2015年度公務労協情報 18 2015年3月25日
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会

地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/25

 公務労協地方公務員部会は3月25日、書記長クラス交渉委員が、丸山公務員部長ほかと2015春季段階の最終交渉を行った。冒頭、川本企画調整委員代表が「2月18日に総務大臣に提出した2015春季要求に対する回答を公務員部長から直接いただきたい」と、求めたのに対し、丸山公務員部長は次のように答えた。

1.2015年度の賃金改善について
 平成27年度の地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上しているところ。地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各団体の議会において条例で定められるものである。総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考え方に立ち、必要な助言等を行っている。
 地方公務員の給与制度の総合的見直しについては、総務省の有識者検討会において、各地方公共団体は国家公務員給与の見直しを十分に踏まえて給与制度の見直しに取り組むべきことなどが提言されている。
 総務省としては、この提言や、国家公務員給与の見直し方針を踏まえ、地方公務員給与についても、地域民間給与のより的確な反映など適切に見直しを行うよう要請しているところであり、各団体において適切に対応いただけるよう、あらゆる機会を通じ、必要な助言等を行っていく所存である。

2.改正地方公務員法について
 改正地方公務員法においては、人事評価の具体的な基準や方法などは各任命権者において定めることとされているが、改正法の趣旨に沿って各地方公共団体においてその枠組みを適切に構築することが重要であると考えている。人事評価制度それ自体は、労使交渉の対象となる勤務条件に該当するものではないが、その円滑な導入と運用のためには、職員への十分な周知と理解を踏まえながら進めていくことは重要であると考えている。引き続き、人事評価制度の円滑な導入と運用が図られるよう、また、こういった趣旨が十分に地方公共団体に伝わるよう、助言等をしてまいりたい。
 等級別基準職務表は、個々の職務を給料表の各等級へ分類する際の具体的な基準として、等級別の職務内容を明確にするもの。今回の法改正においては、能力・実績に基づく人事管理を徹底するという観点から、等級別基準職務表を各地方公共団体が給与条例に規定することを制度化したものであり、地方公務員給与における職務給原則を一層徹底させようとするもの。各地方公共団体においては、それぞれの団体の規模や組織構造等を踏まえ、地方公務員法の趣旨に則った適切な等級別基準職務表が整備されるべきものと考えており、総務省としても、近く通知等を示して必要な助言等を行ってまいりたい。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 職員の心身の健康の保持、士気の向上、育児や介護と仕事の両立等の観点から、公務部門においてもワーク・ライフ・バランスの推進に積極的に取り組んでいくべきものと考えている。総務省としても、ワーク・ライフ・バランス推進のため、年次有給休暇の取得促進、育児休業制度の活用、時間外勤務の縮減やテレワークの活用等について、地方公共団体へ助言や情報提供を行っているところ。
 また、育児休業制度の拡充、配偶者同行休業の創設など、制度面での措置を講じてきたところ。地方公務員のワーク・ライフ・バランスの推進に当たっては、地方公共団体において、各団体の実情に応じた取組みを進めていくことが重要であり、総務省としても、引き続き、必要な助言・情報提供を行ってまいりたい。
 総務省では、労働安全衛生法の遵守やメンタルヘルス対策に資するため、地方公共団体に対して情報提供や助言を行っているところであり、産業医の選任など労働安全衛生法に基づく安全衛生管理体制は着実に整備されてきているものと認識している。また、被災自治体におけるメンタルヘルス対策として、平成27年度も引き続き地方公務員災害補償基金と共に「メンタルヘルス総合対策事業」に取り組む所存である。さらに、昨年6月の労働安全衛生法の一部改正により、ストレスチェック実施の義務付けが、本年12月1日に施行されることから、実施に向けて情報提供や必要な助言を行ってまいりたい。今後とも、地方公務員の健康と職場における安全・衛生の確保に努めてまいる所存である。

4.新たな高齢雇用施策の充実について
 今後の雇用と年金の接続に在り方については、国家公務員の雇用と年金の接続を定めた閣議決定において「年金の支給開始年齢の引き上げ時期ごとに・・・段階的な定年の引き上げも含め・・・検討を行う」とされていることから、地方公務員については国家公務員に係る検討に合わせて、改めて検討を行うこととしている。
 地方公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の総務副大臣通知により、地方公共団体に対して、定年退職者が再任用を希望する場合は年金の支給開始まで再任用すること、再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること等を要請したところ。
 平成26年度の再任用の実施状況をみると、再任用を実施した団体及びフルタイム再任用職員の数がそれぞれ前年度よりも大幅に増加し、さらに、再任用実施の前提となる再任用に関する条例も大多数の団体で制定されていることから、多くの地方公共団体では、雇用と年金の接続が図られているものと考えている。

5.臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇の改善について
 パート労働法は、公務員については住民や国民の意思である法令、条例に基づいて勤務条件が定められていることから、その適用が除外となっているところ。一方、総務省では、昨年7月、地方公共団体に対し、臨時・非常勤職員の任用等について通知を発出し、その中で、報酬、研修・厚生福利等について、パート法の趣旨も踏まえつつ、地方公務員法の規定に基づいた助言を行ったところ。総務省としては、会議等の場を通じて通知の内容のさらなる周知徹底をはかるなど、制度の適切な運用がなされるよう、今後も引き続き、必要な助言等を行ってまいりたい。

 回答を受け、川本企画調整委員代表は次のように述べた。

1.2015年度賃金改善について
 昨年11月の給与法改正法案成立時に、地方公務員の給与改定及び給与制度の総合的見直しに関し、「地方公務員法に基づき地方公共団体における自主的・主体的決定が適正になされることを旨とする」との附帯決議が採択された。
 昨年、国と異なる勧告を行った人事委員会・自治体に対して総務省が行ったヒアリングについて、自治体側からは指導・圧力として受け止めざるを得ないとの話を聞いた。今回、給与情報等の公表様式を改めたとのことだが、情報の開示自体を否定するものではないが、この様式を見ると地方からの指摘を実感せざるを得ない内容となっており、このことは極めて遺憾なことだと再度指摘せざるを得ない。
 言うまでもなく、地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものであることを改めて強調しておく。

2.改正地方公務員法について
 改正地方公務員法は、2016年4月施行が予定されており、施行により人事評価制度の導入が義務付けられることとなる。人事評価制度に関しては、これまでも議論を重ねてきたが、公平・公正性、透明性、客観性、納得性などの担保が必要であることは双方共通の理解だと考えている。
 今後本格的な地方分権を進めていくために重要なのは人材育成だ。自治体ごとに規模や課題が大きく異なることから、それぞれの自治体ごとの人事評価制度をいかに構築するかが求められている。拙速な導入だけに気を取られ、「制度の導入」そのものが目的化し、評価結果にばらつきがあるまま給与等へ反映することになれば、職場の混乱をもたらすことにつながりかねない。そのためにも、設計段階からの職員との意見交換なども重要なポイントと考えており、労使の交渉や協議を通して、十分な周知と双方の理解のもとで、それぞれ主体的に制度構築を進めることが重要だ。
 また、等級別基準職務表の条例化等についても、地方公共団体の規模や構造等の違いに応じ、内容が異なってくるのは当然のことであり、各自治体の主体的決定を尊重すべきだ。
 いずれにしても、スケジュールありきではなく、現場判断を尊重するよう強く要請する。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 種々の努力をされてきているとの回答があったが、地方自治体で働く者の超過勤務は恒常化しているのが現状であり、超勤縮減対策は重要な課題だ。地方公務員数は20年連続で減少している。ワーク・ライフ・バランスの確保のためにも年間総労働時間縮減や休暇・休業制度の充実はもちろんのこと、必要な人員確保と職員の健康管理等の労働安全衛生体制の確立に向け、引き続きご尽力いただきたい。
 東日本大震災を経験し、大規模な災害が起きた時にその対応が困難であることや、被災地においては、地方自治と公共サービスを提供する者の重要性が改めて明らかになった。ライフラインを守る水道の職場、子どもたちを真剣に避難させる学校の職場、復旧・復興に向けた自治体の窓口等、それぞれ多くの課題も明らかになってきている。引き続き労働時間、休暇及び休業等の拡充に向け、尽力をお願いしたい。

4.新たな高齢雇用施策の充実について
 2015年度から国においては定年退職者等の再任用が原則化された。地方においても同様の措置が要請されたことに伴い、再任用者数も前年より大幅に増加しているとの運用の報告もあった。しかし、小規模自治体に限らず、定数の問題、新規採用者数との関係等により運用に踏み切れない自治体もあるので、引き続き総務省の立場で自治体に対する情報提供を行っていただきたい。
 雇用と年金の接続にあたっては、定年年齢の延長が最適と考えており、関係機関に意見反映等を行っていただくとともに、変更にあたっては国に遅れることのないよう制度設計を進めていただきたい。

5.臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇の改善について
 われわれとしても、昨年7月に発出された通知を活用しながら、改善に向けた労使交渉・協議を各地方で行っているところ。しかし、雇い止めという雇用不安が払拭されていない現状も踏まえ、今後も、お互いが十分な意思疎通を図りながら、処遇改善、雇用不安の解消に努めていきたいので、引き続き意見交換等をお願いしたい。

 最後に、川本企画調整委員代表は「本日いただいた回答は、春季要求に対する現時点での総務省の回答として受け止める。地方自治を取り巻く環境は引き続き厳しい。財政問題については、「2020年度までに国・地方の基礎的財政収支を黒字化するというのが大きな目標である」と言われており、今後の地方財政計画、骨太の方針に向け、歳出削減の圧力が地方財政に向けられるのではないかとの危機感を持っている。是非とも地方財政の維持・確保に向け、今後協議の場を設けていただきたい」と述べ、この日の交渉を終えた。

以上