2011年度公務労協情報 50 2011年9月28日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

官民較差△0.2%強、俸給表引下げを30日勧告へ 連絡会は「勧告を行う」との回答に遺憾の意を表明
−委員長クラスが人事院総裁と交渉し最終回答引出し−9/28
 公務員連絡会棚村議長ほか委員長クラス交渉委員は、本日8時過ぎから人事院総裁と交渉を持ち、本年の夏季・秋季要求に対する最終回答を引き出した。
 公務員連絡会は、この回答を受けて、29日に代表者会議を開き、公務員連絡会としての勧告に対する態度を確認し、声明や政府に対する要求書などを決定するとともに、30日に予定される勧告・意見の申出の後、官房長官や総務大臣など主要な給与関係閣僚に対して、人事院勧告に基づく給与改定は実施しないことなどを要求する予定である。

<人事院総裁との交渉経過>
 人事院総裁交渉の冒頭、棚村議長が「8月9日に2011年夏季・秋季における要求を提出し、今日まで交渉を積み上げてきた。われわれは給与勧告を行わないよう求めてきたが人事院は勧告するということであり、直前でもあるので、本日は総裁から直接回答をいただきたい」としたのに対し、総裁は次の通り回答を示した。

1 人事院勧告について
 人事院としては、給与等の改定を行うため勧告を実施する。勧告日は、9月30日(金)となる予定である。
 勧告の主な内容は次のとおりである。
(1) 官民較差と月例給について
 官民較差については、「0.2%強のマイナス」となる見込みである。
 なお、本年は東日本大震災の影響により、岩手県、宮城県及び福島県の東北3県に所在する事業所のデータが得られていない。このことの影響を検討したところ、月例給については、地域手当の級地区分ごとに官民比較を行っていることから、その影響は限定的であった。このため、例年同様、公務と民間の給与を比較した結果に基づき改定することとしたい。
 マイナス較差の解消は、俸給表の引下げにより行うこととしたい。引下げは、民間に比べ公務員給与の水準が上回っている50歳台を中心に、40歳台以上を念頭に置いて行う。
 具体的には、50歳台職員が在職する号俸に重点を置いて最大でマイナス較差の2倍程度の引下げとし、40歳台前半層が在職する号俸を目途に引下げを収れんさせるようにしたい。したがって、主にそれより若年の者が在職する号俸の引下げは行わないこととなる。
 行政職(一)以外の俸給表については、行政職(一)との均衡を基本に改定を行う。なお、医療職(一)については引下げを行わない。
(2) 特別給について
 特別給については、東北3県を除く民調の数値は3.975月をわずかに上回っている。他方、東北3県のデータがないことの影響については、月例給とは異なり、特別給の官民比較方法は事業所ごとの支給実績の全国集計に基づいていることから、直接的に働くこととなる。過去3年間について東北3県を除いた特別給の支給割合は、民調のデータに基づいて計算すると、東北3県を含めた全国の支給割合より各年とも高く、最大で0.007月高くなっている。また、東日本大震災により東北3県が受けた甚大な経済的な被害や雇用情勢などをみると、東北3県における今夏の特別給の支給状況も厳しいと考えられる。
 このようなことから、本年の特別給の改定は見送ることとしたい。
(3) 改定の実施等について
 今回の改正は、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときはその日)から実施する。
 本年4月から改正法施行日までの較差相当分を解消するための年間調整については、月例給の引下げが行われる職員を対象として、昨年と同様の方式により行う。したがって、月例給の引下げのない職員は調整の対象とならない。
 調整率は、月例給の引下げが行われる職員が民間給与との較差総額を負担することとして求められる率(0.4%弱)とする。
(4) 給与構造改革における経過措置額の廃止について
 高齢層における官民の給与差をみると公務が民間を相当程度上回っており、今後の定年延長を見据えると、その是正を早急に図る必要がある。このため、給与構造改革における経過措置額として支給されている俸給を段階的に廃止することとし、平成24年度には、その2分の1を減額して支給し、平成25年4月1日に経過措置額を廃止することとする。ただし、激変を緩和する措置として平成24年度については、減額する額の上限を1万円とする。
 また、経過措置額の廃止及び経過措置を受ける者の昇格、退職等による経過措置額の解消に伴って生じる制度改正原資については、若手・中堅層を中心に給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給の回復に充てることとする。
 具体的には、平成18年度から平成20年度までに昇給抑制を受けた回数を上限として、平成24年4月1日に36歳未満の者は最大2号俸、36歳以上42歳未満の者は最大1号俸上位の号俸に調整する。平成25年4月1日には、経過措置額の状況等を踏まえ人事院規則で定める年齢の者について最大1号俸上位の号俸に調整する。
 なお、50歳台における官民の給与差はなお相当程度残っており、今後、官民の給与差を縮小する方向で、昇格・昇給制度の見直しの検討を進めることとしており、皆さんと議論していきたい。
(5) その他
 内閣から本年6月に国会に提出された「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」については、既に人事院の考えを表明したところであるが、改めて人事院の考え方を表明することとしている。

2 定年年齢の引上げについて
 人事院勧告と同時に定年年齢引上げのための意見の申出を行う予定である。
 意見の申出の主な内容は次のとおりである。
(1) 定年年齢の引上げについて
 平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ、平成37年度には65歳定年とする。
(2) 60歳を超える職員の給与について
 60歳を超える職員の年間給与について、60歳に達した日の属する年度の翌年度から、60歳前の70%となるよう制度を設計する。
 俸給月額については、60歳を超える職員の生活を支える重要な基盤であることから60歳前の73%とする。諸手当は、基本的に60歳前の職員と同様の手当を支給する。ただし、俸給の特別調整額等の俸給月額等に応じて手当額が設定されている手当については、60歳前の手当額の73%を基本に手当額を設定する。特別給については、年間支給月数を3.00月(一般の職員の場合、期末手当1.65月 勤勉手当1.35月)とする。
(3) 定年前短時間勤務制について
 多様な働き方を可能とするため、60歳以降の職員が希望する場合、通常より短い勤務時間で勤務させることができるよう措置する。
(4) 役職定年制について
 管理職の新陳代謝を図り組織活力を維持するため、能力・実績に基づく人事管理が徹底され、また、公務内外で能力・経験を活用しうる条件整備が十分に行われるまでの間の当分の間の措置として、本府省の局長、部長、課長等の一定の範囲の管理職が60歳に達した場合に他の官職に異動させることとする役職定年制を導入する。
(5) 再任用制度について
 再任用制度は、定年の段階的引上げ期間中における定年退職後、年金が満額支給される65歳までの間の雇用確保措置として、平成37年度までの間存置する。
 再任用職員の俸給月額については、定年延長者との均衡を図るため、各職務の級の最高号俸の額の73%を上回らないようにすることを基本に所要の見直しを行い改定する。
 なお、行政職(一)4級及び他の俸給表のこれに相当する級以下については、上記の改定は行わない。

3 公務員制度改革等に関する報告について
 以上のほか、本年は、公務員制度改革等に関し報告することとしている。
 報告では、改革の前提となる基本認識を整理するとともに、国家公務員制度改革関連法案に関する論点である人事行政の公正の確保と協約締結権の付与について、人事院の考えを示すこととしている。
 また、@能力・実績に基づく人事管理の推進のため、採用試験の再編、体系的人材育成、人事評価制度の適切な運用等に取り組むこと、A男性職員の育児休業取得の促進の一助となるよう、本年12月期より、育児休業期間が1か月以下の場合には、期末手当の支給割合を減じないようにすること、B長時間の超過勤務の縮減は、職員の健康保持、人材の確保等からも重要であり、管理職員による勤務時間管理の徹底等を通じ、引き続き政府全体としての取組を推進する必要があること、C東日本大震災への対応のため臨時・緊急業務が生じていること等も踏まえて、超過勤務に関し所要の予算が確保される必要があること、D研修の強化、相談体制の充実、円滑な職場復帰の促進などの心の健康づくり対策を推進していくことについても言及することとしている。

 以上の総裁回答に対し、棚村議長は以下の通り公務員連絡会としての見解を述べ、公務員連絡会の要求を聞き入れることなく労使合意とその意義を無視する形で給与改定勧告を強行することに遺憾の意を表明した上で、公務員連絡会としては政府に対して給与勧告を実施しないよう求めていくとともに、国家公務員制度改革関連四法案の成立と国に遅れることなく消防職員の団結権付与を含んだ地方公務員の自律的労使関係制度の確立に向け全力で取り組んで行く決意を述べ、交渉を締めくくった。

(1) 8月9日に総裁に要求書を提出する際にも申し上げたが、国家公務員の給与については、政府から「自律的労使関係制度を先取りする形」でわれわれに引き下げ提案がなされ、交渉を積み重ねた結果、「日本の再生のために被災者・被災地とともに歩む」決意を持って、5月23日に合意し、臨時特例法案が国会に提出されている。そういう意味で、給与については決着済みであり、人事院に対し給与改定勧告を行わないことを求めた。
(2) しかし、人事院総裁から、本日、われわれの要求を聞くことなく、労使合意とその意義をも無視する形で、給与改定勧告を行うとの回答があったことは、極めて遺憾である。とくに一時金については、これまでのルールによれば、当然引き上げになる調査結果であるにもかかわらず、東北3県について調査していないことを理由に据え置くという恣意的な判断を行ったことは、これまでのルールを一方的に変更するものであり論外だ。いずれにしても、公務員連絡会としては、政府に対し、労使合意を踏まえ、勧告を実施しないよう要求していく。
 定年延長の意見の申出について、人事院が昨年中に行うことを約束していたことからすれば、本年となったことについては遅きに失したと言わざるを得ない。公務において雇用と年金を接続する方法としては定年延長が最も相応しく、意見の申出は当然のことである。他方、60歳超の給与水準については不満が残るが、まずは年金の支給繰り延べに遅れることなく定年延長を実現することが最重要課題だ。
 民間従業員については、再雇用の義務化、すなわち基準制度(労使協定で再雇用する場合の基準を定めた場合には希望者全員を再雇用しないことが許される)の廃止を巡って労働政策審議会で労使のせめぎ合いとなっている中で、公務員の定年延長について、国民の理解を得ていかなければならない。公務員連絡会としても連合の仲間の理解を得られるよう努力していくが、人事院としてもしっかり対応してもらいたい。
 その他、実効性ある超過勤務縮減対策、メンタルヘルス対策の一層の強化、非常勤職員の制度・処遇の改善などを要求してきたが、総裁からの回答は抽象的な内容に止まり、残念だ。引く続き改善を目指して具体策を講じて頂きたい。
(3) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。
 公務員連絡会としては、以上申し上げたことに加え、国家公務員制度改革関連四法案の成立と国に遅れることなく消防職員の団結権付与を含んだ地方公務員の自律的労使関係制度の確立に向け全力で取り組んで行く。人事院は、組織の再編ということになるが、是非とも前向きに対応してもらいたい。

以上