2011年度公務労協情報 34 2011年5月19日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政務官交渉で職場組合員の切実な声を訴える−5/19
−公務員連絡会は政務官との交渉に区切りをつけ、大臣との交渉に臨むことを表明−
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、19日午後、国家公務員給与引下げ案について、2回目の内山総務大臣政務官交渉を実施した。冒頭、政務官から17日の交渉において「後日回答する」としていた事項に対する回答を受けて、国公組合各書記長が現場組合員の切実な声を口々に訴え、行政職(二)、医療職(三)職員や東日本大震災における被災職員、若年層や家計負担が大きい中堅職員などへのさらなる配慮を強く求めた。これに対し政務官は「国家公務員が自らも被災しながら、被災地で懸命に業務を遂行されていることには頭が下がる思いだ」「再度の引下げはまったく考えていない」「全体像については皆さんと相談しながら進めたい」「皆さんの意見を聞かせてもらったので、しっかりと誠意を持って全力で努めていきたい」との考えを示した。
 最後に、吉澤公務員連絡会事務局長が@交渉を通じて労使関係において決着するという姿勢が貫かれたこと、A削減原資の活用についてもしっかり話してもらったこと、B現場で懸命に従事している国家公務員の切なる声について、改めて政務官、大臣に受け止めてもらいたいが、交渉においては一貫して誠意ある対応をしてもらったこと、を確認し、政務官との交渉を打ち切り、最終的な大臣との交渉に臨むことを表明し、交渉を締めくくった。
 公務員連絡会としては、政務官交渉で確認したことや課題を整理した上で来週からの大臣交渉に臨むことにしている。
 2回目の内山総務大臣政務官との交渉の経過は次の通り。

<内山総務大臣政務官との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、15時から、総務省内で内山総務大臣政務官と交渉を行った。冒頭、政務官から17日の交渉で後日回答するとしていた課題について、次の通り回答があった。

1.地方公務員、独立行政法人等の職員の給与、予算措置の取扱い、その除外期間について
 地方公務員の給与は、地方公務員法の趣旨を踏まえ、それぞれの地方公共団体が条例で定めるものであることについては、総務大臣から既に回答したとおりである。総理、財務大臣をはじめ、関係閣僚にその考え方をお話しした上で、交渉に臨んでいる。政府としての方針であると受け止めていただいて結構であり、この点について、不要な誤解が生じないように努めたい。
 今回の措置と併せて、地方公務員の給与について、国と同様の措置を前提とした財政措置を取るつもりがないことは既に回答したとおりである。
 また、今回の国家公務員に係る時限的な給与削減措置と同様の措置を地方公務員の給与についても一律に実施するよう、総務省が地方公共団体に対して要請することは考えていない。
 独立行政法人の職員の給与は、各法人において労使交渉により決定されることとなっている。一方、独立行政法人には公的性格があり、運営費の多くを国庫に依存しているということもあり、国の職員の給与見直しの動向も見つつ、法人の自律的・自主的な労使関係の中でしっかり議論して欲しい。

2.給与削減の必要性(財政事情、復興財源、歳出削減)
【財政事情】
 我が国の現下の財政状況は極めて厳しく、3年度連続で一般会計税収が公債発行額を下回っており、平成23年度当初予算においては、一般会計税収が40.9兆円であるのに対して、44.3兆円を公債に依存している状況だ。また、公債依存度は47.9%、公債残高668兆円にのぼるなど、主要先進国のなかで最悪の水準であり、財政の健全化は逃れることのできない課題となっている。
【復興財源】
 更に、東日本大震災に対処するため、年度早々に編成した4兆円規模の第1次補正予算に加え、今後、本格的復興のために必要な第2次補正予算を編成することとしており、財政事情は更に厳しくなることが見込まれ、歳入歳出の更なる見直しが必要となっている。
 17日に閣議決定した「政策推進指針」においても、「従前からの大きな課題である財政・社会保障の持続可能性の確保、信認維持の必要性は、大震災によって更に高まっており、着実な取組を進める」との基本方針の下、今後3年程度の措置として、「震災復興に必要な財源確保、社会保障・税一体改革を実行に移す」こととされており、財政規律を維持しつつ、復興財源を確保することが課題として示されている。
【歳出の見直し】
 これまで、政府は、財政運営戦略(平成22年6月22日閣議決定)を策定して財政健全化目標を設定し、平成23年度当初予算案の編成にあたっては、事業仕分け結果の反映等による歳出の見直しや公共事業費の縮減を行うなど、財源確保、財政規律の維持のための努力を行ってきた。
 更に、第1次補正予算の編成にあたっては、東日本大震災関係経費約4兆円に必要な財源を確保するため、成立したばかりの予算について見直しを行い、約3兆7千億円の既定経費の減額を行っている。その減額対象には、民主党マニフェストに掲げた重要施策である子ども手当や高速道路原則無料化社会実験のための費用のほか、議員歳費なども含まれている。
【まとめ】
 このように、我が国の財政事情は極めて厳しい状況にあり、さらに今般の東日本大震災への対処を鑑みると、更なる歳出削減は不可欠である。国家公務員の人件費についても例外ではない。
 現在の人事院勧告制度の下では極めて異例ではあるが、自律的労使関係制度への移行を先取りする形で、皆さんの理解が得られるよう十分話し合った上で、一定期間給与の引き下げを行うこととしたいので、ご理解とご協力をお願いしたい。

3.10%、8%、5%削減の根拠
 厳しい財政状況や今般の東日本大震災への対処に巨額の費用が必要となることが予想されることに鑑みると、職員の皆さんの生活にも配慮しつつ、最大限の協力をお願いすることとして、10%を基本としている。
 10%については、給与カットを行っている地方公共団体の中でも、最も厳しいところを参考に設定したものである。
 係員クラスについては、平均俸給額が約20万円と給与額が少ないことを考慮し、毎月の俸給部分について、今回の引下げの基本方針である1割カットの半分である5%カットをお示しした。  課長補佐、係長クラスについては、1割カットの基本方針をベースに、係員クラスとの逆転が生じないよう8%カットをお示しした。

4.被災した職員への配慮
 東日本大震災では、仕事自体を失った方々も数多くいらっしゃり、このような方々を含め、被災者全体への生活支援対策や復旧・復興対策については、政府として全力で取り組む。
 国家公務員が自らも被災しながら、被災地で懸命に業務を遂行されていることには頭が下がる思いであり、今回の給与引下げについては、大変心苦しく思うが、是非とも協力をお願いしたい。

5.給与引下げのマクロ経済的な影響
 一般論として、所得の低下は個人消費の減少要因の一つであると考えている。
 一方で、東日本大震災の被災者の生活支援対策や復旧・復興対策については、政府として全力で取り組んでいる。今後、今回の給与削減分も財源となり、政府の復興政策が実施に移されれば、全体として景気に対してプラスの効果が期待されると考えている。

6.生活の見直しが必要であり施行時期への配慮
 皆さまからのご指摘を踏まえ、給与額の少ない中堅・若手層の月々の給与については、一定の配慮を行ったカット案をお示ししたものであり、ご理解いただきたいと思う。
 法律の成立後速やかに施行されるべきものであるとは考えているが、各省庁における給与支給事務に支障がないようにとの観点からも、どの程度の準備期間が必要か検討したい。

 回答に対し、公務員連絡会側は、「回答は大変厳しい内容だ。今回の提案は、今でもギリギリの水準でやりくりしており、給与削減が実施されれば生活できないという組合員の声は多く、憤りを感じる。現場からの声を受け止めてほしい」と強く訴え、次の通り内山政務官を追及した。

(1) 厳しい財政状況を含めた背景事情は承知しているが、なぜその責任を国家公務員が負わなければならないのか理解できない。独立行政法人運営交付金等の予算措置の取扱いについて、交付金が国庫金であるからといって、今回の国の取扱いに独法を準じさせる措置は許されない。あくまで各法人の自律的労使関係による交渉で決定していくことだ。
(2) 今回の提案は、平成25年度末まで削減することとしている。にもかかわらず、国会議員の歳費については月50万円6ヶ月の返納だけであり、これでは納得できない。
(3) 削減率を3段階にしているが、より丁寧な削減率を設定するべきではないか。たとえば、10%の事務次官と8%の3級係長とでは100万円以上の賃金の格差があるにもかかわらず、たった2%しか差がない。3級職員は1級、2級職員と世代も給与水準も大きく変わらないのに削減率に差が出ており、応分の負担と言えない。削減の配分に問題がある。行政(二)、医(二)(三)については、そもそもの俸給額も低く、これらの職員は職務に応じた傾斜削減率となっても厳しい。この点をしっかり受け止めてほしい。
(4) 給与削減の実施期間は、平成25年度末までとのことだが、本当に臨時異例の措置なのか。今回の給与削減以降も、財政事情や震災対策を理由に、さらなる給与削減が繰り返され、マイナスのスパイラルに落ち込むことになるのではないか。今回の引下げ提案は「極めて異例」ということであり、2度目はないことを明確にしてもらいたい。
(5) 施行時期について、法案成立後すぐに施行となれば、収入減でやりくりがつかず多くの組合員の生活が成り立たない。時期について、もう一度検討いただきたい。
(6) 被災地の国家公務員の取扱いについて除外することはできないとの回答だが、被災地へ配慮した心ある回答をしてほしい。
(7) 職務に応じて削減率を細分化するべきであり、一時金についても傾斜配分で削減率を設定するべき。また、俸給と連動する手当である超過勤務手当については、この間、月に100時間超過勤務をしても全額は支払われないという実態があり、削減の対象にすべきではない。
(8) 給与は、公務という業務に対するモチベーションであり、仕事をしているプライドへの対価である。日々の業務によって公共サービスを評価されているとも感じている。こうした私たちの思いも理解してほしい。
(9) 政権が変わり基本方針が変わっても、国も地方も定員削減の考え方は変わらずずっと続いている。純減については行う状態ではないとの回答だが、交渉の内容をしっかりと受け止めていただき、定員削減を凍結してもらいたい。
 また、昨年の人勧において、55歳を超える職員について1.5%の給与削減が行われ、それ自体も問題であり、今回はその水準をベースにさらに引き下げることになるのは反対だ。
(10) 人勧の有無にかかわらず、給与削減終了の期間まで提示された給与削減率に変更はないか。
(11) 俸給月額に連動する諸手当を削減の対象としているが、成績査定で決まる勤勉手当を対象することや地域間格差の調整として位置づけられている地域手当を対象とすることは、それぞれの手当の本来の目的に反し、問題だ。

 追及に対し、内山政務官らは次の通り応えた。
(1) 独法の運営費交付金等については、予算査定の問題であり、われわれからどうこうということにはならないが、労使での話合いのもとで労働条件決定するのが基本だ。
(2) 国会議員の歳費については、6ヶ月の歳費削減の後も、さらに10%削減等も検討されている。いずれにせよ、国会で判断されることだ。
(3) 削減率については、職員の生活面を配慮し、平均的な家計状況、厳しい給与削減を実施している地方公共団体の水準を考慮し全体のバランスをみて決定した。削減率は、削減幅の設定によっては若年層と中堅層で給与の逆転現象が生じることも理解してほしい。また、行政職(二)及び医療職(二)(三)については下位級に多くの職員が在職し、削減率が5%の職員が多いことで了解いただきたい。
(4) 今回の給与削減は一定の期間支給額を減額する特例法での措置で、削減の実施期間は平成25年度末までであり、特例法が失効すれば、削減措置はなくなる。平成26年度以降については、労使交渉で決めることになりその時々の状況で決定していくことになる。再度の引下げはまったく考えていない。
(5) 施行時期については、生活設計の見直しや事務・実務等どの程度の準備期間が必要かを含めて検討したい。
(6) 被災地の国家公務員の取扱いについて除外措置はとらないが、国の被災者への支援措置による様々な取組みで対応する。
(7) 超過勤務の必要な予算措置については、大臣からも答えているように具体案を検討することにしているので、ご理解願いたい。
(8) 削減分は震災復興に有意義に使われるため、モチベーションを下げることなく、しっかり業務に取り組んでいただきたい。
(9) 55歳を超える職員の給与については、2010人勧で改定された水準が現行の仕組みなので、そこから引き下げることになる。
(10) 給与削減率については、皆さんと合意した内容で平成25年度末まで変更はない。人勧制度が置かれている現在においても、この交渉は大変重要なもので、皆さんとの合意が優先される。
(11) 諸手当の削減については、固定的な手当は削減せず俸給と連動する手当は削減するという整理にした。これは広く国民に理解されること等を考慮したもので、ご理解いただきたい。

 また、吉澤事務局長は、「総人件費2割削減」「給与1割削減」の根拠と給与以外のメニューを含む全体像について、次の通り、政務官に確認を求めた。
(1) 2割の総人件費削減と今回の給与1割引下げの根拠について、そもそもの起点は民主党のマニフェストだが、結果が2割になると認識してきた。1.1兆円であり、これは子ども手当をはじめ様々なマニフェスト政策実現の原資として人件費も協力してもらう趣旨と理解する。一方、その時々の様々な問題、大震災以前の段階では雇用や生活保護増への対応があった。さらに今回の大震災への対応を緊急的にやらなければならないことになった。したがって、この給与削減はマニフェストを出発点としながらも、現下の厳しい財政事情の下で、今日の社会情勢に対応した政策実現を目的とすることに大義があると理解する。だからこそ、大臣がおっしゃるように、結果として、財政政策の観点から復旧・復興に活用するということが成り立つし、いつまでという期限の意味が理解できる。
 1割については、財政論では、地方公務員の場合はこれだけ足りないから1割カットだという客観性があるが、国家公務員の人件費を考えると5兆円をゼロにしても焼け石に水というのが国の財政事情だ。したがって財政論ではなく、労働基本権制約の下で、極めて異例の措置として、いま交渉しているが、これに先行して苦渋の対応という歴史を作ってきた地方の経験を参考に提案されていると理解する。こういう理解でよいか。また、今後の発信について、大臣もおっしゃっているように、結果として、復旧・復興に充てられるという観点でしていただきたい。
(2) 大臣が国会で給与についての措置を明らかにする段階で残りのメニューを含めた全体像を示すということをおっしゃっている。これについても法案提出時が想定されるなら、事前にわれわれとしっかり議論することを約束してもらいたい。残りのメニューの内容についてもしっかり交渉・協議させてもらいたい。

 これに対し政務官は、次の通りこれを確認した。
(1) 「2割」「1割」については、ご理解のとおりである。本来であれば、マニフェストの2割は「給与×人員」ということになるが、人員はいまペンディングにしてある。分限免職を回避する必要があるし、職員自身や家族の生活があり、決して職を失うことはあってはならない。復興の新たな需要が出てくると思っているので、そこに優先的に振り向けていく。目的とするところはご指摘の通りのご理解、大義で間違いない。
(2) 残るメニューを含む全体像については皆さんと相談しながら進めたい。

 以上の議論を踏まえて、最後に吉澤事務局長は「延べ3時間を超えて議論してきた。交渉はお互いに主張、議論し、合意を見出すことだと思うが、労使で立場が違うことも道理だ。今回の交渉では、第1に、交渉を通じて労使関係において決着するという姿勢を政務官を中心に貫いてもらった。第2に、公務員給与への評価は様々であり、批判的に取られがちなのが現実であるが、そういう観点ではなく、削減原資の活用についてもしっかり話してもらった。第3に、われわれの様々な主張は、現場で懸命に従事している国家公務員の本当に切なる声であり、改めて政務官、大臣に受け止めてもらいたいが、交渉においては一貫して誠意ある対応をしてもらった。以上のことを受け止めて、大臣の代理として臨んでいただいた政務官との交渉については今日をもって区切らさせていただき、最終的な大臣との交渉に臨むこととしたい」と述べ、本日で政務官との交渉を区切り、大臣との交渉に臨むことを表明した。
 これに対し内山政務官が「皆さんの意見を聞かせてもらったので、しっかりと誠意を持って、これから国を良くして国民がみんな幸せになるように全力で努めていきたいので、よろしくお願いする」と応え、本日の交渉をもって政務官との交渉は打ち切りとした。

以上