2016年度公務労協情報 2 2015年11月27日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

内閣人事局・人事院へ2016年度基本要求を提出−11/27

 公務員連絡会は11月27日、内閣人事局、人事院に対して2016年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求書を提出し、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。
 それぞれの申入れの経過は次の通り。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局への「2016年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料1参照)」の提出交渉は、14時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、内閣人事局からは川淵内閣審議官らが対応した。
 要求提出にあたり、大塚副事務局長が「この間、基本要求は当年の人事院勧告取扱いの確定を待って提出してきたが、来年度に向けては、勧告通り実施されるという前提に立って、本日、要求書を提出することにしたところ。十分に検討頂いて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の雇用と賃金・労働条件の関係では、第1に、公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスを実施していくためには、公務員や公共サービス従事者に対する、社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算の確保が必要だ。
  第2に、定年退職後、年金支給とのギャップが拡がる中で、雇用と年金接続について、職員の希望通りの再任用を保障するため、定員を確保してもらいたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等では超過勤務の縮減が最重要課題だ。
  本年、7、8月のワークライフバランス推進強化月間について、顕著な成果を挙げたとは言えず、「ゆう活」については、一部府省で強制的な実施となり、職員に負担感を残した。来年度に向けて、十分な協議を求める。
  超勤問題については、とりわけ他律的業務に係る720時間は厳格に順守されなければならない。職員の健康を守るという使用者としての責任を果たすため、しっかりと取り組んで頂きたい。
(3) 三のワーク・ライフ・バランス、女性の労働権確立については、ワーク・ライフ・バランスの確保と女性の活躍推進が目的であり、これらが着実に実現し、働きやすい職場となるよう、内閣人事局としての役割を果たすべきだ。
(4) 四の福利厚生関係では、国家公務員福利厚生基本計画の見直しについて、公務員連絡会との議論を踏まえた対応を求める。また、ストレスチェック制度について、問題を生じることなく円滑に実施できるよう、人事局として努力して頂きたい。高ストレス職員への対応、集団分析等に基づく職場環境改善も着実に実施すべきだ。
(5) 六の雇用と年金接続では、職員の希望通りの再任用が第一であり、加えてより上位の級を確保してもらいたい。来年4月から公的年金の支給開始年齢が62歳に繰り延べられ、2017年4月には義務的再任用2年目の職員と1年目の職員がかぶる。来年度中にしっかりと対策を講じるべきだ。
  臨時国会がない中で、来年4月までの定年延長実現が困難となったが、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには確実に定年延長を実現することを強く求める。
(6) 七の非常勤職員も公務運営に重要な役割を果たしており、できる限り常勤職員と均等に処遇し、労働条件の改善に努めてもらいたい。
(7) 八の公務員制度改革では、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、引き続き、われわれと十分話し合いながら検討作業を進めて頂きたい。
(8) 九のその他では、改正障害者雇用促進法の来年4月施行分、差別禁止と合理的配慮義務が、公務員については平等取扱いの原則による運用により適用が除外され、新たな措置が求められているわけではないが、民間と同様に障害者雇用を促進する観点から、必要な措置を講じるべきだ。

 続けて、各交渉委員から職場実態に基づき、@超過勤務縮減策の具体化、A定員確保、B希望通りの再任用とするための対応、Cストレスチェック制度の着実な実施、Dゆう活等の趣旨徹底、などについて強く訴えた。

 これらに対して、川淵内閣審議官は「要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、各要求事項に対する回答については、しかるべき時期に行いたい」と回答した。

 最後に、大塚副事務局長は「来年度に向けては、われわれの要求に誠実に応え、公務員の労働諸条件を改善することによって使用者としての責任を果たして頂きたい。12月には誠意ある回答をお願いしたい」と重ねて要請し、要求提出交渉を終えた。

<人事院との交渉経過>
 人事院への「2016年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料2参照)」の提出交渉は、15時から行われ、人事院からは川崎職員団体審議官、鈴木職員団体審議官付参事官が対応した。
 冒頭、大塚副事務局長が、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の給与関係は大きく3つの課題がある。第1に、来年度は、日本経済全体に波及力のある賃上げ実現が官民共通の課題だ。人事院としても、公務員給与の引上げに向けて、作業を進めて頂きたい。
  第2に、官民比較方法については、現行の企業規模は公務員組織との比較という意味ではギリギリのところであり、当面、これを堅持して、ラスパイレス比較を原則とした正確な民調作業を求める。
  第3に、諸手当について、とくに扶養手当は、民間準拠の原則に基づいた慎重な対応と、検討する場合には連絡会との交渉・協議と合意を求める。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等では、3つの課題がある。第1に超勤の縮減であり、本年の報告で人事院は積極的な姿勢を示しているが、実際に超勤時間が減らなければ意味がない。720時間は絶対的上限としてそれ以上の勤務を禁止すべきであり、最低限全職員が360時間に収まるよう取り組むべき。今年の秋民調も踏まえ、厳格な勤務時間管理も具体化すべきだ。
  第2に、拡充されるフレックスタイムの円滑な運営が課題になる。個別職員の職務範囲の明確化、及び管理職による業務進行状況の把握等の具体策を明らかにしてもらいたい。
  第3に、育児・介護など両立支援策の拡充である。現在、労働政策審議会で具体的な検討が行われているが、子の年齢要件の緩和や離職防止のための介護休業について、人材確保の観点を含め、公務が率先して検討してもらいたい。
(3) 三のワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立について、人事院としても積極的に役割を果たしてもらいたい。
(4) 四の福利厚生等関係では、ストレスチェック制度の実施が具体的な課題となる。問題を生じることなく円滑に実施できるよう、人事院として努力して頂きたい。また、各府省が、高ストレス職員への対応、集団分析等に基づく職場環境改善を着実に実施するよう、働きかけを強めてもらいたい。
(5) 六の雇用と年金接続では、当面、職員の希望通りの再任用が第一であり、来年度における2017年4月問題の具体的対応、年金支給開始年齢が63歳となるときまでに定年延長が確実に実現するよう、積極的な役割を果たして頂きたい。
(6) 七の非常勤職員関係では、本年勧告でも非常勤職員には通常は支給されない勤勉手当の引き上げとなったが、勤勉手当に類する手当を支給できるようにすべきだ。非常勤職員も公務運営に重要な役割を果たしており、できる限り常勤職員と均等に処遇し、労働条件の改善に努めてもらいたい。

 申入れに対し、川崎審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答することとしたい」として、現時点での見解を次のように示した。

(1) 賃金に関わる要求について
  来年の春闘については、連合をはじめ大手組合から、一昨年からに続き「継続的な賃上げを」という基本方針、基本構想が報道されているところ。
  また、アベノミクス第二ステージの達成のため、政府などの要請を受け、経団連も「収益、業績を上げた企業は賃上げに前向きな対応をしてほしい」、賃上げの方法については「ベアも定期昇給もボーナスも総合的に考えるべきだ」と会員企業に呼び掛ける考えを示したとの報道もある。
  一方、景気の動向については、内閣府が今月6日に発表した9月の景気動向指数では、3カ月連続で悪化、同25日に発表した11月の月例経済報告では、全体の景気判断を「一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」と景気判断を据え置き、景気の先行きに関しては「緩やかな回復に向かうことが期待される」とされた。また、設備投資は下方修正されるなど、厳しい状況もうかがえるところ。
  国家公務員の給与は、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により決定されることから、民間の春闘結果が直接反映されることとなり、連合の「定昇分を除き2%程度を基準に」という春闘基本構想がどう実現するか注視して参りたい。
  引き続き皆さんからのご意見を伺いながら、人事院としての役割を果たして参りたい。
(2) 労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
  長時間労働慣行の見直しについては勧告時報告でも触れているが、民間企業に対する総労働時間の短縮に向けた取組の調査や超過勤務に関する職員の意識調査の結果を各府省に情報提供、フィードバックしたところ。
  超過勤務の縮減については、引き続き、各府省における取組についてフォローアップしつつ、積極的に支援して参りたい。
(3) ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立に関わる要求について
  女性活躍とWLBの推進については、これまで両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備や、女性国家公務員の採用・登用拡大の推進を積極的に進めているところ。
  今年の勧告では、柔軟で多様な働き方の実現と勤務環境の整備としてフレックスタイム制の拡充について勧告したところであり、現在、法令の改正、具体的な運用などについて、皆さんからのご意見も伺いながら実施に向けて検討をすすめているところ。

 これに対し、各交渉委員が職場実態に基づき、@希望どおりの再任用実現、A実効性のある超過勤務縮減、B他律的業務の明確な定義、C業務量に見合う定員確保、Dハラスメントの根絶、などについて積極的な対応を要請した。

 最後に大塚副事務局長が、「労働基本権の制約が維持されている以上、人事院には代償機関としての位置づけを含め、職員の利益保護という役割をしっかりと果たしてもらいたい。申入れ内容を十分に精査して頂いて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と求めたのに対し、川崎審議官が了としたことから、提出交渉を終えた。

資料1.内閣人事局への基本要求書

2015年11月27日


内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2016年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 本年度第3四半期の実質GDPは2期連続のマイナス成長となり、設備投資が減少し、雇用者報酬はわずかに増加したものの、企業規模間、雇用形態間の賃金格差は縮まらず、先行き不安から個人消費は伸び悩んでいます。また、雇用情勢には改善が見られるものの、非正規労働者の増加によるもので、雇用の劣化が進んでいます。これらの課題を踏まえて、連合は2016年春季生活闘争について、「底上げ・底支え」と「格差是正」に重点を置いて取り組むことにしています。
 こうした状況のもと、東日本大震災等からの復興・再生はもとより、国民の生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、定員の削減が継続される中、超過勤務は一向に改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
 公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務員労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関としての内閣人事局がその役割を十全に果たすことが求められています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員を確保すること。
(3) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。2016年度においては、実質生活水準を確保するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を引き上げること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(3) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。

三、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づく各府省の取組計画における目標達成に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。関係諸制度やその運用の見直し等を行う場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 次世代育成支援対策推進法及び女性活躍推進法に基づくそれぞれの特定事業主行動計画の着実な実行に向け、各府省を指導すること。
(4) 女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。なお、計画の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分、交渉・協議すること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2016年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。

五、人事評価制度に関わる事項
 人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、職員の希望通りの再任用を実現するとともに、生活水準を確保すること。
(2) 職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 人事院の意見の申出等を踏まえ、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには確実に定年延長を実現することとし、公務員連絡会との交渉・協議に基づいて具体的措置を講じること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。

八、公務員制度改革に関わる事項
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

九、その他の事項
(1) 改正障がい者雇用促進法の2016年4月施行に向けて、必要な措置を講じるとともに、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上


資料2.人事院への基本要求書

2015年11月27日

人事院総裁
 一 宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2016年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 本年度第3四半期の実質GDPは2期連続のマイナス成長となり、設備投資が減少し、雇用者報酬はわずかに増加したものの、企業規模間、雇用形態間の賃金格差は縮まらず、先行き不安から個人消費は伸び悩んでいます。また、雇用情勢には改善が見られるものの、非正規労働者の増加によるもので、雇用の劣化が進んでいます。これらの課題を踏まえて、連合は2016年春季生活闘争について、「底上げ・底支え」と「格差是正」に重点を置いて取り組むことにしています。
 こうした状況のもと、東日本大震災等からの復興・再生はもとより、国民の生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、定員の削減が継続される中、超過勤務は一向に改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
 公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務員労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護の役割を十全に果たすことが求められています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
 @ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。
   2016年度の給与勧告においては、実質生活水準を確保するため、公務員の賃金水準を引き上げること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握し、月数増を実施すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 扶養手当については、民間準拠のもと、民間実態を踏まえた対応とすること。なお、見直しを検討する場合には、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善すること。
(3) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。
(4) その他の手当についても、見直し・検討を行う場合は、その可否を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
 (1) 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、在庁時間の一層の削減に向け、人事院として積極的役割を果たすこと。
 (2) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。また、他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
 (3) 新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。

2.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
 (1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
 (2) リフレッシュ休暇を新設すること。
 (3) 育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和するとともに、その在り方を改善すること。
 (4) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
 (5) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) フレックスタイム制度拡充の円滑な推進に努めるとともに、テレワークに係る勤務時間等の在り方などの見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意の下に進めること。

三、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
 職業生活と家庭生活の両立支援の環境整備を積極的に推進するとともに、公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、次の事項を実現すること。
 (1) 女性の労働権確立にむけ、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大を図るとともに、メンター制度の実効性を確保すること。
 (2) 次世代育成支援対策推進法及び女性活躍推進法に基づくそれぞれの特定事業主行動計画、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」に基づく各府省取組計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
 (3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントについて、必要な対策を着実に実施すること。

五、人事評価制度に関わる事項
 中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、職員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(2) 再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。
(3) 年金支給開始年齢が63歳になるときまでには確実に定年延長を実現するため、積極的に対応すること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、次の事項を実現すること。
 (1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
 (2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を定期的に点検・報告し、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
 (3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
 (4) 非常勤職員の休暇制度の改善について、順次具体化を図ること。

八、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上