2009年度公務労協情報 71 2009年 8月11日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が月例給863円、0.22%減、一時金0.35月減を勧告−8/11
−公務員連絡会は"極めて不満"との「声明」を発し、政府に要求提出−

 人事院は、11日9時20分、内閣と国会に対して、@月例給を863円、0.22%引き下げ、一時金も0.35月削減し年間4.15月とすることや自宅に係る住居手当を廃止するほか、月60時間超の超過勤務手当の割増率を150/100に引き上げるなどの給与に関する勧告と高齢期の雇用問題を含む報告A育児休業法改正についての意見の申出B非常勤職員制度の適正化や超過勤務の縮減など公務員人事管理に関する報告を行った。政府はこれを受けて第1回給与関係閣僚会議を開いたが、総務・厚労大臣が人勧尊重の主張をしたのに対し、財務大臣がさらに地域較差を埋めるべきと主張して論議は平行線をたどり、引き続き検討していくことを確認するに止まった。
 公務員連絡会は、人事院勧告・報告等が内閣・国会に提出されたことを受けて、@月例給の引下げと一時金の大幅な引下げは民間実勢を反映したものとはいえ極めて不満であるA自宅に係る住居手当の廃止は国家公務員の実情を踏まえた措置と受け止めるB定年年齢を段階的に65歳に引き上げる意見の申出を来年中に行う方向を打ち出したことは評価するC非常勤職員の任用制度の検討については一層の努力を求める、などを内容とする声明(資料1)を発した。
 そして、委員長クラス交渉委員が、勧告当日に厚生労働大臣、官房長官、総務大臣に対して、@本年の給与勧告等の取扱いを検討するに当たって、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意することA国家公務員制度改革推進本部・労使関係制度検討委員会の検討を急ぎ、団体交渉・協約締結による賃金・労働条件決定制度の設計など、自律的労使関係の構築に向けた意見をとりまとめること、を求める要求提出(資料2)を行った。
 また、公務員連絡会は、11日の人事院勧告を踏まえ、12日に職場集会を中心とした第4次全国統一行動を実施し、意思統一を図り、秋の取組みに結びつけていくことにしている。
 各大臣との交渉経過は次のとおりである。

<厚生労働大臣への要求書提出の経過>
 舛添厚生労働大臣への要求提出は、11時45分から行い、佐藤・阿部・宇野の各副議長らが出席した。
 冒頭、佐藤副議長が「公務員をめぐる情勢はこの秋においても引き続き厳しいものがあると認識しているが、給与関係閣僚会議の一員である厚生労働大臣には、われわれの要求実現に向けて特段のご努力をお願いしたい」など要求の趣旨を説明し、厚生労働大臣の尽力を求めた。
 これに対して舛添大臣は、「けさ勧告を受けて給与関係閣僚会議を開いて検討した。わたしは、人勧尊重の姿勢で行くべきだと主張したが、財務大臣からはさらに削るべきとの意見もあり、あと数回開いて結論を得ることになるだろう。労働基本権問題については労使関係検討委員会の議論もあるだろうが、みなさんとも議論する場があるだろうと思う」と見解を述べた。

<官房長官への要求書提出の経過>
 河村官房長官への要求提出は、11時50分過ぎから総理大臣官邸で行い、岡部・片平両副議長、吉澤事務局長が臨んだ。
 冒頭、岡部副議長は、次の通り要求書の趣旨を説明した。
(1) 本日、人事院は、4年ぶりの月例給引下げ、勧告史上最大となる一時金引下げの給与勧告などを行った。これは民間実勢を反映したものとはいえ、われわれの生活に大きな影響を与えるものであり、不満な勧告だと言わざるを得ない。この公務員給与の引下げが、地方や地場企業に波及し、景気回復に悪影響を与えることを心配する。
 いま、公務員は、総人件費削減政策のもとで、恒常的な長時間労働など極めて厳しい労働環境のもとに置かれながらも、日々、国民に良質な公共サービスを提供すべく奮闘している。政府が本年の給与改定方針を検討するに当たっては、こうした実情や人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえ、われわれと十分交渉・協議し、合意することを強く要請する。
(2) また、国家公務員制度改革推進本部・労使関係制度検討委員会の検討が本格化しているが、是非、公務員の自律的労使関係を確立する方向で、かつ、われわれと十分意見交換しながら、早急に結論を得るよう進めていただくよう要請する。
(3) 公務員をめぐる情勢はこの秋においても引き続き厳しいものがあると認識しているが、給与関係閣僚会議の座長でもある官房長官には、われわれの要求実現に向けて特段のご努力をお願いしたい。

 これに対して官房長官が「きょう、人事院総裁から総理大臣宛に報告と勧告が行われた。勧告後開いた給与関係閣僚会議では各大臣のご意見を聞いたところであり、さらに検討していくこととした」と答えたことから、岡部副議長が「要求を踏まえた検討をお願いしたい」と要請し、交渉を締めくくった。

<総務大臣への要求書提出の経過>
 総務省への要求提出は、佐藤総務大臣に対して、11日12時から、佐藤・阿部・宇野の各副議長らが出席して行われた。
 冒頭佐藤副議長は、次の通り、要求書の趣旨を説明し、大臣の見解を求めた。
(1) 本日、人事院は、4年ぶりの月例給引下げ、勧告史上最大となる一時金引下げの給与勧告などを行った。これは民間実勢を反映したものとはいえ、われわれの生活に大きな影響を与えるものであり、不満な勧告だと言わざるを得ない。この公務員給与の引下げが、地方や地場企業に波及し、景気回復に悪影響を与えることを心配する。
 また、人事院は、高齢者雇用に関わって、65歳までの段階的な定年延長の意見の申出を来年中に行う方向を打ち出したが、われわれとしては、雇用と年金の接続をはかる観点から、この報告をできるだけ早期に実現すべきだと考えている。政府においても国家公務員制度改革推進本部を中心に高齢者雇用のあり方が検討されているが、人事院の検討方向を踏まえ、全体でその実現に向けて積極的に取り組んでもらいたい。
 非常勤職員の任用制度のあり方について本年度中に結論を得るよう検討する、との報告も行われているが、極めて重要な課題なので、政府としても、是非、非常勤職員の雇用確保と一層の処遇確保に向けて努力してもらいたい。
 いま、公務員は、総人件費削減政策のもとで、恒常的な長時間労働など極めて厳しい労働環境のもとに置かれながらも、日々、国民に良質な公共サービスを提供すべく奮闘している。政府が本年の給与改定方針を検討するに当たっては、こうした実情や人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえ、われわれと十分交渉・協議し、合意することを強く要請する。
(2) 大臣には、本日提出したわれわれの要求が実現するよう、最大限の努力をお願いするとともに、政府方針決定前には、要求に対する回答をいただくようお願いする。

 これに対して佐藤大臣は「このたびの、いわゆるヤミ専従調査の結果、一部の省ではあるが、多数の常習的な違反行為等が明らかになったことは、誠に遺憾の極みであり、厳しく受け止めている。公務に対する国民の信頼を回復するためには、厳正な服務規律の確保と適正な労使関係の構築が必要と考えており、職員団体の皆様におかれても、十分ご認識いただきたい」として、総務省の無許可専従問題の調査結果に触れるとともに、要求書に対して次の通り見解を述べた。
(1) 政府は、本日人事院勧告を受け取り、給与関係閣僚会議を開催して、その取扱いの検討に着手した。
(2) 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢を堅持してきたところである。
 国の財政事情をはじめ国家公務員給与等を取り巻く環境には極めて厳しいものがあるが、総務省としては、従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られるような結論を得るべく国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討を進めてまいりたい。
(3) 当然のことながら、皆様方の意見も十分にお聞きしながら、検討を進めてまいりたい。

 これらの見解を受けて、佐藤副議長は、無許可専従問題について「われわれとしても、一部の構成組織で法令違反の行為等が行われていたことについては、極めて遺憾であり、重く受け止めている。公務員連絡会としても、当該組合とともに、信頼回復と良好な労使関係の確立に全力を挙げていく決意である。そのためにも、自律的労使関係制度の確立に向けた取組みを進めていきたい」と見解を述べ、交渉を終えた。


資料1−公務員連絡会の声明
声  明


(1) 人事院は、本日、月例給を863円、0.22%引き下げるとともに、一時金も0.35月引き下げることを中心とする本年の給与勧告・報告と育児休業法の改正に関する意見の申出を行った。
 2009人事院勧告期の取組みに当たってわれわれは、@生活を守る月例給与水準の維持A生活防衛に必要な一時金支給月数の確保B非常勤職員等の課題解決、などを重点課題に設定し、3次にわたる中央行動や全国統一行動を実施して、公共サービスキャンペーン、公務員制度改革に対する取組みとも連携した闘いを進めてきた。
(2) 本日の給与改定勧告が、月例給の引下げに加えて、一時金をも大幅に引き下げるものとなったことについては、経済危機の下で民間実勢を反映したものとはいえ、公務員の生活に大きな影響を与えるものであり、極めて不満な勧告だと言わざるを得ない。この公務員給与の引下げが、地方や地場企業に波及し、景気回復に悪影響を与えることを心配するものである。
 自宅に係る住居手当の廃止については、報告の中でも説明されているように、あくまで国家公務員における実情を踏まえた措置と受け止め、地方公務員についてはその住宅事情を踏まえた取組みを進めるものである。
 高齢者雇用に関わって、雇用と年金の接続をはかるため、定年年齢を段階的に65歳に引き上げる意見の申出を来年中に行う方向を打ち出したことについては、評価したい。政府の公務員制度改革の「工程表」では、2012年に「再任用の原則化」を実施し、定年延長については2011年中に一定の結論を得るとされているだけに、人事院に対しては定年延長という基本方針を堅持し、確実に意見の申出を行うことを強く要請する。また、意見の申出に向けて、給与のあり方を含む個別の課題について、公務員連絡会との十分な交渉・協議を求める。
 非常勤職員の任用制度のあり方について、報告で本年度中に結論を得るよう検討することを表明しているが、公務員連絡会の意見も踏まえ、非常勤職員の雇用の安定を実現できる結論となるよう、一層の努力を求めておきたい。
 超過勤務手当割増率の改定、育児休業・介護休暇等の改善は、それぞれ民間の法改正に対応したものであり、当然のことである。
(3) 以上のように、本年の給与勧告は月例給の引下げに加え、一時金が過去最大の引下げになるなど公務員労働者にとって極めて厳しい勧告となった。
 今後政権交代をはじめ、政治情勢が大きく変化するとしても、公務・公共部門を巡る厳しい情勢が継続することに変わりはない。公務員連絡会としては、政府に対し、勧告の取扱いに当たって十分交渉・協議し、合意することを求めていくこととしたい。
 また、これから本格化する独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても統一闘争態勢を堅持した取組みを進めることとする。
(4) 新政権の成立後の秋季闘争では、人事院勧告の取扱いはもとより、地方分権改革と国の出先機関改革や公務員制度改革、そして独立行政法人改革や来年度予算の編成など、公務員の雇用や労働条件を左右する重要な課題が山積している。
 われわれは、総選挙後の政治情勢の変化も見据えながら、新しい時代における労使関係のあり方を追求するとともに、こうした重要な課題に対して雇用と労働条件を確保する立場で積極的な取組みを推進する決意である。そのためにも、労使交渉と協約で勤務条件を決定することを中心とした自律的労使関係の構築を急がねばならない。
 今後、政府の労使関係制度検討委員会の検討が本格化するが、連合・公務労協に結集し、労働基本権の確立による労使関係制度の抜本的改革など公務員制度改革の実現をめざして全力で闘いを進めていくものである。また、公共サービス基本法を踏まえ、国民生活の安心と安全を確保する公共サービスの再構築に向けた取組みを進めていくこととする。

2009年8月11日

公務員労働組合連絡会


資料2−政府への要求書

2009年8月11日


総務大臣
 佐 藤  勉 殿

公務員労働組合連絡会
議長代行  岡 部 謙 治


本年の人事院報告・勧告等に関わる要求書


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、人事院は本日、月例給の863円、0.22%引下げ、一時金の0.35月削減などを中心とする給与勧告を行いました。
 これらの給与勧告は、民間の実勢を反映したものとはいえ、われわれの生活に大きな影響を与えるものであり、極めて不満な内容といわざるをえません。
 いま、公務員は、総人件費削減政策のもとで、恒常的な長時間労働など極めて厳しい労働環境のもとに置かれながらも、日々、国民に良質な公共サービスを提供すべく奮闘しています。
 政府が本年の給与改定方針を検討するに当たっては、こうした実情や人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえ、われわれと十分交渉・協議し、合意することを強く申し入れます。



1.政府は、本年の給与勧告等の取扱いを検討するに当たって、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。

2.国家公務員制度改革推進本部・労使関係制度検討委員会の検討を急ぎ、団体交渉・協約締結による賃金・労働条件決定制度の設計など、自律的労使関係の構築に向けた意見をとりまとめること。


資料3−連合事務局長談話

2009年8月11日

平成21年人事院勧告について


日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明


1.人事院は11日、政府と国会に対し、本年度の国家公務員の給与について勧告を行い、マイナス0.22%の官民較差により、月例給は0.22%の引き下げ、一時金も同様に0.35ヶ月減(臨時勧告で凍結済みの夏季分0.2ヶ月分+冬季分0.15ヶ月分減額)とした。今回の勧告は、民間実勢を反映したものであるとはいえ、組合員の生活に与える影響は大きく、極めて不満なものである。加えて、この勧告は、地方や地場企業の労働条件にも波及していくことが予想され、厳しい地域経済や景気をさらに悪化させる可能性が高いものと懸念する。勧告内容については、労働組合の意見を十分に踏まえ、雇用の安定に結びつく結論を得るよう労使で協議を尽くすべきである。

2.今回の勧告では、高齢者雇用に関わり、公務職員の能力の十分な活用、雇用と年金の接続をはかる観点から、65歳までの段階的な定年延長の方向性を打ち出したことは評価できる。今後は、給与のあり方を含む諸課題について十分に労使で協議を行うとともに、65歳までの段階的定年延長が確実に実施されるよう、2011年中には法整備ができるようにしていく必要がある。政府は、今回の勧告の取扱いについて、関係労働組合と十分な協議を行うべきである。

3.公務における非常勤職員の処遇に関しては、忌引き休暇の対象拡大や、日々雇用の非常勤職員の勤務形態を見直して一定期間雇用されるルールとするなど任用のあり方について、本年度中に結論を得るため検討を行うこととなった。公務においても正規労働者と非正規労働者の均等・均衡処遇は喫緊の課題であり、引き続きその実現に向けて積極的に取り組んでいく。

4.連合は、公務における労使関係の根本的な問題解決のためには、現行の職員団体制度を廃止し、労働基本権を回復させることによって、民間労働者と同様に、団体交渉による労働条件決定をできるようにすべきと主張してきた。連合は、関係構成組織とともに、ILO勧告に沿う労働基本権の確立による公務員制度改革と良質な公共サービスの確立のため、引き続き全力で取り組んでいく。

以上