2012年度公務労協情報 35 2012年7月17日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

夏季要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/17
−明確な回答がなかったことから、局長交渉では具体的回答を行うよう強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は本日13時30分から、2012年夏季要求に関わり、人事院平野職員団体審議官と交渉を行った。
 冒頭、大塚副事務局長が「6月19日に本年の夏季における要求書を総裁に直接提出した。民調も6月18日に終了し、そろそろ集計もまとまりつつあり、われわれの要求の検討も進んでいることと思うので、現時点での回答をお願いしたい」と求めたのに対し、平野職員団体審議官は以下の通り回答した。

1.民間給与実態調査等について
 今年の民間給与実態調査は、5月1日〜6月18日までの期間で実施した。調査は特段の支障なく終了し、現在集計中である。
 国家公務員の給与については、国公法第28条において、人事院は、給与が社会一般の情勢に適応するよう必要な勧告をすることを怠ってはならないとされているとともに、少なくとも年1回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に対し報告を行うことが義務付けられている。本年も、この責務を着実に果たすよう、民間給与の精確な把握に努めるとともに、社会経済情勢や各方面の意見を踏まえつつ、適切に対処して参りたいと考えている。

2.50歳台の給与の見直しについて
 昨年の勧告時の報告において表明した「高齢層における官民の給与差を縮小する方向で昇格、昇給制度の見直し」を行うことについては、現在、昇格制度、昇給制度の具体的な措置内容の検討を進めているところであり、成案がまとまり次第お示ししたいと考えている。

3.労働時間の短縮について
 人事院としては、超過勤務の適正な管理のためには、職員の在庁時間の的確な把握等を行うことが必要であり、そのためには、勤務時間管理を徹底することが重要と考えている。その際、勤務時間管理については管理職員の役割が重要であり、管理職員が部下の在庁状況を把握するとともに、その業務内容や在庁理由を確認し、不必要に在庁している場合の指導等を実施することにより、徹底されるものと考える。このような趣旨は、昨年の勧告時報告でも言及しているところであり、在庁時間削減の取組みにおいて各府省に浸透しつつあるところである。引き続き、関係機関とも連携して在庁時間削減に取り組んで参りたい。

4.男女平等の公務職場の実現について
 人事院は、公務における男女共同参画の実現を目指して、平成22年12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画を踏まえ、平成23年1月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を改定した。この指針に基づき、各府省は平成27年度までの目標と目標達成に向けての取組等を定めた5か年の計画を策定し、具体的な取組を進めているところである。
 人事院としては、本年2月に各府省人事担当課長からなる「女性国家公務員の採用・登用拡大推進会議」を開催し、各府省の計画の内容や具体的な取組例について意見交換を行ったところであり、引き続き、定期的に会議を開催するなどして、こうした各府省の取組が実効性のあるものとなるよう積極的に支援していくとともに、各府省の取組をフォローアップして参りたい。
 メンター制度については、メンター導入の手引き及びモデル例を各府省に通知するとともにメンター養成研修を実施しているところである。今後とも引き続き、人事院としても各府省の取組をフォローアップしつつ、支援して参りたい。
 育児休業及び育児のための短時間勤務を含む各種両立支援策については、これらの制度がより活用されるよう、「育児・介護を行う職員の仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」(職員福祉局長通知)の改正やリーフレットの配布等による制度周知を図っているところである。今後ともこれらを活用し、各府省の着実な取組を促していきたい。
 また、男性の育児休業の取得率については、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)等において、政府全体として平成32年までの目標を13%としており、人事院としても、各府省において男性職員が育児休業を取得しやすい職場の環境整備が進められ、男性の育児休業取得率の向上が図られるよう支援して参りたい。

5.福利厚生施策について
 人事院では、心の健康づくりをはじめとする健康安全対策等は、各職場において推進すべき重要な事項であると認識し、各府省と連携しつつ、施策の推進に努めてきたところである。特に、心の健康づくりについては、昨年3月、各府省に対し、研修の強化を求める通知を発出するとともに、研修教材(管理監督者向け、職員向け、健康管理者向け)の全面改定を行い、その活用の促進を図っているほか、昨年1月から「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」を年2回程度開催している。
 人事院としては、引き続き、こうした取組をつうじて心の健康づくりをはじめとする健康安全対策等の推進に努めていく所存である。
 また、パワー・ハラスメントに関しては、平成23年7月に各府省に対してアンケート調査を行い、その結果について各府省にフィードバック(情報提供)を行ったところである。パワハラ、セクハラ等については、今後ともその防止のための方策等について検討を行っていきたいと考えている。

6.非常勤職員制度等について
 非常勤職員の給与については、平成20年に指針を定め、必要に応じてフォローアップを行っているところであり、指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう取り組んでいるところである。
 また、平成22年10月より日々雇用職員に代わり新たに設けた期間業務職員については、制度が各府省において適切に運用されるよう引き続き努めていく所存である。
 こうした取組とともに、職員団体をはじめ関係各方面からの意見、要望、民間の状況等を踏まえ、必要な検討をして参りたいと考えている。
 また、非常勤職員の休暇については、民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたい。

 これに対し公務員連絡会側は、次の通り、審議官の見解を質した。
1.公務員労働者の賃金について
(1) 2014年3月まで行われている臨時特例減額は、一部異なる部分があるとは言え、昨年5月の国家公務員の給与削減に係る労使合意に基づくものであり、われわれは給与改定・臨時特例法を踏まえて対処することを求めているが、人事院として、この給与改定・臨時特例法に基づく給与減額についてどのように受け止めているのか。
(2) 本年の民調について、どの程度の実施率になったのか。また国公実態はどのような状況か。
(3) 本年の官民比較については、給与法本則に基づく国家公務員給与水準と臨時特例減額に基づいて実際に支給されている給与水準があるが、それぞれと民間給与との比較を行うべきと考えるがどうか。また本則レベルの官民較差はどのような状況か。
(4) 官民比較について、対応関係の見直しと来年に向けた対象産業の拡大についての検討状況を教えていただきたい。
(5) 50歳台の給与見直しについては、当該職員にとっては重要な勤務条件であるが、7月半ばを過ぎている本日時点でも具体的な案が示されていない。拙速な見直しは進めないこととし、十分な議論をさせてもらいたい。

2.労働時間の短縮について
(1) 昨年の勧告時の報告で、「東日本大震災への対応のため多くの臨時・緊急業務が生じていること等も踏まえて、所要の予算が確保される必要がある」と指摘していたが、実際に予算確保はなされたのか。
(2) さまざまな超勤縮減対策を講じても、むしろ本府省では超勤が増える傾向にあり、地方でも高止まっている実態にある。本府省における在庁時間の縮減は、着実に取り組まれているのか。
(3) 新規採用抑制で、要員の確保が大変厳しい。業務過重となって、メンタルヘルスに問題を抱える職員も増加傾向にあり、職員の健康確保のためにも超勤縮減は重要課題だ。720時間を超えた場合には超勤を行わせないといった厳しい制限を課すなど、思い切った新たな策を講じるべきではないか。

3.男女平等の公務職場の実現について
(1) 昨年改正された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」において、各府省が行う指針に基づく施策の実施、計画の点検・評価の状況について、人事院が定期的に把握し定期的に公表することにしているが、人事院における対応はどのような状況か。
(2) 過日決定された「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画では「公務員から率先して取り組む」ことが三本柱の一つになっているが、人事院の受け止め如何。また、この行動計画では男性の取得促進(2020年13%が目標)に言及しているが、人事院として中間目標や手段、施策について積極的に対応すべきではないか。

4.福利厚生施策の充実について
(1) 「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」が昨年から開催されているが、その開催状況と具体的成果はどうか。また、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加傾向にあり、その原因を丁寧に分析し抜本的な対策が必要ではないか。
(2) 苦情相談の件数を見ると、セクハラよりもパワハラが多い実態にある。何をもってパワハラと定義するのか難しい問題もあるが、昨年行った調査結果を踏まえ、何らかの対策を講じるべきではないか。

5.非常勤職員等の制度及び処遇改善について
(1) 「非常勤職員給与ガイドライン」通り実施されていると思うが、引き続き遵守の徹底を期してもらいたい。
(2) 期間業務職員制度の導入により、従来6ヵ月以内がほとんどであった雇用期間が1年以内に伸びて来ていることを踏まえるならば、6ヵ月を超える雇用期間の場合には、6ヵ月、8割出勤を待たずに当初から年休を付与すべきではないか。

 これに対し、平野職員団体審議官は以下の通り回答した。
(1) 給与改定・臨時特例法に基づいて実施されている給与減額支給措置については、東日本大震災という未曾有の国難に対処する必要性等に鑑み、国会において判断されたものと承知している。
(2) 民調実施状況について、ここ数年は90%程度の数字で推移してきているが、本年についてもほぼ例年並みの水準を確保できる見込みである。国公実態については、現在、最終的な取りまとめを行っているところである。
(3) 本年の官民比較について、給与法本則に基づく国公給与水準と臨時特例減額に基づいて実際に支給されている給与水準それぞれと民間給与との比較を行うべきではないかとのお尋ねの件については、お答えできる段階にない。
(4) 職種別民間給与実態調査の対象となる産業の拡大、官民比較における対応関係等の見直しについては、引き続き、皆さんの意見も聞きながら検討して参りたい。
(5) 50歳台の給与の見直しについては、できる限り早く案を示し、議論していきたい。
(6) 超勤予算については、実際に要求するのは各省であり、その結果について把握していないが、各省が超勤予算を確保しやすいような環境づくりという観点から昨年の報告で指摘したものである。
 超勤縮減については、これまで政府全体として在庁時間縮減に取り組んでいるところであり、本年度においても引き続きその取組みがなされている。引き続き関係機関と連携して取り組んでいく。
 超勤時間の上限は人規等法令では規制していないが、これは、国民に対して行政サービスを適時適切に提供する必要があるという公務の性格に照らし、結果的にこの時間数を超えざるを得ないこともあり得ることを考慮したものである。引き続き指針に定められた方策等により、各省において超勤縮減のための努力を最大限行えるよう関係機関と連携して取り組んでいく。
(7) 女性国家公務員の採用・登用拡大の実施状況については、各府省の実施状況を毎年取りまとめ、詳細にホームページに掲載するとともに、定期的に会議を開催し、相互に意見交換や情報交換を行っている。
(8) 男性の育児休業取得促進が政府全体の重要な目標であり、人事院としては、男性職員がより取得しやすいように、冒頭に回答したことに加え、平成23年11月には、1か月以下の育児休業を取得した職員について、期末手当の在職期間から当該育児休業期間を除算しないこととする人事院規則の見直しを行ったところである。
(9) 「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」については、これまで3回開催しており、研修の強化、円滑な職場復帰のための「試し出勤」の活用促進、保健師の活用促進、職場環境改善の推進等に関して意見交換等を行った。今後も年2回程度の開催を目途として、時宜に応じたテーマを取り上げて議論していきたい。
また、メンタルヘルス問題を抱える職員の動向については、現在実施している5年に1度の長期病休者実態調査の分析結果を踏まえ、必要に応じて、抜本的な対策の検討を含め、今後の対策に反映していきたい。
(10) パワー・ハラスメント防止のための施策等については、今後、公務における実態把握とともに、平成24年3月の厚生労働省の提言(職場のパワー・ハラスメントの予防・解決に向けた提言)やパワー・ハラスメントに関する裁判例など社会的な動向等にも留意しつつ、検討していく。
(11) 非常勤職員の給与については、引き続き適正に支給されるようフォローアップしていく。また非常勤職員の休暇については、民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたい。

 以上の審議官の見解を受けて、公務員連絡会側は、@国家公務員の給与については、現実に減額支給されていることに変わりはなく、本年の勧告によって、これを更に引き下げるといったことはあってはならないことだ。国公法に規定されている職員の利益を擁護するという人事院の使命を踏まえ対応してもらいたい、A職員の利益の擁護ということからすると、50歳台の給与見直しも同じである。国会の判断に基づく臨時特例減額が実施されていることも踏まえ、われわれと十分交渉・協議を行いながら対応してもらいたい、B非常勤職員等の処遇については、抜本的な改善に向けた検討を継続することとし、引き続き話し合ってもらいたい、など強く求めた。
 最後に、大塚副事務局長は「本日は要求事項について全般的に議論をさせてもらったが、残念ながらいずれの課題についても明確で具体的な回答が示されなかった。各局長との交渉では、本日の議論を踏まえ、具体的な回答を示していただきたい」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。

以上