2009年度公務労協情報 8 2008年11月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院へ2009年度基本要求を提出−11/20

 公務員連絡会は、20日、人事院に対して2008年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出(資料)し、12月中旬までに誠意ある回答を示すよう求めた。総務省には、本年の勧告を実施するための関係法案が成立後、申し入れる予定。
 申入れ交渉は、13時30分から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは井上職員団体審議官、松尾参事官が対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「11月14日に本年の人事院勧告の取扱いが決定されたので、2009年度の基本要求を提出する」と述べ、2009年度要求の重点事項について、次の通り説明し、十分検討し、然るべき時期に回答するよう求め、現時点での人事院の見解を質した。

(1) 給与については、来年の勧告に向けて、「公務員の実質生活を維持する給与改善」を最低限行うという、問題意識をもって作業を進めていただきたい。
(2) 人勧取扱いの閣議決定では、政府から人事院に対して「来年の勧告時に地域別官民給与の実態を公表し、その状況も踏まえつつ、俸給表水準について必要な見直しを検討するよう要請する」と、昨年よりも具体的な要請が行われている。労働基本権制約の代償機関への介入であり、人事院としては主体的な立場で拒否してほしい。
(3) 給与構造改革の検証については、その終了後に行うべきであり、検証の方法についても、十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて進めることを求める。
(4) 高齢雇用施策に伴う給与体系等の見直しは、退職管理のあり方とあわせ、重要な課題であるので、十分な交渉・協議と慎重な対応を求める。
(5) 住居手当については十分な交渉・協議と合意、特地勤務手当については十分な交渉・協議を行うこととし時期を特定した見直しはやめてほしい。定例見直しの範疇での議論の用意はある。
(6) 労働時間については、勧告に基づく法改正が行われれば、次は超過勤務の縮減が大きな焦点となる。他律的勤務に関わる超勤上限目安時間の提案があったが納得がいかないので、実効性のある縮減策を検討してほしい。また、労基法の改正に合わせた超勤割増率の引上げと全額支給の実現を求める。
(7) 新たな人事評価制度の実施が迫っているので、禍根を残さず、納得性のある制度となるよう、最後まで努力願いたい。この点については、別途の枠組みで協議を継続する。
(8) 高齢雇用施策に関する研究会報告が出された場合には、できるだけ早い段階で意見の申出をしていただきたい。
(9) 非常勤職員の給与ガイドラインは第一歩であり、その後の課題について総務省とも交渉を行っているが進んでいない。非常勤職員の問題は政府全体で取り組むべき課題であり、雇用、任用上の位置づけの抜本改革に向けて、人事院もより一層の努力をしていただきたい。

 これに対し井上審議官は「よく検討し、然るべき時期に回答したい」と述べた上で、次の通り、現時点での考えを明らかにした。
(1) 給与構造改革については段階的に進めており、来年は最後の措置を行うことになるが、あらかじめ設定したスケジュールに基づき、職員団体の意見を聞きながら進めていきたい。
(2) 人事評価については、人事評価制度骨子案及び評価結果の活用措置案に基づき、リハーサル試行を行っているところであり、来年度の実施に向けて、最終的な調整を行っているところである。
(3) 高齢雇用施策については、来年7月に研究会報告が出れば、それを踏まえて対応していきたい。
(4) 超勤縮減については、他律的業務の超勤上限目安時間を提案したところであり、関係各方面の理解を得ながら取組みを進めて参りたい。
(5) 地域間の給与配分のあり方は、給与構造改革の重要な目的の一つであり、まずはいまの地域間配分の見直しを完成させることが基本だと考えている。適正な公務員給与を確保するための検討・研究は、給与構造改革を行ったからと言ってそれで終わりということではないので、引き続き、地域給与のあり方、能力・実績主義への対応の観点から、より適切な給与制度を考えて行くことに変わりはない。そういう観点で政府の要請も受け止め、検討に当たっては、外から言われたからということではなく、人事院として、独立して必要な判断を行っていくことになる。

 これら審議官の見解に対し公務員連絡会側は、さらに@政府は地域別の官民較差の公表を求めているが、常に研究する課題として受け止めて公表するかどうかを判断するということかAブロック別の比較を行うためには民調の設計も関わると思うがいつ判断するのかB「実質生活の維持」は連合全体の方針でもあるので十分そういう認識に立って検討してほしいC超勤縮減ではIT活用が課題とされてきたが、すでに動いている人事給与システムでは「勤務時間管理は別途検討」となっているが、活用できるようにしていただきたいD住居手当については、自宅について十分交渉・協議し、合意に基づいて進めるとともに、手当全体の議論も十分にさせていただきたい、と重ねて要望したのに対し、審議官は「ご指摘の点については承った」と答えるに止まった。
 最後に、公務員連絡会から「連合も最低でも物価上昇分を確保しプラスアルファをめざすことにしている。状況が厳しい中での検討になるが、全体の状況を受け止めて、代償機能を果たしていただきたい。誠意ある検討を行い、来年春の取組みに結びつく回答をお願いしたい」と要望し、提出交渉を終えた。


資料 人事院への基本要求書

2008年11月20日


人事院総裁
 谷  公 士 殿

公務員労働組合連絡会
議長 福 田 精 一


2009年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 世界金融危機は日本の実体経済にも深刻な影響を与えており、物価高も含め国民生活は危機的な状況にあります。そうした中にあって、低下しつつある労働分配率の回復によって内需主導の景気回復が求められています。また、公務員バッシングが吹き荒れる厳しい環境にあって、公務員労働者は、行政や公務員に対する国民の信頼を回復すべく、日夜、自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、国・地方を通じた財政赤字を背景に、事務・事業の廃止・縮小と、組織・定員の大幅な削減が推進され、予算不足、人員不足、将来不安の中で公務員の労働条件は悪化の一途をたどっています。
 本年の勧告は、11月14日、勧告通り実施する旨の閣議決定がなされました。しかし、政府は昨年に引き続き、人事院に対し「来年の勧告時に地域別官民給与の実態を公表し、俸給表水準について必要な見直しを検討するよう要請」し、地域給与の一層の引下げを図ろうとしています。これは、労働基本権制約の下における代償機関に対する「政治的介入」であり、到底認めることができません。人事院に対しても、毅然として拒否することを強く求めるものです。
 さて、2009年度の基本要求事項では、社会的に公正な官民比較方法の確立によって、公務員の実質生活の維持・確保を含めた給与改善を行うことを最大の課題としつつ、新たな評価制度に基づく人事管理への対応や新たな高齢雇用施策の具体化などを重点課題としています。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。




一、給与に関わる事項
1.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保
 @ ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。
 当面、2009年度の給与勧告においては、民間実勢を踏まえ、公務員の実質生活の維持・確保を含めた給与改善を行うこと。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握した月数を確保すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 @ 政府からの地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請は俸給表水準のさらなる引下げを狙ったものであり、労働基本権制約の代償機関としての立場を堅持し、毅然として拒否すること。
 A ブロック別の官民給与比較等を含めた給与構造改革の検証については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
 B 官民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(4) 「給与構造の改革」について
 新給与制度への移行期間中の地域手当、ベアの取扱いなど、給与勧告・報告のあり方については、その都度公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること。また、移行期間中に新たな施策を行わないこと。
(5) 高齢雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しについて
 定年の段階的延長等高齢雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、慎重な検討作業を行うこと。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。また、自宅に係る手当の「廃止」については、国・地方における支給実態等を十分踏まえて、慎重に検討することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 特地勤務手当については、前回見直しの経緯を踏まえ、離島、山間へき地等の生活環境・生活実態と人材確保を重視した慎重な検討を行う観点から、まずは適用基準についての十分な交渉・協議を行うこととし、時期を特定した拙速な見直しは行わないこと。
(3) 通勤手当については、民間の支給実態を踏まえ、交通用具使用者に対する手当の引上げを検討すること。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。また、労働基準法改正の動向を踏まえ、超過勤務手当の割増率を引き上げるとともに、全額支給すること。

2.本格的な短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。

3.休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的休業制度などについて、以下の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇、リカレント休暇を新設すること。
(3) 総合的休業制度の検討・研究に着手すること。
(4) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(5) 官庁執務時間と勤務時間の関係について、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。

三、新たな人事評価制度の実施に関わる事項
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人への全面開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 新たな人事評価制度の設計、整備及び実施に当たっては、人事院として、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、必要な役割を果たすこと。
(3) 新たな人事評価による評価結果の任用、給与等への活用のための人事院規則等の改正に当たっては、「「人事評価の結果の活用に関する措置素案」に対する申入れ」(2008年5月12日付)を踏まえ、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて行うこと。

四、新たな高齢雇用施策の検討に関わる事項
(1) 新たな高齢雇用施策については、雇用と年金の接続形態の基本を65歳までの段階的定年延長とする「意見の申出」をできるだけ早期に行うこと。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、具体的な施策の内容、実施時期等について、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」報告の取りまとめに当たっては、高齢期の公務員労働者の生活実態や要望等を十分反映できるよう、公務員連絡会から十分意見を聞くこと。

五、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応して、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充をはかること。

六、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
 非常勤職員制度等のあり方を抜本的に改善することとし、次の事項を実現すること。
(1) 「非常勤職員給与ガイドライン」の実施状況を点検するとともに、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低 給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(2) 非常勤職員等の雇止めなどの雇用問題や任用のあり方について抜本的に改善するため、公務員連絡会が参加する検討の場を設け、政府全体として解決に向けた取組みに着手すること。
(3) 非常勤職員の休暇制度について、常勤職員に準じた適正な休暇制度を整備すること。

七、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な推進を実現すること。
(3) セクシュアル・ハラスメントの実態を把握し、より実効性のある防止策及び対応策の改善に努めること。
(4) 女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
 @ 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
 A 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(5) 「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、育児のための短時間勤務等の取得促進策を取りまとめること。
(6) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

八、その他
(1) 障害者雇用促進法に沿って、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上