2010年度公務労協情報 11 2009年12月24日
公務公共サービス労働組合協議会

独法、政府関連法人見直しで泉内閣府政務官要請−12/24
−「削減ありき」ではなく、国民ニーズと政府責任の観点から見直すこと等を求める−

 公務労協は、24日13時から、国会内で行政刷新担当の泉内閣府政務官と会い、別紙の「独立行政法人及び政府関連公益法人の見直しに関する要請について」の申入れを行った。この申入れは、独立行政法人及び公益法人見直しの閣議決定が迫ってきたことから行ったもので、公務労協側は吉澤事務局長のほか、構成組織の書記長等が参加した。
 冒頭、吉澤事務局長が「公務労協と政府との関係は労使関係でもあるので緊張感と信頼感を持って対応していきたい」と述べた上で、要請の趣旨を説明し、政務官の見解を求めたのに対し、泉政務官は次の通り答えた。

(1) 事業仕分けに当たっては現場や国民を苦しめるものではなく、体制、予算の中で無駄と思われるものをしっかり見直そうというもので、その過程の中で、説明不足もあった。心臓の周辺だけが肥大化しているが、指先という末端まで血液を行き渡らせることが大事だと思う。今日いただいた要請は必ず仙谷大臣に伝える。今後とも、こうした話合いの場を設けたい。
(2) 「独立行政法人の抜本的見直しについて」という刷新会議の資料「見直しの視点(案)」には「雇用」の視点はなかったが、政権が変わったので雇用は大前提という考えで当然と思っていた。しかし、過去の政権でも閣議決定に入っており、明定化することが皆さんに安心してもらえるだろうということで、閣議決定予定の見直し案では、基本的姿勢の中で「なお、独立行政法人の抜本的見直しに当たって、独立行政法人の雇用問題に配慮する」という一文を入れることにした。いずれにしても、結果が大事で、これで終わりではない。これからもみなさんと意見交換して雇用を守っていく形で考えて行きたい。
(3) 年末に閣議決定させていただいて、来年以降、独法や公益法人の具体的見直しに入っていくことになるが、年末に工程表まで全部出せるかどうかは最終的に詰めをしている。個別の法人の見直しについては、年明けに国会審議の状況も見ながら、少なくとも年度内から始めるのではないかと思っているが、一気呵成にできる態勢にはないので、順々にやっていくことになるのではないか。

 泉政務官の見解を受けて、吉澤事務局長が@閣議決定のスケジュールA雇用問題について、少なくとも路頭に迷わすことはないということは共通の認識であると受け止めていいかB見直しは誰がどこでやるのかが問題であり、労使関係という問題がある、などと確認を求めたのに対し、泉政務官は@定例閣議は29日だが未だ特定は困難A雇用継続については、わたしはそういう認識だし、皆さんとの意見交換の状況は政務三役会議に報告する。年金機構の改革では官房長官を含めて可能な限り雇用を確保できるよう努力しているし、今後ともそういう努力はやらせていただきたいBそれぞれの独法見直しについては、ヒアリングの中で皆さんの側から話を聞くのか、政務三役の方に要請してもらうかなど検討していくが、すくなくとも公務労協の皆さんの意見を聞くことなく一方的に進めることはしない、との考えを示した。
 続いて、構成組織の代表が次の通り要請を行った。
(1) 特殊法人から独法に移行したが、この間、常に雇用の問題にさらされてきた。事業見直しについては、職員、組合としても行っており、労使協議も行い、国民ニーズに沿ったものとなるよう職員が一丸となって取り組んできた。自公政権の下で天下り即独法は悪者とされ、家族が独法で働いていること自体、言えないような状況があった。特に雇用についてはいつ生首が切られるかという不安の中にあった。これまでも見直しに当たっては政府が雇用問題に責任を持つという閣議決定がされているので、今回も明確にしていただきたい。
(2) 国有林野事業については、一般会計と独法に分けるという法律が生きており、森林農地整備センターを含めて宙ぶらりんな状態にある。林業の特殊な事業背景を含めて検討いただきたい。
(3) 国の試験研究機関が特定独法を経て、民間型の独法になった。長期にわたる基礎的研究をやっているが、2〜3年間で短期的な成果を求められるため、研究が広く浅くなり、研究者のモチベーションが下がっている。基礎的研究は本来国でやるべきとの視点も踏まえていただきたい。
 今回の独法見直しと通則法の5年ごとの見直し(2010年は2度目の見直し時期になる)との関係はどのようになるのか教えてほしい。
(4) 資産や剰余金については制度の中で行っており隠し持っているわけではない。今回、事業の中身まで議論され、通貨以外の発行物や官報まで踏み込んだ議論がなされ不安に思っている。今後の独法見直しに当たっては、始めに廃止ありきではなく、事務・事業の中身について慎重に検討した上での見直しとしていただきたい。これまでの労使協議の経過も尊重して進めていただきたい。

 要請に対して泉政務官は、次の通り答えた。
(1) 国の業務を切り出して設立した独法と特殊法人から移行した独法があるが、国がそもそもやる事業もあると思う。国の公務員定数を削ったと見せるために、移し替えをしただけという感じがする。人件費の削減は一律で行われているが、民主党政権では「コンクリートから人へ」と言っているが、消費者、食品安全に関する独法などについて、一律に人件費を削減し成果を出せと言うのは難しいと思う。他方、天下りと現場の格差という問題はあり、触れて行かざるを得ない。
(2) 独法見直しは、現時点では個々に見直していただくこととし、他方全体については総務省なり刷新会議で進めて行かざるを得ない。現場の皆さんが不安に思われるとのことだが、われわれは切ってしまえばいいというスタンスではなく、国に戻すことを含めてそれぞれがどうあるべきかを考えて行きたい。削減ありきではないので安心していただきたい。人件費の5%削減については取っ払うべきだということも思っている。
(3) 理事の公募をしているが、不可解なことがある。これまでの行政とのつながりだけで考えることについては違うのではないかと思う。
(4) 仙谷大臣の下で「職員の声」というプロジェクトを進めており、現場で問題があれば出してほしい。変えるべきところが変わらないとき、政務三役に届けてほしい。現場と政務三役が協働して新しい独法のあるべき、将来性のあるものを作り出していきたい。
(5) 謂われのない非難をあびて辛いとのことであるが、原因は皆さんでなく、上層部や予算の執行に関わる問題だと思うが、一日も早く払拭していきたい。
(6) 通則法による見直しについては、国会の総務委で対応するのか、内閣委でやるのかという問題があり、刷新会議から出すこともあり得ないわけではなく、まだ決まっていない。独法全体の見直しについては、総務省の階政務官、わたし、そして事務局が仙谷大臣の指導の下で進めている。いまは、国庫への返納の話が先に来て通則法の話が進められている。

 最後に吉澤事務局長が、「今日は心強く、有意義な話ができた。独法、公益法人については前政権以来の問題があるが、公務公共サービスの水準をこれ以上落としてはならないということが、国民生活全般を見たときの共通の思いだろう。そういう視点で見直しに対応したいので、今後とも率直な意見交換をさせていただきたい」と述べ、申入れ交渉を締めくくった。

(別紙)

2009年12月24日

行政刷新担当大臣
  仙 谷 由 人 様

公務公共サービス労働組合協議会
議長  中村 讓

独立行政法人及び政府関連公益法人の見直しに関する要請について

 日頃の国政全般における貴職のご尽力に心から敬意を表します。
 さて、制度発足以来、自民党を中心とする政権のもと、財政再建を一面的に強調され数度にわたる見直しが行われた独立行政法人及び政府関連公益法人の職員は、国民のニーズに応え、公共サービスの質の水準を確保するため必死で奮闘してきました。
 つきましては、独立行政法人及び政府関連公益法人の見直しに係る閣議決定について、国民生活を支える公共サービスを充実するとともに、従事する労働者の雇用と処遇の安定をはかるため、以下のことを実現されるよう要請します。



1.独立行政法人及び政府関連公益法人の見直しにあたっては、国民ニーズと政府の責任の観点から見直すこととし、以下の点を踏まえること。
(1) 法人等の見直しにあたっては、個々の事務・事業を精査することとし、「削減ありき」で事務・事業及び法人等の廃止・民営化を行わないこと。
(2) 国の機関として直接事務・事業を実施する必要がある場合には、当該法人等を国の機関とすること。
(3) いわゆる「天下り」ポストは基本的に廃止することとし、「官製談合」が生じないよう、情報公開はもとより組織及び運営方法を抜本的に改めること。

2.「見直しに伴って雇用問題が生じる場合は、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと」を閣議決定において、明確化すること。

3.個々の事務・事業の精査をはじめとする見直し及び雇用に係る問題については、公務労協及び当該構成組織との十分な交渉・協議、合意により措置すること。

以上