2012年度公務労協情報 33 2012年6月19日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院総裁に2012年夏季要求書を提出−6/19


(左側)棚村議長、(右側)原総裁
 公務員連絡会の委員長クラス交渉委員は、本日11時から人事院との交渉を実施し、棚村議長が原総裁に直接「2012年夏季における要求書」(別紙)を提出した。これにより、2012年夏季の取組みは正式にスタートした。
 交渉の冒頭、棚村議長は次のとおり要求の趣旨を説明した。
(1) 本年の民間組合の春季生活闘争については、東日本大震災、歴史的な水準にある円高、EUを起点とする経済・金融の世界的混乱という大変厳しい情勢の下で取り組まれ、全体としては賃金カーブを維持しているが、一時金については昨年より厳しい結果になっている。
(2) 一方、国家公務員の給与について、給与改定・臨時特例法によって、特例減額後の額が支給されている。加えて、退職手当についても、人事院の調査結果を踏まえて、400万円を超える減額を行うべく、具体的な引下げ措置の検討が始まるなど、公務をめぐっては極めて厳しい情勢にある。
こうした状況の下で、公務員労働者が生きがいを持って働ける職場の確立を求める声が高まっている。地方出先機関の移譲などの雇用不安や雇用と年金の接続という将来不安が差し迫ってきている下において、公務員労働者が国民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件が確保されなければならない。
(3) いま、公務員労働者は、昨年3月に発生した東日本大震災からの一刻も早い復旧・復興をめざし、それぞれの持ち場で全力を挙げて取り組むとともに、安心・安全で、質の高い公共サービスを提供するために、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励している。
本日提出した要求書では、公務員の労働条件をめぐる様々な課題について、具体的な要求事項の実現を求めているので、人事院総裁におかれては、公務員労働者が置かれている厳しい状況をしっかりと認識してもらって、人事院の使命としてその解決を図っていただきたい。
(4) 本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げさせていただくが、然るべき時期に総裁から直接、要求に対する回答をいただきたい。

 続いて吉澤事務局長が要求書の重点事項を説明した上で、「真摯かつ積極的な検討をお願いしたい」と要請した。
 これを受けて原総裁は、「ご要望は確かに受け取った。人事院としては、国会と内閣に必要な報告・勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存である。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めて参りたい」との見解を述べた。これに対し、棚村議長が「然るべき時期に総裁から直接、要求に対する回答をいただきたい」と改めて要請し、本日の提出交渉を締めくくった。

(別紙)2012年夏季要求書

2012年6月19日

人事院総裁
 原  恒 雄 殿

公務員労働組合連絡会
議 長  棚村 博美


2012年夏季における要求書

 本年の春季生活闘争について、連合は、東日本大震災という国難、歴史的な水準にある円高、EUを起点とする経済や金融の世界的な混乱といった大変厳しい環境の下、すべての労働者の処遇改善に向けて1%を目安に配分を求めるとともに、一時金水準の向上・確保を図ることをめざして取組みを進めました。その結果、全体としては賃金カーブを維持しましたが、一時金については昨年より厳しい結果となっています。
 一方、国家公務員の給与については、給与改定・臨時特例法が施行され、昨年度の人事院勧告に基づくマイナス給与改定に加えて、特例減額後の額が支給されています。加えて、新規採用が大幅に抑制され、退職手当の大幅引下げに向けた具体的な検討が進められるなど、公務をめぐっては極めて厳しい情勢にあります。
そうした状況の下で、公務員労働者が生きがいを持って働ける職場の確立を求める声が高まっています。雇用不安や将来不安が蔓延する中、公務員労働者が国民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件が確保されなければなりません。
 公務員労働者は、昨年3月に発生した東日本大震災からの一刻も早い復旧・復興をめざし、それぞれの持ち場で全力を挙げて取り組むとともに、安心・安全で、質の高い公共サービスを提供するために、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励しています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2012年夏季における人事院の取組みにあたり、下記事項を実現することを強く要求します。


1.公務員労働者の賃金について

(1) 非現業国家公務員の賃金については、本年2月29日に成立した「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」を踏まえて対処すること。
(2) 官民比較における対応関係の見直し、職種別民間給与実態調査の対象となる産業の拡大については、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行いながら、慎重に進めること。
(3) 50歳台職員の昇格、昇給のあり方の検討については、公務員連絡会と十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。
(4) 給与構造改革における地域間給与配分見直しの慎重な検証を行うこととし、地域別官民給与比較の方法、公表のあり方については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

2.労働諸条件の改善について

(1) 労働時間の短縮について
@ 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、人事院として積極的役割を果たすことにより、在庁時間の一層の削減に努めること。
A 他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
B これらの取組みに基づき、厳格な勤務時間管理と実効性ある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実行すること。

(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて引き続き取組みを強化すること。
A 育児休業及び育児のための短時間勤務等について、非常勤職員を含めて制度を十分に活用できるよう、引き続き周知と取得しやすい職場環境の整備を図るとともに、「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)に基づき、2020年までに男性の育児休業取得率13%を達成できるよう、実効ある具体的促進策を講じること。

(3) 福利厚生施策の充実について
@ メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康診断、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。あわせて、労働安全衛生法改正の動向を踏まえた対策の強化を図ること。
A パワーハラスメントについて、この間の民間動向を踏まえるとともに、昨年の調査結果を検証することにより、適切な対策を講じること。

3.非常勤職員等の制度及び処遇改善について

(1) 「非常勤職員給与ガイドライン」の実施状況を点検し、その遵守を徹底すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めるとともに、休暇制度の改善について検討すること。
(3) 非常勤職員制度の抜本的な改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議しながら、作業を進めること。

4.その他の事項について

 公務職場に外国人の採用、障がい者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上