2009年度公務労協情報 52 2009年 5月13日
公務公共サービス労働組合協議会

"公共サービス基本法"が参議院本会議で可決成立−5/13
−公務労協は「見解」で基本法の趣旨を具体的に生かし実践することを表明−

 「公共サービス基本法案」(別紙1参照。以下「基本法」という。)は、本日午前中の参議院本会議で全会一致で可決・成立し、公布後、6月以内に施行されることとなった。基本法は、4月28日、衆議院総務委員会において自民・民主・公明・社民・国民新の5党共同提案され、民主党原口一博議員が趣旨説明を行い、全会一致で採択、午後の本会議で可決され、参議院に送られていたが、12日の参議院総務委員会で審議が行われ、本日午前中の参議院本会議で可決されたもの。
 基本法は、2004年秋から公務労協が連合と連携し進めてきた「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の到達点であり、国会で民主党の尽力により実現したものである。
 公務労協は成立にあたり、別紙2の「見解」を公表し、日本社会のあるべき姿を問い「公共」の再構築をめざす「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」を継続していくこととし、公共サービス基本法の趣旨を具体的に活かし実践する主体的な対応を通じて、公務公共サービスに従事する労働組合の社会的責任と役割そして信頼回復を図る取組みを強化する決意を表明した。
 そして、今後、良質な公共サービスに支えられた安心・安全の社会を作るため、基本法をその礎(いしずえ)として活用する取組みを進めることにしている。
 また、連合も別紙3の事務局長談話を公表し、「「新しい公共」による安心・安全な社会の実現に向け、「基本法」に則った政策運営を求めつつ、国民のニーズに基づく公共サービスを国民の参加により構築するよう、地域・職場から運動を進めていく」決意を明らかにしている。


<別紙1>
公共サービス基本法


第1章 総則

(目的)
第1条 この法律は、公共サービスが国民生活の基盤となるものであることにかんがみ、公共サービスに関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「公共サービス」とは、次に掲げる行為であって、国民が日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な基本的な需要を満たすものをいう。
一 国(独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)を含む。第11条を除き、以下同じ。)又は地方公共団体(地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。)を含む。第11条を除き、以下同じ。)の事務又は事業であって、特定の者に対して行われる金銭その他の物の給付又は役務の提供
二 前号に掲げるもののほか、国又は地方公共団体が行う規制、監督、助成、広報、公共施設の整備その他の公共の利益の増進に資する行為
(基本理念)
第3条 公共サービスの実施並びに公共サービスに関する施策の策定及び実施(以下「公共サービスの実施等」という。)は、次に掲げる事項が公共サービスに関する国民の権利であることが尊重され、国民が健全な生活環境の中で日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにすることを基本として、行われなければならない。
一 安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること。
二 社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要に的確に対応するものであること。
三 公共サービスについて国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること。
四 公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること。
五 公共サービスの実施により苦情又は紛争が生じた場合には、適切かつ迅速に処理され、又は解決されること。
(国の責務)
第4条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国民生活の安定と向上のために国が本来果たすべき役割を踏まえ、公共サービスに関する施策を策定し、及び実施するとともに、国に係る公共サービスを実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、公共サービスの実施等に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、その地方公共団体の実情に応じた施策を策定し、及び実施するとともに、地方公共団体に係る公共サービスを実施する責務を有する。
(公共サービスの実施に従事する者の責務)
第6条 公共サービスの実施に従事する者は、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って誠実に職務を遂行する責務を有する。
(必要な措置)
第7条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第2章 基本的施策

(公共サービスを委託した場合の役割分担と責任の明確化)
第8条 国及び地方公共団体は、公共サービスの実施に関する業務を委託した場合には、当該公共サービスの実施に関し、当該委託を受けた者との間で、それぞれの役割の分担及び責任の所在を明確化するものとする。
(国民の意見の反映等)
第9条 国及び地方公共団体は、公共サービスに関する施策の策定の過程の透明性を確保し、及び公共サービスの実施等に国民の意見を反映するため、公共サービスに関する情報を適時かつ適切な方法で公表するとともに、公共サービスに関し広く国民の意見を求めるために必要な措置を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の国民の意見を踏まえ、公共サービスの実施等について不断の見直しを行うものとする。
(公共サービスの実施に関する配慮)
第10条 国及び地方公共団体は、公共サービスの実施が公共サービスによる利益を享受する国民の立場に立ったものとなるよう、配慮するものとする。
(公共サービスの実施に従事する者の労働環境の整備)
第11条 国及び地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるようにするため、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

附 則
 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


<別紙2>

公共サービス基本法案の成立に関する見解


1.公共サービス基本法案(以下、「法案」という。)は、4月28日の衆議院総務委員会において、民主党、社民党、国民新党、自民党、公明党から共同提案され全会派賛成のもと、同日の衆議院本会議における採択を経て、5月12日の参議院総務委員会において審議され、本日の本会議で可決・成立した。

2.公務労協は、2004年11月に開催した「国民生活の安定・安心を支える良質な公共サービス確立を求めるキャンペーン開始宣言集会」以降、「公共」の再構築をめざし、日本社会のあるべき姿を問う立場から「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」を展開してきた。
 具体的には、「良い社会をつくる公共サービスを考える研究会(主査:神野直彦東京大学大学院教授)」報告を踏まえ、「ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求める請願署名」活動を行い、約340万筆を集約、これを「公共サービス基本法」を制定する取組みに発展させ、民主党による院内対応と、院外における宣伝活動を連合との連携のもと取り組んできた。
 その意味で法案の成立は、これまでの公務労協そして連合の取組みの到達点として大きな意義を有するものである。また、原口一博衆議院議員・ネクスト総務大臣をはじめとする民主党のとくに総務部門所属議員による積極的かつ精力的な対応と関係者の尽力に敬意を表するものである。

3.法案は、「国民の日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な基本的な需要」を公共サービスとして再定義し、公共サービスに関する国民の権利を明定している。
 また、国及び地方公共団体の責務を明らかにした上で、公民を問わず公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保と労働環境の整備に関し必要な施策を講じることを求め、もって国民が安心して暮らすことのできる社会を実現することを目的としている。
 1980年代以降、世界を席巻した「小さな政府」を掲げた新自由主義が、「市場の失敗」による世界的な金融・経済危機そして極限を超える格差の拡大と貧困の増加を招き、社会的公正と国民の安心・安全を確保する公共サービスの基盤を中破している現状に対し、法案の成立により、効率と競争最優先から公正と連帯を重んじる社会の実現へと転換し、働きがいのある人間的な労働を中心とする「ともに生きる社会」の創造とそれを支える公共サービスの実現をはかるための基盤が形成されたものと評価できる。

4.公務労協は、日本社会のあるべき姿を問い「公共」の再構築をめざす「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」を継続していく。また、連合の「STOP!THE格差社会」キャンペーン及び政策・制度実現の取組みに結集するとともに、公共サービス基本法の趣旨を具体的に活かし実践する主体的な対応を通じて、公務公共サービスに従事する労働組合の社会的責任と役割そして信頼回復をはかる取組みを強化する。

2009年5月13日
公務公共サービス労働組合協議会


<別紙3>

2009年5月13日

公共サービス基本法の成立にあたっての談話

日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明


1.5月13日、参議院本会議において「公共サービス基本法案」(以下、「基本法」)が全会一致で可決、成立した。「基本法」は、民主、社民、国民新党、自民、公明による超党派による議員立法として総務委員長が提案したもので、党派を超えて公共サービスの重要性を共有認識した基本法と位置付けられる。
 連合は、公共サービスの提供は国民生活の基盤をなすものであり、効率と競争最優先から公正と連帯を重んじる社会の構築に向けた第一歩として、本法案の成立を評価するものである。

2.「基本法」の主な内容は、行政サービスについて、@公共サービスについての国民の自主的かつ合理的な選択の機会の確保等が国民の権利であり、国民が健全な生活環境の中で日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにすること、A安全かつ良質なサービスの確実、効率的かつ適正な実施、B社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要への的確な対応、を基本として行わなければならない、とするものである。そのために、国、地方公共団体等の責務を明記している。また、官民を問わず公共サービスに従事するものの適正な労働条件の確保と労働環境の整備に関して必要な施策を講じることも求めている。

3.日本社会は、様々な局面で格差の拡大・固定化、将来不安の増大に直面しており公共サービスの果たすべき役割は重要になってきている。連合は政策制度・要求と提言において、「新しい公共」を重点政策の一つに掲げ、この中では、国民の安心・安全のためのセーフティネットと公共サービスの質の確保の重要性を指摘してきた。さらに「STOP!THE格差社会」キャンペーンの中で「基本法」制定を求める運動を展開してきた。これらの運動の成果が「基本法」成立に結実したものと言える。民主党をはじめとする各党の尽力に敬意を表したい。

4.「基本法」の成立により、行政改革と効率化の名のもとで歳出削減が優先され、利用者の安全性の確保が失われてしまうことのないよう、公共サービスをどのように改革していくのかが今後の重要な課題となる。
 また、「基本法」では、公共サービスを委託した場合でも、国または地方公共団体の事務・事業に対する責任が受託先との間で調整・軽減されるものではなく、あくまで「国又は地方公共団体の事務又は事業」であると明記している。この規定にもとづき、業務委託によって、サービスの低下をきたさないようにするための、責任の明確化が必要である。

5.連合は、「新しい公共」による安心・安全な社会の実現に向け、「基本法」に則った政策運営を求めつつ、国民のニーズに基づく公共サービスを国民の参加により構築するよう、地域・職場から運動を進めていく。

以上