2011年度公務労協情報 11 2010年12月1日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

総務省へ2011年度基本要求を提出−12/1
−12月中旬には誠意ある回答を示すよう求める−

 公務員連絡会は、1日、総務省に対して2011年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、12月に誠意ある回答を示すよう求めた。この基本要求は、年間を通じた賃金・労働条件改善闘争の考え方に基づいた基本的要求事項を申し入れ、人事院、総務省との議論を行い、2011春季要求の組み立てに結びつけていくために実施したもの。
 総務省への申入れの経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局との交渉経過>
 総務省への「2011年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(別紙)交渉は、10時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、総務省からは平山人事・恩給局次長らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会の大塚副事務局長が「給与法と育児休業法が成立、公布され、給与法の一部が施行され、2010年度の取組みについては一区切りが付いたので2011年度の基本要求を提出する。12月中に誠意ある回答をお願いしたい」とし、さらに「まず基本的な認識として、この間、公務員給与は月例給、一時金ともに引下げが続き、組合員の家計は限界に近づいている。さらに人件費削減が取りざたされていることに加え、事務・事業の仕分け作業や出先機関改革で自ら担っている仕事の将来不安も高まっており、職場では定員削減で業務過重となり心の健康に問題を抱える組合員も増えている。これから説明する要求事項は、こうした厳しい状況を転換するために最低限必要な事項であり、総務省におかれてはその解決に向けて最大限の努力をお願いしたい」と述べ、2011年度要求の重点事項について、次の通り説明した。

(1) 第1は、昨年制定された公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスを実施するためには、公務員を始め公共サービス従事者に社会的に公正な賃金・労働条件を確保する必要があり、そのため人件費予算を確保してもらいたいということである。それを前提として、本年の人勧取扱いの閣議決定で明記された国家公務員の人件費削減について、自律的労使関係制度を法的に措置した上で、削減の必要性について納得できる説明をして頂きたいということ、それから片山大臣が国会でも答弁されているが、十分交渉・協議を行って、合意を前提とすることを強く求めたい。
(2) 独法や政府関係法人の見直し、あるいは国の出先機関の見直しがこれから本格化するが、仮に雇用問題が発生する場合には、政府として統一的な体制を確立して国が雇用に責任を持ってもらいたい。十分交渉・協議を行って、合意を前提とすることを強く求めたい。
(3) 次期通常国会に自律的労使関係制度を措置する法案を提出することになっていることを踏まえて、来年度の給与改定については、人事院勧告尊重の基本姿勢堅持のもと、われわれと交渉・協議を行って公務員労働者の賃金水準を維持・改善するという方針で臨んで頂きたい。
(4) 超過勤務の縮減については、本府省における在庁時間削減の取組みや10月の超勤縮減キャンペーン、管理職の評価基準への部下の超過勤務把握の導入など様々な対策は講じられているが、進展していないのが実態だ。原因追及と新たな対策を講じる必要があり、公務員連絡会との協議に基づいて来年度こそ前に進むよう努力してもらいたい。
(5) 福利厚生施策については、いま基本計画の見直し作業を行っているところであり、公務員連絡会が7月に提出した意見を反映して頂きたい。また、心の健康作り対策を強化してもらいたい。
(6) 定年延長については、人事院から意見の申出が行われた場合に、直ちに法改正作業に着手し、次期通常国会に必要な法案を提出して頂きたい。
(7) 非常勤職員の問題については、本年あらたに期間業務職員を導入したが、雇用の安定と処遇改善に繋がるよう、総務省としての役割を果たして頂きたい。また、非常勤職員は国公法に規定がないので、法律に明確に位置付けて、均等処遇の原則を確立してもらいたい。
(8) 自律的労使関係制度を措置するために、次期通常国会に法案を提出するという政府方針が決定されており、総務省としても積極的に対応して頂きたい。
(9) 昨年から本格的に実施に移された人事評価制度については、まだまだ地方では評価する側が評価制度について十分な理解をしていないということがある。はじめが肝腎であり、今後円滑に活用されるよう、検証のための調査を行って問題を把握して、指導や改善措置を講じてもらいたい。

 また、交渉委員から、「定員が削減され一人当たりの業務量が増えている状況下で、さらに人件費削減ということになれば職員の不満は高まる。良質な公共サービスの提供のために公正な賃金・労働条件と人件費を確保してほしい。また、独立行政法人・政府関係公益法人や国の出先機関の見直しに当たっては、雇用の維持・確保に配慮していただきたい」と重ねて強く要請した。

 申入れに対し、平山人事・恩給局次長は「申し入れは承った。本日は要求書を受け取ったばかりであり、要求事項も多岐にわたっているため、本日の時点での回答は差し控えたい。各要求事項に対する回答については、十分検討の上、しかるべき時期に私から回答する」と回答した。
 これを受けて、公務員連絡会側は最後に、「総務省は、公務員の使用者として人事行政に責任を持つ立場にあるので、使用者の責任において労働条件や勤務環境を整備してもらいたい。申入れ内容を十分精査して、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と改めて要請し、要求提出交渉を終えた。

別紙 総務省への基本要求書

2010年12月1日


総務大臣
 片 山 善 博 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2011年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、緩やかな回復基調にあるものの、雇用は依然として厳しい状況が続き、賃金の下落・低迷により、国内需要は大幅に縮小したままです。格差の拡大と貧困の蔓延もいまだ解消されていません。
 こうした状況のもと、国民の雇用と生活を支えるセーフティネットなど公共サービスへの要請がますます高まっており、これに応えるため、公務員労働者は、日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の増加など公務労働者の労働条件も悪化し、業務遂行にも支障を来しかねない状態にあります。また、事務・事業の仕分け作業や地方出先機関改革で公務員労働者は将来不安を募らせています。
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の確保が必要です。貴職におかれましては、公務員労働者の使用者としてその実現が求められるところです。
 とりわけ、本年の人事院勧告取扱い方針の閣議決定で「自律的労使関係制度を措置する」ことが明記されたことから、その実現はもとより、賃金・労働条件決定について、労働基本権制約の下においても人事院勧告制度を尊重しつつ、労使が十分話し合い、合意することが重要です。
 さて、2011年度の基本要求事項においては、非常勤職員を含めた公務員労働者の雇用・労働条件の確保や実質生活を維持・改善すること及び段階的定年延長の実現を最重点課題としています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与をはじめとする雇用・労働条件確保に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。国家公務員の人件費削減については、雇用・労働条件に直接的に関わることから、自律的労使関係制度を法的に措置した上で、削減の必要性を含め、合意を前提とする十分な交渉・協議を行うこと。
(2) 独立行政法人・政府関係公益法人や国の出先機関の見直しに当たっては、事務・事業のあり方を十分検証するとともに、 見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
(3) ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2011年度においては、民間の実勢を踏まえ、人事院勧告尊重の基本姿勢堅持のもと、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を維持・改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
(1) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
 このため、2011年度においては、政府全体として、超過勤務の縮減に向けた体制を確立し、実効ある超過勤務縮減策を実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(2) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、ワーク・ライフ・バランスの確保を重要な柱として新たに位置づけることを含めて、その抜本的な改善・充実を図ること。「国家公務員福利厚生基本計画」(以下「基本計画」という。)の見直しに当たっては、公務員連絡会が提出した意見を踏まえ、十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 基本計画の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、その原因追及と管理職員の意識改革に努めることとし、心の健康づくり対策や「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(3) 2011年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

四、段階的な定年延長の実現に関わる事項
(1) 65歳までの段階的定年延長を中心とする新たな高齢雇用施策を確立することとし、人事院の意見の申出がなされた場合には、それを尊重し直ちに法改正に着手し、関係法案を次期通常国会に提出すること。
(2) 定年延長に伴って、給与体系・水準や退職手当のあり方等を検討する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

五、非常勤職員制度の改善に関わる事項
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置づけることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて関係法令、規則を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めること。

六、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務における男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、短時間勤務等の取得を促進すること。
(3) 使用者の立場から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行を図るよう指導すること。

七、公務員制度改革に関わる事項
 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、ILO勧告に基づき、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立することとし、次期通常国会で関係法律を改正すること。また、その検討作業に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて抜本的な改革を実現すること。

八、人事評価制度に関わる事項
 人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底に努めるとともに、実施状況を検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

九、その他の事項
(1) 障がい者雇用促進法に基づき、障がいの種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上