悪化の影響で大きく落ち込んでいることは承知しており、これまでのルールであれば、それが夏の勧告を経て公務の一時金に反映されるものと、われわれは認識している。
(3) しかし、@今回の調査のそもそもの発端が、与党の議論を受けたものであることA調査が対前年増減率という精確性のないものであること、など今回の暫定勧告には大きな問題がある。加えて、これまでの勧告のルールを一方的に見直すことによって、人事院勧告制度に対する信頼性が大きく損なわれることから、総裁の見解は到底納得がいかないし、受け入れられない。
 さらに、まだ交渉継続中で決着していない中小・地場企業の一時金に多大な悪影響を与え、政府全体で取り組んでいる景気刺激策にも反することになる。
(4) 以上のことから、われわれは夏季一時金の臨時調査に基づく今回の暫定勧告には反対である。われわれの反対を押し切ってまで勧告するとすれば、労働基本権制約の代償措置としての役割を果たしていないと批判せざるを得ないし、人事院の一方的な姿勢に強く抗議せざるをえない。

 これに対して、谷総裁が「いまの議長発言の「与党の要請を経て」という事実はないが、それ以外については理解できるところだ。しかし、厳しい社会経済状況、われわれが置かれている立場からして、今回の措置はせざるを得ないものと考えており、何とぞよろしくご理解願いたい」と理解を求めたのに対し、福田議長は「現在の状況は認識しているが、人勧制度の根幹に関わる問題であり、譲れないものは譲れない」として、あくまで反対であることを表明し、交渉を打ち切った。

以上