2015年度公務労協情報 23 2015年7月16日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/16
−明確な回答がなく、局長交渉では中身ある回答を強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月16日13時25分から、2015年人勧期要求に関わり、川崎人事院職員団体審議官との交渉を実施した。
 冒頭、大塚副事務局長が「6月18日に提出したわれわれの要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、川崎審議官は次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の民間給与実態調査は、5月1日〜6月18日までの期間で実施した。調査は特段の支障もなく終了し、現在集計中である。
 本年も、労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行って参りたいと考えている。
(2) 諸手当・一時金について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、対応して参りたい。一時金についても、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処して参りたい。
(3) 再任用職員の給与について
 昨年の勧告においては、公務における人事運用の実態や民間の再雇用者に対する手当の状況を踏まえ、平成27年4月から再任用職員に対して単身赴任手当を支給することとした。
 再任用職員の給与の在り方については、今後も民間給与の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。
(4) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
 本年の勧告・報告に向けては、本年の職員の在職状況等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、平成28年度から実施する措置内容について検討していくこととしたいと考えている。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
 超過勤務の縮減については、管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが肝要であり、国会業務など行政内部を超えた取組が必要なものについては、関係各方面の理解と協力を得ながら、改善を進めていくことが重要であると考えている。
 また、平成26年には、民間企業の勤務条件制度等調査において総労働時間短縮に向けた取組の調査を実施したほか、公務においても「超過勤務に関する職員の意識調査」を実施したところであり、今後は、これらの調査の結果を踏まえ、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。
(2) 45時間超60時間以内の超過勤務の割増率について
 民調による平成25年4月の民間企業の状況をみると、ご指摘の時間に係る割増賃金率を30%以上としている事業所の従業員の割合は、50.3%と半数を若干上回る状況にとどまっており、引き続き民間企業の動向を注視していく必要があると考えている。
(3) フレックスタイム制度・テレワークについて
 フレックスタイム制の適用拡大等やテレワークに係る勤務時間の在り方については、適切な公務運営を確保しつつ、職員がより柔軟な勤務を行えるよう、職員団体の意見を聞きながら、引き続き所要の検討を進めてまいりたい。
(4) 男女平等の公務職場の実現について
 次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」については、各府省において策定指針に則り計画が策定され、実行に向けた取組が進められているものと認識している。
 また、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」については、平成23年に改定された指針に基づき、各府省は平成27年度までの目標と目標達成に向けての取組等を定めた5か年の計画を策定し、具体的な取組を進めてきたところである。
 さらに、女性職員の採用・登用の拡大については、内閣人事局長を議長に全府省の事務次官級で構成される「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」が設置され、同協議会において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」が策定され、これに基づき、全府省等において、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組計画」が策定されるなど、政府全体で取組が進められている。
 人事院としても、今後とも引き続き、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援して参りたい。
(5) 高齢者雇用施策について
 昨年4月に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律の附則では、政府は平成28年度までに平成23年9月の人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続のための措置を講ずることについて検討するものとされており、平成27年度における人事管理運営方針において、本年夏を目途に雇用と年金の接続に係る政府方針を取りまとめるとされている。
 人事院としては、引き続き公務における再任用の運用状況や問題点、民間企業の状況等の把握に努めるとともに、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよう、必要な対応を行っていくこととしたい。
(6) 福利厚生施策の充実について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しているところであり、職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの配布、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、「試し出勤」の活用等による円滑な職場復帰の促進等に取り組んでいる。また、平成24年10月には、ストレスのないいきいきとした職場を実現し、職員のメンタルヘルスの向上を図ることを目的とする「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組についての職員福祉局長通知を発出したところである。
 このほか、本年1月末にはセルフケアを中心とした職員向けのe-ラーニング教材を全府省に配布したところであり、各職場で活用してもらいたいと考えている。
 これからも、これら施策の充実などにより、より一層の各府省の心の健康づくり対策の支援を行っていく所存である。
 労働安全衛生法の改正を踏まえ、公務においても、ストレスチェック制度の導入、受動喫煙防止対策の推進、化学物質管理のあり方などについて、職員団体の意見も聞きながら、所要の措置を講じてまいりたい。
 パワー・ハラスメントの防止については、平成22年1月に「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」を作成し、職員に周知するとともに、平成24年1月にはパワハラに関するアンケート調査結果を各府省にフィードバックし、その防止に努めているところである。
 今後、公務における実態とともに、平成24年3月の厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議における提言」やパワハラに関する裁判例など社会的な動向等にも留意しつつ、パワハラ防止のための施策等について検討するとともに、パワハラになり得る言動や相談先等を紹介するハンドブックを作成するなど、職員の意識啓発に努めてまいりたい。

3.非常勤職員制度等について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に指針を発出し、随時フォローアップを行っているところであり、今後とも、指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう取り組んで参りたい。
 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視して参りたい。
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応して参りたい。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 勧告作業及び諸手当(特別給を含む。)について
@ 民調の調査完了率はどの程度か。また、国公実態はどのような状況か。本年も平均年齢や給与水準が上がっているのか。
A 回答では集計中とのことだが、官民較差についてはどのような状況か。
B 配分の検討にあたっては、われわれが住居手当の総合的改善を求めていることを念頭におき、配偶者手当については、民間企業全体の動向を見極めながら、慎重に扱っていただきたい。
C 一時金については、各種調査結果を見ると、昨年に比べ上がっており、月数増を要求している。また、昨年は、すべて勤勉手当ということで、非常勤職員や育児休業者など社会的配慮を欠いたことを指摘したところ。配分について、十分議論させていただきたい。
(2) 再任用職員の給与について
  昨年、異動に係る手当について「経済的負担や定年前の単身赴任者との均衡を考慮」して支給することにしたが、単身赴任に伴う住居の手当を措置しないことは整合性に欠ける。改善すべきだ。
(3) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
  来年4月の地域手当支給割合、単身赴任手当の支給額などについて、前広に議論させていただきたい。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
@ ワーク・ライフ・バランス、女性活躍促進で最大の障害となっているのは、超過勤務の問題だ。720時間は禁止規定にして、超勤半減を目指すなど思い切った目標が必要だ。現在の超勤時間についての人事院の認識を含めて伺う。
A 昨年の年次報告では超勤縮減に向けて「抜本的対策を講じることは不可欠」と断言しているが、いまだ抜本的対策は講じられていない。どのような対策を検討しているのか。本年報告では抜本的対策に向けた具体的で明確な柱立てを示してもらいたい。
B 月当たり45時間超60時間以内の超勤割増率について、本年も過半数を超えた場合には引き上げるべきだ。
C 昨年超勤未払いの措置要求があり、人事院は支払いを命ずる判定を行っている。全額支給を徹底するための具体策を講じるべきだ。
D 新たなフレックスタイム制については、本年夏に勧告すべく検討を進めていると受け止めてよいか。
E 介護を理由とした離職が、日本全体で毎年10万人程度いることがあきらかになっているが、国家公務員の状況はどうか。公務員連絡会としては、離職を防止するため、介護休業制度が必要と考えており、制度化を検討してもらいたい。
F 特別養子縁組、養子縁組里親について、民間に遅れることなく育児休業として認めていくべきだ。
(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 女性活躍、男女平等に関わる政策を巡っては法律、指針、行動計画等が錯綜しており、整理が必要と考えるが、今年度で終了する「女性職員の採用・登用拡大計画」はどうするのか。新たな計画をつくるのか。
A 女性活躍、男女平等については、ディーセント・ワークの確保、超勤縮減が徹底されなければならない。昨年の年次報告の特集も踏まえ具体的な対応を強く求める。
(3) 高齢者雇用施策について
  雇用と年金接続の問題について、定年延長で接続すべきであるという認識はお互いに確認してきたところ。公務員連絡会としても、政府に、直ちに定年延長を決断すべきだと要求してきた。人事院も、この夏の報告時を含めて、具体的に政府に働きかけるべきだ。言葉通り「積極的な対応」を求める。
(4) 福利厚生施策の充実について
@ 国家公務員福利厚生基本計画の見直し作業が始まり、ストレスチェック制度が新たに項目として盛り込まれる見込みになっている。人事院としては民間と同様に導入していく考えと聞いており、公務員連絡会と話しあいながら進めてもらいたい。
A 心の健康づくり、メンタルヘルスの問題については、精神、心の障害による長期病休者が高止まっている。この問題は、個人よりも職場要因が大きい。人事院が取り組んでいる、心の健康づくりのための職場環境改善について、ストレスチェックと一体のものとして整理し直し、すべての府省が取り組むことを義務づけるべきだ。

3.非常勤職員の制度及び処遇改善について
@ 非常勤職員の処遇改善の重要性をしっかりと受け止めて対応してもらいたい。俸給表水準が上がれば、非常勤職員の給与も上がることになるが、常勤職員との間で不公平感が生じないよう、改善策を検討すべきではないか。
A 各府省がホームページ上で非常勤職員等を募集する際、勤務条件の内容が誤っている事例が見受けられた。間違いが生じないよう具体策を講じるべきではないか。
B 予算との関係も含め、通勤手当や期末手当等が十分に支給されていない実態があると聞いている。丁寧な点検を行って、給与決定指針に基づいて支給すべき手当は確実に支給するよう、遵守の徹底を期してもらいたい。
C 休暇・休業制度については、昨年、年次休暇について若干の改善が図られたが、公務員連絡会の基本的考え方は、常勤職員との均衡であり、無給となっている休暇などについて、順次改善していただきたい。
D 非常勤職員をめぐっては、様々な課題が残っており、抜本的な改善に向けた検討は継続することとし、引き続き話し合ってもらいたい。

 これに対し、川崎審議官は以下の通り回答した。
(1) 民調の完了率について、昨年同様、90%程度の水準を確保できる見込みである。また、国公実態は、採用抑制解除後の新規採用者の増加等により、昨年より上げ幅は減少することが見込まれる。官民較差については集計中であるため、現時点で回答できることはない。
  諸手当については、昨年勧告した給与制度の総合的見直しで幅広く措置したところであり、住居手当は、公務の宿舎料の段階的な引上げ中であることから、要望として承る。扶養手当については民間の状況を調査しているところである。
  一時金について、民間との考課査定分の乖離も重視する必要があり、民調結果を踏まえて適切に対処することが基本と考えている。
(2) 再任用職員の手当等については、皆様からお聞きしている再任用の実態等を踏まえて、今後の検討課題としていきたい。
(3) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応については、民調結果を踏まえ対応していきたいと考えている。
(4) 超過勤務の全体平均を減らす取組み、業務が集中し他の職員の何倍もの超過勤務を行っている職員に関する取組み、健康管理に関する取組みについては、この徹底を図ることが人事院の役割だと考えている。民間における様々な取組みの調査や、公務内における職員の意識調査を実施し、これらについては現在分析している。引き続き超勤縮減を一層すすめていきたい。
(5) 民間の取組などを見ても、超過勤務縮減の特効薬はない。予算要求、法令審査の合理化にも取り組んでいるところであり、地道に努力していくことが重要だと考えている。
(6) 新たなフレックスタイム制については、早期導入に向け鋭意検討しているところ。
(7) 離職の理由については、介護なのか、他の理由とセットなのか区別できないため、調べることは難しい。現行の介護休暇制度等を活用し、離職しなくて済むように対応しているところだ。また、介護についてどういった支援があるのか知らない職員もいることから、支援策に関する研修などの取組みも離職対策として必要と考えている。
(8) 「女性職員の採用・登用拡大計画」については、新たな計画を作るかどうかについては、第4次男女共同参画基本計画に基づく取組みの内容を見極めて検討したい。
(9) 定年延長については、平成23年以降の勧告時報告、年次報告を踏まえ、今年の勧告時報告でも取り上げることになると思う。
(10) パワーハラスメントのハンドブックについては、作成を急いでいるところであり、専門家の意見も聞きながら良いものにしたい。
(11) 非常勤職員の給与は予算上、人件費として扱われているわけではない場合が多く、非常勤職員の人数が非常に多いところだと予算が回らない場合もある。一律に対応するのは難しいと考える。
(12) 各省のホームページでは、ハローワークの求人票のように全ての事項を記載していない場合もあるようだ。人事院規則8−12に選考採用募集の際の最低限の必要事項があるので、この徹底を行うことが実効的だと考えている。

 また、各交渉委員からは、賃上げへの期待、住居手当の引上げ、実効性のある超勤減策、パワハラ対策、男女平等施策に関わる各府省への指導、などについて要望が出された。

 最後に、大塚副事務局長が「今日の回答は、集計中、検討しているというような話だけで、本年の報告・勧告の柱立てが具体的にどうなるのか、まったく明らかにならなかった。月末には各局長との交渉を行うので、その際には公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を締めくくった

以上