2014年度公務労協情報 49 2014年7月16日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/16
−明確な回答がなく、局長交渉では中身のある回答を強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月16日13時30分から、2014年人勧期要求に関わり、人事院の川崎職員団体審議官と交渉を行った。
 冒頭、大塚副事務局長が現時点での回答を求めたのに対し、川崎審議官は以下の通り回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の民間給与実態調査(民調)は、5月1日〜6月18日までの期間で実施した。調査は特段の支障もなく終了し、現在集計中である。
(2) 給与制度の総合的見直しについて
 給与制度の総合的見直しについては、地域間・世代間の給与配分の見直し等の諸課題に対応する必要があると考えている。
 これまでの間、数次にわたり会見を実施し、意見交換を行ってきているところであるが、引き続き、皆さんをはじめ関係者と意見交換を進め、案を詰めて参りたい。
 今後とも、議論を進める中でいろいろな場面があると思うが、人事院としては、誠心誠意対応したいと考えているのでよろしくお願いしたい。
(3) 諸手当(特別給を含む。)について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、対応して参りたい。一時金についても、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処して参りたい。
(4) 雇用と年金の接続について(再任用職員の給与)
 雇用と年金の接続に関し、再任用職員の給与については、昨年3月に閣議決定された「国家公務員の雇用と年金の接続について」において、幅広い職域や勤務地で活用すること等再任用職員の今後の職務や働き方の実情等を踏まえ、給与制度上の措置について必要な検討を行うよう要請がなされており、人事院としては、民間の動向等を適切に把握し、職員団体の意見も聞きながら検討して参りたい。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
 超過勤務の縮減については、これまでも政府全体として取組が進められているところであり、人事院としても、重要な課題の一つであると考えている。この課題については、各府省における管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが肝要であり、国会業務など行政内部を超えた取組が必要なものについては、関係各方面の理解と協力を得ながら、改善を進めていくことが重要であると考えている。今後とも、関係機関と連携して取り組んで参りたい。
(2) 高齢者雇用施策について
 本年4月18日に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律の附則では、政府は、平成28年度までに、人事院の意見の申出を踏まえつつ,定年の段階的な引き上げ、再任用制度の活用の拡大その他の雇用と年金のための措置を講ずることについて検討することとされている。
 人事院としても、年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、平成26年度からの再任用の運用状況を随時検証しつつ、本院の意見の申出を踏まえ、再検討がなされる必要があるものと考えている。
(3) 男女平等の公務職場の実現について
 人事院が平成23年1月に改定した「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」に基づき、各府省は平成27年度までの目標と目標達成に向けての取組等を定めた5カ年計画を策定し、具体的な取組を進めているところ。
 人事院では、毎年定期的採用・登用拡大を推進するための会議を開催するなど、各府省の取組が実効性のあるものとなるよう支援するとともに、各府省の取組をフォローアップしているところであり、引き続き、人事院としての役割を果たして参る所存である。
 男性の育児休業の取得促進について、本年2月に「仕事と育児等の両立支援に関する講演会」を開催したほか、4月には昨年度に実施した男性職員の育児休業取得に関する意識アンケート調査結果を各府省にフィードバックしたところである。
 今後も引き続き、各府省において男性職員が育児休業を取得しやすい職場の環境整備が進められ、男性の育児休業取得率の向上が図られるよう支援して参りたい。
(4) 福利厚生施策の充実について
 人事院では、心の健康づくりをはじめとする健康安全対策について、各職場において推進すべき重要な事項であるとの認識に立ち、各府省と連携しながら鋭意取り組んできたところである。
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しているところであり、職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの配布、「こころの健康相談室」の運営、「試し出勤」の活用等による円滑な職場復帰の促進等に取り組んでいる。また、平成24年10月には、「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組についての職員福祉局長通知を発出したところ。
 このほか、平成26年度にはセルフケアを中心とした職員向けのe-ラーニング教材を作成し配布したいと考えているところ。
 これからも、これら施策の充実などにより、より一層の各府省の心の健康づくり対策の支援を行っていく所存である。
 労働安全衛生法の改正を踏まえ、公務においても、ストレスチェック制度の導入、受動喫煙対策の推進などについて、所要の措置を行う所存である。具体的には労働安全衛生法の施行令や省令なども参考にしながら公務における措置について検討していきたい。
 パワー・ハラスメントの防止については、平成22年1月に「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」を作成し、職員に周知するとともに、平成24年1月にはパワハラに関するアンケート調査結果を各府省にフィードバックし、その防止に努めているところであり、人事院として今後とも各府省と連携して、パワハラの防止の推進に努めて参る所存である。

3.非常勤職員制度等について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に指針を発出し、随時フォローアップを行っているところであり、今後とも、指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう取り組んで参りたい。
 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視して参りたい。
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応して参りたい。

 これに対し公務員連絡会側は、次の通り、審議官の見解を質した。
1.給与制度の総合的見直しについて
 俸給表を引き下げることによって、職員の士気や組織活力が維持・向上する根拠について、具体的で分かりやすい説明を求める。とくに、被災地で身を粉にして復興再生に全力を尽くしている国・地方の公務員に対して、給与の引下げが士気の向上になるとは到底考えられないが、見解を伺いたい。

2.勧告等について
(1) 勧告作業及び諸手当(特別給を含む。)について
@ 調査対象事業所について、どの程度の実施率になったのか。また国公実態はどのような状況か。
A 本年は、部長と課長、課長と係長、係長と係員の間の従業員について、一定範囲の者を新たに調査しているが、どんな状況か。官民対応関係について検討していることはないか。
B 官民較差について、どんな状況か。
C 本年われわれは住居手当の改善と通勤手当の引き上げを求めているので、これらの手当について積極的に検討してもらいたい。
D 民間企業の月例賃金、一時金の各種調査結果を見ると、いずれも昨年に比べ目に見える改善となり、組合員も期待している。ぜひとも、引き上げ勧告となるよう努力して頂きたい。なお、配分についても十分な議論を求める。
(2) 高齢者雇用施策及び再任用職員の給与について
@ 雇用と年金を確実に接続するため、年金支給開始年齢が62歳となる2016年度までには定年延長を行うことを要求している。改正国公法の附則に基づき、夏の勧告時に改めて政府に対し、具体的な対応を求めるべきではないか。
A 再任用者の給与について、昨年に引き続き、民間の状況を調べているが、昨年と比べ、どんな感じか。
B 民間と公務では人事管理が異っていることも踏まえて、諸手当を含め、職務実態と生活水準維持の両面から、改善を検討して頂きたい。

3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
@ 職場では昨年度以上に厳しい勤務環境になっている。直近のデータとして、昨年度の超勤実態はどんな状況か。
A 内閣人事局は、今年の人事管理運営方針で、新たに「管理職員が部下職員の超過勤務の必要性の事前確認を行う」ことを明記しており、その徹底を求めたところ。人事院も今年の白書(年次報告)で女性の採用・登用の拡大を特集し、超勤縮減に向けて「抜本的対策を講じることは不可欠」と断言しているが、勤務条件に責任を持つ制度官庁たる人事院としての具体的取組みについては記載がない。「抜本的対策」として、具体策は検討していないのか。
B 勤務時間法では、「臨時又は緊急の必要がある場合」に超勤を限っているが、年間720時間を超える超勤は「臨時又は緊急」とは言えない。最低限720時間を超えた場合には超勤禁止にすべきだ。
C 昨年人事院が報告した両立支援を推進するための多様で弾力的な勤務時間制度等の具体的検討状況について、回答がなかったが、今年は何もしないのか。
(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 人事行政の専門機関として積極的に取り組むと言うが、採用登用拡大指針に基づく目標設定、フォローアップ以外に何を行うのかが示されていない。積極的取組みとして何か検討していないのか。
A 内閣人事局の女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会で各府省の行動計画を定めることになっていることと、現在の人事院の採用・登用拡大指針に基づく計画との関係如何。
B 男性の育児休業取得促進(2020年13%が目標)については、昨年の職員調査結果では、「取得したかったが取得できなかった」職員が3割弱存在し、そのうち半分が取得すれば、目標は達成できる。取得できなかった理由は、収入減、業務繁忙、代替要員がいないのいずれも6割を超えている。調査結果を踏まえた対策の中で、人事院は人の問題について何も言っていないが、対策を講ずるつもりはないのか。
C 特別養子縁組における試験養育期間について、民間企業では労使が合意すれば、育児休業取得が可能であり、取得した場合には育児休業給付が行われている。公務の場合には事務総長通知において、育児休業法の「子」の定義を変更すれば可能となることから、事務総長通知を改正して公務員も民間と同じようにすべきではないか。
(3) 福利厚生施策の充実について
@ 昨年夏の交渉で職福局長から「今後は、1次予防にもより一層力を入れていく」との話があり、職場環境改善を進めていくとの決意を伺った。メンタルヘルスの問題は、個人よりも職場要因が大きいという調査結果もある。各府省に義務づけるぐらいの対応が必要ではないか。
A 労働安全衛生法が改正されたが、公務においてもストレスチェック制度の創設が重要な課題だ。民間法は、1年6月以内の施行ということだが、公務においては民間に率先して実施すべきであり、速やかに検討を始めてもらいたい。
B セクハラについては、昨年の調査結果を踏まえた職福局長通知「セクシュアル・ハラスメントの防止等について」の改正が行われたので、その徹底を求める。他方、パワハラについては、「言動例」が定められた以外の措置は講じられていないのではないか。調査結果のフィードバック以外になにもしないのか。

4.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の処遇を改善するため、給与の引き上げを最重要課題として、春闘期から取組みを進めてきた。人事院としても課題の重要性を認識し、ぜひとも引上げを実現して頂きたい。
 給与決定指針については、月給本体については基本的にはようやく遵守されるようになってきたと認識しているが、通勤手当や期末手当等が十分に支給されていない実態がある。丁寧に実態調査を行って、支給すべき手当も確実に支給するよう各府省を指導して、遵守の徹底を期してもらいたい。
(2) 非常勤職員の皆さんから、半年勤めないと年休が取れないことなど休暇制度に対する不満が寄せられている。少なくとも6月以上勤務することになっている非常勤職員には最初から年次休暇を付与すべきだ。また、夏季休暇も付与すべきだ。
(3) 期間業務職員制度は導入して3年を経過することになるので、その運用実態を把握、検証した上で、必要に応じ改善策を講じていくべきだ。
(4) 様々な課題が残っており、抜本的な改善に向けた検討を継続することとし、引き続き話し合ってもらいたい。

 これに対し、川崎審議官は以下の通り回答した。
1.給与制度の総合的見直しについて
 士気の向上や組織活力の維持・向上について、客観的、論理的に実証するのは非常に難しい。給与の全体水準が総原資で決まる現行の仕組みの中で、全国各地に官署が所在する国の組織を見たときに、地域間、世代間の給与配分を適正に行うことが全体としての組織活力の維持に繋がるという考え方に立って行われるものである。地域事情があるが、給与制度は全国一律で運用しているので、全国的な視点で考える必要がある。

2.勧告等について
(1) 勧告作業及び諸手当(特別給を含む。)について
@ 民調実施状況について、例年90%前後で推移してきている。本年も昨年と同程度の数字が見込まれる。国公実態については、現在、最終確認している。
A 昨年の民調ではプレ調査で人数をざっくり拾ったが、今年は仕事の中身や給与上のランクが課長と係長の間にいるとか、部長と課長の間にいるという定義づけをして絞ってきているので、数字に大きく影響することはないのではないか。民調が現在精査中なので、部長と課長の間は「部次長」、課長と係長の間は「課長代理」と同じような対応にすることも含め検討している。
B 民調が精査中なので、較差というところまで出ていない。
C 公務の宿舎料が段階的に引上げされている等あり、住居手当は今年は難しいのではないか。通勤手当については、JR等の交通機関は消費税絡みの値上げがあり、ガソリンも高騰しているが、過去の例を見ると急激に下がる可能性もある。民間も見なければならない。
(2) 高齢者雇用施策及び再任用職員の給与について
@ 平成23年の意見の申出は生きていて、昨年3月の閣議決定で「当分の間、再任用」という形になったので、民間の状況、公務の運用実態も含めて、今年の報告でどこまで言えるか精査中である。
A 再任用者の給与についても、民調は作業中である。

3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
@ ここ数年、超勤時間にはほとんど動きはない。
A これまでも管理職の研修や説明会で各省を指導してきたが、画期的なものはない。各職場の運用の仕方もあるので、どういう対策ができるか検討している。
B 指針を出して各省を指導をしている。各省の仕事の取り組み方を変え、職員が減る中で業務量を落とさないと超勤は減らない。超勤対策は実行的にいろいろと対策し、効果的な方法を検討している。
C 仕事と介護の両立支援、両立実現は人事管理上、重要と認識している。人事院が昨年実施した調査によると、実際に介護に関わる職員の多くは必要に応じて年次休暇や短時間介護休暇を取得して、仕事との両立を図っていることがわかった。こういった実情を考慮して、仕事と介護の両立のための環境整備として職員のニーズにどう対応していくか検討を行っている。
(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 平成26年度からの新たな取り組みとしては、女性職員自らのマネジメント能力開発の機会等を付与する「女性職員キャリアアップ研修」、男性・女性を問わず管理職員の意識啓発を図る「女性職員登用推進セミナー」を新設し、また、平成25年度の試行を踏まえて「行政研修(課長補佐級)女性管理職養成コース」を本格実施している。
A 内閣人事局の女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会は6月27日に第1回が開かれただけなので、どう調整していくかはまだわからないが、人事院としては協力していきたい。
B まず職員の意識改革が必要だ。職場環境が原因で育児休業が取れない場合は、人事院として指導していく。定員のことになると、業務管理の話になってくるので、人事院としては話をすることができない。
C 今後、厚労省が育児・介護休業法の中でどういう扱いをするか注視して検討していきたい。
(3) 福利厚生施策の充実について
@ 職場環境改善については、どういうことができて、どういう効果があるかも含めて検討している。
A 要望として受けるが、民間と合わせないといけない部分がある。突出することもできない。今後の政省令の検討も踏まえながら考えていく必要がある。
B パワハラの場合は「指導・教育」なのか、「パワハラ・いじめ」なのか、線引きが難しく、厚労省の円卓会議でいろいろと検討された。各省との情報共有や研修を実施しており、一歩一歩前進している。

4.非常勤職員制度等について
(1) 平成24年の民間勤務実態調査結果では、非正規職員の有給休暇については、一定期間就業した後に付与する企業が81%ぐらいで、その一定期間は6ヵ月。民間を見ると難しいところだが、非常勤職員からみれば、常勤職員とのギャップが不満の材料でもあると思う。夏季休暇は民間の5割ぐらいで付与しているが、無給が多い。
(2) 今年の4月の3年経過の一斉切り替えで、事務的な反省点が出ているようだ。今後、必要があれば検討していかなければならない。

 最後に、大塚副事務局長は「今日の回答は、集計中、検討しているというような話だけで、本年の報告・勧告の姿形が一体どうなるのか一向に明らかにならなかった。総合的見直しについても入り口議論が済んでいない。月末には各局長との交渉を行うので、その際には公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答をお願いしたい。」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。


○ 給与制度の総合的見直しに関する職場決議を最終提出

 審議官交渉開始前に、大塚副事務局長は「先日の延べ3日間、6ブロックの交渉でも給与制度の総合的見直しに関する職場決議の一部を提出したが、最終で23,487を集約したので、本日提出する。4月に提出した245万筆余の署名では、重く受け止め対応するよう求めたが、今回は受け止めるだけに止まらず、決議の内容を踏まえた対応を強く求める」と述べ、川崎職員団体審議官に職場決議を最終提出した。

以上