2011年度公務労協情報 24 2011年3月18日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

大震災対策を優先し、春闘回答交渉を延期−3/18

 吉澤事務局長ほか公務員連絡会事務局は、17日午後、村木総務省人事・恩給局長、吉田人事院事務総長とそれぞれ会い、3月23日に予定していた総務大臣及び人事院総裁との春闘要求に対する回答交渉の延期を申し入れた。
 2011春季生活闘争については、2月17日に政府、人事院に要求書を提出し、3月3日には人事院職員団体審議官、総務省人事・恩給局次長との交渉を、3月11日には中央行動を配置し中央集会を開催するとともに総務省人事・恩給局長、人事院職員福祉局長、同給与局長との交渉を実施し、3月23日には最終交渉を予定していたが、3月11日の中央行動の日に東北地方太平洋沖地震が発生した。
 当日は、人事院との交渉を開始する直前に地震が発生し、即刻、交渉支援行動参加者の安全と帰路の確保等を図るため、行動を中止した。交渉については、地震発生直後において、その規模や被害等の情報を知得することができず、予定通り実施した。なお、総務省人事・恩給局との交渉は午前中に実施した。
 地震発生後、時間を経るにつれ事態の深刻さが明らかとなり、各構成組織も対策本部等を設置するなど被災者の救援対策に全力を挙げている。連合も14日の緊急三役会で「連合本部・災害対策救援本部」の設置を決定するとともに、2011春季生活闘争への対応について協議し、「交渉ならびに回答引き出しについては、各産別の自主的判断に基づいて取り組む」ことを確認した。  公務員連絡会としては、国公、地公含め公務員全体で震災対策に優先して取り組むため、23日の回答指定日を延期することとして、総務省及び人事院に申入れたもので、いずれも公務員連絡会の申入れを踏まえ、震災の救援、復旧状況等を見据えながら、改めて日程調整を行うことを確認した。
 なお、3月11日の中央行動及び交渉経過は別紙の通り。


(別紙)
公務員連絡会が2011春闘中央行動実施−3/11
−書記長クラスが総務省・人事院の各局長と交渉し明確な見解を迫る−


 社会文化会館ホールで開かれた3.11中央集会には、全国の仲間1,000人が結集した。先行き不透明な日本経済において、2011春季生活闘争を取り巻く厳しい現状に対する認識を統一するとともに、非常勤職員等を含めた公務部門労働者全体の賃金・労働条件の維持・改善やワークライフバランスの確保をめざし、23日の回答指定日に向け闘う決意を固めた。この日行われた書記長クラスと総務省人事・恩給局長、人事院の各局長との交渉では、公務員労働者の賃金の維持・改善、非常勤職員等の雇用と労働条件の改善、65歳までの段階的定年延長の実現、労働基本権を含む公務員制度改革などを求めたが、取り巻く情勢の厳しさを反映して総務省、人事院の姿勢はきわめて堅く、要求を満たす明確な見解は示されなかった。公務員連絡会では、この日の昼に開いた企画・幹事合同会議で総務大臣、人事院総裁回答の獲得目標を設定し、書記長クラスの交渉経過を踏まえつつ、23日に向けて詰めの交渉・折衝に入ることを確認した。

 13時30分からの中央集会では、冒頭主催者を代表して挨拶に立った棚村議長が、「2011予算案及び関連法案が早期成立するよう要求し、国民生活の安心を公務員労働組合としても要求することが重要だ。公務員制度改革については、労働基本権の回復が盛り込まれた『全体像(案)』が提示された。自律的労使関係の確立は歴史的な改革であり、私たちは一丸となって奮闘しなければならない。総人件費削減の検討は、自律的労使関係制度の法的措置や削減の必要性を含め、交渉協議を通じた合意が前提でなければならない」と訴えた。
 続いて激励挨拶に駆けつけた、国営部会代表の宇田川全印刷書記長は「協約締結権を持つ私たち国営部会は、自主交渉、自主決着を基本として取り組んでいる。争議権を含む労働基本権の確立と自律的労使関係制度の実現に向け、私たちも連帯し、最大限の取組みをすすめている。公務員を取り巻く環境は大変厳しいが、ともにがんばっていこう」と、それぞれ闘う決意を述べた。
 このあと基調提起に立った吉澤事務局長は、「公務員労働組合が60年にもわたり要求してきた自律的労使関係制度の措置は、今通常国会で法案提出が予定されており、この改革案について連合、公務労協の考え方を反映させるよう取組みをすすめてきた。片山総務大臣も『労働基本権は労働者のためのものであり、使用者の人件費削減のためにあるわけではない』と発言している。衆参のねじれや極めて厳しい政局のなかでの法案成立は時間との勝負であり、機を逃さず取り組まなければならない。また、公共サービス基本法は2年前に成立したものの、社会的公正と安心安全の公共サービスの再構築は道半ばであり、取組みを強化し、運動をすすめていこう」と述べ、取組みへの結集を訴えた。
 構成組織決意表明には、国税労組・増永副委員長、日高教・山尾島根高教組書記長、国交職組・倉橋中央執行委員が登壇し、それぞれの組織が取り組んでいる課題を報告するとともに全力で闘い抜く決意を述べた。
 この日行われた総務省人事・恩給局長、人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員と村木総務省人事・恩給局長との交渉は、11時から総務省内で行われた。公務員連絡会側が、本日段階での総務省の見解を求めたのに対し、村木局長は「2月17日に要求書を受取り、その後それぞれのレベルにおいて、皆さんと議論を重ねてきたところである。最終回答は23日に大臣から行うことを予定しているが、本日は、私の立場として申し上げられることについて回答する」として、次の通り答えた。

1 総人件費削減措置等について
(1) 国家公務員の人件費削減については、既に大臣からもお話があったように、具体案がまとまった段階で、よくご説明し、理解が得られるよう、話合いの場を設けたいと考えているので、よろしくお願いしたい。
 なお、自律的労使関係制度の法的措置については、現在、本部事務局において、関係法律の策定作業に向け、改革の全体像を取りまとめているところと承知している。

2 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の処遇改善について、勤務形態については、昨年10月から、新たな期間業務職員制度を導入したところであり、また、本年4月からは、育児休業等の取得も可能となるところである。
 まずは、これらの制度の適切な運用の確保に努めてまいりたい。

3 労働時間、休暇及び休業について
 超過勤務の縮減は、職員の健康、士気の向上はもとより、自己研鑽や家族との時間の確保のために重要であると認識している。
 このため、従来から全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーン等を行っているほか、近時の取組では、@昨年4月から60時間を超える超過勤務手当の割増や、超勤代休時間制度の新設によりコスト意識を持った超過勤務抑制に努めるとともに、A超過勤務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化したところである。
 今後とも、皆様の御意見も伺いながら、引き続き、超過勤務縮減のための取組を進めてまいりたい。

4 人事評価制度について
 制度が円滑に運用されるよう、引き続き、評価者の評価能力を高めるための評価者講座を行うとともに、皆様とも十分に意見交換をしてまいりたい。

5 新たな高齢者雇用施策について
 退職管理基本方針においては、基本法第10条の規定も踏まえ、今後の検討課題として、雇用と年金の接続の観点から、定年の段階的延長について、民間の状況も踏まえて検討を進めることとしており、人事院から「意見の申出」がなされれば、関係機関とも連携しながら、雇用と年金の接続に向け、空白期間が生じないよう政府全体として取り組んでまいりたい。

6 福利厚生の充実について
 現在、見直し作業中の「国家公務員福利厚生基本計画」の改正案においては、心の健康づくり対策について、これまでの対策に加え、「職場復帰の際の受入方針のモデルの作成」や「管理職員に対する教育を徹底すること」など、その充実を図ることとし、予算要求もしているところである。
 いずれにせよ、心の健康づくり対策に当たっては、当局としても十分に配慮してまいりたい。

7 男女平等の公務職場実現等について
 女性国家公務員の採用・登用の拡大については、各府省に対し、これまでも「人事管理運営方針」や「採用昇任等基本方針」において、その促進を要請しているところであり、昨年、基本計画(第2次)に基づくフォローアップ結果を公表するとともに、各府省に対し更なる取組を要請したところである。
 今後とも、国家公務員法に定める平等取扱と成績主義の原則に基づきながら、意欲と能力のある女性国家公務員の採用・登用の拡大を政府全体として進めてまいりたい。

8 労働基本権確立を含む公務員制度改革について
 基本法に基づく公務員の労働基本権に関する制度の検討については、先ほど申し上げたとおり、現在、本部事務局において、改革の全体像を取りまとめているところと承知している。
 総務省としても、制度の検討に当たって、連携・協力してまいりたい。

9 退職手当制度の見直しについて
 現在、来年度に民間企業退職給付実態調査を実施することについて準備中であり、その結果を踏まえ、来年の通常国会に退職手当法改正案を提出することについて検討中である。
 いずれにしても、退職手当は職員の重要な関心事項であり、検討に際しては職員団体からの御意見は十分伺ってまいりたい。

 局長の回答に対し、公務員連絡会側は次の通り総務省の考えを質した。
(1) 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について、昨年の大臣回答では、「日々雇用非常勤職員制度の見直しを契機に、さらに踏み込んで検討することを約束する」とあり、昨年10月から期間業務職員制度が導入されたが、その後の検討状況はどうなっているのか。国の非常勤職員について法律上明確にし、処遇改善をはかるよう努めてほしい。連合の春闘方針を踏まえた非正規職員の時給40円引き上げ要求についても、真摯に受け止めて欲しい。
(2) 超過勤務の縮減についても、昨年大臣から「検討チームをつくる」などのメッセージをもらったが、それに対する取組みはどうなっているのか。
(3) 12月7日に閣議決定された「独立行政法人の事務・事業の見直し」では「雇用問題に配慮する」とされ、「アクションプランに基づく国の出先機関の見直し」では「人材移管について体制を整備する」ことにしているが、総務省はどう関わっているのか。職員からすれば、生死に関わる問題であり、雇用確保についてしっかり配慮してほしい。
(4) 3月1日の閣僚懇談会で総務大臣が各府省に業務の見直しによる定員削減を検討するよう指示しているが、昨年も新採用抑制を行うなど定員を相当減らしているが成果が上がっていない。現場では大変混乱している。そのことを大臣に伝え明確な回答をいただきたい。
(5) 職域年金部分を含めた退職手当の問題について、民間企業退職給付実態調査の検討状況はどうなっているのか。

 これらに対し、村木局長は次の通り答えた。
(1) 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善については、昨年10月から導入された期間業務職員制度を導入したことが最大の成果であり、本年4月から本格的な実施となる。この制度をしっかり定着させていくことが当面の課題であり、その過程で問題点が見つかった場合には、皆さんの声を聞きながら修正していく。非常勤職員の問題は公務員制度改革のなかで検討すべき課題であるが、そこまで議論が高まっておらず、今後の改革のステップのなかで問題整理をしていくことになるのではないか。
(2) 超勤縮減について、各府省から取組み状況を聞いており、それを踏まえて総務省としても改善すべき点がないかどうか検討を進めている。引き続き、皆さんから知恵を出してもらって、超勤縮減対策の勉強会を続けていきたい。
(3) 独立行政法人や国の出先機関の見直しに関わる雇用の確保について、担当大臣は総務大臣だが、事務局は内閣府であり、人事・恩給局としては直接関わっていない。アクションプランにおいては、「職員の雇用に配慮する」と明記されているが、政府部内で出先機関見直しの内容や時期については具体的になっていない。独法の見直しについても、全面廃止か国の直轄に戻すかの議論もあり、その方法については明確でない。こうした状況においては、「雇用の確保」という理念をきちんと掲げて、人事行政を所管している範囲でできる限り努力したい。
(4) 定員削減の問題については、「各府省の業務の徹底的な見直しにより、職員の雇用の確保に配慮しつつ、業務、組織、定員の徹底的な見直しを行う」というのが政府の方針であり、人事制度や公務員制度などこれまでの取組みの経験を活かし、現場職員の大変な不安感や自発的な話合いができないかということについて行政管理局に伝えたい。
(5) 退職手当の問題については、基本は前回の調査方法を踏襲し、国については総務省、民間については人事院が調査を行う方向で調整を進めている。皆さんからのご意見は、調査の大枠については人恩局が対応することとしたい。

 さらに、公務員連絡会側は、「組合も人事評価制度のアンケートを実施し、課題を整理している。総務省の人事評価制度の調査結果と組合のアンケート集計を合わせ、問題点を洗い出し、公正な人事評価制度の構築にむけて努力していただきたい」と要請した。

 最後に、吉澤事務局長が「23日の最終回答に向け、積極的な検討を重ねてもらいたい」と強く要請し、本日の交渉を終えた。


<人事院職員福祉局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、11日午後に、人事院内で桑田職員福祉局長と交渉を行った。
 冒頭、桑田局長が「先般ご提出いただいた皆さんからの要求については、3月23日に予定している総裁回答に向けて検討を行っているところである。本日、私の方からは、職員福祉局関係の要求に関する現段階における検討状況について、回答させていただく」として次の通り考え方を示した。

1 労働時間等について
(1) 超過勤務の縮減については、政府全体として計画的に在庁時間削減に取り組んできたところである。今後の取組みについて、政府内で現在検討中であるが、人事院としては、今後も、在庁時間の縮減に取り組んでいく必要があると考えており、また縮減に協力していきたい。
(2) 超過勤務縮減のため平成21年2月に他律的業務に係る720時間の目安時間を定めたところであるが、この指針のフォローアップとして、今般、超過勤務が年間720時間を超えている職員数が多い主要省(5省)を対象として、長時間の超過勤務をしている職員の状況、具体的な業務の種類、健康診断や面接指導の状況、早出遅出勤務の活用状況などについて聴取を行った。
超過勤務が多い要因としては、新規施策や緊急業務への対応のほか、国会関係や予算関係などの他律的な業務による要因が指摘されたところである。また、その場において、各省の状況に応じた指導や助言等を行ったところである。
 人事院としては、こうした実状を踏まえつつ、引き続き超過勤務の縮減に取り組んで参りたいと考えている。
(3) 超過勤務代休時間については、昨年4月に、特に長い超過勤務を命ぜられた職員に休息の機会を与えるために導入したところであり、まずは各府省において適切に活用されることが重要であり、そのための運用状況の把握に努めて参りたい。
(4) 非常勤職員に対する育児休業、育児時間及び介護休暇の各制度については、本年4月の施行に向け、2月に改正人事院規則等を公布し、各府省の担当者等を対象に、説明会を開催したところである。さらに、今月中に制度周知のためのリーフレットの配布等を行うこととしている。今後とも各府省において新しい制度が円滑に活用されるよう、その内容の周知、指導等に努めて参りたい。
(5) 介護のための短時間勤務等についても要望を受けている。人事院としては、職員の休暇、休業等については、民間の状況等を踏まえながら必要な見直しを行ってきたところであり、ご要望については引き続き民間の状況等を注視していきたい。

2 男女平等、福利厚生施策等について
(1) 人事院は、第3次男女共同参画基本計画を踏まえ、本年1月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を策定したところである。各府省は、同指針に基づき「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定しているところであるが、その取組が実効性のあるものとなるよう人事院として積極的に支援し、また、その取組をフォローアップして参りたい。
(2) 職業生活と家庭生活の両立支援策に関しては、人事院は平成19年8月に育児のための短時間勤務を導入し、また、平成22年6月に配偶者の就労状況にかかわりなく夫婦が同時に育児休業を取得できる制度等を導入するなど両立支援制度の充実を図ってきたところである。今後ともこうした制度の利用促進も含め、人事院としての役割を果たしていきたいと考えている。
(3) 心の健康づくり対策については、指針を定めるほか、相談窓口の設置、研修の実施など施策の充実に努めている。また、「円滑な職場復帰及び再発防止のための受入方針」を全面的に改正し、それに基づく「試し出勤」について各府省に周知するなど円滑な職場復帰の推進を図っているところである。
 さらに、各府省における心の健康づくりの施策の効果的な実施を図るため「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」を新たに設置し、本年1月に第1回会議を開催したところである。今後、年2回程度、開催していきたいと考えている。
 これからも、各府省の心の健康づくり対策の支援を行っていく所存である。
(4) 労災保険制度においては、精神障がい事案の審査の迅速化、効率化を図るため、昨年10月から専門検討会を開催していると承知している。国家公務員の災害補償制度においても、専門検討会の検討状況に対応し必要な検討を行って参りたい。

 以上の回答に対して公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 上限目安時間720時間を超える職員が多い主要省を対象に事情聴取し、指導や助言等を行ったということだが、具体的に何が問題で、どのような指導を行ったのか。超勤実態は全くと言っていいほど解消されておらず、人員削減の影響などもあり、より深刻になっている。超勤の実効ある縮減策が必要で、第三者機関である人事院に期待している。公務員連絡会も知恵を絞っていくので、人事院としても一歩踏み込んだ取組みを行っていただきたい。
(2) 非常勤職員に対する育児休業等について、使う側にとって有効な制度となるように人事院として努めてほしい。
(3) メンタルヘルス対策について、心の健康づくり対策の指針を定め、「円滑な職場復帰及び再発防止の受入方針」を全面的に改定し、取組みを進めていることは評価する。今後も、実効ある対応をお願いする。
(4) メンタルヘルス対策は、事後的対応とともに発生させない予防の観点も大切だ。そういった意味でも、レクリエーションを含めた福利厚生施策の充実が重要だ。人事院として、民間の福利厚生施策の状況をしっかり把握し、積極的に取り組んでもらいたい。

 これらの質問に対し、局長は以下の通り答えた。
(1) 主要府省からの聴取で、超勤が多い要因としては、新規施策や緊急業務への対応、国会関係や予算関係などの他律的な業務による要因が指摘された。管理者に超勤状況を人事課に定期的に報告させるとともに改善策を求めたり、超勤時間が長い者に早期退庁を指導するなどのほか、健康診断もかなり丁寧にやっている。一方、長時間勤務者を対象とした医師による面接指導は職員からの申出が原則になっており、希望する者が少ない実態にあることから、積極的に受けるよう対象職員に働きかけるよう指導した。また、早出遅出勤務の活用状況もやや低調な状況にある。人事院としては、さまざまな早出遅出のパターンを示し管理職から周知することなどを求めるなど、各省の状況に応じた指導や助言等を行った。720時間を超える職員数は、平成20年度、平成21年度のいずれも1.8%となっており、今後も引き続き、問題意識を持ってヒアリングや指導を行うなどフォローアップしていきたい。
(2) 心の健康づくり対策については、「試し出勤」を含め改定内容等を各府省に説明してきたところである。「試し出勤」については、すでに別の形で実施しているところが2割、導入の予定が3割、検討中が3割と、各府省とも動き出している。メンタルヘルス対策は、総裁も問題意識を持っている。国家公務員においては若い女性がメンタル不調になる率が高く、4月から人事院に女性専用相談室を設けることを考えている。また管理監督者の指導として、平成18年に研修教材を作ったが、現状を踏まえた改定作業を進めており、新年度からこれを用いた研修を行うことにしている。
(3) 民間の福利厚生施策については、昨年総務省の研究会が調査し実態把握しているが、まずは管理職の研修を充実するなど、メンタル不調に陥らない手当てに力を入れていきたいと考えている。

 最後に、吉澤事務局長から「様々な課題があるので、23日の総裁回答までに十分検討し、前向き回答をいただきたい」と強く求め、職員福祉局長交渉を締めくくった。


<人事院給与局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、職員福祉局長交渉に引き続いて、尾西給与局長との交渉を行った。冒頭、吉澤事務局長が回答を求めたのに対し、尾西局長は、次の通り考え方を示した。

1 今年の民間春闘等の状況について
(1) 今年の民間経済の状況について最近の内閣府の月例経済報告などをみると、景気は持ち直しに向けた動きがみられるものの、失業率が依然高い水準にあり、引き続き厳しい経済・雇用情勢であるといえよう。
(2) そうした状況の中で、連合は、統一的なベア要求は行わないものの、賃金カーブの維持、1%を目安とした配分を求める方針を掲げ、その方針の下で各民間労組が取り組んでいる。一方、経営側は、日本経団連が「経営労働政策委員会報告」において、「国内事業立地の維持を図ろうとすれば、賃上げより雇用を重視した交渉が重要」であり、「今次労使交渉では、定期昇給の維持を巡る賃金交渉を行う企業が大半を占めると見込まれる」との考えを示している。
(3) このような状況から、今年の民間春闘は引き続き厳しい交渉になると考えられるが、いずれにしても、今月16日の集中回答日以降の春闘の回答の状況など注視していきたい。

2 本年の勧告に向けての基本姿勢について
(1) 公務員給与について、人事院としては、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その両者の給与の精確な比較を行い、較差を解消することを基本に勧告を行うという基本姿勢に変わりはない。
(2) 平成18年度から実施してきた給与構造改革は、平成22年度で当初予定していた施策の導入・実施をすべて終了したところである。給与構造改革の諸施策については、引き続きその成果を検証して参りたい。また、新たな見直しの検討に当たっては、皆さんのご意見を伺って参りたい。
(3) 50歳台の給与については、昨年の勧告時の報告において「特に官民の差の大きい50歳台後半層を中心とする50歳台の給与の在り方について必要な見直しを行うよう検討する」旨を表明しているところであり、本年の勧告における主要課題の一つと考えている。見直しに当たっては、給与構造改革期間が本年度で終了することも踏まえ、経過措置の在り方も含めて検討しているところである。本年の勧告の具体的な内容については、今後、皆さんと意見交換を行って参りたい。
(4) 諸手当については、民間の状況、較差等を踏まえ、対応していきたい。
(5) 1ヶ月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、昨年は民間企業における時間外労働の割増賃金率の状況から、公務において超過勤務手当の支給割合を引き上げる状況にないと判断したところであるが、今後とも民間における動向を検証して参りたい。

3 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員については、その職務内容、任用形態、勤務時間等など多種多様であるため、給与を統一的に定めることは困難であるが、今後とも、平成20年8月に発出した指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう取り組んで参りたい。

4 人事評価制度について
 平成21年4月に導入された人事評価制度については、公正・適正に実施されるよう、研修などを通じて各府省を支援するとともに、評価結果の活用が適切に行われるよう各府省に対して指導等を行っているところである。今後、各府省における実施状況等を把握した上で、人事行政の公正の確保や職員の利益保護を図る観点から、人事院としての役割を適切に果たしていきたいと考えている。

5 高齢期雇用問題について
(1) 高齢期の雇用問題については、平成25年4月から段階的に65歳まで定年を延長することを目指すとの方針に変更はない。
(2) 現在、昨年12月にお示しした「高齢期雇用問題に関する検討状況の整理」に対する職員団体及び各府省からの意見を踏まえて、鋭意検討中である。検討は、定年延長に伴う60歳台前半職員の給与の在り方、役職定年制、60歳以降の働き方等の意向を聴取する仕組、加齢に伴い就労が厳しくなる職務の取扱い、定年延長に伴う新たな短時間勤務など広範囲に及んでいるが、特に、60歳台前半職員の給与、役職定年制などについて、精力的に検討を進めている。
(3) 現状は以上のとおりであるが、意見の申出には、更に一定の時間を要さざるを得ず、公務員連絡会の皆さんの要望である今年度内の意見の申出については、困難と申し上げざるを得ない。
(4) 今後、職員団体及び各府省からいただいたご意見を踏まえつつ、人事院としての素案をできるだけ早期に皆さんにお示しし、意見の申出に向けての議論を深めたいと考えている。
 その後の見通しについて現段階では明言できないが、意見の申出に向けての検討を急いで参りたい。

 回答に対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 公務員給与について、官民比較企業規模は現行通りとすることを確認したい。その上で、ここ数年、官民較差に基づく配分問題をほとんど議論できないまま勧告となっているが、較差の大きさに関わらず、配分に関わる丁寧な議論をお願いする。
(2) 50歳台後半層の給与について、昨年、配分の問題としてしっかり議論すべきと主張してきたが、年齢による引下げ措置が一方的に行われたことは納得できない。いったん白紙撤回すべきだ。50歳台の給与のあり方について、ニュートラルにお互い真摯に議論し、その上で具体的にどうするか検討すべきだ。昨年のように合意なしに一方的な措置を行わないことを強く求める。
(3) 非常勤職員について、期間業務職員制度の導入や育児休業等の適用など、改善の第一歩を踏み出したことは評価するが、未だ課題も多く残されている。非常勤職員給与指針の遵守を直ちに徹底した上で、さらにその改正を含めた非常勤職員制度の改善を早期に行うことが必要だ。社会正義として要求しているので、総裁回答のなかで検討してもらいたい。
(4) 段階的定年延長に向けて、「皆さんのご要望である今年度内お意見の申出は困難」とのことだが、そもそも昨年末までに意見の申出を行うということを国民にもオープンにし、公務員連絡会とも約束してきたのは人事院だ。年内見送りに対して、年度内に意見の申出を行えという公務員連絡会要求はギリギリのものだ。昨年末までの意見の申出を見送ったことで地方自治体は大混乱している。どのようにけじめをつけるつもりか。2013年度から実施しなければならない現実や地方公務員300万人の重みもしっかり認識した上で、意見の申出の具体的時期など明確にすべきだ。

 これに対し尾西局長らは次の通り答えた。
(1) 比較企業規模については変えることは考えていない。民間調査は従来通りの比較業規模で行う。配分議論の話はよく理解した。しっかり話し合っていきたい。
(2) 人事院としては、昨年の50歳台後半層の給与引下げ措置については十分説明したと考えている。50歳台の給与をどうするかは定年延長を実施するための環境整備の側面があるほか、50歳台の官民格差がなお広がっている怖れもあることから、放置することはできない。昨年の措置に皆さんが不満を抱いていることは理解しているが、すでに制度として動いているので撤回することはできない。50歳台の給与については、昨年の勧告時の報告を踏まえ、夏に向けた課題として、今後議論をお願いしたい。
(3) 非常勤職員の給与について、ごく僅かであるが、指針を満たしていないところがあり、予算措置も含めてしっかりやるよう指導しているところである。非常勤職員の処遇改善については、まず指針に沿った適切な運用を確実にしていくことが必要であると考えているが、皆さんの要求を受けて、給与以外のことを含めて今後議論させていただきたい。
(4) 段階的な定年延長の実施に向けた意見の申出について、昨年末の段階では各府省において定年延長後にどのような人事管理を行うのか、役職定年をどうするかも含めて将来展望が描けず、意見集約するまで至らなかった。各府省における一定のコンセンサスが得られなければ踏み込むわけにはいかず、昨年中に意見の申出ができなかったことは残念であり、誠に申し訳なく思う。現在、昨年末に示した「検討状況の整理」に対する各府省からの意見を集約し、素案づくりに努めている段階である。素案に基づいた議論を行い、できるだけ早く意見の申出を行えるよう努めていく。

 最後に吉澤事務局長が「今日の回答では、まだまだ課題が残っている。特に定年延長や非常勤職員の処遇改善に対する回答は納得できない。総裁回答では意見の申出の実施時期を含め、より具体的な回答をお願いしたい」と強く求め、給与局長交渉を締めくくった。

以上