2009年度公務労協情報 48 2009年 5月 1日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が夏季一時金0.2月分支給凍結を勧告−5/1
−公務員連絡会は抗議声明を発出するとともに、総務大臣に慎重な検討を要求−

 人事院は、本日午後、国会と内閣に対し、夏季一時金について0.2月分(一般の職員<期末手当0.15月、勤勉手当0.05月>)の支給を暫定的に凍結するほか、指定職の期末特別手当について期末手当と勤勉手当に分ける勧告を行った。この勧告に対し、公務員連絡会は「極めて遺憾」で「強く抗議する」との別紙1「夏季一時金の暫定勧告に対する抗議声明」を発出するとともに、人事院総裁に対する抗議文書行動を実施した。
 また、勧告後、書記長クラス交渉委員は総務省人事・恩給局長交渉を実施し、総務大臣宛の別紙2「夏季一時金の暫定勧告に関わる要求書」を提出し、「実施しない方向で慎重に検討すること」を要請した。交渉経過は次のとおりである。

<総務省人事・恩給局長との交渉経過>
 村木人事・恩給局長との交渉は14時から行われた。
 冒頭、公務員連絡会の吉澤事務局長が要求書を提出し、「今回の勧告は、背景、調査の内容、影響の3点から認めがたいと思っており、その取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、実施しない方向で慎重に検討していただきたい」と強く求めたのに対し、村木局長は次の通り答えた。
(1) 政府は、本日、人事院勧告を受け取ったところであるが、総務省としては、速やかに給与関係閣僚会議の開催をお願いし、その取扱いについて検討いただきたいと考えている。
(2) 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢を堅持してきたところである。
 総務省としては、従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られるような結論を得るべく国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討を進めてまいりたい。
(3) 勧告の中身は検討するが、政府としての決定は速やかに行う必要があると思っている。当然のことながら、皆様方の意見も考慮しつつ、検討を進めてまいりたい。

 これに対し公務員連絡会側は、以下の通り、今回の一時金調査、勧告の問題点を追及した。
(1) 今回の一時金調査、勧告のスタートラインには与党の動きがあり、総裁は与党からの要請は受けていないと答えているが政治の動きが背景にあったのではないか。
 議員立法の動きもあったが、議員立法でやるということになれば、公務の労使関係そのものが否定されることになってしまう。
(2) いま「速やかに」という回答があったが、総務大臣が人事院が調査を始めた段階で連休を返上して作業させるという国会答弁をしている。引下げ勧告を予定したものであり、問題があったのではないか。人事院は、調査の段階では、まずは実態を把握するといっており、勧告をするともしないとも言っていなかった。
(3) 調査の中身も限定された少ないデータであり、しかも妥結決定されたとしてもまだ支払われているわけではないし、科学的調査から全く外れている。そういう調査に基づいた勧告には信頼性がない。調査の精度もよく見て判断していただきたい。

 これらに対して村木人事・恩給局長は、次の通り答えた。
(1) 与党PTに対しては、現在の制度のもとで、人事院の勧告なしに政府は法案を出せないことを申し上げたところであり、議員の皆さんはそれでは議員立法はどうかということを考えたのではないか。総裁が与党の要請はなかったといわれたのであればそうだと思う。
(2) タイムリミットが厳しいので、大臣は、勧告が出ればという前提の下で、そういうことを言われたのではないか。
(3) 調査に問題があるとのことであるが、8月の勧告で調整するという、留保条件付きで、調査の限界を踏まえた勧告になっており、勧告の信頼度はあるのではないか。

 以上のように、公務員連絡会が指摘した問題点について村木局長が明確な見解を示さなかったことから、最後に吉澤事務局長が「時間がないというが、今回の勧告は過去に例のない重大な問題があり、大臣との間で議論をさせていただきたい」と強く要求し、交渉を締めくくった。

<別紙1>
夏季一時金の暫定勧告に対する抗議声明


(1) 人事院は、本日、本年夏の一時金のうち0.2月分の支給を凍結することを求める勧告を行った。この背景には一部与党の議論があり、そのことが異例の民間一時金臨時調査となり、一部支給凍結となったものに他ならず、政治からの引下げ圧力に屈したものとして、極めて遺憾と言わざるを得ない。
 なお、指定職の期末特別手当について、期末手当と勤勉手当に分けて成績に応じた支給に改めるための勧告が同時に行われたが、この勧告は第三者機関である人事院が政府の要請に応えて行ったものであり、指定職とはいえ代償機能を形骸化するものであり、問題である。
(2) 公務員の賃金については、第三者中立機関である人事院が、1万を超える事業所を訪問し、民間企業において実際に支払われた月例給与や一時金を実地で精確に調査し、公務員の給与との間に較差があればそれを埋める勧告を行うことによって、労働基本権制約の代償措置としての機能を果たしてきた。
 本年の民間一時金水準は未曾有の不況の影響を受けて大きく低下しているが、この水準低下は、民間準拠の原則の下で本年夏の人事院勧告を経て適切に公務員給与に反映されるものである。
(3) しかし本日の勧告は、わずか340社の対前年増減比の調査結果に基づいて凍結勧告を行ったものである。これは、人事院勧告に求められてきた科学性や精確性を人事院自ら否定したことになり、これまでの人事院勧告制度に対する信頼性を大きく損なうものである。また、政治からの圧力に人事院が屈したということは、労働基本権制約の代償機関としての機能と役割を放棄したこととなる。
 さらに、今回の勧告は、まだ決着していない中小・地場企業の一時金交渉に悪影響を与え、かつてない不況の中で苦闘している地域経済を一層冷えこませるものであり、政府が進める景気対策の考え方とも矛盾するものである。
(4) このような深刻かつ重大な問題を踏まえ、公務員連絡会は調査実施について、人事院に強く抗議した上で、調査結果の取扱いについて、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めることを要求してきた。しかし、人事院は、われわれとの十分な交渉を行わないまま、夏季一時金支給基準日までの法改正を念頭に、本日、拙速に一部支給凍結勧告を行ったものである。
 公務員連絡会は、人事院がこれまでのルールをねじ曲げて勧告を強行したことに、改めて強く抗議するものである。そして、勧告を受けた政府に対し、その取扱い方針の決定に当たっては、われわれと十分交渉・協議し、勧告を実施しない方向で慎重に検討することを強く求めるものである。
 また、今回の暫定勧告で、労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告制度の限界がますます明らかになったことを踏まえ、労働基本権の確立と団体交渉による決定制度の実現に向けて全力で取組みを進める決意である。
 2009年5月1日

公務員労働組合連絡会



<別紙2>

2009年5月1日

総務大臣
  鳩 山 邦 夫 殿

公務員労働組合連絡会
議 長  福 田 精 一


夏季一時金の暫定勧告に関わる要求書


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに敬意を表します。
 人事院は、本日、本年夏の一時金のうち0.2月分の支給を凍結する勧告を行いました。この勧告は、われわれの反対を無視して、拙速な調査を強行し、わずか340社程度の夏季一時金の対前年比増減を調査するという信頼性に欠ける調査結果に基づいて凍結勧告を行ったもので、これまでの勧告のルールを一方的に見直すことによって人事院勧告制度に対する信頼を根本から損ねることになります。
 さらに、この勧告は、まだ決着していない中小・地場企業の一時金交渉に悪影響を与え、かつてない不況の中で苦闘している地域経済を一層冷え込ませるものであり、政府が現在進めている景気対策の考え方とも矛盾するものです。
 貴職におかれては、以上の点を十分認識し、下記事項の実現に向けて最大限努力されるよう要請します。



一、夏季一時金の暫定勧告の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、実施しない方向で慎重に検討すること。

以上