2009年度公務労協情報 59 2009年 6月18日
公務公共サービス労働組合協議会

国の出先機関見直しに関わって人材調整準備本部へ申入れ−6/18
−政府の責任で雇用と生活を確保することや十分な交渉・協議を要求−

 公務労協は、18日、地方分権改革推進本部に設置された人材調整準備本部(本部長佐藤勉地方分権改革担当大臣。以下「準備本部」と言う。)申入れを行い、政府の責任において国家公務員の雇用と生活を確保することなどを要求した。
 この申入れは、年内に決定予定の「出先機関の改革に関する地方分権推進計画」(以下「改革大綱」という。)に盛り込む、人員の移管等の仕組みを検討するために準備本部が設置され、具体的検討作業が始まることを踏まえて実施したもの。
 申入れ交渉には、公務労協側からは吉澤事務局長以下、関係構成組織の書記長らが参加し、準備本部側は小高内閣府地方分権改革推進室長、鳩山・吉田両参事官らが対応した。
 冒頭、吉澤事務局長は別紙申入書を手交し、「6月3日に準備本部の第1回会合が開かれたと聞いている。公務労協は分権の進め方が総人件費削減を優先したものになるのではないかとの危惧を持っているが、職員の雇用確保が最も重要であると考えており、準備本部の発足を踏まえて改めて申し入れる。申入れ事項に対する本日段階の見解と準備本部の今後の対応についての考えを伺いたい。なお、申入れ事項の3に関わって実務レベルで協議する場を設けていただきたい」と申入れ事項の実現などを求めたのに対し、分権改革室側は次の通り答えた。

(1) 第1回準備本部では、鳩山担当大臣から、人の問題については、総理の「丁寧に」という発言を踏まえることや出先機関の改革は国の定員削減のためではなく地方分権の観点から進めるものであるとの話があった。また、地方公共団体の代表からは、地方では国以上に定員を減らしてきていることや国から受け入れる人員の数については主体的に決定できる仕組みにしてほしいなどの発言があった。
(2) 申入書では、「行政改革・総人件費削減を優先した」と書かれているが、国の権限を地方に移すことに伴う措置であることについて、ご理解願いたい。
 申入れ事項の1については、準備本部が発足し、地方に委譲される事務の一つひとつについて実態把握と移す場合のシミュレーションを行い、人材を移す仕組みを検討していくことを考えている。
 2については、一人ひとりの職員の取扱いに関係するが、昨年の総理の「人材の移管は丁寧に進めていく必要がある」との発言を反映した仕組み作りをしないといけないと考えている。
 3については、丁寧に進めていくこととするが、気づかない点も出てくると思うので、引き続きこのような場を通じて皆さんのご意見を伺いながら進めていきたい。また、実務レベルで議論する場も設けることとしたい。

 これに対し、公務労協側はさらに以下の通り分権改革室側の見解を質した。
(1) 第1回準備本部では、地方自治体代表から「選抜、選別する」との意見が出されたとのことだが違和感がある。地方自治体の人員削減との関わりでの発言と思うが、分権改革室としてはどう認識しているのか。入口で国と地方の認識がずれていると困ったことになるので、丁寧に進めていただきたい。
(2) 5月29日の閣僚懇談会で総務大臣から新たな定員合理化計画の話があり、平成23年度以降については、「地方出先機関の改革大綱を踏まえて、策定する」こととされているが、どのような関係になっているのか。

 追及に対し分権改革室側は、次の通り答えた。
(1) これから国から地方へ移管する事務の説明などを行うことにしており、その中で、お互いの理解を深めて参りたい。
(2) 第1回準備本部で鳩山大臣は、出先機関改革と定員合理化計画は目的が違うので関係がないという話をされている。出先機関改革で事務権限が委譲され人が動けば結果として国の定員は減るが、それは定員削減とは違う話。「改革大綱を踏まえ」というのは、出先機関改革については国に残った機関についてスリム化するという課題もあることから、それも踏まえないといけないということではないか。

 さらに国公関係組合から、@人員の移管に当たっては言葉だけの「丁寧」でなく、実質的に機能する仕組みにしてほしいA新たな定員削減計画に関わって、北海道開発局では1,000人削減という報道があり、過員となった場合には、地方自治体への移管ないしは他の国の機関への府省間配転ということになる。委譲と配転と連携した対応をお願いしたいB国交省の職場では、第2次勧告通りに改革が行われれば現在の半分の組織になるという分権委の計算もあり、職場では不安が高まっている。丁寧な対応をお願いしたいC人員の移管について、国と地方で考えに食い違いがあるとのことだが、幹事会の下に置かれる実務検討会の場で事務事業の実態がどうなっているかについて十分検証して精査していただきたい、などを要望した。
 要望に対し、分権改革室側は、次の通り答えた。
(1) 原点は仕事を移すことに伴う人の移管であり、国から見ればその分定員は減る。そもそもは地方分権を行うための話であり、事務の委譲に伴いノウハウのある国の人材を移管する話であることを地方に説明していきたい。
(2) 職員から見れば権限の委譲であれ合理化であれ、過員となれば職員はどこかに行かないといけないが分権改革室、準備本部の名の下で行っているのは、仕事を移す話であり、丁寧な仕組み作りを行って参りたい。この問題は最終的には職員個々の問題であり、不安を持たれていることは承知しており、皆さんのご意見を伺いながら進めていきたい。

 最後に吉澤事務局長が、「最終的には職員個人の問題であり、丁寧な対応をしていただきたい。今後の作業を進めるに当たっては、職員の雇用と生活を確保することについて、政府の責任で対応していただきたい」と重ねて要望し、申入れ交渉を締めくくった。
 今後、公務労協としては、本日の確認に基づき、実務レベルでの議論の場を含めて出先機関改革に伴う人材の移管に関わる具体的な考え方や枠組みについて、分権改革室・準備本部との交渉・協議を進めていくことにしている。


(別紙)

2009年6月18日

地方分権改革担当大臣
  佐 藤  勉 殿

公務公共サービス労働組合協議会
議 長  中 村  讓


人材調整準備本部の発足に関わる申入れ


 常日頃から、地方分権改革に向けてご尽力されていることに敬意を表します。
 さて、地方分権改革推進本部は、6月3日、人材調整準備本部を発足させ、今後、出先機関改革に伴う人員移管の仕組み等の検討を行い、年内に策定予定の「改革大綱」にその考え方を盛り込むこととしています。
 出先機関の統廃合に関わって、国家公務員の雇用を確保することは政府の当然の責務であり、国家公務員の雇用と生活に万全を期すための検討を行うことは当然のことと考えます。
 しかし、第2次勧告や「工程表」に基づいて現在進められている出先機関見直しの検討作業は、行政改革・総人件費削減を優先したものであると批判せざるを得ません。法令による義務づけや税財政構造等のあり方に関わる第3次勧告が先送りされ、出先機関の統廃合の具体的な方針が未決定の中、人員移管の仕組みの検討のみが先行していくことについては、地方分権改革が“人員削減ありき”の検討方向に歪められるのではないかとの強い危惧の念を持っています。その意味でも、まずは良質な公共サービスを確保する観点から出先機関の事務・事業の十分な検証を行うことが重要であると考えます。
 以上のことから、出先機関改革に伴う人員移管の仕組み等の検討に当たって、下記事項を申し入れますので、その実現に向けて努力されるよう要請します。



1.国の出先機関の見直しに当たっては、国民に対して良質な公共サービスを確保する観点から事務・事業の十分な検証を行い、結論を得ること。

2.国の出先機関の見直しに当たっては、政府の責任において国家公務員の雇用と生活を確保することを明確にした上で、人員移管の仕組み等の整備に万全を期すこと。

3.人員移管の仕組み等の検討に当たっては、公務労協及び関係組合と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて作業を進めること。

以上