2010年度公務労協情報 4 2009年11月17日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院・総務省へ2010年度基本要求を提出−11/17
−12月中旬には誠意ある回答を示すよう求める−

 公務員連絡会は、17日、人事院、総務省に対して2010年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、12月中旬にはそれぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。この基本要求は、年間を通じた賃金・労働条件改善闘争の考え方に基づいた基本的要求事項を申し入れ、人事院、総務省との議論を行い、2010春季要求の組み立てに結びつけていくために実施したもので、それぞれの申入れの経過は次の通り。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 人事院への「2010年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料1参照)交渉は、13時30分から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは根本職員団体審議官、上山参事官が対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「国会の審議日程は定まっていないが今月中に給与法等改正案が成立するという前提の下で、2010年度の基本要求を提出する」と述べ、2010年度要求の重点事項について、次の通り説明し、12月の然るべき時期に回答するよう求め、現時点での人事院の見解を質した。

(1) 給与法が改正されれば、平均15万円を超える年間給与の引下げとなり、生活に大きな影響を与える。来年度は、ぜひとも給与が維持・改善されるよう作業を進めていただきたいし、一時金についても生活が維持できる月数を確保してもらいたい。
(2) 新たな給与制度の見直しについては、給与構造改革の慎重な検証を行い、その上で公務員連絡会と十分話し合っていくことを約束していただきたい。
(3) 官民給与の比較方法については、来年度は現行の比較企業規模等を堅持し、その上で公正なものに改善していただきたい。
(4) 諸手当のうち、住居手当については、自宅に係る手当の廃止に伴う約束として議論させていただきたい。また、単身赴任手当については可否を含めて協議させていただきたい。
(5) 超過勤務縮減に関わって、在庁時間削減対策の実施状況調査は去年の話であり、早急に報告し、それに基づいて議論をさせてほしい。超勤縮減については大胆な縮減策を講じていただきたい。
(6) 労基法改正に関わる対応については疑問を持っており、45時間超60時間の割増率及び代休時間の取扱いについては、民間実態を調査して見直すべきだ。
(7) 病気休暇制度・運用の検討については何を検討するつもりなのか早めに提示してもらって議論をさせていただきたい。
(8) 育児休業法については成立後直ちに実施に移すこととし、規則事項についても確実に実施していただきたい。
(9) 高齢雇用施策については、来年の早い時期に意見の申出をしていただきたい。そのため、給与を含めて公務員連絡会との議論をはじめてもらいたい。
(10) 非常勤職員の課題については、給与は指針に基づき改善されつつあるが、まだ不十分なところがあるので、各府省への指導を徹底してほしい。雇用の安定については、見直し案を早く提示していただきたい。日々雇用を廃止し、1年以内の任期とし、本人の希望に基づき更新可能な仕組みにして、雇用が安定するようにすべきだ。

 申入れに対し、根本審議官は「本日の申入れについては承った。十分検討し、しかるべき時期に回答することとしたい。いくつかの点について現時点での私レベルのコメントを申し上げる」として、次の通り現時点での見解を示した。
(1) 給与については、民間の動向を見ると、本年の冬のボーナスが昨年より低いとの報道がなされており、また、来年の春闘期に向けての情勢も不透明で楽観はできないが、引き続き職員団体のご意見を伺いながら、人事院としての役割を果たして参りたい。
(2) 特地勤務手当に係る官署指定基準の見直しついては、本院及び地方事務局において職員団体の意見を聞かせていただいており、それらを踏まえ、現在内容を精査させていただいている。今回の基本要求に対する回答とは別に、特地勤務手当だけのテーマで、別途皆さんとお会いする機会をなるべく早く設けたいと考えている。
(3) 高齢期の雇用問題への対応について、公務員連絡会と議論を始めることについてはもう少し待っていただきたい。いずれにしても、平成25年度から段階的に定年年齢を60歳から65歳に引き上げることが適当であると考えており、法的措置のための意見の申出を平成22年中を目途に行えるよう現在鋭意検討を行っている。その検討に当たっては、職員団体のご意見を伺いながら進めて参りたい。
(4) 在庁時間削減対策の実施状況の報告についてももう少し待っていただきたい。また、病気休暇も検討していくことにしており、早めに議論できるようにしていきたい。
(5) 超過勤務の縮減、両立支援策、メンタルヘルス、人事評価、非常勤職員の問題も重要な課題であり、引き続き職員団体のご意見を伺いながら今後の施策を検討して参りたい。

 これら審議官の見解に対し公務員連絡会側は、さらに@冬のボーナスが下がっていると報道されているが、今年のような臨時勧告などを行わないことを明確にすべきだA非常勤職員の雇用はタイムリミットもあるので、政府ときちんと調整をして中身のある提案を早めにしてほしいB来年の経済情勢も厳しそうであるが、比較方法の見直しによる公務員給与の引下げはあってはならない。公務員の給与が社会的に公正なものなるよう、第三者機関として使命を果たすべきだCメンタルヘルスで自殺者も出ているが、職場の管理職がきちんと対応できていないので、しっかりと対策を講じてほしいD給与振込方法の変更が行われるなど、組合員は次は何が行われるのかと心配している。職員が意欲を持って働けるよう、比較方法は堅持してほしいE人事評価結果の活用の周知が不十分なので、各府省を指導していただきたいF改正育児休業法については、保育園等年度が区切りなので遅くとも新年度から施行すべきだ、などと重ねて要望した。
 これらについて、根本審議官は@一時金については来年夏を含めてどうなるかということもあるが、今の段階で何も申し上げることはないがご要望は承ったA非常勤の雇用については人事院としてもきちんと対応し、なるべく早く示すよう努力したいB給与などについては人事院の使命を自覚して対応していきたいCメンタルヘルスについては人事院としても問題意識を持っており、対策を充実したい、などの考えを示した。
 最後に、公務員連絡会から「来年度は厳しい情勢になると思われるが、最低限譲れないところはあることを踏まえた作業をしていただきたい。将来を含めて安心して働ける環境を作ってほしい。来年度は、定年延長の道筋を付けること、非常勤職員の雇用安定の2つが重要だ。公務の職場は危機的な状況にあり、職員個人が犠牲となって支えているので、人事院として職場を守るという役割を果たしていただきたい。申入れ内容を十分精査して、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と要望し、提出交渉を終えた。

<総務省人事・恩給局との交渉経過>
 総務省への要求書(資料2参照)提出交渉は、15時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、総務省からは笹島人事・恩給局次長らが対応した。
 要求提出に当たって、公務員連絡会の岩岬副事務局長は、基本要求の重点事項を次の通り説明し、12月には誠意ある回答を示すよう求めた。
(1) 原口総務大臣は、公共サービス基本法の趣旨に則って行政運営を進めると言っており、財政再建のための総人件費削減政策は直ちにやめて、公共サービス従事者の労働条件を整備するとの考え方で対応していただきたい。
(2) 府省間配置転換のフォローアップは雇用調整本部できちんと対応していただきたい。国の出先機関見直しで雇用問題が発生する場合には、政府として統一的な体制を確立し国が雇用に責任をもってもらいたい。
(3) 現行制度の下では、人事院勧告尊重の基本姿勢を堅持して、給与水準の維持を最低限とし、改善すべきものは改善してほしい。
(4) 労基法改正による超過勤務割増率の引上げは、超過勤務の縮減が目的であり、公務においても削減されるよう、力を入れて取り組んでいただきたい。
(5) 育児休業法については、暦年または年度替わりで実施することが一番よいので成立後速やかに実施してほしい。
(6) 福利厚生の充実はぜひとも具体的に進めていただきたい。研究会では公務員連絡会の意見を聞く場を設けるとともに、報告に基づく施策の検討に当たっては、十分交渉・協議させていただきたい。また、福利厚生予算の削減に歯止めを掛けて、必要な予算を確保してもらいたい。
(7) 公務員制度改革の工程表を見直し、政府として、65歳まで段階的に定年延長するという施策を確立してほしい。
(8) 非常勤職員の雇用安定について、日々雇用を廃止し、1年以内の任期とし、本人の希望に基づき更新可能な仕組みにしてほしい。非常勤職員の実態調査結果について速やかに報告してもらって、それを基礎として議論をさせていただきたい。

 これらに対して、笹島次長は「回答は後日行うこととし、現段階で少しコメントをさせていただく」として、次の通り現段階の見解を述べた。
(1) 原口大臣は、公共サービス基本法に思い入れがあり、労働環境の改善が関心事項であることは承知している。人事・恩給局としてもそういう方向で進めていきたい。
(2) 給与法改正法案に関わっては、今週中に審議入りすることになっており、今月中成立させる必要があることについては与野党とも一致しているが、人事官の承認や天下り問題があり、どのように審議されるかは不透明である。
(3) 人事・恩給局としては、労働基本権制約の下で人事院勧告を尊重するという基本姿勢を堅持して対応することに変わりはない。
(4) 超過勤務の割増率を引き上げることや育児休業法の改正は、勤務条件改善の側面もあるが、働き方の見直し、両立支援、ワーク・ライフ・バランスという側面もあることから、そういった観点でも重要と考えている。

 見解に対し、公務員連絡会側は@非常勤職員の雇用については、新年度から施行するとすれば1月には規則改正が必要であり前広に議論させてほしいA配置転換のフォローアップは雇用調整本部でしっかり対応してほしいB福利厚生は民間でも重要であり、民間の状況を踏まえ、公務における重要性を位置づけてほしいC日々雇用はひどいということは世論が一致しており、小手先ではなくしっかり対応してほしい、などと要求した。
 これらに対し、人事・恩給局側は@非常勤職員の雇用については、まだ具体的な結論に達していない。大臣に現状や問題点を説明し、意向も聞きたいと思っている。制度の運用、定員管理の側面を含めて、対外的にも制度的にもきちんと説明できて働いている人も満足できる制度としていきたい。まとまった段階でお示ししたいA配転のフォローアップは雇用調整本部で対応するB福利厚生は民間実態を参考にしつつ対応していく。研究会ヒアリングはともかくとして、対外的に活用できるデータや考え方があれば伺っていきたい、などの考えを示した。
 これらの見解を踏まえ、公務員連絡会は最後に「来年度は厳しい状況になると思われるが、使用者の立場でしっかり対応してほしい。職場では、公務員バッシングで士気が下がり、仕事は増えているのに人は減っている状況にあり、崩壊寸前だ。給与が困難な状況なら、福利厚生や定年延長などにより将来が安心できるものとなるよう、メリハリを付けることが重要だ。本日は要求事項の提出なので、今後検討していただき、12月には、来年度の賃金・労働条件改善に結びつくような回答をお願いしたい」とし、要求提出交渉を終えた。


資料1.人事院への基本要求書

2009年11月17日


人事院総裁職務代行
 人事官  原  恒 雄 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2010年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 8月に行われた総選挙の結果を受けて、民主党を中心とする新しい政権が発足し、政治や行政のあり方が抜本的に変わろうとしています。基本政策も、弱者を放置する「新自由主義」を基調とするものから「国民生活が第一」という、国民の安心と安全を優先するものに大きく転換しつつあります。
 公務・公共部門をめぐっても、公務員の総人件費削減政策を転換し、良質な公共サービスを確保していくことが求められています。
 公務員労働者が国民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい賃金をはじめとする労働条件が確保されることが重要です。労働基本権が制約されているもとにあっては、人事院による勧告制度が唯一の労働条件の改善手段となっており、貴職にはその役割を誠実に果たす責務があります。本年5月の夏季一時金支給凍結勧告のように、決して政治の圧力に人事院勧告制度が歪められることがあってはなりません。
 さて、2010年度の基本要求事項では、公務員の実質生活を維持・改善する給与改善を行うことを最大の課題としつつ、非常勤職員制度の抜本的改善や新たな高齢雇用施策の具体化などを重点課題としています。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与に関わる事項
1.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保
@ ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。
 当面、2010年度の給与勧告においては、民間実勢を踏まえ、公務員の賃金水準を維持・改善すること。
A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握した月数を確保すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
@ 給与構造改革が2010年度に終了することを踏まえ、その進展状況について慎重な検証を行うこととし、新たな制度見直しの検討を開始する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
A 官民給与比較方法については、当面現行の比較企業規模等を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(4) 高齢雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しについて
 定年の段階的延長等高齢雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、慎重な検討作業を行うこと。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。
(2) 特地勤務手当の見直しについては、当該官署に勤務する組合員の生活維持と人材確保を基本として、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意のもとに進めること。
(3) 単身赴任手当の見直しについては、その可否を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 本府省における在庁時間削減対策の実施状況を報告し、その一層の削減に努めること。あわせて、超過勤務の上限目安時間についても検証を行うこと。
(2) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。
(3) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率及び超過勤務代休時間の取扱いについては、民間企業の実態を踏まえた見直しを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。

2.本格的な短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。

3.休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的休業制度などについて、以下の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇、リカレント休暇を新設すること。
(3) 病気休暇制度や運用のあり方等の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(4) 総合的休業制度の検討・研究に着手すること。
(5) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(6) 官庁執務時間と勤務時間の関係について、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。

4.育児休業法等の改正に基づく両立支援策について
 育児休業法等の改正及び本年の報告に基づく人事院規則改正による両立支援策については、育児休業法等改正法案の成立後直ちに実施すること。

三、新たな人事評価制度の実施・活用に関わる事項
 新たな人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況について、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

四、新たな高齢雇用施策の検討に関わる事項
 新たな高齢雇用施策については、65歳までの段階的定年延長を実現するための「意見の申出」を2010年中のできるだけ早期に行うこと。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、具体的な施策の内容、実施時期等について、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

五、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応して、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充を図ること。

六、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
 非常勤職員制度等のあり方を抜本的に改善することとし、次の事項を実現すること。
(1) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を点検・報告し、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低 給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(2) 本年報告に基づく日々雇用職員の任用・勤務形態の見直しに当たっては、任期を1年以内とし更新可能とすることを基本とし、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。

七、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な推進を実現すること。
(3) セクシュアル・ハラスメントの実態を把握し、より実効性のある防止策及び対応策の改善に努めること。
(4) 女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
@ 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
A 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(5) 取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、育児のための短時間勤務等の取得促進策を取りまとめること。
(6) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

八、その他
(1) 障害者雇用促進法に沿って、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。


資料2.総務省への基本要求書

2009年11月17日


総務大臣
 原 口 一 博 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2010年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 8月に行われた総選挙の結果を受けて、民主党を中心とする新しい政権が発足し、政治や行政のあり方が抜本的に変わろうとしています。基本政策も、弱者を放置する「新自由主義」を基調とするものから「国民生活が第一」という、国民の安心と安全を優先するものに大きく転換しつつあります。
 政権交代、政策転換を機に、いまこそ公共サービス基本法の理念を実現することが求められるところであり、そのためには財政再建のための総人件費削減政策の転換が不可欠です。行政や公務員がこうした課題に的確に応えていくためには、公務員の労使関係についても、労使がお互いを対等平等のパートナーとして認め合う、自律的な労使関係を築いていくことが何よりも重要です。
 さて、2010年度の基本要求事項では、公務員労働者の雇用・労働条件の確保や実質生活を維持・改善することを最重点課題としつつ、非常勤職員制度の抜本的改善や新たな高齢雇用施策の具体化などを重点課題としています。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与をはじめとする雇用・労働条件確保に関わる事項
(1) 公務員の総人件費削減政策を撤回し、公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の適正な勤務条件と労働環境を確保すること。
(2) 定員削減にともなう配置転換実施後のフォローアップについては、引き続き雇用調整本部が責任を持って対応すること。また、独立行政法人や国の出先機関の見直しに当たっては、 事務・事業のあり方を十分検証するとともに、 見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
(3) ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2010年度においては、民間の実勢を踏まえ、人事院勧告尊重の基本姿勢に基づき公務員労働者の賃金水準を維持・改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請など人事院勧告制度に対する政治的介入を直ちにやめ、公務員給与に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
(1) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
 このため、2010年度においては、政府全体として、超過勤務の縮減に向けた体制を確立し、実効ある超過勤務縮減策を実施すること。
(2) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。
(3) 育児休業法等の改正に基づく両立支援策について
 育児休業法等の改正に基づく両立支援策については、育児休業法等改正法案の成立後直ちに実施すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。そのため、福利厚生施策の在り方に関する研究会においては、福利厚生の充実に資するよう積極的な検討を行うこととし、報告に基づく「国家公務員福利厚生基本計画」(以下「基本計画」という。)の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 基本計画の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応した心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充を図ること。
(3) 2010年度の予算編成に当たっては、福利厚生経費の削減を行わず、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

四、新たな高齢雇用施策に関わる事項
(1) 国家公務員制度改革の工程表を見直し、65歳までの段階的定年延長を中心とする新たな高齢雇用施策を確立することとし、人事院の意見の申出がなされた場合には、直ちに法改正に着手すること。
(2) 定年延長に伴って、給与体系・水準や退職手当のあり方等を検討する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

五、非常勤職員制度の改善に関わる事項
(1) 非常勤職員等の実態調査結果を報告するとともに、調査結果を踏まえた処遇改善策を検討・実施することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 日々雇用職員の任用・勤務形態の見直しに当たっては、任期を1年以内とし更新可能とすることを基本とし、あわせて定員管理の弾力化を図り、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。
(3) 日々雇用職員制度の見直しを第一歩と位置づけ、非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。

六、男女平等の公務職場の実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、短時間勤務等の取得を促進すること。
(3) 使用者の立場から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行を図るよう指導すること。

七、公務員制度改革に関わる事項
(1) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、抜本的な改革を実現すること。

八、「新たな人事評価制度」に関わる事項
 2009年度から実施されている新たな人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底に努めるとともに、実施状況を検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

九、その他の事項
(1) 障害者雇用促進法に基づき、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上