2011年度公務労協情報 7 2010年11月18日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

地方財政確立等を求めて地公部会が要請行動を実施-11/18

 公務員連絡会地方公務員部会は、11月11日及び15日の両日、地方財政確立等に関する地方6団体、各政党への要請を実施した。また、17日には総務省・財務省両大臣政務官にも申入れを行った。地方6団体要請には幹事クラスが、各政党及び政務官要請には書記長クラスが参加し、@地域公共サービスの実態に見合った財源保障、A安定した地方税財源確保のための制度改革など地方自治の確立、B自治体の自主的・主体的な財政健全化の支援、C地方公務員の総人件費の十分な確保、D地方税制について国と地方が対等の立場で協議する場の設置、の実現に向けて、関係省庁・政党へ働きかけるよう申し入れた(別紙要望書参照)。
 各々の要請経過は以下の通り。

1.地方6団体要請の経過
(1) 全国知事会要請の概要
 全国知事会は、重松調査第一部長らが対応した。全国知事会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要請内容は、ほとんど知事会の主張と同じ。地方財政の確立に向けて、与党支持団体である皆さん方からも働きかけをお願いしたい。
A 地方では、労使一体でぎりぎりの節約を行い、組合員の理解を得てやむを得ず給与カットまでして公共サービスを維持するよう努力している。このことが住民に充分に理解されていないというのは残念であり、住民に対する説明不足を反省し、住民・国民の皆さんに理解していただけるよう地道な努力が必要であると考えている。
B 税制改革については公平で納得のいく抜本的税制改革が必要である。法人税の引下げなどは一部大手企業が恩恵を受けるだけで、地方の中小企業は全く恩恵によくさない。
C 福祉・教育・環境・農業等の維持向上には地方分散型経済の立て直しが必要であり、そのための投資ができるよう、国に対して予算拡充の要請をおこなっている。

(2) 全国都道府県議会議長会要請の概要
 全国都道府県議会議長会では、松岡調査第一部長らが対応した。全国都道府県議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要望書については、大枠では同じ考えである。「平成23年度政府予算編成に関する提言」を10月にまとめたところであり、近々政府等に要請する予定である。
A 交付税については恒常性のある地方交付税の法定率を引き上げることで対応するように求めている。
B 地域の実情に合わせた条例が制定できることを重視し、権限委譲、一括交付金についての要請を行っている。

(3) 全国市長会要請の概要
 全国市長会は、山本財政副部長らが対応した。全国市長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 概算要求で地方交付税が1兆円伸びているが満足していない。法定率を上げた上での確保など、交付税については本質的な議論が必要だと考えている。
A 地方主権改革3法案については早期成立を要請している。
B 財政健全化法については運営しやすい基準緩和を求めている。
C 公共サービスを維持するには、人件費については給与カット、定数削減はこれ以上できないという実態を理解していただくよう政府に対してお願いをしている。

(4)全国町村会要請の概要
 全国町村会は、小川財政部副部長らが対応した。全国町村会からの回答の概要は以下の通り。
@ 三位一体改革による後遺症から完全に復元しておらず、恒常的に財源不足であり、借入れに頼らない予算編成をめざしたい。
A 地方主権改革3法案については未成立であるが、成立すれば国と対等の立場で協議していきたい。
B 今年12月の全国町村大会で決議された意見を政府等に働きかけていく予定である。
C 特に定数削減については国以上に進めている実態を示し、理解を求めていく。定数が減少しているにも関わらず、子ども手当等新たな業務が発生し、現場からは不満の声も噴出しているのが実態だ。

(5) 全国町村議会議長会要請の概要
 全国町村議会議長会は、松浦企画調整部副参事が対応した。全国町村議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 11月17日の大会において特別決議を含め決定事項を要望していく予定である。
A 地方主権改革3法案については従来より早期成立を求めている。
B 税財源の充実強化として交付税の引き上げ、特に、過疎、離島の割増を求めていくとともに過疎・離島については一括交付金からはずすように要望していく。
C 子ども手当については地方と協議の上、全額国庫負担とするよう要請していく
D 森林資源等規制がないため、外国資本が乱入してくる恐れがあることから、外国資本規正法案の成立も求めていきたい。

(6) 全国市議会議長会要請の概要
 全国市議会議長会への要請は、16日に地公部会事務局が行い、市議会議長会側は上市副部長が対応、「要請内容については私どもと同じ考えだ。その実現に向けて取り組んでいる」と述べた。

2.各政党要請の経過
 各政党への要請は11月15日午前に実施した。要請には、地公部会から岡本企画調整代表(自治労書記長)、高木(都市交書記長)・西川(全水道書記長)・佐藤(日高教書記長)の各企画調整委員、木下日教組書記次長、藤川事務局長、松本事務局次長が参加した。
(1) 民主党要請の概要
 民主党は、山根企業団体対策委員長(参議院議員)が対応した。
 要請に対して、山根議員は「要請の趣旨については理解している。これから予算編成の本格的な議論が始まるところ。地方への予算措置や社会保障制度に鉈を振るおう(大幅に削減しよう)とは考えていない。ただし、今ある予算を配分することになるので実際の判断は難しい」と答えた。
 さらに、地公部会からは、「職場では毎年人員が削減され、不安と不満でいっぱいである。公共サービス、セーフティ・ネットを重視した配分をお願いしたい」、「地方の教育現場では、非正規の官製ワーキングプアといわれる教職員が増加していることを踏まえて欲しい」などを重ねて要請した。

(2) 社民党要請の概要
 社民党は、重野安正幹事長、吉田忠智参議院議員が対応した。
 要請に対して、重野幹事長は「尖閣諸島問題のため国会審議が遅れ、補正予算の採決が本会議まで行き着くか微妙な状況であり、これが採決されるか定かではないが、国会では手探りの状態である。地方主権改革3法案は、まだ提案もされていない厳しい状態。社民党は、労働組合の思いも含めて国会で意見反映をしていきたい」と述べた。
 吉田参議院議員は、「今回の要請の主旨を踏まえて、国会に意見反映していきたい。最近は交付税にしても、消防職員の団結権問題などに関しても、トーンが下がってきていることを実感する。ぜひ今後ともご意見をお聞かせ願いたい」と述べた。

(3) 公明党要請の概要
 公明党は、西博義衆議院議員、佐藤茂樹衆議院議員が対応した。
 要請に対し、西衆議院議員は「地方からの多くの要望があり、私どもはもっと地方交付税を多くすべきと思っている。今回の交付税の補正は、地方に必要なものであるから賛成する。要望をいただいている地方主権改革3法案については、全く動きがない状態で、政権の情熱が見えてこない。国会の状況もあると思うが、優先順位も低くなっているのではないか」と述べた。
 佐藤衆議院議員は「補正予算そのものは反対。ただし、関連法案は条件付賛成である。反対する理由として、@民主党は事前に野党の要望を聞くと言っていたが、そのようになっていない、A中小企業、地方、農業などに冷たい補正予算案で欠陥がある、Bデフレ・円高にある現下の経済状況で、対策に財源があるにもかかわらず十分に使い切れていない、ということがある。われわれも労働者の立場を重視して、政策に反映させていきたい」と述べた。

 なお、国民新党への要請については、17日に地公部会事務局が行った。

3.総務省・大臣政務官要請の経過
 総務省への要請は、17日9時30分から実施した。要請には地公部会から岡本企画調整代表、藤川事務局長、松本事務局次長らが参加、逢坂総務大臣政務官が対応した。
 要請に対し、逢坂政務官は、「@地方交付税制度が法律の趣旨に沿った運用がされておらず、少しでもあるべき姿に戻していきたい。厳しい財政状況にあるので、すぐにとはいかないが少しずつでも進めていきたい。A地域主権改革3法案の早期成立については、私も尽力しているところ。B自治体財政健全化法の運用については、基本的には自律的に財政運営ができるようにすることであり、平時から国がどうこう言うものではないと思っている。C給与法の一部改正について、片山大臣は、地方公務員が必ずしも国と同様でなければならないとは考えていない。D国と地方の協議の場を設けることについては、私も頑張りたい」と述べた。
 最後に地公部会側から要請内容への最大限の努力を求め、要請を終えた。

4.財務省・大臣政務官要請の経過
 財務省への要請は、17日11時から実施した。要請には地公部会から、岡本企画調整代表、高木企画調整委員、木下日教組書記次長、藤川事務局長、松本事務局次長が参加、吉田財務大臣政務官が対応した。
 要請に対し、吉田政務官は、「地方税制については、総務大臣は自治体が独自で税率を決めることができるようにすべきというのが持論であるし、私もそれが本来の地方自治だと考えている。人件費を数年をかけて2割削減とされているが、給与の2割カットだけが唯一の手段ではないが様々な議論があり、有権者にあらたな負担をお願いする前提として検討されている」と述べた。
 それに対し、地公部会からは「国の事情は承知しているが、組合との話合いをしっかりお願いしたい」と強く求めた上で、「一定のサービスを確保するためには、一定の人材を確保することも必要である。給与をただ下げればいいということにはならない」と主張した。
 また、吉田政務官から「今回の予算編成では、財政規律をきちんとさせることが必要である。足りないからと配分していたのではキリがなく、それが800兆円の赤字につながっている。地方においてサービスと収入のバランスを取る仕組みを作ることが必要ではないか」との発言があった。それに対して、地公部会は「自治体間の財源には、不均衡がある。その是正にも理解と配慮をいただきたい」と述べた。また、「高校の教育現場では非正規職員が半分くらいになっている状態にある。この状態を改善するための配慮をお願いしたい」、「公営バスの存続にむけて、地元とともに頑張っている。しっかりとした支援をお願いしたい」と要請した。


(別紙)
2010年11月 日

         様

公務員連絡会地方公務員部会
議 長  阿 部 卓 弥


地方財政確立等に関する要望書



 貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件改善に向けたご努力に敬意を表します。
 地方財政を巡っては、三位一体の改革による地方交付税の大幅削減や、骨太の方針で固定化された地方歳出水準に拘束された結果、地方は疲弊し地域間格差が拡大しました。また、これまで地方は職員の給与独自削減、定員削減等の行革努力を重ねてきましたが、さらなる歳出削減は、必要とされる公共サービスにまで切り込まざるをえない状況を招く懸念もあり、その場合、住民の生活不安を益々増大させることにつながります。
 私どもも、給与独自削減などについては、厳しい地方財政の現状を踏まえつつ、真摯な対応をするとともに、定員削減による公共サービスの質の低下を招かないために、懸命の努力を続けております。
 少子高齢化などにより社会保障関係経費が増加するなど、公共サービスの大半を提供する地方の財政需要は増加傾向にあります。厳しい地方の経済・雇用状況、デフレギャップの解消、地域間格差の是正に向け、地方交付税の総額確保など地方が必要とする財源の確保に向けて、下記事項の実現にご尽力を頂きますようお願いします。


1.地方財政計画の策定については、自治体との十分な協議のもとに、少子・高齢化、地域医療確保、環境保全など地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障を実現すること。また、恒常的な財源不足にもかかわらず長年据え置かれてきた地方交付税の法定率を引き上げること。

2.地方主権改革3法案を早期に成立させるとともに、安定した地方税財源を確保するための制度改革を急ぎ、地方自治の確立を図ること。

3.自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化に向けて一層の支援を行うこと。

4.医療・福祉・介護、教育、環境などの公共サービスの水準を維持・向上させるため、地方公務員の総人件費(定数・給与)の十分な確保を行うこと。

5.地方税制について、地域主権の時代に相応しい税制を構築するため、国と地方が対等な立場で協議する場を設けること。


以上