2010年度公務労協情報 31 2010年6月22日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁に2010人勧期要求提出−6/22

 公務員連絡会棚村議長ほか委員長クラス交渉委員は、22日11時から、江利川人事院総裁と交渉を持ち、@月例給与水準の維持と生活を防衛する一時金支給月数の確保A段階的定年延長の年内意見申出に向けた制度骨格提示B非常勤職員等の課題解決C実効性ある超勤縮減策の実施、などを重点課題とする「2010年人事院勧告に関わる要求書」を提出した。これにより、2010人勧期の取組みは正式にスタートした。
 公務職場では定員削減政策が継続され、慢性的な超過勤務を余儀なくされるなど公務員労働者の労働過重が極限状態となる中で、月例給、一時金の継続的な引下げに加え、出先機関、独立行政法人等の見直しで職場の将来不安が蔓延している。こうした状況の下で、公務員労働者の生きがいを持って働ける職場の確立と生活防衛を求める声は切実となっている。公務員連絡会は、こうした状況を踏まえ、7.13第1次、7.27第2次中央行動を配置して人事院との交渉を強め、何としても要求の実現を図るべく、取組みを強めることとしている。

 交渉の冒頭、議長は要求書(別紙)を提出し、次の通り見解を述べた。
(1) 本年の春季生活闘争は、先行き不透明で厳しい情勢のもとでの取組みとなったが、おおむね賃金カーブを確保し、現行水準を「維持」する結果となっている。
(2) 一方、公務を巡っては、来年度の新規採用抑制策が閣議決定されたことに加え、国の出先機関や独立行政法人等の見直しの検討が進められ、「総人件費2割削減」に向けた検討も進められていると聞いている。
 こうした中で、慢性的な超過勤務など公務員労働者の勤務環境は悪化し続け、月例給や一時金の連年に渡る引下げで家計の状況も厳しさを増し、働き方の改革と生活防衛を求める声はかつてなく高まっている。
(3) 以上のことから、本年の人事院報告・勧告にあたっては、なにより労働基本権制約の代償機能を十全に果たすことがもとめられている。そのためには、公務員労働者の生活を防衛する観点から、まずは、民間相場を反映する形で、なんとしても月例給与の水準を「維持」してもらいたい。一時金についても、民間情勢は厳しいが、生活水準を維持するために必要な支給月数は確保してらいたい。非常勤職員制度の見直しに当たっては、実際に雇用の安定に結びつく制度改善を強く求めておきたい。
 年金と雇用を接続するための65歳までの段階的な定年延長の実施は、当面の人事行政における最重要課題だ。われわれは、定年延長が、高齢期において安定的な雇用を確保する最も効果的な方法だと考え、人事院に要求し、交渉を積み重ねてきた。年内に「意見の申出」を行うことは、昨年来の約束事であり、これを確実に行ってもらいたい。それに向けて、夏の勧告時には定年延長の「制度骨格」を示してもらいたい。
 いずれにしろ、その他の課題も含め、われわれと十分交渉・協議し、合意に基づく報告や勧告を行うことを強く求めておきたい。昨年われわれの反対を押し切って夏季一時金の一部支給凍結勧告を行い、人事院に対する信頼性が大きく損なわれることとなったが、2度とそのようなことがないよう総裁には特段のご努力を要請する。
(4) 本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げさせて頂くが、しかるべき時期には総裁から直接要求に対する回答を頂きたいと考えているので、よろしくお願いする。

 続いて吉澤事務局長が「本年は、月例給水準の維持と生活防衛を重点としているが、これらにとどまらず要求全体について、改善を求める率直な組合員の声が多数寄せられている。厳しい環境の下で必死に働いている職員の切実かつ具体的な要求であり、ぜひ実現に向けて努力していただきたい」として、要求書の重点事項を説明した。
 これを受けて総裁は、「お話しは伺った。最近の公務を巡る情勢は一段と厳しいものがあるが、民間の情勢を十分踏まえ、労働基本権制約の代償という人事院の任務を果たしていくことが重要と考えており、本年の給与勧告に向けて、引き続き皆さんの意見も十分聞きながら検討を進めていくこととしたい」と、今後十分交渉・協議を積み上げていくとの見解を述べた。これに対し、棚村議長が、「今後、事務レベルの交渉・協議を積み重ね、しかるべき時期に総裁から回答をいただきたい」と要請し、提出交渉を締めくくった。


(別紙)2010人勧期要求書

2010年6月22日

人事院総裁
 江 利 川  毅 殿

公務員労働組合連絡会
議 長  棚 村 博 美

2010年人事院勧告に関わる要求書


 本年の春季生活闘争は、先行きが不透明で厳しい雇用情勢の下での取組みとなりましたが、連合の各構成組織が力を結集して取り組んだ結果、概ね賃金カーブを確保し、賃金低下傾向には一定の歯止めをかけることになりました。
 他方、公務を巡っては、来年度の新規採用者の大幅な削減が閣議決定されたことに加えて、国の出先機関や独立行政法人、公益法人見直しなど、さらなる総人件費削減政策の具体化が進められようとしています。
 公務職場では定員削減政策が継続され、慢性的な超過勤務は改善されないどころか悪化する傾向にあり、公務員労働者の労働過重は極限状態となっています。この間、月例給、一時金のいずれも継続的に引き下げられ、家計のやりくりも厳しさが募っています。加えて、職場の将来不安が蔓延し、公務員労働者は三重苦を余儀なくされています。
 こうした状況の下で、公務員労働者の生きがいを持って働ける職場の確立と生活防衛を求める切実な声は頂点に達し、本年の報告・勧告にあたって貴職には、@月例給与水準の維持と生活を防衛する一時金支給月数の確保A段階的定年延長の年内意見申出に向けた制度骨格提示B非常勤職員等の課題解決C実効性ある超勤縮減策の実施など、当面する重要課題について、労働基本権制約の代償機関としての機能を十全に果たすことがなにより強く求められています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2010年人事院報告・勧告に関わる下記事項を実現することを強く要求します。



1.賃金要求について

(1) 月例給与について
 2010年度の給与改定に当たっては、公平・公正な官民比較に基づき、公務員労働者の月例給与の水準を維持すること。

(2) 一時金について
 一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、公務員労働者の生活を防衛するために必要な支給月数を確保すること。

(3) 諸手当について
@ 民間の時間外労働手当等の精確な把握に基づいて、超過勤務手当の割増率を引き上げるとともに、1か月当たり60時間を超える超過勤務時間を算定する場合において日曜日等の超過勤務時間を算入するよう改めること。
A 諸手当の改善については、官民較差の見通しを踏まえ、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて勧告作業を進めること。

(4) 給与構造改革終了後の検討事項等について
@ 給与構造改革が本年度で終了したことを踏まえ、その進展状況について慎重な検証を行うこととし、地域別官民給与比較の方法、公表のあり方については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
A 経過措置が段階的に解消することによって生じる制度改正原資の活用方法については、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

2.労働諸条件の改善について

(1) 労働時間の短縮及び休暇について
@ 本府省における在庁時間削減の取組み状況及び他律的業務を含む目安時間の設定、遵守状況を調査し、公務員連絡会にその結果を報告すること。それに基づき、厳格な勤務時間管理と実効性ある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施すること。
A 病気休暇制度や運用のあり方等の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること。

(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて必要な取組みを行うこと。
A  育児休業及び育児のための短時間勤務について、数値目標を設定した男性取得の促進策をとりまとめること。

(3) 新たな高齢者雇用施策について
@ 新たな高齢者雇用施策については、65歳までの段階的定年延長を実現するための「意見の申出」を2010年中のできるだけ早期に行うこととし、勧告時に「制度の骨格」を報告すること。
A 新たな施策の実施に関わる給与体系・水準のあり方を含め、具体的な施策の内容について、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて検討作業を進めること。

(4) 福利厚生施策について
 メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康診断やカウンセリングの着実な実施や復職支援施策の拡充・強化を図ること。

3.非常勤職員等の制度及び処遇改善について

(1) 「非常勤職員給与ガイドライン」の実施状況を点検し、その遵守を徹底すること。
(2) 日々雇用非常勤職員制度に代わる新たな仕組みをできるだけ早く実施することとし、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用が確保できるよう万全を期すこと。
(3) 非常勤職員に育児休業及び介護休暇を適用するための「意見の申出」を行うこと。
(4) 非常勤職員制度の抜本的な改善に向けた検討に着手することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議しながら、作業を進めること。

4.その他の事項について

 公務職場に外国人の採用、障がい者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上