2015年度公務労協情報 31 2015年8月31日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院勧告について衆議院内閣委員会で一般質疑-8/28

 8月28日9時からの衆議院内閣委員会で、人事院勧告等の説明聴取及び野党各党による質疑が行われた。民主党からは、会派を代表して佐々木隆博、古本伸一郎両衆議院議員が質問した。
 冒頭、一宮総裁による説明が行われたあと、佐々木議員が以下のように質問した。
(1) 本年度の給与改定について、2年連続の月例給、一時金の引上げ勧告となった。常勤職員は4月遡及となる一方、非常勤職員の場合は府省により改善の実施時期が異なるのではないか。実態と認識如何。
(2) 常勤職員の一時金支給月数の引上げは勤勉手当に充てられた。非常勤職員には勤勉手当が支給されておらず、格差が拡大するのではないか。また、非常勤職員の通勤手当の支給実態はどうなっているのか。
(3) 男性の育児休業取得率13%の目標を掲げたが、実態は4.6%程度だ。安倍政権のもと、「女性が輝く」というのが大きなテーマとなっている。親が子の成長に触れていくのは当然の権利であるのに、男親にはこの権利が取得されていない。男性の育児休業取得が進まない理由をどう分析し、今後どのように取り組むのか。
(4) 今年度の定年退職者は無年金期間が最長2年となり、大きな課題だ。民間、公務の定年退職後の継続雇用の実態如何。また、国の再任用は下位級が非常に多く、職員の経験や能力の活用、伝承、生活水準確保等の面で無理があるのではないか。
(5) 精神・行動障害による長期病休者が高止まりしているもと、ストレスチェック制度の導入は重要な課題だ。他方、費用も掛かるものであり、予算も考慮しなければならない。制度導入の考え方如何。
(6) 非常勤職員の扱い、再任用の仕組み、ストレスチェックという課題に取り組む担当大臣の決意、考えを伺いたい。

 これに対し、一宮総裁らは、それぞれ以下のように答弁した。
(1) 本年3月に、事務補助を行う期間業務職員の給与の実態に関する調査を行ったが、昨年の給与法改正に伴う非常勤職員給与の取扱いについては、実施時期を含め、機関によって様々であった。本年の勧告に基づき、月例給、一時金が引き上げられた場合の、非常勤職員の給与の改定時期については、各府省において、非常勤職員の勤務実態、予算の状況を踏まえながら判断されるものと考えている。(古屋給与局長)
(2) 期末手当については、各府省において予算の確保に努めるなど改善が進んできており、フルタイム勤務の非常勤職員については、ほぼ全ての機関で支給されている。勤勉手当に相当する給与については、平成20年8月の指針では直接触れられていないものの、フルタイム勤務の非常勤職員については、多くの機関で支給されている。3月の調査結果によれば、通勤手当に相当する給与については、調査対象であった全ての機関で支給されていたものの、支給限度額については、常勤職員と異なる扱いをしている機関も一部あり、今後も支給状況等を把握しながら指針に基づいた適切な運用が行われるよう、必要に応じ指導等を行う。(古屋給与局長)
(3) 平成25年に実施した「男性職員の育児休業取得に関する意識調査」では、育児休業を「取得したかったができなかった」職員が約3割おり、その主な理由は「業務が繁忙である」、「収入が少なくなり家計が苦しくなる」、「代替要員がいない」となっている。また、仕事と育児・介護の両立に関して、職場の理解が「あまり無い」・「全く無い」とする職員が約2割、「理解があるかどうか分からない」とする職員が約2〜4割存在している。これらのことが相互に連関し、男性職員の育児休業取得率が低いものになると考えている。(江畑職福局長)
  男性職員の意識改革はもとより、幹部職員や人事当局等の職場の理解が非常に重要だ。各府省の幹部を対象とするワーク・ライフ・バランスに関するシンポジウムを開催し、男性職員の育児参加に対する理解を醸成したい。また各府省の人事担当者を対象とした仕事と育児・介護に関する連絡協議会で、男性職員の育児休業等両立支援制度の取得促進を要請するとともに、男性職員が利用可能な両立支援施策を周知するための資料配付にも取り組む。(一宮総裁)
(4) 人事院が行った調査によれば、民間の再雇用者の勤務形態はフルタイムは92%、短時間は8%である。一方、国家公務員の行政職(一)適用職員で、本年度再任用された者のうち、フルタイムは約30%、短時間は約70%となっている。また、短時間勤務職員のうち、27%は希望に反して短時間勤務となっている。再任用職員が就いているポストは、職責が低い係長級・主任級で8割超である。
  今後、再任用希望者の増加が見込まれており、現在のような再任用の運用では、公務能率や職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られないなどの問題が、今後深刻化するおそれがある。このような問題に対処するためには、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、再任用職員の能力及び経験を本格的に活用していくことが必要と考えている。(古屋給与局長)
(5) 労働安全衛生法の改正により、民間の事業者等にストレスチェック制度が創設された。公務についても、心の不調者の発生を未然に防止する1次予防を強化するため、ストレスチェック制度を導入するのが適当と考えており、各府省や職員団体等の意見をききながら検討を進めている。(江畑職福局長)
(6) 男性の育児休業取得については「隗より始めよ」で、国家公務員が率先して取り組む必要がある。男性の育休取得目標13%を達成している厚労省、環境省、人事院以外でも達成してもらうよう、全力で取り組む。雇用と年金の接続については、少子高齢化の進展のもと、全ての分野、全ての世代にとって避けては通れない重要な課題だ。60歳を超える職員の知識や技能を活用するための再任用職員の職務の在り方等については、適切に必要な検討を進めていく。働きやすい職場環境の整備、心身の健康管理、安全確保は重要だと考えている。職員の心の健康保持・増進、心の健康の不調者の早期発見・早期対応に重点を置いて取り組んでいるが、肝は「長時間労働の是正」だと考えている。ストレスチェック制度の円滑な導入に向け、人事院、各府省と連携し、着実に準備を進めてまいりたい。非常勤職員の給与については、各府省において常勤職員との権衡を考慮して支給しているが、人事院とも連携して、各府省における非常勤職員の処遇の実態把握に努めるなど、今後も非常勤職員の適切な処遇、士気の確保について検討する。(有村国家公務員制度担当大臣)

 次に、古本議員がフレックスタイム制度について、以下のように質問した。
(1) フレックスタイム制に関連し、現状では「小学校就学始期に達するまで」とされている看護休暇の対象となる子の範囲について、小学校低学年くらいまで拡大する計画はあるか。
(2) 育児・介護を行う職員のコアタイムが2時間になり、配慮しているように見えるが、自宅で育児・介護にあたっている職員が1回出てこなければならない煩わしさがある。例えば急遽病院への同行が必要になった場合など、上司と相談の上で出勤しなくても済むような手立てや、テレワークとの併用なども推進すべきだ。
(3) フレックスタイム制の成否の鍵は、上司と部下の信頼関係と、成果の評価ではないか。フレックスタイム制を利用することで職員の人事評価が下がることはあるか。利用者の評価が下がることはあってはならず、むしろ前例を作った良い行動として、高く評価されるべきだ。フレックスタイム制を積極的に利用する職員の人事評価はどのようになるのか。

 これに対し、江畑職員福祉局長は以下のように答弁した。
(1) 一般職の国家公務員の休暇については、情勢適応の原則に基づき、民間における普及状況に合わせることを基本に、官民均衡の観点から必要があれば適宜見直しを行っている。子の看護休暇については、厚労省調査でも「小学校就学始期に達するまで」としている企業が88.6%であることから、引き続き民間の動向を注視していきたい。
(2) 勤務時間の割振り後に生じた事由についても、職員の申出により、割振りの変更が可能である。適切な公務運営の確保に配慮しながら、できる限り柔軟にこの制度を使うことが可能だ。コアタイムは職員が勤務しなければならない時間帯であり、その時間帯にテレワークを命じられ、在宅で勤務する場合もある。
(3) 人事評価制度は、職員の発揮した能力、実績に基づき公平に評価されなければならない。フレックスタイム制を利用したことが評価に影響することがあってはならない。人事評価制度を所管する内閣人事局に対し、周知をお願いしたいと考えている。なお、人事評価制度の運用にあたり、昨年10月から、本府省等課室長相当職以上の職員について、ワーク・ライフ・バランス推進に資するような効率的な業務運営や良好な職場環境づくりについて、目標設定に当たって留意するとともに、評価に当たって適切に勘案することとされている。

 例年であれば、秋に開会される臨時国会において、給与法改正法案等が審議されるが、本年は通常国会の大幅な会期延長に伴い、臨時国会の開会の有無を含めて見通しは立っていない。公務員連絡会は引き続き、政府に対し、本年の給与改定及びフレックスタイム制の拡充について勧告通り実施する閣議決定を行い、所要の法案を国会に提出するよう求めていく。

以上