2012年度公務労協情報 15 2012年2月28日
公務公共サービス労働組合協議会

段階的定年延長の実施を求めて公務員事務局と交渉−2/28

 公務労協は、本日14時30分から、段階的定年延長の実施を求めて、国家公務員制度改革推進本部事務局と交渉を行った。公務労協からは大塚副事務局長をはじめ各構成組織担当役員が出席し、公務員事務局からは藤巻事務局長、村山参事官が対応した。
 冒頭、大塚副事務局長は、「人事院の意見の申出後、10月3日に公務員連絡会が官房長官に人事院の意見の申出を踏まえ、2013年度から定年延長が実施できるよう、必要な法案を国会に提出することを要求した。以降、国家公務員制度改革推進本部において事務的な検討作業を行っていると聞いている。現時点の検討状況や今後のスケジュール等について説明願いたい」と求めた。
 これを受けて、藤巻局長は「昨年10月3日に棚村公務員連絡会議長から官房長官に定年延長が実施できるよう必要な法案を提出することについて要請があった。雇用と年金の接続については、民間の状況も合わせて検討することとなっており、現在検討作業を進めている」とし、村山参事官がその内容(別紙)について説明した。
 説明に対し、大塚副事務局長は「雇用と年金の接続については、人事院の定年の延長という意見の申出について、とくに60歳以降の給与水準を60歳前の70%に引き下げるということについては完全に納得しているわけではない。公務労協が実施したアンケートでは60歳前の80%の水準が必要という考えであり、そこは不満であるが、公的年金が全く支給されない中で、生活を維持していくためには一定の給与水準が確保されなければならないし、そのためにも60歳以降もしっかり働けることが基本だ。定年延長に絞って検討を進めてもらいたい」としたうえで、以下の点について追及した。
(1)申出以来、5か月を経過したが、いまだ法案作業に至っていないことは極めて遺憾である。2013年度から年金支給開始年齢が繰り延べとなることは地方公務員も同様であり、地方においては条例改正が必要であることから、説明のあった検討ペースではスケジュール的に困難になりかねない。
(2)人事院の意見の申出においては、再任用の義務化と段階的定年延長のどちらが公務において適しているかを比較検討し、公務においては定年延長以外にないということで、政府に対し、その実現を求めている。それを民間は継続雇用が多いからといって、再任用の義務化についても検討するということだが、現時点では年金の2階部分が出ている中での継続雇用であり、今後公的年金が全く支給されないなかでは変わってくるのではないか。再任用の義務化の検討は不要であり、やめてもらいたい。意見の申出に基づいて、段階的定年延長を実施する場合に、どういった条件整備、制度設計が必要かに絞った検討を行ってもらいたい。
(3) 公務労協としては、@生活を維持するため、雇用と年金を確実に接続することが最も重要であり、A公的年金が支給されないことから、相当程度の賃金水準を確保する必要があり、B現行の再任用制度またはその延長上の制度ではなく、段階的定年延長で対応する必要があるということが基本であると考えている、あくまで定年延長という手法で年金と雇用を接続すべきだ。
(4) 再任用の義務化では、
 ・公務では役職段階別のポスト・定員が定められており、高齢層職員を採用するために必要なポストを提供できない可能性がある。今でも諦めて再任用を希望しない者も相当数いる。その場合において、公務の場合、民間と異なって使用者による公務外への再就職あっせんができず、就職できないことになる。
 ・仮に再任用されたとしても、現行再任用の運用実態を見ると低いポスト(行(一)2〜3級で9割以上で、過半数が短時間勤務)であり給与水準が低く、公的年金がまったく支給されない状態では生活が厳しい。「再任用の義務化」では上位級に再任用される保障も全くない。
 ・再任用という形態では、職員の能力を十分発揮させた働き方につながりにくい。こういった問題が解消されず、これでは60歳以降安心して暮らしていけるということにはならない。
(5) 再任用の義務化で対応するといった場合、どのような積極的な意義があるのか聞かせてほしい。

 これに対し、藤巻事務局長は「これから十分丁寧に検討をしていきたい。民間大企業では80%が再雇用で実施しているとのデータがあり、民間労働者の雇用と年金の接続の検討を進めていた労働政策審議会でも、継続雇用の充実を図っていくべきとの建議であり、これらと合わせて検討を進めていかなければならない。再任用の義務化は60歳時点における能力実績で継続雇用が可能かどうか、はかられるわけだが、そのほか組織の活性化やポストの確保、また上の者が下に入ってやっていけるかといった人間関係の面も含めて、再任用の義務化か定年延長のどちらが適しているのかを決めていきたい」と答えた。

 さらに公務労協側は次の通り追及した。
(1) 能力実績に基づいて処遇や人事管理をしていくことは60歳のときに限らないことであり、60歳で区切って考えること自体がおかしい。定年延長であっても能力実績で考えていくことになるのではないか。
(2) 組織の活性化について、労働者一人ひとりの能力は異なるものであり、後進に道を開けるために高齢者は再雇用だと決めつける発想自体がおかしいのではないか。
(3)段階的定年延長という意見の申出に至るまで、人事院と組合、各府省人事担当者の間で時間をかけた丁寧な議論を行ってきた。にもかかわらず、これから有識者の意見交換会を設け、新たに「再任用の義務化」という選択肢まで持ち出して、1ヶ月足らずで結論を出そうとするのは乱暴だ。これまでの経過を尊重した検討を行うべきだ。
(4)基本的な方針には何を盛り込むのか、全体像が見えるように@定員、定数をどうするのか、A希望退職制度を含めた退職手当制度のあり方、B短時間勤務職員の共済適用などを含めて検討すべきべはないか。
(5)地方公務員の問題については、総務省の公務員部と綿密に情報交換してもらって、地方の当事者が国に遅れることなく議論し、対応できるよう努めてもらいたい。

 これに対し、藤巻事務局長は次の通り答えた。
(1) 官民関係なく、加齢とともに能力は落ちていくことは明らかであり、60歳という年齢は社会通念上区切りの年だ。その時点を一つのきっかけにすることは意味があるのではないか。
(2) ご指摘のこれまでの経過をベースに検討を進めていきたい。
(3) 基本方針では、再雇用の義務化若しくは定年延長のうちどちらをとるかを明確にし、その後の制度設計は新年度からやっていく。定数、希望退職を含めた退職制度、短時間勤務者の共済適用など想定される課題ごとに答えを出さないといけない。制度官庁、各府省、組合の皆さんから意見をいただきながら検討していきたい。
(4)地方公務員の問題については、総務省公務員部との情報交換を図りながら進めていきたい。

 最後に、大塚副事務局長は「本日は、公務部門で実効性のある雇用と年金の接続を実現していくためには、あくまで定年延長という方法でなければならないということを申し上げた。定年延長だから公務員優遇だということにはならない。定年延長に絞った具体的な検討を急いでもらいたい。政府が決める基本方針では、本日申し上げた方向での対応をお願いしたい」と要請した。 藤巻事務局長から、「要請は承った。今後の議論において皆さんの意見についても検討する」との回答を受け、本日の交渉を終えた。

(別紙)

平成24年2月28日


1 現状
 ・ 昨年9月30日、人事院から「公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、平成25年度から平成37年度に向けて、定年を段階的に65歳まで引き上げることが適当」等とする国家公務員法等の改正についての意見の申出。

 ・ 昨年10月4日の閣議において、公務員制度改革担当大臣は「60歳以降の職員の雇用と年金の接続に向け、人事院の意見の申出を受け、民間の状況等をも踏まえつつ、総務省をはじめとする関係機関と連携して検討を進め、必要な措置を講じ」る旨を発言。

  * 民間の状況
@ 高年齢者雇用確保措置の実施状況:全体の95.7%の企業でいずれかの措置が講じられ、同措置実施企業の82.6%で継続雇用制度が実施されているが、継続雇用制度実施企業の56.8%(全企業の44.9%)は労使協定で継続雇用制度の対象者に係る基準を設定。
A 本年1月6日の厚生労働省労働政策審議会建議:法定定年年齢の引上げは「中長期的に検討していくべき課題」とした上で「継続雇用制度の対象となる高齢者に係る基準は廃止することが適当」と建議。(同旨:「社会保障・税一体改革大綱について」(2月17日閣議決定))

2 考えられる選択肢
 選択肢T(人事院の意見の申出に即した選択肢)
  ・平成25年度から3年に1歳ずつ定年を引き上げ、平成37年度に65歳定年を実現
  ・60歳超職員の給与は60歳前の70%に設定
  ・当分の間の措置として本府省の局長・部長・課長等の一定の管理職に役職定年制を導入
  ・60歳超職員の希望に応じた定年前短時間勤務職員制を導入

 選択肢U(民間の状況を重視した選択肢)
  ・常時勤務を要する官職への再任用を希望する定年退職者等を、1年を超えない範囲内で任期を定めて退職日の翌日に常時勤務を要する官職に採用することについて、当該定年退職者の任命権者に対して義務付け
  ・上記の再任用を行う場合、従前の勤務実績等に基づき、任命しようとする官職に係る標準職務遂行能力及び適性を判断して行うことについて、当該定年退職者の任命権者に対して義務付け
  (・上記の再任用を行う場合の俸給及び手当の在り方等については今後の検討課題)

3 今後のスケジュール、検討体制
 ・雇用と年金の接続の在り方が来年度の新規採用数に影響を与えることから、本年3月下旬までに政府としての基本的な方針を決定することが必要。
  基本的な方針の検討に当たっては、労使各側の当事者と十分に意見交換を重ねることはもとより、学識経験者等の有識者の意見を聴くことも必要と判断。このため、公務員制度改革担当大臣の下に「国家公務員の雇用と年金の接続に関する意見交換会」を明29日に開催予定。

 ・3月下旬頃を目途に、政府としての基本的な方針を決定後、同方針に基づく詳細な制度設計を検討予定。

以上