| 2010年度公務労協情報 25 |
2010年4月20日 公務公共サービス労働組合協議会 |
冒頭、徳永公務労協副議長が主催者挨拶に立ち、「公共サービス基本法の理念を現実の事務事業に具体化させ、国民の信頼を回復し、国民の安全・安心を確保することが、公共サービスに従事する労働組合の社会的責務として、我々に課せられた喫緊の課題だ」と述べ、「この日の集会を契機に、公共サービス基本条例の制定をめざして更にとりくみを進めていこう」と訴えた。
嶋田准教授は、公共サービスは憲法上で国民に保障された社会的基本権を具体化したもので、公共サービスを供給する側はその責任を負うことを前提として、その享受は一人ひとりの市民の権利であるとした。その上で、そうした基本理念を実現するためには、@公共サービスは必要とする市民に不足なく提供されなければならないこと、A公共サービスの質と量は、市民の手の届くところで決定されなければならないこと、B公共サービスの主体は、それぞれの自律性等を前提としながらも相互に連携・協力することで「相乗効果」を目指さなければならないこと、C公共サービスの実施に携わる者は、公共の規律を遵守しなければならないこと、D公共サービスの実施においては透明性が確保され、情報公開されなければならないこと、E公共サービスの実施に従事する者の労働環境は、適正なものに保持されなければならないことという6つの原則が必要であるとした。そして「それらを具体化するのが公共サービス基本条例である」と述べた。
嶋田准教授の提言に対して、宮本教授は、公務労協が提唱した「良い社会をつくる公共サービスを考える研究会」の幹事として、公共サービス基本法につながる考え方をまとめた立場からコメントした。宮本教授は、現在の民主党政権が、強い行政不信のなかで成立したという事情から、その一つの現れとして子ども手当など現物支給が優先され、保育サービスや公的職業訓練などが後手に回る傾向があり、持続可能な福祉国家となりえるかという課題があるとした。また、強い行政不信への処方箋の一つである地方分権改革や「新しい公共」の形成などが公共サービス拡充の足かせになってしまう傾向にある現状に懸念を示した。その上で、人々の身近なところで、ニーズに見合った公共サービスを設計、実行するために基本条例が重要であることを訴えた。それが、行政への信頼の醸成につながるとともに、地方分権改革、公共サービス拡充の最良の処方箋であると指摘した。
池本専務理事は、「新しい公共」を掲げる鳩山政権に対し直接的な政策提言をしているNPOの立場からコメントした。「NPO事業サポートセンター」では、市民やNPOの行う公共・公益活動がさまざまな分野・場面への広がりを見せる中、地域や活動分野、所属の違いを超えて、市民自身が主体的に参加する新しい公共・公益の実現という社会的使命の達成をめざしていること、今年1月29日に設立した「市民キャビネット」では、NPOや市民団体が自らの責任で担い、政権がめざす「新しい公共」を実現するため政策提言を行うべく活動を進めていることを紹介した。そしてNPOとしては、公共サービスの担い手として、基盤の整備を進めるとともにNPO自身がその信頼性・公共性をピーアール(PR)していく必要があると述べた。以上