2010年度公務労協情報 40 2010年9月3日
公務公共サービス労働組合協議会

公務員共済の適用範囲の拡大を求め、財務省・総務省と交渉−9/2

 公務労協社会保障専門委員会は、9月2日午後1時30分から財務省、同2時30分から総務省に対して申入れを行った。公務労協側は、松瀬社会保障専門委員長(国公連合書記長)、藤川副事務局長と専門委員が出席、財務省側は、主計局重藤給与共済課長等が対応、総務省側は自治行政局の高原福利課長が対応した。
 交渉の経過は以下の通り。

<財務省交渉の経過>
 冒頭、松瀬社保専委員長は、「国家公務員共済組合の適用拡大を求める申入れ」(別紙1)を手交し、「この間、公務職場で働く非常勤職員の雇用・身分等の差別的取り扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保することを求めてきた。この度、日々雇用職員に代えて期間業務職員を設けることになったのは、一定の前進と考えている。これまでの日々雇用職員と同様に、1月に18日以上勤務する月が12月を超える場合に共済制度が適用となる。他方、勤務時間が常勤職員の勤務時間の4分の3を超えない非常勤職員には、常勤職員でないことから共済が適用されず、1日の勤務時間及び1月の勤務日数が概ね4分の3の場合には厚生年金、健康保険が適用され、これに満たない場合は、使用者負担を伴わない国民年金や国保に加入しなければならない。共済組合制度は、厚生年金・協会けんぽ等に比べて資格要件が厳しくなっており、使用者の責任として、申入れの内容について是非ともご検討をいただきたい。組合側としては、せめて厚生年金・協会けんぽレベルまで改善することが使用者としての責務であると考えている」と、申入れの趣旨を述べ、さらに、以下の点について質した。
(1) 期間業務職員について、要件を満たす場合は共済組合への加入となるが、特に国家公務員共済組合法施行令、運用規則は変えず、常時勤務に服することを要する職員と考えるのか。
(2) 常勤は1ヶ月に18日以上の勤務だが、18日未満の職員に対してはどうなのか。そもそも18日未満の勤務者がいるのか。
(3) 現在、退職手当の支給要件は6月となっている。共済組合への加入を退職手当と同様に6月を超える場合としたときに、制度上、どのような問題があるのか。

 これに対し、財務省は次の通り答えた。
(1) これまでも非常勤であっても勤務時間等が常勤と同じならば共済を適用する仕組みとなっていた。それは、期間業務職員制度となっても同じで、1年間、常勤で働いた実態があれば、新たに法律的な手当をする必要はなく、要件を満たせば加入できる。
(2) 国の会計年度が1年間なので、非常勤職員の任期も一会計年度を基準にするのではないか。なお、1月に18日以上か以内かは一概には言えない。それぞれ異なっている。
(3) 退職手当の支給要件は、昭和34年に1年と制定されたが、それ以前が6月だったので経過措置として当分の間とされたものが現在も残っている。共済は原則の1年は変えられない。非常勤であっても常勤と同じ働き方ならば同じように取り扱うこととなっている。

 さらに、公務労協側が「厚年・協会けんぽについては、資格要件を緩める方向で検討されている。まだ結論は出ていないが、国家公務員の責務等を勘案して共済制度が発足したという経緯はあるが、民間の動向を注視しつつ緩める方向で検討を開始してもいいのではないか。また、期間業務職員の勤務実態を見て、適用範囲を決めるのは各省共済がそれぞれ行うのか。さらに、1年を超え2年目から共済に加入できるとあるが、期間業務職員制度が導入されてからのカウントなのか。それともこれまでの日々雇用の通算で考えてもいいのか」と質したのに対し、財務省側は「共済制度は制約の多さ等公務の特殊性に鑑みて職域部分を上乗せしてある。国の業務運営に関わるということで、期間業務職員制度も人事院の規則を見ても常勤で相当期間雇用するとなっている。国の業務や定員のあり方、非常勤職員や期間業務職員をそこにどう位置づけるのかも課題であるが、現時点では共済の適用について常時勤務の原則を変える必要はないと考えている。しかし、これからは民間の動向も無視できない。申入れの趣旨もよくわかるので、問題提起として受け止めておきたい。また、共済の加入資格要件については、判断するのは各省共済だが、そこはバラツキがないよう各省の共済担当者を集めてしっかりと指導したい。共済加入資格の法令はすでにあるので、期間は各個々人の通算である」旨の見解が示された。
 最後に、松瀬社保専委員長が「本日は、公務労協社保専として初めての共済に関する要請である。これからも前広に意見交換していきたい」として交渉を終了した。
 
<総務省交渉の経過>
 冒頭、松瀬社保専委員長は、「地方公務員共済組合の適用拡大を求める申入れ」(別紙2)を手交し、要請の趣旨について説明を行った。
 続いて、藤川副事務局長が「先ほど、財務省にも国共済の適用拡大を求める申入れを行ってきたところである。国においては、今般、期間業務職員制度が発足し、共済の資格要件に関して、各省で取扱いが異ならないよう人事担当者・共済担当者に説明を行うとしている。各地方自治体には資格要件を満たしている人が大勢いると思われるが、総務省として共済加入に関して何か対策を講じているのか」と質した。
 これに対し、総務省からは「国が期間業務職員制度として一つのルールを作ったということについて、各地方自治体にお知らせはしている。しかし、各自治体にはいろいろな形の非常勤職員がいる。それぞれについて、各任命権者がその実情に応じて制度を適用している。総務省としては共済の加入要件などは適正に運用していただいていると思っているが、改めて何かするという立場ではない。特に、地域主権といわれているなかで、あえて何か言う必要はないと考えている」旨の見解が示された。
 さらに、公務労協側から、「共済の加入要件を、退手法と同じく、6月としてほしい。また、民間(厚年・協会けんぽ)については、資格要件を緩める方向で検討されている。公務においても民間の趨勢を踏まえた対応をとるべきではないか。共済組合は国も地方も財政が厳しい。一人でも組合員を多くして、分母を増やすということは考えていないのか」等を質したのに対し、総務省からは「退手法の6月というのは、財務省からお答えしたと思うが、原則は1年で、経過措置として当分の間6月としたものが今も生きている。したがって、原則に沿っていきたい。要件緩和については、政府から「新たな年金制度の基本原則」が出され、次の段階にいこうとしている。そもそも共済制度が残るかどうかわからない状態では、議論を始めることはできない。しかしながら、共済制度は労使一体の運営を行っているので、運営委員会などで労働側の意見として提起されれば、議論の対象となってくると思っている。組合員を増やすということについては、年金財政にとってプラスになる要素もある。しかし、先ほども言ったが、例外なき一元化の方向性がはっきりしないとなかなか難しい問題である」との回答があった。

 最後に、藤川副事務局長が「今日初めて、共済組合の適用拡大について申入れを行ったが、年金制度の行くすえと相まって重要な課題と認識している。これからも意見交換をしながら良い制度となるようお互いに協力していきたい」と発言し、交渉を終了した。


(別紙1)財務省への申入書

2010年9月2日

財務大臣
 野 田 佳 彦 様

公務公共サービス労働組合協議会
議 長  中 村  讓

国家公務員共済組合の適用拡大を求める申入れ


 平素は、国家公務員の勤務労働条件の改善に関わって、並々ならぬご努力を続けておられることに心から敬意を表します。
 私どもは、この間、公務職場で働く非常勤職員の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保することを求め取組みを続けて参りました。この度、人事院は勧告に合わせ、日々雇用職員制度に代えて期間業務職員制度を導入する規則改正を行いました。それにより、要件を満たす期間業務職員は、国家公務員共済組合の組合員となります。
 これを契機に、下記の通り、国家公務員共済組合の適用範囲の拡大を行うようわれわれと十分交渉・協議を行い、その実現をはかることを申入れます。




1.期間業務職員の共済組合への加入については、退職手当の支給要件と同様に勤務期間が6月を超える場合とすること。

2.国家公務員共済組合員資格を民間の健康保険・厚生年金加入要件と同様にするよう検討を急ぐこと。


(別紙2)総務省への申入書

2010年9月2日

総務大臣
 原 口 一 博 様

公務公共サービス労働組合協議会
議 長 中 村  讓

地方公務員共済組合の適用拡大を求める申入れ


 平素は、地方公務員の勤務労働条件の改善に関わって、並々ならぬご努力を続けておられることに心から敬意を表します。
 私どもは、この間、地方自治体の公務職場で働く非常勤職員の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保することを求め取組みを続けて参りました。
 この度、人事院は勧告に合わせ、日々雇用職員制度に代えて期間業務職員制度を導入する規則改正を行いました。それにより、要件を満たす期間業務職員は、国家公務員共済組合の組合員となります。
 これを契機に、下記の通り、地方公務員共済組合の適用範囲の拡大を行うようわれわれと十分交渉・協議を行い、その実現をはかることを申し入れます。




1.地方公務員共済組合への加入要件を実質的に満たすすべての職員について、共済組合への加入が実現するよう総務省として適切な対応をはかること。

2.地方公務員共済組合への加入については、退職手当の支給要件と同様に勤務期間が6月を超える場合とすること。

3.地方公務員共済組合員資格を民間の健康保険・厚生年金加入要件と同様にするよう検討を急ぐこと。

以上