2011年度公務労協情報 36 2011年5月23日
公務公共サービス労働組合協議会

公務員事務局が国公制度改革関連法案を提示−5/20
−公務労協は、課題等を指摘し、政務官からの回答と閣議前の大臣交渉を申し入れ−
 公務労協は、国家公務員制度改革関連法案について、20日17時から国家公務員制度改革推進本部事務局と交渉を行った。交渉には、公務労協側からは大塚・花村両副事務局長をはじめ各構成組織公務員制度改革担当役員らが出席し、公務員事務局からは藤巻局長らが対応した。
 この日の交渉では、まず法案概要の説明を受けた上で、4月5日の園田政務官交渉の際に指摘した@国家公務員の争議権A在籍専従制度の取扱いB給与法等の法律事項と政令事項の振り分けC施行時期などの課題や、この間の交渉で明らかになった問題点を質すとともに、法案の閣議決定、国会提出に向け、改めて政務官から明確な回答を行うことや閣議決定前には中野公務員制度改革担当大臣との交渉を行うよう申し入れた。
 公務員事務局との交渉の経過は以下の通り。

<公務員事務局との交渉経過>
 冒頭、公務員事務局の藤巻局長が「4月5日の『全体像』の閣議決定を受けて法案作業を進めてきたが、概要がまとまったことから、本日、民主党公務員PTと関係部門会議の合同会議で法案要綱を説明し、議論を経て了承された」と述べた上で、国家公務員制度改革関連4法案の概要を説明するとともに、4月5日の政務官交渉で残された課題について、次の通り見解を述べた。
(1) 国家公務員の争議権については、国家公務員労働関係法案の附則に検討規定を置き、「団体交渉の実施状況、あっせん、調停及び仲裁制度の運用状況や新たな労使関係制度の運用に関する国民の理解の状況を勘案し、国家公務員の争議権について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」旨、政府としての姿勢を明確にした。
(2) 在籍専従先の拡大については、国家公務員労働関係法案において、認証された労働組合とともに、「認証されていない連合体である労働組合であって、認証された労働組合のみから構成されるもの」への在籍専従も認めることとした。
(3) 給与法等の法律事項と政令事項の振り分けについては、国家公務員法等一部改正法案の附則に検討規定を設け、「新たな労使関係制度の施行状況を勘案し、給与法における政令委任事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」といった政府の姿勢を明確にした。
(4) 法案のスケジュールについて、@基本的な施行時期は、公布後1年6ヵ月を超えない範囲において政令で定める日とし、具体的には自律的労使関係制度は平成24年7月または10月からの施行を想定しており、A給与等に関する本格的な中央交渉は、平成25年度から開始することを想定している一方、B各府省における団体協約の締結に関しては、基本的な施行日から2年を超えない範囲内において政令で定める日としており、具体的には平成26年4月を想定しているので、法案が順調に成立すれば、平成26年度から中央交渉と各府省における交渉を、足並みを揃えて行うこととなる。
 これらを受けて、公務労協大塚副事務局長はまず「4月5日の園田政務官と議論した諸事項については、改めて政務官から明確な回答をいただくとともに、法案が閣議決定される前に中野公務員制度改革担当大臣との交渉の場を設けていただきたい」と求めた。その上で、藤巻事務局長から示された見解に対し、以下の通り、要請した。
(1) 国家公務員の争議権については、協約締結権と同時に付与されなかったことは大変遺憾である。国家公務員労働関係法案の附則で「検討し、必要な措置を講ずる」ことが明記されるということなので、自律的労使関係制度の下で、できる限り早期に付与されるように努力していただきたい。
(2) 在籍専従制度について、専従先として、認証された労働組合に加え、認証団体のみで構成される連合体で認証されていない労働組合も含まれることとしたことについては受け止めるが、上部組織等の取扱いについては引き続き検討していただきたい。
(3) 給与法等の法律事項と政令事項の振り分けについては、協約に規範的効力を付与すべきであり、少なくとも具体的な労働条件は政令以下で規定すべきと考えている。給与法自身は交渉事項であり、成立後の政令委任事項の検討に当たってはしっかりと交渉することを約束してもらいたい。
(4) 実施時期について、経過措置として、2年間は府省以下の協約は締結できないこととし、交渉拒否の場合の救済がなされないこととされているが、不当労働行為を適用しないことについては極めて不満である。府省以下の労働条件決定が使用者の一方的判断でなされることがあってはならず、中央交渉で明確な基準を決めるとともに、各府省以下では自律的労使関係制度の下、これまで以上に誠実な交渉を行うよう約束、指導等していただきたい。

 さらに、この間の交渉を通じて明らかになった他の課題について、次の通り求めた。
(1) 幹部職員人事の弾力化について、これまで指摘してきたように部長から事務次官まで1つの職制とすることには根本的に無理がある。政治の介入を疑われないよう、職務遂行能力等の客観的な把握に基づいて透明性を確保しつつ、公正・中立性を担保するよう最大限努力願いたい。
(2) 正当な組合活動の刑事免責について、労組法の規定は確認規定であり条文上は措置しないこととなったが、正当な活動は当然に保護され、免責されることを再確認させていただきたい。
(3) 交渉・協約事項の範囲に関わり、条文上明示されていない勤務条件、とくに人事評価制度については交渉事項であることを確認しておきたい。また管理運営事項は交渉できないとしても、定員や組織については協議・意見交換できること、そのための労使協議制や労使による自主的な苦情処理制度を協約で設けることができることを確認した上で、施行後の努力を求める。
(4) 使用者が民間の給与調査等を実施することとしているが、年間の交渉スケジュールや調査等の内容については十分交渉し、合意に基づいて進めていただきたい。

 これら公務労協からの要請等に対して、藤巻事務局長はまず「今後の政務官、大臣との交渉については、政務三役と相談させていただく。また、@争議権A在籍専従制度B給与法等の法律事項と政令事項の振り分けC実施時期については重要なことなので、本日示されたご意見を預からせていただき、政務三役と相談の上、対応したい」と述べた上で、その他の事項について次の通り見解を示した。
(1) 幹部人事の一元管理は、公正な適格性審査に合格し、幹部候補者名簿に登載されている者の中から、総理、官房長官と任命権者との複数の視点によるチェックにより幹部人事を行う仕組みであり、適格性審査は、幹部職に属する官職に係る標準職務遂行能力をしっかり見極めることが大事で、人事評価や職務履歴等に関する書類や面接の結果をもとに、客観的に判断できるようにしていくとともに、実施方法の詳細や実際の審査に当たっても民間有識者等の意見を聴きながら検討し、審査を進めるなど、公正さに配慮した運用とする方針であり、ご懸念の点を払拭できる制度としていきたいと考えている。
(2) 正当な労働組合活動は、国家公務員労働関係法の下でも、刑事免責の対象となるものと考えている。
(3) 人事評価制度自体は管理運営事項であるというのが政府としての見解ではあるが、直接的に勤務条件に影響する「評価結果の任用や給与への活用の基準」については、団体交渉及び団体協約の対象事項となる。
 管理運営事項は、団体交渉の対象とすることができない旨、国家公務員労働関係法案に規定する一方、管理運営事項であっても、組織の廃止や定員の純減など、職員の勤務条件に影響を与える事項については、当局側が職員側にその事情や必要性を説明し、協議ないし意見交換を行うことはできるものと考えている。
 また、労使協議制については、それ自体を法定はしていないものの、国家公務員労働関係法案における団体協約締結対象事項である「労働組合と当局との間の労使関係に関する事項」の規定に基づき、労使の合意があれば、さまざまな意見交換の場を設けることは可能であると考えている。
(4) 年間の交渉スケジュールや公務員庁が行う民間給与の調査については、重要な問題なので、法案が成立して以降、皆さんと十分に話し合っていきたい。

 さらに公務労協側が、労使協議制について「労使で真摯に向き合い、話し合っていく場を設けることは非常に重要であり、各府省間で差が生じることのないよう、労使協議制を明確に位置づけるべきではないか」と質したところ、藤巻事務局長は「民間でも法定されているわけではないが、労使が真摯に向き合って話す場を設けることの重要性は認識している。自律的労使関係制度の下、労使の間で検討いただければと考えている」と回答した。
 最後に、大塚副事務局長が「本日要請した課題や、消防職員、地方公務員の労働基本権について、改めて政務官交渉を実施し明確な回答をいただきたい。さらに法案の閣議決定前には大臣から直接その内容と、法案の成立や制度の実施に向けた決意を伺いたいのでよろしくお願いする」と再度求め、この日の交渉を終えた。

以上