2013年度公務労協情報 15 2013年2月19日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

総務大臣に2013春季要求書を提出−2/19

 公務員連絡会は2月19日、委員長クラス交渉委員が、新藤総務大臣と会い、春季要求書を提出し、2013春季生活闘争の火蓋を切った。要求書では、連合全体の要求を踏まえ、公務員労働者の賃金の維持・改善、非常勤職員等の雇用と労働条件の改善、雇用と年金の確実な接続などを強く求めている。今後、3月7日の幹事クラス交渉、3月15日の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月26日の回答指定日に向け、政府を追い上げることとしている。
 総務大臣交渉の経過は次の通り。


<総務大臣交渉の経過>
 19日17時40分から総務省で行われた新藤総務大臣との交渉には、棚村議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1、2)を手交した。
 要求提出に当たって棚村議長は、次の通り述べ、3月26日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 未曾有の大震災、原発事故から、はや2年が過ぎようとしているが、いまだに避難生活を余儀なくされている被災者が少なくない。一刻も早い復興・再生が、わが国の最重要課題であり、われわれ公務部門の労働組合としても、それぞれの職場で全力を尽くしていきたい。
(2) 公務員連絡会は、連合に結集し2013春季生活闘争に取り組んでいるが、非正規労働者を含めたすべての働く者の「傷んだ雇用・労働条件」の復元と賃上げを実現し、日本経済の再生をめざしていくことを最重要課題と位置づけ、取組みを進めている。
 安倍首相も、デフレ脱却を最大の政策課題として、過日は経済三団体のトップに賃上げを要請した。政府全体として、ぜひとも労働者の賃上げと内需拡大という政策を首尾一貫して展開されることを求めておく。
(3) このような情勢のもと、国家公務員の給与について、特例減額期間中であるにも関わらず、政府が昨年11月16日の閣議決定を変更し、来年1月から高齢層の昇給を抑制する改定を決定したことは極めて遺憾なことだ。また、地方公務員給与について、国が減額を要請・強制することは許されることではない。
 雇用不安や将来不安が蔓延する中、国民の生活を支える公共サービスの役割は益々高まっており、国民生活の安心と安全を確保していくためには、公務員に相応しい労働条件の確保が不可欠だ。
 貴職におかれては、これらのことを十分認識され、本年の賃金・労働条件改善にあたって、@非常勤職員を含めた公務員労働者の賃金・労働条件を維持・改善すること、A雇用と年金の確実な接続を実現すること、B必要な定員を確保するとともに超過勤務を着実に縮減すること、などに最大限努力されるよう、強く要求する。
(4) 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2013年春季の要求を提出する。これから事務当局との交渉を積み重ね、3月26日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。

 続いて、地公部会を代表して木地公部会議長が「地方公務員給与については、既に大半の自治体において住民サービスを維持するために独自の給与削減措置が実施されている。1月の公務員給与取扱いの閣議決定においては、防災・減災、地域経済の活性化のため、地方自治体に地方公務員給与削減を要請しているが、政策としても首尾が一貫せず、地方自治の本旨を蔑ろにするものだ。労使の自主的交渉を尊重し、地方公務員給与引下げを地方自治体に強制しないことを強く要請する」と述べた。

 これらに対して総務大臣は、「本日の両議長からの要求事項の趣旨を承った。いただいた意見はよく検討して、然るべき時期に回答したい」と答え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。
 最後に、公務員連絡会の棚村議長は、「3月に回答をよろしくお願いしたい」と求め、交渉を終えた。


(資料1)

2013年2月19日


総務大臣
 新 藤 義 孝 様

公務員労働組合連絡会
議 長  棚 村 博 美



要 求 書


 公務員連絡会は、2013春季生活闘争を「働くことを軸とする安心社会」の実現をめざし、非正規労働者を含めたすべての働く者の「傷んだ雇用・労働条件」の復元とディーセントワークの実現を最重要課題と位置づけ、取組みを進めているところです。
 安倍政権は、デフレ脱却を最大の政策課題として、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる政策を進めていますが、デフレ経済から脱却し真の意味で日本の社会経済総体の再生していくためには、雇用の拡大と賃上げによる消費拡大、内需拡大をはかることが何よりも重要です。
 一方、国家公務員の給与については特例減額期間中であるにもかかわらず、政府が昨年11月16日の2012人事院勧告の取扱いの閣議決定を変更し、来年1月から高齢層の昇給を抑制する改定を決定したことは極めて遺憾と言わざるを得ません。また、地方公務員給与は地方自治の本旨のもと、各地方自治体の労使交渉に基づき決定されるものであり、また住民サービスを維持するために多くの地方自治体において厳しい独自削減を実施してきた経過等を踏まえると、国が減額を強制することは許されることではありません。
 雇用不安や将来不安が蔓延する中、国民の生活を支える公共サービスの役割はますます高まっています。公務員労働者が国民の期待に応え、東日本大震災からの復興・再生はもとより、解決を迫られるさまざまな課題に的確かつ確実に対処し、国民生活の安心と安全を確保していくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件の確保が不可欠です。
 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2013年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。



1.総人件費について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件を確保すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、雇用と年金を確実に接続させるため、必要な定員を確保すること。

2.2013年度の賃金改善について
(1) 公務員労働者の2013年度賃金については、維持し、改善すること。なお、非現業国家公務員の賃金については、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」に基づくこと。
(2) 超過勤務手当の全額支給の実現、独立行政法人等を含めた公務員給与の支給に必要な財源の確保に努めること。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善を目指し、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 非常勤職員の給与については、引き続き「非常勤給与ガイドライン」を遵守するよう各府省を指導するとともに、2013年度については1時間当たり30円以上引き上げること。
(3) 期間業務職員制度については、引き続き当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めることとし、とくに、常勤職員と同等の勤務を行っている期間業務職員の給与を「均等待遇の原則」に基づき抜本的に改善すること。

4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充、などを実現すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。

5.高齢者雇用施策について
 雇用と年金の接続については、段階的定年延長という人事院の意見の申出を踏まえ、確実な接続を実現するとともに、高齢期の生活を支える給与水準と適切な労働条件等を確保すること。
 また、定員の純減政策を転換させ、雇用と年金の確実な接続のために必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会との十分な交渉・協議を行うこと。

6.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、引き続きその原因追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康診断、カウンセリングや「試し勤務」など復職支援施策を着実に実施すること。
(3) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。

7.男女平等の公務職場実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置付け、女性が活躍しやすい経済社会の構築に向けて公務員が率先して対応するとした「女性の活躍促進による経済活性化行動計画」の趣旨等を踏まえ、女性の労働権確立や環境整備に政府全体として取り組むこと。
(2) 日本再生戦略に掲げられた男性の育児休業取得目標2020年13%の実現に向けて、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づく各府省の実施計画における目標達成やメンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
(4) 次世代育成支援対策推進法に基づき各府省が策定した「特定事業主行動計画」の着実な推進に取り組むよう、各府省を指導すること。

8.早期退職募集制度について
 早期退職募集制度については、退職強要とならないことは当然のこととして、具体化に向けては、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

9.その他の事項について
(1) 障がい者雇用について、本年4月から法定雇用率が引き上げられることも踏まえ、拡大すること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上


(資料2)

2013年2月19日



総務大臣
 新 藤 義 孝 様


公務員連絡会地方公務員部会
   議 長   木 敏 雄



要 求 書


 公務員連絡会地方公務員部会は、地域の公共サービスの質を守り、改善するため懸命に努力している職員の働きに相応しい処遇の実現をめざして、取組みを進めているところです。
 政府は1月24日、給与関係閣僚会議及び閣議で、昨年11月16日の2012年人事院勧告取扱いの閣議決定を変更し、地方公務員の給与について、国の臨時特例減額措置に準じて必要な措置を講ずることを要請する内容の閣議決定を行いました。
 地方公務員給与に対するこの要請は、地方自治の本旨を蔑ろにするものです。地方交付税を減額し、給与減額を「要請する」ことは、事実上の強制であり、少なくとも給与改定・臨時特例法附則12条の「自主的かつ適切に対応する」との規定と整合しません。さらに、閣議決定は、防災・減災事業や地域経済の活性化を図ることを喫緊の課題とし、これに迅速かつ的確に対応するため、地方公務員給与削減を要請するとしていますが、これは政府が一方的に地方自治体に給与削減を押し付けるために補足したものにほかなりません。
 地方公務員部会は、1月29日に開いた代表者会議の決定に基づき、下記の通り2013年春季の要求を提出します。
 貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力を頂きますよう要求します。


1.2013年度の賃金改善について
(1) 地方公務員の賃金の維持、改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
(2) 自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重し、また、地方公務員給与引下げを地方自治体に強制しないこと。

2.臨時・非常勤職員等の雇用安定・労働条件改善について
(1) 地方自治法第203条の2、第204条の改正を行い、非常勤職員にも諸手当が支給できるようにすること。
(2) パート労働法の趣旨が地方公務員の臨時・非常勤職員にも適用されるよう法整備を行うこと。
(3) 労働基準法が定める賃金・労働条件の改善・確保、法律にもとづく健康診断、社会保険や雇用保険の適用等がはかられるよう、各地方自治体に対して強く要請すること。

3.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充、などを実現すること。
(3) 「不払い残業」の解消を地方自治体に要請すること。
(4) 36協定締結義務職場での締結促進のための施策、労働基準法第33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について厳格に運用するよう地方自治体に要請すること。

4.人事評価について
 自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うよう地方自治体に対して必要な対応を行うこと。

5.新たな高齢雇用施策の充実について
 段階的定年延長に関わっては、地方自治体においても国に遅れないよう制度設計を進めること。当面は、現行の再任用制度がすべての自治体で確実に実施されるよう総務省として格段の対応をすること。

6.福利厚生施策の充実について
 自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策に関わる自治体の実態の把握と、その問題点や課題についての改善策を整理し、各自治体に対して、最低限、法令に基づく労働安全衛生体制を直ちに整備するよう強く要請すること。特に、東日本大震災の被災地に勤務する職員の労働安全衛生体制の充実を早急にはかること。

7.男女平等の公務職場実現について
(1) 自治体職場での男女平等・共同参画を人事行政の重要課題として位置づけ、女性の労働権確立や環境整備が進むよう積極的な対応をはかるよう自治体に求めること。
(2) 日本再生戦略に掲げられた男性の育児休業取得目標2020年13%の実現に向けて、条件整備や必要な対策を講ずるよう地方自治体に要請すること。

8.その他
(1) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項については任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。
(2) 自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化を基本とすること。また、公営企業の経営の健全化については、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(2009年7月)による指導関与は最小限に止め、各自治体における自主的・主体的な取組みに委ねること。
(3) 公契約に際しては、公正労働基準の遵守を必要とすることを地方自治体に要請すること。

以上