2011年度公務労協情報 49 2011年9月22日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

夏季・秋季要求で人事院給与局長と2度目の交渉−9/22
−「昨年を上回るマイナス較差、一時金は精査中」、「現給保障は2年で廃止」 などと回答、連絡会は総裁交渉に向け現給保障の廃止撤回を重ねて追求−
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は本日、2011年夏季・秋季における要求に関わり、人事院給与局長と2度目の交渉を行った。
 本日の交渉で、給与局長は、@勧告日は来週後半、A官民較差については昨年を上回るマイナスで、較差は50歳台職員が在職する号俸を重点に引き下げて埋める、B現給保障について、平成24年度については経過措置額の2分の1を減額(減額上限1万円)、平成25年4月1日で廃止、C定年延長については、60歳超の俸給月額は60歳前の73%、行(二)労務職員特例定年の経過措置は要求を踏まえ見直す、などの回答を示した。公務員連絡会は「総裁交渉に向けて現給保障廃止の撤回と一時金の官民較差の確定を強く求める」として最後の努力を求めた。
 公務員連絡会は、来週にも委員長クラス交渉委員による人事院総裁との交渉を行い、最終的な決着をめざすこととしている。

<人事院給与局長交渉の経過>
 尾西給与局長との交渉は、午前11時から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、吉澤事務局長が前回から引き続きの検討課題となっていた@現給保障の廃止、A60歳超の職員の給与水準、B特例定年の経過措置、C官民較差についての具体的な回答、について局長の回答を求めたのに対し、尾西局長は、以下の通り回答した。

1.勧告日について
 人事院としては、給与等の改定を行うため勧告を実施する。勧告日は、「来週の後半」で、調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えする。
2.官民較差について
 官民較差については、昨年を上回るマイナスとなる見込みである。
 マイナス較差の解消は、俸給表の引き下げにより行うこととしたい。
 引下げは、特に民間に比べ公務員給与の水準が上回っている50歳台の職員が在職する号俸に重点を置いて行いたい。
 なお、医療(一)については、人材確保の観点から引下げを行わない。
3.特別給について
 特別給については、現在、調査結果を精査している段階であるが、本年は、東日本大震災の影響により、特に被害の大きかった岩手県、宮城県及び福島県の東北3県に所在する事業所の状況が把握できていないところである。特別給の調査結果は、事業所ごとの支給実績の全国集計に基づき算出することから、東北3県の民間データがないことの影響は月例給と異なり直接的に働くこととなり、その影響をどのように見るべきかを検討する必要がある。このため現在、過去の調査結果等について確認しており、これらの検討を踏まえ、特別給について最終的な結論を得ることとしたい。
4.給与構造改革における経過措置額の廃止について
 高齢層の職員の給与水準の是正も念頭に、平成24年度については、給与構造改革における経過措置として支給されている俸給の2分の1を減額して支給し、平成25年4月1日に経過措置を廃止することとしたい。ただし、激変緩和措置として平成24年度については、減額する額は1万円を上限とする。
 また、経過措置の廃止及び自然減に伴って生じる制度改正原資については、昨年と同様、若手・中堅層を中心に給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給の回復に充てることとしたい。
5.新たな高齢期雇用施策について
 前回、意見の申出に盛り込む事項の概要をお伝えしたので、今日は、前回以降検討を進めた事項を中心にお伝えしたい。
(1) 60歳を超える職員の給与について
 60歳台前半層の民間企業従業員の年間所得が60歳前の年間給与の70%であることを踏まえ、60歳を超える職員の年間給与について、60歳に達した日の属する年度の翌年度から、60歳前の70%となるよう設定するが、その際、月例給与が60歳を超える職員の生活設計を支える重要な基盤となることから、俸給月額の水準を一定程度(60歳前の73%)確保することとし、特別給については、年間支給月数を60歳前の職員に比べて引き下げ3.00月とする。これにより、年間給与を60歳前の70%水準とする。
(2) 現行の特例定年が適用される職員の給与について
 現行の特例定年が適用される職員、特に行(二)労務職員について、皆さんから特に強いご意見をいただいたころである。ご意見も踏まえ、経過措置の内容を変更することとし、63歳特例定年官職を占める職員については、定年年齢が64歳になり、定年延長によるメリットを受ける時点から、段階的に減額する年齢を引き下げることとする。
 具体的には、定年が63歳である昭和34年4月1日生まれの者までは減額がなく、定年が64歳になる昭和34年4月2日から昭和36年4月1日生まれの者については63歳から、定年が65歳になる昭和36年4月2日から昭和38年4月1日生まれの者については62歳から、昭和38年4月2日以降生まれの者については61歳から、70%水準に減額した給与を支給する。

 回答に対し公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質し、要求実現を迫った。
(1) 官民較差について、「昨年を上回るマイナスとなる見込み」とのことだが、どの程度か。
(2) 一時金について、東北3県のデータがないため、その影響をどのように見るべきか検討をしているとのことだが、恣意的に判断するつもりではないか。
(3) 給与構造改革における現給保障の廃止について、多少の配慮はされたものの廃止は遺憾と言わざるをえない。50歳台後半層の給与の課題については、この間ずっと丁寧に議論を重ねてきたし、現給保障は給与構造改革のときの約束であるにもかかわらず、なぜ今廃止しなければいけないのか。現給保障を廃止しても50歳台給与の官民格差問題が解決できないのであれば、昨年勧告の1.5%の定率削減も全て撤回し、議論をやり直すべきだ。現給保障の廃止は、ポストもなく、地域手当が少ない地方においてはもろに影響を受け、地方公務員にとっては死活問題だ。
(4) 定年延長について、行(二)労務職員の特例定年までの現行俸給月額の適用を要求してきたが、これを踏まえ経過措置を見直したことについては、われわれの要求を踏まえていただいたと受け止めている。
 60歳を超える職員の俸給月額について、60歳前の73%とするとのことだが、民間においては現状では定年延長ではなく再雇用がほとんどであり、その水準を引き続き見ていくことを確認しておく。なお、全ての俸給表についてこの水準とするのか。

 これに対し尾西局長は、次の通り応えた。
(1) 官民較差については、皆さんが驚くほどのマイナスとはならないのではないか。
(2) 一時金について、本年の東北3県のデータがないためどのように見るべきか検討はしているが恣意的な判断はしない。東北3県の過去のデータを検証して判断するということだ。
(3) 給与構造改革では最大7%の引下げであったため、激変緩和措置として現給保障を実施したが、その期限は示していなかった。50歳台後半層の給与が民間より高いこととの格差の要因の一つとなっており、放置出来ない状況である。また、定年延長を円滑に実施するためにも、整理をしていきたいということだ。現給保障の廃止は根本的な解決にはならないが、できるところから進めなければならない。経過措置の廃止については緊急性が高いと考えており、まずこれを廃止してから昇格・昇給を含めたその他の手法について、今後皆さんと協議をしていきたい。
(4) 60歳を超える職員の俸給月額は、俸給表の種類にかかわらず、60歳前の職員個人の俸給月額の73%の水準とする。

 以上の通り、一時金については民間の具体的な支給月数が示されず、現給保障を巡っては本日の交渉でも議論は平行線をたどり、納得できる回答は得られなかった。

 続いて吉澤事務局長は、8月9日の総裁交渉および9月13日の給与局長交渉時に指摘した@近年、公務員の給与・勤務条件が厳しい視線に晒され、社会的・政治的に不安定であることに対して、お互いの立場、責任としてどのように対処していくべきか、A厳しい財政事情や東日本大震災を踏まえ、公務員連絡会としては労使で真摯に向かい合い、臨時特例的な措置として給与引下げという苦渋の判断をしたが、人事院としてはどのように認識し、対応するのかということについて、給与局長の見解を質したのに対し、給与局長は以下の通り考えを示した。
(1) 国民から公務に厳しい視線が注がれている現在、公務として正すべきものは正した上で、国家公務員が国民全体の奉仕者としての使命を着実に果たせるよう、国民の理解・納得を得ながら国家公務員の勤務条件を適切に確保するように努めることが、労働基本権制約の代償機関としての人事院の責務であると考えている。
(2) 2点目については、繰り返しになるが、労働基本権制約の代償機関である人事院が財政事情を考慮することは、その任にないと考えている。

 これに対し、吉澤事務局長は次の通り指摘し、改めて局長の見解を質した。
(1) 労働基本権が制約されているから代償機能としての人事院がある。人事院は、内閣と国会に対して勧告を行うことになっており、勧告に基づいて国会が法改正し勤務条件を定めることが職員の利益保護になっていると最高裁は判示してきた。しかし、国会情勢が厳しくなり、人事院が勧告すればその通り実施すればよいという状況ではなくなってきた。昨年の人勧取扱いはその例であり、人件費削減措置を検討し必要な法案を国会に提出することを含めて人勧通りの実施になった。それを承知の上で、われわれが政府との間で交渉・合意した国家公務員給与の引下げ法案に対する総裁談話を出したと思う。無責任ではないか。人事院の役割は勧告すれば終わりということではないのではないか。
(2) 人事総裁が先の通常国会で、財政事情について勧告では考慮しないが、内閣や国会が政策の優先順位を考えることはあり得る、すなわち政府等が勧告実施に当たって財政事情を考慮することはあり得るとの趣旨の答弁をしている。その場合、勧告と財政事情をどう関わらせるかのルールはないのではないか。ルールがない中で、巨額の財政赤字や大震災など状況が変わり、最早勧告すればその通り実施する状況ではなくなってきた。臨場感を持って、人事院の中でもう一度しっかり考えてもらいたい。
(3) われわれが厳しい財政事情や震災を踏まえ、労使で真摯に向き合い、臨時特例的な措置としての給与引下げという苦渋の判断をしたのに対し、総裁は6月3日の談話でそれを全否定されたと受け止めざるを得なかった。人事院があるから代償機能があるのではない。基本権が制約されているからだ。代償が機能しないのであれば、労使で決めていく以外にない。厳しい環境の下、人事院はどうしていくつもりか。法律に基づき勧告し、実施されるよう頑張るしかないというなら、制度に根本的な問題がある。

 これに対して給与局長は以下のように回答した。
(1) 行政機関として法律上の使命を果たしていくことが人事院の役割と考えており、勧告を行った上で、完全実施を求めていく以外にないと考えている。
(2) 政府が、人勧取扱いに関わって国政全般や財政事情を考慮するとしても、勧告の憲法上の位置づけを踏まえた判断でなければならない。判断のルールはないが、人勧尊重は憲法上の重みがあるものとして慣熟してきており、その重みを踏まえながら、毎回判断してもらうことになる。人事院としては、国家公務員の勤務条件について、民間との均衡を図るための勧告を行い、その実施を求めていく以外にないと考えている。
(3) 行政機関としては、法律に従って対応していく以外にないと考えている。

 以上のように、「法律に従って勧告し、その実施を求めていく」との姿勢に終始する局長と、厳しい環境の下で踏み込んだ対応を求める公務員連絡会の間の溝は埋まらなかった。

 最後に吉澤事務局長は、「民間一時金の支給月数については総裁交渉では明確な回答を示してほしい。また、現給保障の廃止については断固反対だ。昨年の1.5%定率削減を含めて白紙撤回することが前提だ。このままでは納得がいかないので、私たちの指摘を踏まえた回答を総裁からしてもらいたい」と最後の努力を求め、本日の交渉を締めくくった。

以上