2011年度公務労協情報 19 2011年2月2日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

地公部会が春闘期の要求について全人連に申入れ−2/2


 公務員連絡会地公部会は、2日14時30分から、2011春闘期の要求について、全国人事委員会連合会に対する申入れを行った。
 公務員連絡会側は、阿部地公部会議長(都市交委員長)、岡本企画調整代表(自治労書記長)、藤川地公部会事務局長、地公部会幹事が出席し、全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
 冒頭、阿部地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、以下の通り要請の趣旨を述べた。
(1) 地方財政の逼迫、地場民間賃金重視の勧告の下で闘われた昨年の地公確定闘争では、新たに給与カットの提案があった自治体が相当数に上る中、労使交渉の結果、給与カット率や期間を圧縮とした自治体があり、これらは労使交渉を通じた給与決定が大変重要であるとことを認識させた。
 賃金や人員の削減は、組合員の生活や働く意欲の低下にとどまらず、公務公共サービスの低下が深刻化しており、私たちは地方6団体とも協力しながら地方財政確立と地域間格差解消の取組みを進めている。
(2) また、地公賃金に対する総務省のスタンスは、制度は国準拠、水準は民間準拠と、国家公務員キャリアを頂点とする公務員給与の序列化によって、総務省の調査でも国家公務員給与を大きく下回っている。
 しかも財政危機を理由にした、特例条例による賃金削減の自治体は6割を超えており、人事委員会勧告制度が機能不全と指摘せざるを得ない。
(3) 政府は、2010年の人事院勧告の閣議決定にあたり、「国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る。なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する」ことを明記した。この人件費削減措置が実施された場合、地方公務員への大きく影響を及ぼすことが懸念される。
(4) このような下で、国においては、自律的労使関係制度の確立に向け議論が行われており、国家公務員制度改革関連法案が今通常国会に提出される予定となっている。地方公務員の自律的労使関係制度のあり方についても、「国家公務員の労使関係制度に係る措置に併せ、これと整合性をもって、検討する」とされている。現在のスケジュールで進めば、新制度は遅くとも2013年度から措置される予定となっており、準備期間は残されていない。非現業職員に協約締結権を付与し、労使交渉によって賃金を決定する制度に移行することになることから、新たな賃金闘争に備え努力していきたいと考えている。
(5) 人事院は、当初2010年内に定年延長に向けた「意見の申出」を行うことにしているが、今もってそれが行われていない。定年延長は、新規採用に関わる問題でもあり、遅くとも2010年度内に「意見の申出」を行わないと物理的にも間に合わなくなることや、人事院が「意見の申出」を行わなければ各自治体も検討・協議に入ることができず、地方公務員の定年延長実施にも大きな影響を及ぼすことになる。地方公務員においても国に遅れることなく、検討をお願いしたい。
(6) 更に自治体には50万とも60万人ともいわれる臨時・非常勤職員が勤務しているが、劣悪な労働条件に加えて法の谷間に位置している。雇用の安定・均等待遇による労働条件改善について、全人連としても必要な対策をお願いしたい。
(7) 各人事委員会におかれては、本年も、勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることから、基本的な使命を十分認識され対応されるよう要請する。

 続いて、藤川地公部会事務局長が要請書の主な課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
 こうした地公部会の要請に対し、関谷全人連会長は以下の通り回答した。


<全人連会長回答>

平成23年2月2日


 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、最近の社会経済情勢についてですが、去る1月21日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を、「一部に持ち直しに向けた動きがみられる」が、「失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、先行きについては、景気がさらに下押しされるリスクの存在や、デフレの影響、雇用情勢の悪化について注意が必要である、としています。
 また、1月に発表された日銀の地域経済報告においては、全国9地域のうち、7地域において景気判断が下方修正され、景気の足踏み状態が全国に広がったとの指摘がなされています。
 このような中、すでにスタートしている本年の春季労使交渉においては、諸手当や一時金を含めた給与総額の引上げが争点となるものと見られ、その行方が注目されるところです。
 今後、各人事委員会においては、こうした社会経済の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。現在、人事院及び各人事委員会では、本年の民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところです。
 一方、国においては、公務員の自律的労使関係制度や高齢期雇用問題に関する検討が行われているところですが、こうした動きは地方にも大きな影響を与えることから、全人連といたしましても、引き続き、その動向を注視してまいりたいと考えております。  あらためて申すまでもないことですが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しています。
 公務員の給与を取り巻く環境は、大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしていきます。
 全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。


(別紙)全人連への要請書

2011年2月2日


全国人事委員会連合会
 会 長 関 谷 保 夫 様

公務員連絡会地方公務員部会
議 長  阿 部 卓 弥


要 請 書

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 地方公務員の給与を巡っては、逼迫する地方財政の再建を理由に、職員の給与を独自にカットする自治体が後を絶たない状況が続いています。さらに、2010年の人事院勧告取扱いの閣議決定において、いわゆる「深掘り」はせず、勧告通り実施するとしたものの、「人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する」ことが明記されるなど、与野党を問わず公務員人件費削減という政治的な圧力が非常に高まっています。
 連合は、2011春季生活闘争において、賃金水準の復元を追求し、所得と生活水準の低下に歯止めをかけることをはじめとした闘争方針を決定し、運動をすすめています。公務員連絡会地方公務員部会は、こうした闘争方針を全面的に支持し、連合に結集して全力で取組みをすすめています。
 本年の人事院勧告に向けては、50歳台職員の給与見直し、給与構造改革における現給保障の取扱い、65歳までの段階的定年延長などの重要課題が山積していますが、自律的労使関係制度が措置されるまでの間は、労働基本権制約の代償機関としての人事委員会勧告制度を十全に機能させることが重要です。そのために、各人事委員会においては、組合との真摯な交渉・協議を行うよう強く要請します。
 貴職におかれましては、人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。


1.2011年度の給与決定に当たっては、民間賃金実態を正確に把握し、地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。また、給与構造改革に伴う現給保障を堅持するとともに、50歳台後半層の給与見直しについて、一律減額措置は直ちに撤回し、公民較差を踏まえた配分の問題として十分な交渉・協議を行うこと。

2.公民給与比較方法について、現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。

4.臨時・非常勤職員の処遇改善に関わって、人事委員会として可能な対応を行うこと。

5.公立学校教職員の給与見直しに際しては、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示するとともに、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。

6.新たな高齢者雇用施策については、65歳までの段階的定年延長を実現するため、国に遅れないよう必要な対応を行うこと。

7.公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮し、引き続き次の事項の実現に努めること。
 (1) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的施策の推進
 (2) 年次有給休暇取得の促進
 (3) 労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築

8.ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的な休業制度などを実現すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。

9.育児休業・介護休暇の男性取得促進のための必要な措置を行うこと。

10.実効あるセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントの防止策を引き続き推進するため積極的な対応を行うこと。

11.公務職場における障がい者、外国人採用の促進をはかるため、職場環境の整備を 含め必要な措置を行うこと。

12.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。


以上