2015年度公務労協情報 21 2015年4月15日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院と民調作業方針をめぐって交渉

 人事院は、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、賃金・労働条件専門委員会にその骨格を示した。
 冒頭、鈴木職員団体審議官付参事官は、以下の通り基本的な骨格を明らかにした。

1.調査期間
 5月1日(金)〜6月18日(木)の49日間で、昨年と同様。
2.調査対象事業所
 昨年と同様に、国・地方の公務、外国政府・国際機関等を除く民間のすべての産業の中で、企業規模50人以上でかつ事業所規模50人以上の母集団事業所55,000(昨年と同じ)より12,000(昨年は12,400)を抽出して行う。なお、母集団事業所の従業員数(正社員)は平成21年経済センサスにおける従業員数(正社員)の6割を超える。
3.調査の方法
 人事院、47都道府県、20政令指定都市、特別区及び和歌山市の69人事委員会の職員が分担し、実地調査で行う。調査員は1,100人(昨年と同じ)である。
4.調査の内容
(1) 事業所単位で行う調査事項
  @賞与及び臨時給与の支給総額、A毎月決まって支給する給与の支給総額、B本年の給与改定等の状況(ベース改定、定期昇給、賞与の支給状況等)、C諸手当の支給状況(住宅手当・家族手当の支給状況等)、D時間外労働の割増賃金率の状況、E定年退職後の継続雇用制度等の状況、等について調査する。
  昨年からの変更点については、住宅手当の支給状況(転居を伴う異動および社宅の有無、借家・借間の支給に係る手当月額および支給要件等)および時間外労働の割増賃金率の状況を新たな項目として追加した。また、昨年も調査している家族手当については、配偶者の収入制限および子への支給状況を設問に追加し、定年退職後の継続雇用制度等の状況については、フルタイムと短時間の再雇用制度の運用についての設問を追加した。
  一方、昨年調査していた、通勤手当、異なる地域に事業所が所在する場合の給与の支給状況等、寒冷地手当(北海道のみ)、については本年は調査しない。
(2) 従業員別に行う調査事項
  昨年と同じ。

 これに対し、渡辺賃金・労働条件専門委員長は以下の通り質問、意見を述べた。
(1) 昨年は、定期昇給のみならず、査定昇給の状況も調査していたが、本年は行わないということでよいか。
(2) 家族手当については、経済財政諮問会議や政労使合意で議論になったところであり、公務先行ではなく、あくまで民間準拠を前提とした上での話だが、もう少し詳しく説明されたい。
(3) 定年退職後の継続雇用制度の状況等について、昨年は「公的年金(報酬比例部分)を61歳から受給する再雇用者(フルタイム)の給与」について、年金を受給するまでの給与等を調べていたが、本年は、今、説明があったように、「公的年金(報酬比例部分)を全く受給していないフルタイムの再雇用者の給与」ということだが、同じことか。
(4) 昨年の勧告において、地域手当の区分が1つ増えたが、ラスパイレス比較にあたって地域区分が1つ増えることになるのか。
(5) 一昨年の調査では、時間外労働の割増賃金率を適用している従業員の割合が、過半を超えていることが明らかになっている。しっかりと把握し、引上げを念頭においた検討を求める。
(6) 公務員宿舎の削減と宿舎料の段階的引上げが行われ、住居手当の引上げ要求が高まっている。公務の側の事情の大きな変化や、民間企業とは異なる異動実態も踏まえて、改善に向けた検討を求める。

これに対し、鈴木参事官は、以下の通り答えた。
(1) 本年は、査定昇給については調査しない。
(2) 家族手当制度の有無、制度がある場合には、配偶者についての支給の有無、配偶者の収入制限の有無、子についての支給の有無について調査する。また、配偶者、子の別による手当額の定め方について調査する。
  配偶者に支給する場合に、配偶者の収入額によって手当額を調整する措置の有無、及び見直す予定の有無と内容について調査する。
  子に支給する場合に、子の人数が増えたとき1人当たりの手当額を増減する措置の有無、見直す予定の有無と内容について調査する。
  人事院としては、公務における扶養手当の制度設計にあたっては、民間との均衡を図ることを基本としており、民間の最新の状況、今後の動向を把握していきたい。
(3) いずれも調査対象とするのは、公的年金を全く受給していないフルタイムの再雇用者の給与であり、両者は全く同じである。
(4) ラスパイレス比較に関する質問は、ご指摘の通りである。
(5) 最後の要望については、しっかりと受け止める。

 参事官からの説明を受け、渡辺賃金・労働条件専門委員長は「民間の賃上げ状況は昨年を上回っており、組合員の期待は昨年以上に大きい。月例給、一時金の何れもが引上げ勧告となり、高齢層職員や非常勤職員も含め全てに行きわたるよう、積極的に取り組んでもらいたい。そうした観点から、配分等についてもしっかりと議論させていただきたい。そのためにも、毎年申し上げてきたが、調査の進展や集計状況について、是非とも途中段階を含めて前広に説明してもらいたい」と求め、この日の交渉を終えた。

以上