2012年度公務労協情報 52 2012年10月1日
公務公共サービス労働組合協議会

第3回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催される−9/28
−公務労協がヒアリングに応じる−

 9月28日10時から、総務省において第3回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催され、独立行政法人国立病院機構および公務労協からのヒアリングが行われた。
 最初に、国立病院機構より、機構および機構における労働組合の概要の説明があり、その上で、@2004年に特定独法に移行し、協約締結権の付与をはじめ労使関係について法制度上の変更はあったが、実態的・内容的な変化はない、A国公法適用の頃から交渉ごとに確認書を書面化しており、締結した以上は労使ともお互いそれを守るということは行ってきた、B現在でも交渉後には労働協約を締結しているが、とくに問題はないと述べた。
 それに対する質疑応答の概要は、以下の通り。
<質問>
(1)各病院における団体交渉は、年間で45病院、50回とのことだが、組合が162支部を有する中で、交渉はそれだけの数なのか。
(2)交渉の結果がどのくらい協約化されているのか。
(3)独法化され、賃金に関して自主的に判断・選択できる余地は増えたか。
(4)人事院勧告制度がなくなった場合、どのような影響があると考えられるか。
(5)労働委員会での係争数はどのくらいか。
<回答>
(1)本部レベルで年10回ほど賃金交渉を行っており、その際には支部からの代表が交渉に参加している。なお、独法化直後は76病院、87回であった。
(2)現在は交渉結果はほぼ協約化している。その後、協約に基づいて就業規則の改定等を行っている。
(3)独法化の際には、独法前の賃金体系をほぼ平行移動したが、その後は、人勧も参考にしつつ、独自の変更は加えてきている。
(4)勧告制度がなくなる影響は、全くないとは言えないが、病院収入には診療報酬という財政的制約もある以上、途方に暮れるということはない。
(5)労働委員会については、2004年以降あっせんが数件あり、また、不当労働行為事件が1件申し立てられた程度である。

 次に、公務労協からのヒアリングが行われ、加藤議長が、@2000年12月の行政改革大綱の閣議決定以降、6つの審議会等をはじめ、膨大な時間と労力を注いで議論が積み重ねられており、当会議には、政府・政治の覚悟と決断を促すことを要請したい、A10年以上にわたる多くの自治体での独自の給与削減に係る深刻な経緯を踏まえれば、地方三団体の反対の意向は、まったく理解できない、B地方三団体は全体意見として反対と主張するが、個々の首長においては必ずしも全員が反対ではなく、積極的に賛同する首長も存在することを認識すべき、C国公関連4法案がすでに国会審議されていることを踏まえ、地公の自律的労使関係制度に係る基本的事項は、すでに変更の余地はなく、早急な法案の閣議決定と国会提出が必要、D消防職員への団結権付与は、有識者会議でなんらかの判断がされるものではなく、政治決断の段階にある、などの主張をした。
 それに対する質疑応答の概要は、以下の通り。
<質問>
(1)自治体に組合が複数ある場合や組織率などによって、交渉の進め方に違いがあるのか。
(2)警察職員の労働基本権制約は継続されるが、代償措置のあり方をどう考えるのか。
(3)現時点では、地方三団体から根強い反対があり、国民・住民からの理解も乏しい。新制度への誤解があるまま、スタートすべきではないのではないか。
(4)賃金決定にあたり、何度くらい交渉は行われるものなのか。
(5)地方三団体は、協約締結権は非常に重い荷物と思われているようであるが、賃金水準のガイドラインを決めるような、上部団体レベルでの交渉は想定しているか。
(6)地方三団体は、労使関係は良好と主張している、それについてどう考えるか。
<回答>
(1)交渉の手法は様々であるが、一般的には連合体等を形成し、共同で交渉している。共同で交渉をしていないところであっても、賃金等について異なる水準で妥結するということは想定できない。
(2)民間準拠という原則は変更されるわけではなく、警察職員については、協約締結権を有する職員の賃金・勤務条件とのバランスで使用者側が決定すれば、十分ではないか。
(3)これまで、地方公務員の自律的労使関係の確立に関わっては、あらゆる場面で議論をしてきた。また、実態としても、すでに代償措置としての人勧は機能していない。国会審議と制度を動かすプロセスの中で、国民からの理解は進むものと思われる。
(4)それぞれの労使関係の実情にもよるが、平均すれば6〜7回程度ではないか。
(5)自治体労使および議会によって勤務条件を決定するという基本は、変更はない。したがって、個別自治体の賃金などを中央で決めるというのはありえない。しかし、@地方公務員としての一定の水準等の統一性確保、A国公における制度・水準との関係の整理、B労使間トラブルの回避など、効率性・安定性確保のため、中央協議の場を設定することを提起してきた。
(6)現在は、労働委員会制度が活用できないために表面化しにくいが、不当労働行為は数多くあると考えており、けっして労使関係は良好とは考えていない。ごく当たり前の労使関係を確立するためにも、労働委員会による労使間紛争の調整システムや救済措置は必要である。

 この後、委員間でのフリーディスカッションとなり、そこでは、@勧告に代わりうる指標の必要性の有無、A警察職員や幹部職員などへの代償措置のあり方、B労使間ルールや運用上の留意点・ガイドライン策定の必要性などについて議論されたほか、次回以降、全国知事会などへのヒアリングに際しては、とくに実務的な不安・問題点について聴取することなどが話し合われた。
 最後に、稲見総務大臣政務官が、「労使双方の当事者性が強化されることにより、職場のモチベーションやインセンティブが向上することが、新制度に期待されること。引き続き議論をお願いしたい」とあいさつし、会議を終了した。
 次回は、10月初旬に開催予定であり、知事会・市長会などからのヒアリングを行うこととされている。