2012年度公務労協情報 39 2012年8月3日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

夏季要求をめぐり人事院給与局長と2度目の交渉−8/3
−官民較差、高齢層の昇給・昇格制度見直しについて追及−

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は本日9時45分から、2012年夏季要求をめぐり人事院給与局長と2度目の交渉を行った。

 冒頭、公務員連絡会吉澤事務局長が「結論を来週に想定すると、総裁回答に向け、本日は局長と最後の交渉になる。27日の回答では、較差について具体的状況をいえる段階にないという回答であったし、50歳台の給与見直しについては議論が平行線であった。こうした27日の議論を踏まえ、本日は、とくに官民較差や50歳台の給与見直しについて、現段階の検討状況を回答願いたい」と求めたのに対し、古屋局長は以下の通り答えた。

1.勧告について
 勧告日は、来週で調整中である。

2.官民較差について
 官民較差については、給与法ベースの額(減額前の額)を基にみる方向である。現在、最終的な詰めを行っているところであり、具体的状況をいえる段階ではない。  特別給については、最終的な結果をいえる段階ではない。給与法の支給月数を基にみると、民間の支給割合は昨年の民調結果よりは若干下回るのではないかと見ているが、支給月数については、まだ何ともいえない状況である。

3.50歳台職員の給与見直しについて
 官民の給与水準は、全体として均衡させているものの、50歳台、特に後半層において、官民の給与差が相当程度存在している状況にある。このような官民の給与差の要因の一つとなっている給与構造改革における経過措置については、給与改定臨時特例法において、平成26年3月末に廃止することとされたが、50歳台後半層における官民の給与差はなお相当程度残ることが想定される。
 公務と民間では昇進管理等の人事運用に相違もあることから、年代別の給与差が一定程度生じるのはやむを得ない面もあるが、世代間の給与配分を適正化する観点から、50歳台後半層における給与水準の上昇をより抑える方向で、早急に昇給・昇格制度の改正を行う必要があると認識しており、そのような立場からこれまで検討してきたところである。
 最終的な方向としては、すでにお示ししている措置案の通り行うこととしたいと考えている。

 回答に対し吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 本年の官民較差について、給与法ベースの額を基にみる方向という回答であったが、給与法に基づく額と給与改定臨時特例法に基づく減額後の額の両方を示すということではなかったか。
(2) 本年の春闘結果を見ると、民間では大半は給与カーブの維持、定昇の確保がなされ、また一部では給与改善がはかられている実態にあり、月例給の水準は昨年と変わらない状況だ。一方、国公においては、平均年齢が上昇し、直接それが影響するわけではないが、官民較差は少ないながらもここ数年マイナスで推移してきている。なぜ平均年齢が上昇しているのかについて考えると、定員が削減され、新規採用も抑制され、再就職規制は強まるといったことがあるが、そういった状況の下、個々の職員にとっては一層仕事が厳しくなっており、民間における月例給の水準が変わらないにも関わらず、公務員の給与水準が下がるということは、不合理ではないか。こうした点をどのように認識しているのか。

 これに対し古屋局長は、次の通り答えた。
(1) 官民較差について、現行の給与法に基づく額と給与改定臨時特例法に基づく減額後の額の両方を数値としては示すが、どちらをベースに本年の官民較差における最終的な結論を得るかということを念頭に給与法ベースの額を基にみる方向であるが、現在最終的な詰めを行っているところと申し上げた。
(2) ラスパイレス比較においては役職と年齢が大きな要素であるが、単純に平均年齢が上がったからといって官民較差に直接影響するものではない。民間の昇進管理も含めた変化がどのように現れてきているかを把握することは難しく、ラス比較によって官民の給与水準を比較することで、適正な水準の維持がはかられていると認識している。

 続いて、吉澤事務局長は50歳台後半層の給与引下げについて、以下の通り追及した。
(1) 現在提案されている50歳台の昇給、昇格制度の見直しについては、本年の官民較差に基づいたものではないという理解でよいか。
(2) 見直しについては世代間の配分の問題ではあるが、官民の給与差について、人事院として、すべての年齢、すべての世代においてそれをなくすことは困難であるという認識にあるという理解でよいか。

 これに対し、古屋局長は以下の通り回答した。
(1) 提案している昇給、昇格制度の見直しは、本年の較差に基づいたものではないというのは、その通りである。
(2) 世代間における官民の給与差について、昇進管理などについて直ちに変え得るものではないので、すべてをピッタリ解消するというところまでは考えていない。

 さらに、各構成組織書記長が現場の実態を踏まえ、以下の通り訴えた。
○ 現行の人事管理や評価のあり方と今回の見直し内容の整合性も含め議論が不十分である。2年間の特例減額が実施されている中において、来年の1月1日実施という提案は到底受け入れられるものではない。
○ 人事制度を現行のままにしておいて50歳台の給与を抑制することは、能力・実績主義に反するのではないか。しっかり説明責任を果たしてもらいたい。
○ この見直しの対象は、現給保障の廃止や退職手当引下げの対象となる職員と同じ職員であり、そうした職員にとってみれば到底受け入れられるものではなく、納得できる説明をしてもらいたい。
○ 50歳台後半層の職員は多くが管理職など重責を担っており、モチベーションの低下で、職場全体の士気にも大きく影響する。そうしたことを十分踏まえて検討してもらいたい。
○ 昇格制度の見直しについては、昇給・昇格の遅れている中途採用者や府省間配転者の多くが対象となることも十分考慮してもらいたい。
○ 地方公務員においては、多くの自治体が独自カットがなされており、退職手当の見直しや職域年金問題が論議されている中、なぜ新たな見直しがなされようとしているのか理解できないというのが現場の声だ。きちっとした議論を行い、慎重に対応すべきだ。
○ これは間違いなく地方公務員にも影響する話であり、地公では退職時までに管理職にならないという実態が多く、その点も十分考慮してもらいたい。
○ 高齢層における官民の給与差は、人事の違いに原因があり、公務員連絡会は繰り返し人事のあり方も含めた総合的な議論を求めてきたが、そうした議論をせず、給与だけで調整するとバランスを欠く。拙速な対応をするのではなく、人事のあり方も含め丁寧な議論をお願いしたい。

 各構成組織からの意見を受けて、古屋局長は以下の通り答えた。
○ いただいた指摘があることは承知しているが、人事院としては50歳台後半層の給与差が相当程度あることに問題意識を持ち、継続して検討し、対応してきているが、経過措置が廃止された時にもなお相当の給与差が残る。
○ 民間においては昇給制度を持っている企業のうち約4割が50歳台後半で昇給停止を実施しており、そうした民間の状況も受け止めなければいけない。今回は制度改正まで踏み込んで、しかも早期にやらなければならないと認識しており、昇給時期は1年に1回であることから、来年1月実施としている。
○ 昇進管理については各府省を含めた議論が必要であり、50歳台の給与のあり方については、現在議論されている退職管理のあり方の検討とも結びつけながら、引き続き議論していきたい。

 これを受けて、吉澤事務局長はさらに次の通り追及した。
(1) 55歳を超える職員の昇給抑制について、人事院は2005年の報告の中で「勤務実績に基づく昇給制度が導入されることからすれば、中高齢層についても勤務実績をより適切に給与に反映させるよう、年齢により一律に昇給停止させる制度は廃止することが適当」として55歳昇給停止措置を廃止した経緯があるが、それとの関係で、今回の措置はどのように説明するのか。
(2) 昇格制度の見直しについて、昇格はあくまで任用の結果であり、例えば、1つのポストに欠員が生じた際、評価が全く同じ49歳の職員が2人いて、その1人が任用され、もう1人が翌年となった場合、2人の昇格メリットは1年の違いで違ってくるが、そうしたことはどのように説明するのか。

 これに対し、古屋局長は以下の通り答えた。
(1) 昇給の見直しについて、確かに昇給区分C(良好)では2号俸昇給するところを昇給をなくすという意味では、旧来に戻ることになるが、評価結果の処遇への反映という点では、昇給だけでなく全体として踏まえなければいけない。また民間では昇給制度を持っている企業のうち約4割が昇給停止を実施している実態も考慮し、現行でも55歳以降は昇給幅を半分にしており、今回はその抑制措置をより強くしたもので、昇給区分AやBは残してあり、勤勉手当への反映もあり、今回の見直しは評価結果の処遇への反映を否定しているわけではない。
(2) 年齢で昇給、昇格の効果が変わるというのは、今も55歳の時点での昇給に差があり、どこかの時点で差が生じることはある。昇格メリットについても、平成18年の見直しで従来の昇格メリットを改善したが、今回はその一部に修正をかけたものであり、御理解をいただきたい。

 これに対し吉澤事務局長は最後に「給与はあくまで結果であり、根本的な問題は人事をどうするかだ。職員の理解を得るためにさまざまな言い訳、説明をしないといけないような制度の見直しで本当にいいのか。人事のあり方も含めて全般的な議論を丁寧にすべきだ」と指摘した上で、@提案された50歳台給与の見直しについては、平均年齢が上昇し、高齢層の労働過重が高まらざるを得ない職場の現状の下、ここ数年の措置も含めて、公務員の士気に逆行する措置だと言わざるを得ない、A世代間における官民給与差の問題については、公務の人事制度の原則と民間の実態の相違を前提にどのように考えるか慎重に議論すべき、B昇給、昇格制度の見直しを検討するとしても、特例減額期間が終わってからの話であり、今回の提案は撤回してもらい、時間をかけてじっくりと全体的な議論をし、合意をした上で、必要な措置を行うべき、と要求し、総裁交渉に向け、最終的な再検討を強く求め、本日の交渉を締めくくった。

以上