2011年度公務労協情報 22 2011年2月24日
公務公共サービス労働組合協議会

「公契約条例と公共サービス基本条例制定をめざす中央集会」を開催−2/23
−公務員の枠を超えた熟議で、条例制定の動きを全国化する運動の展開を−

 公務労協は2月23日、東京・ホテルルポール麹町において、「公契約条例と公共サービス基本条例制定をめざす中央集会」(主催:公務労協・NPO事業サポートセンター、後援:連合)を開催した。
 この集会は、公契約条例制定の先進的な自治体の取組みに学ぶとともに、公共サービス基本条例制定に向けた意志統一をはかり、運動の前進を呼びかけるべく実施したもの。集会には、民間労組の仲間も含めて全国から200人が参加した。

 集会の冒頭、主催者を代表して挨拶に立った中村公務労協議長(日教組委員長)は、公共サービスの担い手が行政だけではなくNPOや民間企業など多様化する中、そこで働く労働者、特に現場で働く派遣・請負労働者の賃金・労働条件は劣悪な状況にあり、その改善が急務であること、また質の高い公共サービスを実現し、その持続可能性を高めるための人材を確保するという点からも、公契約条例や公共サービス基本条例の制定が重要であると述べ、取組みの重要性を訴えた。
 主催者挨拶に続き、「公契約条例と公共サービス基本条例制定の今日的意義」と題するシンポジウムを行った。シンポジウムでは、コーディネーターを竹信三恵子朝日新聞社論説委員が、またパネリストを團野久茂連合副事務局長、山根眞智子NPO事業サポートセンター理事、高橋公内閣府「新しい公共」推進会議構成員、勝島行正(社)神奈川県地方自治研究センター事務局長が務めた。

竹信三恵子さん 竹信さんはまず、公共サービスを取り巻く現状として、@財政難にあることA財政削減のため働き手を非正規や委託に切り替えることにより不公正・不透明な低賃金労働の問題を生じていることBそうした状況の下、良質な公共サービスの確保が非常に難しい状況にあることを指摘した。その上で、公務員バッシングによって問題解決の回避を図るのではなく、どのように公共サービスを提供するか、雇用創出により納税者をどうやって増やすかなど、具体的施策の議論をすべきだと述べた。また、非常勤の処遇改善、委託についても公正・正当な労働条件の確保が必要であると同時に、非正規への差別意識を見直し、非正規を含めた新しい賃金体系の構築などについて、正規と非正規が対等な立場で交流を図ることが必要であると述べた。さらに、良質な公共サービスとは何か、どのようなサービスを保障していくのかなど、住民や地域と連携し作り上げていくことが大切であるとし、「条例の制定に向けた運動をその第一歩として、非正規の人々や住民・地域との交流の場づくりを積極的に進めていただきたい」と語った。

勝島行正さん 竹信さんの問題提起を受け、勝島さんは、公共サービスにおける特に地方自治体の現場の状況や、川崎市・野田市をはじめとする公契約条例をめぐる現状について報告した。勝島さんは、官製ワーキングプアの大きな背景には、小泉内閣の下で、公共サービスは「民」で行い「官」は補完的役割を果たすといった政策転換が行われるとともに、労働・雇用分野において「製造業への派遣の導入」「有期労働契約を1年から3年へ」「裁量労働制の拡大」が同時に進められたことにあるのではないかと指摘した。また、財政削減により正規が減らされ非正規が拡大すると同時に、アウトソーシングが広がり、それが賃金引下げに結びついているという現場実態に触れ、「地域の中で何が起きているのか、もう一度問い直し、街づくりの視点でこの問題を考えていくことがとても重要だ。公契約条例はそのための一歩である」と述べた。

山根眞智子さん 山根さんは、「新しい公共」の担い手の1つであるNPOを支援する立場から発言した。山根さんは、NPOへの委託は、従来の予算より低い金額で行われ、そこで働く職員の労働条件・雇用は劣悪な実態にあることを報告し、「本来の『新しい公共』の担い手としての道は険しく遠い」と語った。また地方自治体が政策決定する際、NPOとの意見交換や連携が不足しており、NPOが公共サービスの担い手として認められていない実態にあると訴えた。その上で、「行政と直接サービス受給者と接し、ノウハウやサービス需要の蓄積があるNPOとの協働が生かされるよう、課題や共通認識を対等な立場で論議できる場を設置することが重要だ。条例制定は現状を打破する1つになり得る」と、NPOの立場から条例制定に向け取り組む姿勢を強調した。

高橋公さん 高橋さんは、内閣府の「新しい公共」推進会議の場でもさまざまな公共サービスの提供主体間の連携をどのように進めていくかという議論が開始されている一方で、そのメンバーに労働組合の代表が入っていないことに懸念を示した。今後、推進会議のもとに置かれた専門調査会で議論される「新しい公共」と行政の関係のあり方が重要なポイントであり、公共サービスを担っている現場や労働組合からのヒアリングなどを行い、現場実態を踏まえた検討・取りまとめることが必要であると強調した。また「労働組合は現状をしっかり把握し切れていないのかもしれない」と問題提起するとともに、「公共サービスが安かろう、悪かろうでは、地域がボロボロになってしまう。『新しい公共』の下、公共サービスの質をどのように担保していくのかが重要で、労働組合の役割を再認識した上で、社会に向かって問題提起し、広く語りかけていく必要がある」と訴えた。

團野久茂さん 團野さんは、公契約条例制定に向けた連合の取組みを報告した。團野さんは、今日、労働条件の底上げが連合の重要な役割であるとし、最低賃金や公正取引とともに、公契約の問題もその1つであると語った。また、国・地方公共団体の厳しい財政状況の下、公共サービスの効率化、コストダウンの要請が高まり、公共事業や委託事業等における低価格・低単価の契約・発注が増大しているが、国民はコスト削減はよいことだと考え、それに関わり広く大きな問題が発生していることに気がついていないと指摘した。その上で「連合の役割でもあるが、もう1度、公契約の抱えている課題・問題点を社会に広く周知徹底することがまず大事である」と強調した。労働者の賃金・労働条件の著しい低下といった問題を解決する方策は、第1に、すべての入札者に最低限、現地で定められている特定の基準を守ることを義務づけること、第2に、公契約によって、賃金・労働条件に下方圧力がかかることのないよう、公契約に基準条項を確実に盛り込ませることであるとし、連合としても、2008年6月の中央執行委員会で確認した「公契約に関する連合見解と当面の取組み」に基づき、体制を立て直し、さらに取組みを進めていく決意を述べた。
 最後に竹信さんが「公共性をどのように担保していくかといった議論も含め、非正規や住民、NPO、行政などさまざまな人で集まり、話し合う場を設けることも大切である」と語り、この日をそのスタートとして位置づけることを確認し、シンポジウムを閉じた。


以上