2014年度公務労協情報 54 2014年8月7日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と最終交渉し回答引出す−8/5
−月例給・一時金ともに引上げ、給与制度の総合的見直しの勧告を表明−

 公務員連絡会氏家議長ほか委員長クラス交渉委員は、8月5日14時45分から一宮人事院総裁と交渉し、6月19日に提出した本年の人勧期要求書に対する最終回答を引き出した。
 交渉の冒頭、氏家議長が「労働基本権が制約されている下では人勧制度が十分機能することにより勤務条件が確保されるものであるので、組合としては人事院と真摯に向き合っていく所存であり、引き続き、よろしくお願いしたい。6月19日に本年人勧期の要求書を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。直前でもあるので、本日は総裁から最終的な回答を頂きたい」と求めたのに対し、一宮総裁は次の通り回答を示した。

1 人事院勧告・報告について
 勧告日については、8月7日(木)となる予定である。
(1)官民較差について
 官民較差は、0.2%台後半となる見込みである。
(2)特別給について
 特別給は、0.15月分の増加になる見込みである。
 今年度については、増加分は、12月期の勤勉手当に充てる。
 来年度以降については、0.075月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。
(3)月例給の改定内容
 @ 俸給表の改定
  世代間の給与配分の見直しの観点から、若年層に重点を置いて改定する。
  また、民間初任給との間に相当の差が生じていることを踏まえ、1級の初任給を2,000円引き上げる。
 A 初任給調整手当
  医療職俸給表(一)の改定状況を勘案して改定する。
 B 通勤手当
  交通用具使用者に係る通勤手当について、100円から7,100円までの幅で引き上げる。
 C 寒冷地手当
  新たな気象データ(メッシュ平均値2010)に基づき、支給地域を見直す。

2 雇用と年金の接続及び再任用職員の給与について
 1 雇用と年金の接続
 公務における再任用職員の在職実態を見ると、短時間再任用が約7割を占め、補完的な業務を担当することが一般的となっている。
 一方、平成28年度には年金支給開始年齢が62歳に引き上げられ、再任用職員の増加が見込まれることから、職員の能力・経験の公務外での活用、業務運営や定員配置の柔軟化による公務内での職員の活用、60歳前からの退職管理を含む人事管理の見直しを進めていく必要があり、人事院としても、意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続のため適切な制度が整備されるよう積極的に取り組むこととしたい。
 2 再任用職員の給与
 転居を伴う異動をする職員の増加と民間の支給状況を踏まえ、異動等に伴い単身赴任となった再任用職員に単身赴任手当を支給することとし、平成27年4月1日から実施する。
 また、単身赴任手当、広域異動手当及び新幹線鉄道等に係る通勤手当について、定年退職前から引き続き支給要件を満たしている職員及び再任用される際に支給要件を満たすこととなった職員に対しても、再任用による採用を異動とみなしてこれらの手当を支給する。
 今後も民間企業の再雇用者の給与額を把握しつつ再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行って参りたい。

3 非常勤職員等の処遇改善について
 非常勤職員の給与については、各府省において、人事院の発出した指針(平成20年8月)に沿った運用がなされることが重要と考えており、引き続き、適正かつ円滑な運用が図られるよう取り組んで参りたいと考えている。
 また、非常勤職員には夏季休暇が措置されていないこと等を踏まえ、採用後一定期間継続勤務した後の夏季における弾力的な年次休暇の付与について、所要の措置を講ずることとする。

4 給与制度の総合的見直しについて
 @民間賃金の低い地域における官民給与の実情をより適切に反映するための見直し、A官民の給与差を踏まえた50歳台後半層の水準の見直し、B公務組織の特性、円滑な人事運用の要請等を踏まえた諸手当の見直しなどの課題に対応するため、本年、俸給表、諸手当の在り方を含めた給与制度の総合的見直しを勧告する。
 その内容は次のとおりである。
 1 地域間の給与配分の見直し、世代間の給与配分の見直し
 (1) 俸給表等の見直し
 @ 行政職俸給表(一)
 民間賃金水準の低い12県を一つのグループとした場合の官民較差と全国の較差との率の差を踏まえ、俸給表水準を平均2%引き下げる。
 1級及び2級の初任給に係る号俸は引下げを行わない。
 3級以上の級の高位号俸は50歳台後半層における官民の給与差を考慮して最大4%程度引き下げる。
 また、40歳台や50歳台前半層の勤務成績に応じた昇給機会の確保の観点から5級・6級について号俸を増設する。
 A 指定職俸給表
 行政職(一)の平均改定率と同程度の引下げ改定を行う。
 B その他の俸給表
 行政職(一)との均衡を基本とし、各俸給表における50歳台後半層の在職実態等にも留意しつつ引き下げを行う。なお、医療職(一)については引下げを行わない。
 また、公安職等について号俸を増設する。
 C その他
 委員、顧問、参与等の手当を改定するとともに、55歳を超える職員の俸給等の1.5%減額支給措置を廃止する。
 (2) 地域手当の見直し
 @ 級地区分・支給割合
 級地区分を1区分増設して7級地を新設するとともに、俸給表水準の引下げに合わせ支給割合を見直す。各級地の支給割合は次のとおりとする。
 1級地20%、2級地16%、3級地15%、4級地12%、
 5級地10%、6級地6%、7級地3%
 なお、見直しに当たっては、賃金指数93.0以上の地域を支給地域とすることを基本とする(現行は95.0以上)。
 また、全国同一水準の行政サービスの提供、円滑な人事管理の要請等を踏まえると地域間給与の調整には一定の限界があることを考慮し、1級地(東京都特別区)の支給割合は現行の給与水準を上回らない範囲内に留める。
 A 支給地域
 「賃金構造基本統計調査」(平成15年〜24年)のデータに基づき見直しを行う。なお、級地区分の変更は上下とも1段階までとする。
 B 特例
 1級地以外の最高支給割合が16%となることに伴い、大規模空港区域内の官署に在勤する職員に対する支給割合の上限(現行15%)、医師に対する支給割合(同15%)をそれぞれ16%に改定する。
 2 職務や勤務実績に応じた給与配分
 (1) 広域異動手当
 円滑な異動及び適切な人材配置の確保のため、広域的な異動を行う職員の給与水準を確保することとし、異動前後の官署間の距離区分に応じて、60km以上300km未満は5%(現行3%)、300km以上は10%(現行6%)に引き上げる。
 (2) 単身赴任手当
 公務が民間を下回っている状況等を踏まえ、基礎額(現行23,000円)を7,000円引き上げる。
 また、加算額について、現行の年間9回の帰宅回数相当の額を年間12回の帰宅回数相当の額に引き上げるとともに、遠距離異動に伴う経済的負担の実情等を踏まえ、交通距離の区分を2区分増設する。
 (3) 本府省業務調整手当
 本府省における人材確保のため、係長級は基準となる俸給月額の6%相当額(現行4%)、係員級は4%相当額(現行2%)に引き上げる。
 (4) 管理職員特別勤務手当
 管理監督職員が平日深夜に及ぶ長時間の勤務を行っている実態があることを踏まえ、災害への対処等の臨時・緊急の必要によりやむを得ず平日深夜(午前0時から午前5時までの間)に勤務した場合、勤務1回につき6,000円を超えない範囲内の額を支給する。
 (5) その他
 人事評価結果を反映した昇給効果の在り方については、今後の人事評価の運用状況等を踏まえつつ引き続き検討する。
 技能・労務関係職種の給与については、今後もその在職実態や民間の給与等の状況を注視して参りたい。
 3 実施時期等
 (1) 新俸給表は平成27年4月1日から適用し、同日に俸給月額を新俸給表に切り替える。
 (2) 地域手当の支給割合は段階的に引上げ、その他の諸手当も平成30年4月までに計画的に実施する。
 (3) 激変緩和のため、3年間に限り現給保障の経過措置を設ける。
  なお、これに伴い、経過措置期間中は55歳を超える職員の俸給等の1.5%減額支給措置は存置する。
 (4) 見直し初年度の改正原資を得るため平成27年1月1日の昇給を1号俸抑制する。

5 公務員人事管理に関する報告について
 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。
 報告では、人事院は、引き続き、人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の代償機能を担うこととされたことを踏まえ、幹部職員人事の一元管理、任用、採用試験及び研修、級別定数の設定・改定等の国家公務員法等の改正事項に関する取組についての方向性を示している。
 そのほか、本院が取り組んでいく人事行政上の主な課題として、
 ○ 能力・実績に基づく人事管理の推進について
 ○ 女性の採用・登用の拡大と両立支援の推進のため、
  ・ 女性の採用の拡大に向けた取組
  ・ 女性職員の登用に向けた研修の拡充等の取組
  ・ 育児・介護のための両立支援策の検討
  ・ 男性職員の育児休業等両立支援制度の利用促進について
 ○ 勤務環境の整備のため、
  ・ 長時間労働慣行の見直し
  ・ ハラスメント防止対策
  ・ 心の健康づくりの推進について
 ○ 平成27年度採用試験等の見直しについて
 ○ 研修の充実について
 それぞれ言及することとしている。

 以上の回答に対し、氏家議長は以下の通り公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) いま、本年の月例給、一時金のいずれも改善する等の回答があった。7年ぶりの引上げ改定であり、一定の評価ができる。ただし、一時金の配分については、育児休業取得促進、非常勤職員の処遇改善の観点から見て、社会的要請に関する配慮になお課題が残ることを指摘しておきたい。
(2) われわれは、給与制度の総合的見直しについて、十分な交渉・協議と合意に基づき、一方的な勧告は行わないことを求め、人事院との間で、真摯に交渉・協議を継続しつつ、様々な形で組合員の声を人事院に届けてきた。にもかかわらず、人事院が、これらに十分に応えず、勧告を本年行うとしていることは極めて遺憾である。被災地をはじめ、地域で全力で奮闘している公務員労働者の納得を得ないまま、集中復興期間の終了を待たずに、俸給水準を引き下げる勧告が行われることは残念だ。
(3) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。

以上