2012年度公務労協情報 5 2011年11月15日
公務公共サービス労働組合協議会

徳島で"公共サービス基本条例・公契約基本条例・公契約条例をめざすシンポジウム"を開催−11/5


野田市公契約条例について講演する根本市長
 11月5日、「11.5公共サービスシンポジウム徳島県実行委員会(連合徳島、フレッセ(全建設労働組合)、徳島県公務労協、県議会新風・民主クラブで構成。代表:小松連合徳島会長)」は、「徳島県の公共サービス基本条例・公契約条例をめざすシンポジウム」をセンチュリープラザホテル(徳島市)で開催した。会場には、県内自治体、連合徳島加盟労働組合等から200名が参加し、討論に熱心に耳を傾けた。
 はじめに、平井敏郎実行委員(連合徳島中小対策本部長)の開会あいさつ、小松義明実行委員長(連合徳島会長)の主催者あいさつ、花村靖公務労協副事務局長・木原忠幸連合四国ブロック代表幹事(連合愛媛会長)の来賓あいさつなどの開会行事が行われた。
 第1部は、2009年9月、公契約条例を全国に先駆けて制定した千葉県野田市の根本崇市長が、「公契約条例の制定がなぜ必要なのか」と題して講演を行った。
 根本市長は、冒頭に「三位一体改革以来、国が進める行政改革はムダを削って新しい政策要求に応えるためとしながらも、財政再建の側面が強く出すぎ、行政運営が本来備えているべき〈人に対する思いやり、温かみ、優しさ〉というものを疎かにしている。無駄を省くことは必要だが、強く求めるあまり無機質な人間味のないものであってはならない、というのが私の基本的な考え方である。ある程度経費がかかっても市民の必要とするサービスの質を落とさないよう工夫をすることが行政運営の一番のポイントと考える」と自らのスタンスを述べ、本条例の制定が必要だと感じたきっかけから、制定に向けた作業、改定を行っている現在までの経過について、条文の具体を示しながら説明した。
 また、本条例施行の影響について、経費面では「心配されるほどの経費増にはならない」、職員増員についても「担当職員を1人増やしただけで十分対応できている」と述べ、「これまで、条例を制定したことについて、プラスに評価されることがあっても非難をされたことはない」、「国の動きがすすまないなかで、各地で条例を制定して、その包囲網のなかで公契約法制定を迫っていく必要がある」と強調。講演後、参加者からの質問にこたえながら、「市民レベルで納得できる材料を提示しながらアピールを」と訴えた。

シンポジウムには多くの自治体担当者も参加  第2部は、藤岡一雄徳島公務労協議長をコーディネーターに、根本崇野田市長、澤井勝奈良女子大学名誉教授、庄野昌彦徳島県議会議員、新居良雄フレッセ(全建設労働組合)書記長の4人がパネリストとしてシンポジウムを行った。
 はじめに、コーディネーター、パネリストからそれぞれの取り組みについて報告が行われた。
 藤岡コーディネーターは、まず、パネリストを紹介し、公共サービス基本条例・公契約条例の必要性と「良質な公共サービスの確立を求める徳島県連絡協議会」のこれまでの取り組みの経過について説明。運動が一定の広がりをみせているものの、徳島県として「国や各県の動向を踏まえながら」や「法整備を待ってから」といった見解が出されているなかで、「本シンポジウムを、公契約条例、公共サービス基本条例の目的と必要性、制定における課題を明らかにすることで、徳島県及び県内自治体への喚起の場としたい」と提起した。
 澤井名誉教授は、公契約の考え方はILO(国連労働機関)94号条約が基本となっているが、1949年に採択されたこの条約は2008年には60か国が批准しているなかで、日本は未批准であるということから話を始めた。住民の税をつかう公共事業にかかわる企業は、労働者に適切な賃金を支払う義務があること。公契約条例は、法律で定められていないことを決める条例であり、国の基準である法律をつくる政策的なinnovator(革新者)は、地域とそのニーズを知る各自治体であること。ILO94号条約を批准させるために、地域からどのように声を上げていくかが求められていることを訴えた。
 新居書記長は、フレッセの公契約法(条例)制定に向けた取り組みについて報告。公共工事については、「公共工事設計労務単価」を元に積算し、入札が行われるが、労働者の生活を支えるためのものとして設定されるべき設計労務単価が大きく引き下げられていることで、末端の労働者が大きなしわ寄せを受けている。しかも、これが民間の工事にまで大きな影響を与えている。これまでの取り組みによって、県内全市町村で「国に対して法制定を求める意見書」を採択しながらも、条例制定に関しては「法整備を待ってから」という見解が多い現状と条例制定の必要性を訴えた。
 庄野議員は、公共工事の総額が減少するなか、賃金が著しく減少している状況下で、「入札という機会を活用して、公共労働基準や環境、人権、男女共同参画等の価格以外の社会的価値を追求していくことは、地域公共サービス水準の向上につながる重要で喫緊の課題である」とし、県議会で行ってきた質問や要請行動と県当局の回答・姿勢について報告。今回の「シンポジウム」をきっかけとして、条例制定の意義を幅広く世論に訴えながら、ねばり強い運動を展開していく必要があると訴えた。
 これらの報告を受けて、根本市長は、公契約条例の課題に言及しながら、「今が条例制定のチャンス。徳島での取り組みをもう一押しして進めてほしい」とエールを送った。
 続いて、パネリストどうしの質疑とフロアからの発言の後、各パネリストがこれからの取り組みに対する決意を述べた。根本市長は、「みんな今の社会状況については分かっているはず。党派を超え、立場でものを言うことをやめて、今の状況のなかで何をどうすればよいのかを考えて議論をつくりあげていくことが必要。徳島でそれをつくっていってもらいたい」と述べた。  最後に、西山幸宏実行委員(徳島公務労協副議長)がまとめと閉会あいさつを行い、シンポジウムを締めくくった。

以上