2011年度公務労協情報 8 2010年11月24日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院へ2011年度基本要求を提出−11/24
−12月中旬には誠意ある回答を示すよう求める−

 公務員連絡会は、24日、人事院に対して2011年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、12月に誠意ある回答を示すよう求めた。この基本要求は、年間を通じた賃金・労働条件改善闘争の考え方に基づいた基本的要求事項を申し入れ、人事院、総務省との議論を行い、2011春季要求の組み立てに結びつけていくために実施したもの。なお、総務省に対しては給与法等の成立後に行うことにしている。
 人事院への申入れの経過は次の通り。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 人事院への「2011年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(別紙)交渉は、11時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは根本職員団体審議官、上山参事官が対応した。
 冒頭、公務員連絡会の大塚副事務局長が「情勢は厳しいが、国会で審議されている給与法等改正案が今月中に成立するという前提の下で、2011年度の基本要求を提出する。本日の要求事項は、公務員を取り巻く厳しい状況を転換するために最低限必要な事項であり、その解決に向け人事院として最大限の努力をお願いしたい」と述べ、2011年度要求の重点事項について、次の通り説明し、12月の然るべき時期に回答するよう求め、現時点での人事院の見解を質した。

(1) 給与法が成立すれば、平均で9万円、50歳台後半層ではさらに大きな年間給与の引下げになり、組合員の生活に大きな影響を与えることになる。来年度に向けては、公務員の給与が維持・改善されるよう作業を進めて頂きたい。
 とりわけ一時金については、公務員の一時金はいま4ヶ月を割り込んでいるが、少なくとも回復するという意味で来年はぜひとも支給月数の引上げを実現して頂きたい。
(2) 給与構造改革は本年度で終了したが、その結果については慎重な検証を行って頂きたい。とくに現給保障については、俸給水準を引下げた時の約束事であり、最後まで堅持してもらいたい。
(3) 官民比較方法については、人事院として、少なくとも現在の比較企業・事業所規模等は堅持し、さらに公正なものに改善していただきたい。
(4) 定年延長に伴って60歳台の給与をどうするかについては、われわれの基本的な考え方は職務給の原則の維持とゆとりある豊かな生活ができる水準を確保することだ。十分な交渉・協議を行って、合意に基づいて検討作業を進めて頂きたい。
(5) また50歳台後半の給与について、本年の勧告では極めて乱暴な措置が取られた。改めて遺憾の意を表明し、撤回を求める。この問題は、あくまで官民較差を踏まえてそれをどう埋めるかという配分の課題だ。まずは、50歳台の給与の格差については、われわれが十分納得できる説明が最低限必要であり、検討作業に当たってはわれわれとの合意に基づいて進めることを約束して頂きたい。
(6) 労働時間関係については、3年間の在庁時間削減計画が本年度で終了するが、新年度以降パワーアップした新たな計画を実施して一層の削減に努めていただきたい。また、720時間という上限目安時間についても結果を検証して、実効性が確保されるよう対策を講じてもらいたい。
 1か月あたり45時間から60時間までの超勤割増率の課題が残っているので、来年も調査を行ってその結果を踏まえ見直すことを約束していただきたい。
(7) 短時間勤務制度については、定年延長に関わる課題でもあるが、高齢層に止まらない課題として検討して頂きたい。また、介護のための短時間勤務についても検討を促進してもらいたい。
(8) 非常勤職員への育児休業等の適用については、4月から円滑に活用できるよう、改正法の成立後、周知徹底など条件整備を図ってもらいたい。
(9) 定年延長について、人事院は昨年の報告に引き続き、本年夏の報告でも年内を目途に意見の申出を行うことを明らかにしている。ぜひとも確実に行ってもらいたい。
(10) 福利厚生施策については、とくにメンタルヘルス対策について積極的に取り組んでもらいたい。
(11) 非常勤職員の問題については、本年、あらたに期間業務職員を導入したが、雇用の安定と処遇改善に繋がるよう、引き続き人事院としての役割を果たしてもらいたい。また、非常勤職員は国公法に規定がないので、この際、法律に明確に位置付けて、均等処遇の原則などを確立して頂きたい。
(12) 男女平等の公務職場実現については、新たにパワーハラスメントを課題として追加したので、人事院としても取組みを強化してもらいたい。

 申入れに対し、根本審議官は「本日の申入れについては承った。十分検討し、しかるべき時期に回答することとしたい。いくつかの点について現時点での私レベルのコメントを申し上げる」として、次の通り現時点での見解を示した。
(1) 給与については、民間の動向を見ると、本年の冬のボーナスが昨年より上向いているとの報道がなされていたものの、やはり厳しい状況であり、来年の春闘期に向けての情勢も不透明で楽観できない状況にある。引き続き職員団体のご意見を伺いながら、人事院としての役割を果たして参りたい。
(2) 定年延長については、平成25年4月から、65歳までの段階的定年延長の実現をめざして検討している。しかし、現時点でさらに検討を深める事項があり、引き続き職員団体や各府省と意見交換を行っている。なるべく早目にしかるべき案を出して参りたい。
(3)超過勤務については、重要な問題と認識しており、引き続き検討する。また、その他の課題についても要求事項をふまえて検討して参りたい。

 これら審議官の見解に対し公務員連絡会側は、さらに次の通り、人事院の見解を質した。
(1) 給与の官民比較方法については、現行の比較企業規模50人以上、同種同等の労働者の給与を比較するというラスパイレス比較を堅持することを明言すべきだ。
(2) 50歳台後半層の給与については、今年の勧告のように、仕事は同じなのに年齢で給与を下げるということでは納得ができない。撤回して検討すべきだ。給与構造改革時の現給保障は約束事であるので、しっかり守っていただきたい。
(3) 45時間超60時間、60時間超の勤務実態や超勤代休時間の取得状況や360時間、720時間という超勤上限目安時間の遵守状況を把握し、報告していただきたい。45時間超60時間の超勤割増率は、民間調査を行って引き上げてもらいたい。
(4) メンタルヘルス対策では、試し出勤制度の活用を図るよう各府省への指導を徹底していただきたい。また、パワーハラスメント対策も強化してもらいたい。
(5) 介護のための短時間勤務についてもしっかり検討し、公務員をやめることなく働き続けられるようにしてほしい。
(6) 人事評価制度が実施されているが、現場からはいろいろ問題が指摘されている。検証するという話があったがいつ行うのか、また、その内容についても教えていただきたい。
(7) 女性職員の採用・登用は全体としては不十分な状況にある。問題点を検証し、実効性のあるものに見直し、各府省の計画も強化してもらいたい。

 これらについて、根本審議官は次の通り答えた。
(1) 給与の官民比較方法について、国税庁調査のデータは同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較とは異なるものと国会でも説明してきている。比較企業規模50人の引下げは考えていない。
(2) 50歳台後半層の給与については、引き続き議論していくこととし、現給保障についても、50歳台の給与を検討する中で、要望も踏まえて検討する。
(3) 60時間を超える超勤や代休時間の実態等については、新たな制度が導入されてから、まだ時間も経っていないので調査していないが、今後検討していく。超過勤務45時間超60時間の割増率の調査については、民調の時期までに検討する。
(4) パワーハラスメントの事例集を今年出したが、今後も問題意識をもって見ていくつもりだ。
(5) 介護の短時間勤務については、引き続きの検討が必要と考えている。
(6) 人事評価制度については、今年の10月で制度導入後1年が経過したところであり、調査が必要かどうかについても検討する。調査を実施すべきとの要望は承った。
(7) 女性職員の採用・登用指針については、5年毎に見直すこととしており、本年見直す。要望は承った。

 また、公務員連絡会側は当面する最重要課題である定年延長問題について、「11月中旬には意見の申出に向けた打ち出し案を示し、それに基づいて議論することになっていたが、どうなっているのか」と説明を求めた。これに対し、根本審議官は、「平成25年4月から年金支給開始年齢が引上げられるというゴールは決まっており、定年延長で年金と雇用を接続するという人事院の考えに変わりはない。極めてタイトで厳しいが、今年中に意見の申出を行うという目標は変えず努力していく」と答え、年内の意見の申出は厳しい状況にあることを明らかにした。公務員連絡会が「われわれとの議論の時間も確保してもらいたいし、定年延長を実現するために、さらに努力してできるだけ早く意見の申出を行うという姿勢に変わりはないことを確認しておきたい」と念押ししたのに対し、審議官はこれを確認した。

 最後に、公務員連絡会側は「次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出することになっており、人事院の役割は大きく変わる。しかしながら、それまでの間は、労働基本権制約の下、人事院には職員の利益を守り、処遇を改善するという第三者機関としての重要な任務がある。公務員にとって厳しい情勢が続くが、定年延長の意見の申出を確実に行い、その実現に盤石な道筋をつけるとともに賃金・労働条件について目に見える改善を行ってもらいたい。申入れ内容を十分精査して、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と強く求め、提出交渉を終えた。


別紙 人事院への基本要求書

2010年11月24日


人事院総裁
 江利川 毅 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2011年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、緩やかな回復基調にあるものの、雇用は依然として厳しい状況が続き、賃金の下落・低迷により、国内需要は大幅に縮小したままです。格差の拡大と貧困の蔓延もいまだ解消されていません。
 こうした状況のもと、国民の雇用と生活を支えるセーフティネットなど公共サービスへの要請がますます高まっており、これに応えるため、公務員労働者は、日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の増加など公務労働者の労働条件も悪化し、業務遂行にも支障を来しかねない状態にあります。また、事務・事業の仕分け作業や地方出先機関改革で公務員労働者は将来不安を募らせています
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の確保が必要です。そのため、貴職におかれましては、労働基本権制約のもと、代償機関としての役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2011年度の基本要求事項においては、非常勤職員を含めた公務員労働者の雇用・労働条件の確保や実質生活を維持・改善すること及び段階的定年延長の実現を最重点課題としています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与に関わる事項
1.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保

 @ ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。
 当面、2011年度の給与勧告においては、民間実勢を踏まえ、公務員の賃金水準を維持・改善すること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握し月数増を実施すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 @ 給与構造改革が終了したことを踏まえ、その進展状況について慎重な検証を行うこととし、新たな制度見直しの検討を開始する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
また、現給保障を堅持し、その段階的解消によって生じる制度改正原資の活用方法についても、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
 A 官民給与比較方法については、当面現行の比較企業規模等を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(4) 定年延長に伴う給与体系等の見直しについて
 定年延長の実施に伴う60歳以降の給与のあり方については、職務給の原則を維持し、ゆとりある豊かな生活が実現できる水準を確保することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づき検討作業を行うこと。
(5) 50歳台後半層の給与見直しについて
 @ 50歳台後半層の給与のあり方については、官民較差を踏まえた配分の問題であることから、来年の人勧期に向けて、慎重に検討作業を行うこと。
 A 50歳台後半層の格差については十分納得できる説明を行うこと。また、本年の一律削減措置は直ちに撤回し、見直しの方法については十分交渉・協議し、合意すること。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。
(2) 単身赴任手当の見直しについては、その可否を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について

 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
 (1) 本府省における在庁時間削減対策の実施状況を踏まえ、その取組みを継続、拡大・深化させることを含め、在庁時間の一層の削減に努めること。あわせて、超過勤務の上限目安時間についても検証を行い、その実効性確保に努めること。
 (2) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。また、新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。
 (3) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた見直しを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。

2.本格的な短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。また、介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。

3.休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的休業制度などについて、以下の事項を実現すること。
 (1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
 (2) リフレッシュ休暇、リカレント休暇を新設すること。
 (3) 総合的休業制度の検討・研究に着手すること。
 (4) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
 (5) 官庁執務時間と勤務時間の関係について、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。

4.非常勤職員への育児休業等の適用について  非常勤職員に対する育児休業法の改正による育児休業、育児時間の適用及び本年の報告に基づく介護休暇の適用については、来年4月から円滑に活用できるよう、周知徹底等の条件整備を図ること。

三、人事評価制度の実施・活用に関わる事項
 人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況について、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

四、段階的な定年延長の実現に関わる事項  65歳までの段階的定年延長を実現するための「意見の申出」を年内に行うこととし、具体的な施策の内容、実施時期等について、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。また、意見の申出後も、給与を含めた関連事項について、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて検討作業を進めること。

五、福利厚生施策等に関わる事項
 (1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
 (2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応して、「職員の心の健康づくりのための指針」に基づいた心の健康づくり対策や本年改定された「円滑な職場復帰及び再発の防止のための受入方針」における「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。

六、非常勤職員制度等の改善に関わる事項  非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、次の事項を実現すること。
 (1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
 (2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を点検・報告し、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低 給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
 (3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めること。

七、男女平等の公務職場実現に関わる事項
 (1) 公務における男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
 (2) 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の着実な推進を実現すること。
 (3) セクシュアル・ハラスメント及びパワー・ハラスメントの実態を把握し、より実効性のある防止策及び対応策の改善に努めること。
 (4) 女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
 @ 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
 A 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障がい休暇を新設すること。
 (5) 取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、育児のための短時間勤務等の取得促進策を取りまとめること。
 (6) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

八、その他
 (1) 障がい者雇用促進法に沿って、障がいの種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
 (2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
 (3) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上