2010年度公務労協情報 37 2010年8月6日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

官民較差マイナス0.2%弱、一時金0.2月引下げ、50歳台後半層1.5%減額強行を10日勧告へ
委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答引出し−8/6

 公務員連絡会棚村議長ほか委員長クラス交渉委員は、6日11時30分から人事院総裁と交渉を持ち、本年の勧告内容に関わる回答を引き出した。公務員連絡会は、この回答を受けて、9日に代表者会議を開いて公務員連絡会としての勧告に対する態度を確認し、声明や政府に対する要求書などを決定することとしているが、10日に予定される勧告後、官房長官や総務大臣など主要な給与関係閣僚に対して、勧告の取扱いにあたっては公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意するよう要求する予定。

<人事院総裁との交渉経過>
 11時30分から行われた人事院総裁交渉の冒頭、棚村議長が「6月22日に本年の人勧期要求を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答をいただきたい」としたのに対し、総裁は次の通り回答を示した。

1.勧告日について
 勧告日は、8月10日(火)となる予定である。
2.官民較差等について
 調査の結果、官民較差は、「0.2%弱のマイナス」となる見込みである。また、特別給は、「0.2月のマイナス」となる見込みである。
3.今年の給与改定の内容について
 以下、本年の給与改定の内容について申し上げる。
<月例給関係>
 民間給与とのマイナス格差を解消するため、50歳台後半層の職員の給与を抑制するための措置及び俸給表の引下げ改定を行う。
●50歳台後半層の職員の給与抑制措置について
 55歳を超える職員については、民間の賃金水準を相当上回っていることから、当面の措置として、55歳に達した年度の翌年度から俸給月額及び俸給の特別調整額の支給額を1.5%減額する。
 ただし、行政職(一)5級以下の職員及び他の俸給表のこれに相当する級の職員を除くこととする。また、人材確保のため医療職(一)については、この措置は行わないこととする。
●俸給表の引下げ改定について
 50歳台後半層の職員の給与抑制措置による解消分を除いた残りのマイナス較差を解消するよう、俸給表の引下げ改定を行う。その際、行政職(一)の場合、民間賃金を下回っている若年層は据え置きとし、40歳台以上の職員が受ける俸給月額を対象として、0.1〜0.2%程度の引下げ改定を行うこととする。
 また、行政職(一)以外の俸給表については、行政職(一)との均衡を考慮した引下げ改定を行うこととする。
 なお、医療職(一)については引下げ改定を行わない。
●経過措置額について
 給与構造改革の俸給水準引下げに伴う経過措置額についても、俸給表の引下げ改定及び50歳台後半層の給与抑制措置を踏まえ引下げを行う。
<特別給関係>
 特別給については、年間支給月数を「0.2月分」引き下げ「3.95月」となる見込みである。
 その場合、引下げ分の割り振りは、期末手当を「0.15月分」、勤勉手当を「0.05月分」それぞれ減とする。
4.改定の実施等について
 今回の改正については、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときはその日)から実施する。
 本年4月から改正法施行日までの較差相当分を解消するための年間調整については、基本的に昨年と同様の方式により行う。
 調整率は、月例給の引下げが行われる職員が民間給与との較差総額を負担することとして求められる率とする。
5.超過勤務手当について
 民間企業の実態を踏まえ、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日の勤務の時間を含めることとし、平成23年度から実施する。
6.給与構造改革について
 給与構造改革は、本年度をもって当初予定していた施策の導入・実施がすべて終了したところである。
 地域間給与配分の見直しについては、地域別の較差は縮小してきているが、経過措置額の状況や各地域の民間賃金の動向等を見守りたい。
 勤務実績への反映については、制度の趣旨に沿った運用がなされているが、今後ともその状況を把握していくこととしたい。
 平成23年4月にかけて経過措置が解消されることに伴って制度改正原資が生ずることから、その原資を用いて、23年4月1日に43歳未満である職員で、平成22年1月に昇給抑制を受けた者の号俸を1号俸上位に調整する。
 民間賃金を上回っている高齢層の給与については、定年延長の議論の中であるべき給与制度について検討していきたい。
7.高齢期の雇用問題について
<基本的な方向について>
 本格的な高齢社会を迎える中、公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、平成25年度から、定年年齢を段階的に65歳まで延長することが適当であると考えている。
<定年延長に向けた制度見直しの骨格について>
 定年延長を行うに当たっては、管理職の役職定年制や組織活力の確保のための人材活用方策等に取り組むとともに、短時間勤務を含め多様な働き方を選択できるようにすることが適当である。定年延長後の給与については、職員の職務と職責を考慮しつつ、民間企業の雇用・所得の実態を踏まえて60歳台前半の給与水準を相当程度引き下げなければならないと考えている。
 こうした基本的な考え方の下、
○60歳以後の働き方について職員の意向を聴取する仕組み
○役職定年制を導入する場合の対象範囲や役職定年年齢
○定年前の短時間勤務制
○60歳台前半の給与
○加齢に伴い就労が厳しくなる職務に従事する職員の取扱い
等についての検討が必要と考えている。
 本年の報告において定年延長に向けた制度見直しの骨格を提示した上で、その骨格に基づき、引き続き、職員団体の皆さんをはじめ関係各方面と幅広く意見交換を重ねながら更に検討を進め、本年中を目途に成案を得て、立法措置のための意見の申出を行いたいと考えている。本年の報告において改めてその旨を言及することとしたい。
 なお、60歳前の公務員給与については、先に述べたように、今後、定年延長に伴う給与制度の見直しの中で、その在り方を引き続き検討する。
8.非常勤職員制度の改善について
<日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態を見直し>
 現行の日々雇用の仕組みを廃止し、非常勤職員として会計年度内の期間、臨時的に置かれる官職に就けるために任用される「期間業務職員制度」を設けることとし、改正人事院規則を8月10日に公布し本年10月から実施することとする。
<非常勤職員の育児休業制度等>
 非常勤職員が育児休業等を取得できるよう「国家公務員の育児休業等に関する法律」の改正に関する意見の申出を、給与勧告と同時に行うことを予定している。併せて、介護休暇制度の導入についても措置することとしたい。
9.公務員人事管理関係について
 以上のほか、本年の主な報告は次のとおりである。
 公務員の労働基本権の在り方は、現行の公務員制度の根幹にかかわる問題であるとともに、直接又は間接に国民生活に大きな影響を与えることから、この問題について議論する際に詰めるべき基本的な論点を整理し、提示している。
 その他、国家公務員制度改革基本法に定める課題のうち、本院が取り組むべき課題として、新たな採用試験制度の全体像を提示したほか、時代の要請に応じた公務員の育成、官民人事交流等の促進、女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針の見直しについて、言及することとしている。
 さらに、超過勤務の縮減、適切な健康管理及び円滑な職場復帰の促進など、職員団体の皆さんにこれまで表明してきた諸課題等への人事院の取組状況についても、報告において言及することとしている。
<最後に>
 本年の給与勧告は、昨年に引き続き、月例給、特別給ともに引下げという厳しい内容であり、特に50歳台後半層の職員には厳しいものとなるが、人事院勧告は、情勢適応の原則に基づき、経済・雇用情勢等を反映して決定される民間給与に準拠して行われてきているところである。公務員に対する一般国民の目にはなお厳しいものがあるものの、この公務員給与の決定方式は、国民の理解を得て適正な給与水準を確保するものとして定着している。
 人事院としては、適正な公務員給与を確保することは、職員の努力や実績に的確に報いるために重要と考えており、引き続き、努力していきたい。
 公務員連絡会の皆さんにおかれても、今回の勧告の趣旨及び改定の必要性について、特段の御理解をお願いしたい。
 本院は、今後も、積極的に高齢期の雇用問題等の諸課題に取り組み、公務員人事管理の改善を図っていくこととしている。
 引き続き、皆さんとも十分意見交換をしながら、その検討を進めていきたいと考えているので、積極的な対応をお願いしたい。

 以上の回答に対し、棚村議長は次の通り公務員連絡会としての見解を述べ、50歳台後半層の給与引下げに強く抗議し、交渉を締めくくった。
(1) ただいまの総裁回答のうち、2年連続で月例給を引下げ、一時金も大幅に引き下げることについては、民間実勢を反映したものとはいえ、われわれの生活に大きな影響を与えるものであり、生活防衛の観点から極めて不満な勧告だと言わざるを得ない。この公務員給与の引下げが、地方や地場企業に波及し、内需の回復に悪影響を与えることを危惧する。
 50歳台後半層の給与引下げ措置については、職務給原則と相容れないことや手続き的にも拙速そのものであることから、一貫して反対の意思を明確にし、提案を撤回するよう求めてきた。4日の給与局長との交渉で6級以上という再提案があったが、当初より対象は縮小されたとはいえ、多くの組合員が含まれており、給与制度上の問題点も何ら解消されておらず、これを受け入れることはできないとの見解を明らかにしてきた。にもかかわらず、本日の総裁の回答は、われわれの納得を得ないまま勧告を強行する意思を示したものであり、極めて遺憾だと申し上げざるを得ない。
 非常勤職員に育児休業等の適用を求める意見の申出は、われわれが求めてきたものであり、評価したい。今後は、その一刻も早い実現に向けて人事院としても努力してもらいたい。
 段階的定年延長に関わる給与をはじめとした個別課題については、引き続き十分な交渉・協議を行い、合意の上で成案を得ること、確実に年内に意見の申出を行ことを改めて求めておきたい。
(2) ただいまの総裁回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定するが、政府に対しては、50歳台後半層の給与引下げ措置を含め、勧告の取扱いに当たって十分われわれと交渉・協議し、合意することを求めていきたいと考えている。
 今後、政府において労使関係制度のあり方を含む公務員制度改革の議論が本格的に進められていくが、現状では人事院勧告制度が公務員の唯一の賃金・労働条件改善の機会である。この点を十分踏まえ、人事院としても引き続き労働基本権制約の代償機関として、懸案課題の解決に向けて最大限努力することを要請しておきたい。

以上