2014年度公務労協情報 65 2014年10月3日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧取扱いで総合的見直し見送りを追求−10/3
−書記長クラス交渉委員が内閣人事局人事政策統括官交渉−

 公務員連絡会は、10月3日16時から、本年の人事院勧告の取扱いに関する政府の検討状況を質すため、内閣人事局交渉を実施した。公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が出席し、内閣人事局からは笹島人事政策統括官らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会の吉澤事務局長が、「臨時国会も始まり、閣議決定も近いと思う。8月7日に要求書を提出し、9月18日には堀江審議官と議論をさせて頂いた。今日段階の検討状況を明らかにされたい」と求めたのに対し、笹島人事政策統括官は次の通り回答した。

(1) 8月7日に「本年の人事院勧告・報告に関わる要求書」をいただき、9月18日には堀江審議官から、それまでの検討状況を申し上げたところ。本日はそれ以降の検討状況も踏まえ回答させていただく。
(2) 去る8月7日に人事院から国家公務員の給与について勧告が提出されたことを受け、8月15日に第1回の給与関係閣僚会議を開催し、検討に着手したところ。 本年の給与の取扱いについては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から誠意をもって検討を進めているところである。
(3) なお、人事院勧告どおり給与制度の総合的見直しを実施した場合には、退職手当については、平成17年以降の経緯を踏まえ、職員の公務への貢献度をより的確に反映するよう、現行支給水準の範囲内で「調整額」を拡大することを検討しているところ。
(4) これらについては、近々開催される予定の第2回給与関係閣僚会議において結論が得られるものと考えている。

 これに対し吉澤事務局長は、以下のとおり、笹島統括官の考えを質した。
(1) 現政権は、自律的労使関係制度を無視した形で国公法改正を行った。自律的労使関係制度が宿題として残っている以上、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告尊重は当然であるにも関わらず、並列的に「国政全般の観点」を挙げているが具体的にどういうことか。
(2) 昨年の閣議決定では、総人件費の「抑制」を推進するため、給与体系の抜本改革の具体的措置を取りまとめるよう、人事院に要請している。これに対し人事院は給与制度の総合的見直しについて、地域間をはじめとする「配分の見直し」と言っている。「抑制」と「配分の見直し」は意味合いが違うのではないか。
(3) 給与制度の総合的見直しのうち、世代間配分の見直しや能力実績主義については長い議論の経過があり、公務員連絡会としても問題意識を持って対応してきたが、「地域間配分の見直し」は地域で頑張っている公務員を直撃する。被災した東北3県、全国から支援に駆けつけている多くの公務員の奮闘をどのように捉えているのか。

 これらに対し笹島統括官は、以下のとおり答えた。
(1) 給与関係閣僚会議の中では、人勧尊重の基本的姿勢にたち、総合的見直しも含めて人件費をどのようにしていくかという財政的要請の問題や、約0.3%のアップという今回の改定についてはアベノミクスによる民間賃金の上昇の現れであり、今後地域経済を更に上昇させ、全体経済の好循環をつくっていく必要があることなどを含めて、ということが国政全般の意味である。
(2) 公務員給与の抑制は、政府の方針であり、今始まった話ではない。総合的見直しについては、人事院勧告の対象との関わりでは配分の話であり、財政上ニュートラルと考えている。
(3) 被災地で働いている公務員の状況については大臣を含め認識をしており、国・地方自治体で、メンタル面での対策などを今まで以上に手当していく必要がある。他方、給与制度については、全国的な枠組みで行わなければならず、今回は俸給表水準を2%引下げることとなるが、本年の給与改定もあるし、現給保障を設けるなど、トータルでは一定の配慮をしている。

 また、交渉委員から、@被災地に全国から応援を出しているが、福島の原発の問題を含めて職場環境は厳しい。復興・再生に時間がかかる中で地域給与の見直しは人事に影響しかねないし、地域創生にも反する。先送りし、集中復興期間終了後、改めて議論すべき、A独法の役職員の賃金は当該法人の自主的・自律的な労使関係で決定するものであり、人勧取扱いの閣議決定ではこれを阻害するような指摘はやめて頂きたい、と追及したのに対し、笹島統括官は、後者について、「この間の閣議決定では人件費に関わるということで、独法等や地方公務員の給与等にも言及してきたところ。独法の給与については昨年末に閣議決定している枠組みがベースであり、労使交渉は大原則だ」との考えを示した。
 最後に、吉澤事務局長は、「この政権の下にあっては、人勧尊重は極めて重い。仮に値切り、見送りということがあれば、重大な覚悟をもって臨む。他方、総合的見直し、とりわけ地域間配分については、@国家公務員の統一性、A地方公務員の均一性に対する影響、B12県を1つのグループとして格差を算出することの合理性、C地域の公務員の士気、D地域民間賃金、地域経済への影響、E公務員給与の社会的評価に係る認識、の観点から容認できない。被災地のことを考えれば、集中復興期間終了まで議論を継続すべきだ。閣議決定前には、このことを含めて新大臣から回答を頂きたい」と強く求め、本日の交渉を締めくくった。

以上