2016年度公務労協情報 21 2016年3月24日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府、人事院から春の段階の回答引き出す−3/24
−公務員連絡会は回答確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」発出−

 公務員連絡会は3月24日、委員長クラス交渉委員が一宮人事院総裁、河野国家公務員制度担当大臣と2016春季段階の最終交渉を行った。この交渉で人事院総裁、国家公務員制度担当大臣は、それぞれ資料1、2の通り、春の段階における最終的な回答を示した。
 これに対して、公務員連絡会は代表者会議で、「政府・人事院の回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に明確に応えていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、予断を許さない公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を継続・強化していく」との声明(資料3)を確認。25日の第3次全国統一行動では、人勧期の取組みの決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
 この日行われた人事院総裁、国家公務員制度担当大臣との交渉経過と回答内容は次の通り。

<人事院総裁交渉の経過>
 一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
 冒頭、石原議長が、2016春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は本年の民間春闘の動向について述べた上で、現段階の考え方等を資料1の通り回答した。

 この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が3年連続の賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組みに全力を尽くしている。夏の勧告では、非常勤職員を含めて賃上げが実現するよう、積極的な対応を求める。
(2) 本年は、女性活躍推進法や第4次男女共同参画基本計画を踏まえて、女性の活躍とワーク・ライフ・バランスを推進すること、すなわち「働き方改革」が重要課題となっている。そのためにも、適切な勤務時間管理の導入や超過勤務の縮減を確実に進めなければならないし、育児・介護等の両立支援策の改善が必要だ。
(3) 東日本大震災から5年が経過するが、改めて復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 今年度の定年退職者からは、雇用と年金のギャップは最長2年間に伸びることになるが、その接続は引き続き再任用とされている。人事院も指摘しているように、まずは、職員の経験と能力が本格的に活用される再任用、民間と同様にフルタイム中心にしていく必要がある。その上で、人事院の意見の申出に基づいた定年延長を実現するため、政府及び国会に対する具体的な対応を図るよう、改めて要請する。

 最後に石原議長は、「本日の回答で、諸課題について、お互いに認識の共有ができたと考えるので、公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていただきたい。回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、人事院総裁交渉を締めくくった。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
 河野国家公務員制度担当大臣との交渉は、16時30分から行われた。
 冒頭、石原議長が、2016春季段階の最終回答を求めたのに対して、河野国家公務員制度担当大臣は、資料2の通り回答した。

 この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が3年連続の賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組みに全力を尽くしている。河野大臣におかれては、賃上げによる処遇改善が良質な公務公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 本年は、女性活躍推進法や第4次男女共同参画基本計画を踏まえて、女性の活躍とワーク・ライフ・バランスを推進すること、すなわち「働き方改革」が重要課題となっている。そのためにも、適切な勤務時間管理の導入や超過勤務の縮減を確実に進めなければならない。
(3) 東日本大震災から5年が経過するが、改めて復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 今年度の定年退職者からは、雇用と年金のギャップは最長2年間に伸びることになるが、その接続は引き続き再任用とされている。希望通りの再任用が重要であり、職員の経験と能力が本格的に活用される再任用、民間と同様にフルタイム中心にしていく必要がある。加えて、一億総活躍方針のもと、公務が率先して定年延長に踏み込んでもらいたい。

 そのうえで石原議長は、「本日の回答では、大臣から、引き続き労使関係に基づいて、公務員連絡会の意見を聞きながら誠意をもって話し合っていく、との決意が示されたことを確認する。回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と公務員連絡会としての意見を表明した。

 これに対し、河野大臣が、「ご要望は承りました。政府としても、引き続き、適切な労使関係の構築に努めてまいりたいと思います」と応えたことを受けて、この日の交渉を終えた。


資料1−人事院の2016春季要求に対する回答
人事院総裁回答

2016年3月24日


1.賃金等の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処して参りたい。
○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応して参りたい。
  扶養手当については、昨年夏の給与勧告時の報告において、今後、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について引き続き必要な検討を行って行く旨報告したところであり、本年の勧告に向け、皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行って参りたい。

2.労働時間の短縮等について
〇 超過勤務の適正な管理及び超過勤務の縮減については、事前の超過勤務命令等の管理職員による厳正な勤務時間管理を徹底するとともに、管理職員の意識改革を含めた業務の合理化・効率化などの取組を推進することが重要であると考えている。
  平成26年に実施した民間企業の勤務条件制度等調査における総労働時間短縮に向けた取組の調査や「超過勤務に関する職員の意識調査」を踏まえ、今後とも関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めて参りたい。
○ 職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等をみながら、改善を行ってきたところであり、皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行って参りたい。
〇 平成28年4月からのフレックスタイム制の拡充については、各府省担当者へ制度説明会を開催したり、照会に対応するなど制度の周知に努めているところであり、引き続き、円滑な推進に努めて参りたい。

3.非常勤職員の処遇改善について
○ 非常勤職員の給与については、昨年3月に行ったフォローアップ調査の結果、概ね指針の内容に沿った運用が確保されていることが確認できたところである。今後も、指針の内容に沿った運用の確保が図られるよう取り組んで参りたい。
  また、非常勤職員の休暇等については、従来より民間の状況等を考慮し、措置してきたところであり、今後ともこうした考え方を基本に必要な検討を行って参りたい。

4.高齢期雇用等について
○ 国家公務員の雇用と年金の接続について、年金支給開始年齢の62歳への引上げに当たっては、引き続き、平成25年の閣議決定に基づき定年退職する職員を再任用することにより対応する方針が政府より示されたところである。
  閣議決定においては、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているが、現在の公務の再任用は引き続き短時間勤務が中心であり、フルタイム中心の勤務となっている民間企業の状況とは大きく異なっている。
  今後、再任用希望者の増加が見込まれる中、このような再任用の運用が続くと、公務能率や職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られないなどの問題が深刻化するおそれがあることから、人事院としては、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、再任用職員の能力及び経験を本格的に活用していくことが必要と考えており、引き続き必要な対応を行って参りたい。

5.男女平等・共同参画、ワーク・ライフ・バランスの推進について
〇 人事院としては、男女共同参画社会の実現を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところである。
  女性職員の採用・登用の拡大については、平成27年12月に第4次男女共同参画基本計画が閣議決定され、また、「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府全体で取組が進められているところである。
  人事院としては、今後も引き続き、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援するとともに、男女ともに働きやすい勤務環境の整備について、所要の検討を進めて参りたい。

6.健康・安全確保等について
〇 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識に基づき、これまでも各府省と協力して、人事院として積極的に取り組んできたところである。
  いわゆるパワハラについては、昨年7月に、パワハラ防止ハンドブックを作成、配布したところであり、これを活用してもらうことにより、パワハラ防止に関する意識啓発をより一層推進して参りたい。
  また、昨年12月には、ストレスチェック制度を導入したところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めて参りたい。


資料2−政府の2016春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答

2016年3月24日


○ 平成28年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたい。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

○ 非常勤職員の処遇改善については、制度の適正な運用について、各府省及び地方支分部局に対し引き続き十分に周知を図っていくと同時に、人事院等と連携しつつ実態を把握し、皆様のご意見も伺いながら、必要な対応を行ってまいりたい。

○ 女性活躍とワークライフバランスの推進については、超過勤務の縮減、フレックスタイム制やテレワークの活用を始めとした「働き方改革」に取り組むとともに、女性活躍推進法等への対応など、政府一丸となって取り組んでまいりたい。その際、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたい。

○ 雇用と年金の接続については、引き続き、平成25年の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。その際、再任用者の能力と経験の一層の本格的活用に努めたい。
  なお、この閣議決定に基づき、年金支給開始年齢の引上げの時期ごとに、改めて検討を行ってまいりたい。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。

○ 最後になるが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたい。


資料3−2016春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声  明

(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2016年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 連合の2016春季生活闘争は、先行・大手組合が3年連続の賃金引上げを獲得し、それを中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての闘いが進められている。
  公務員連絡会は、経済・財政再生計画の集中改革期間初年度となる2016年度に向け、連合に結集し、「底上げ・底支え」と「格差是正」を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の処遇改善をめざし、公務員労働者の賃金引上げ、定員の確保と超過勤務の抜本的な縮減、希望通りの再任用と定年延長などを最重要課題として位置づけ、具体的な取組みを進めてきた。
(3) 委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は@2016年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、実態を把握し、公務員連絡会の意見を聞きながら必要な対応を行っていく、B超過勤務の縮減等を始めとした「働き方改革」に取り組む、C再任用を着実に推進し、再任用者の一層の本格的活用(フルタイム)に努める、D公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていくと回答した。また、人事院総裁は@賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、Aより実効性のある超過勤務縮減策の検討を進める、B休暇・休業等について、公務員連絡会の意見を聞きながら、必要な検討を進める、C非常勤職員給与指針に沿った運用の確保に取り組む、D雇用と年金の接続はフルタイム中心の勤務を実現するため必要な対応を行う、と回答した。
  これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に明確に応えていない。
  しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、予断を許さない公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を継続・強化していく。
(4) 東日本大震災から5年が経過したが、改めて復興・再生は被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。そのためにも国民のセーフティネットである公務公共サービスに課せられた役割は大きい。われわれはその責務をしっかりと果たしていく。
  連合・公務労協に結集し、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合と連帯し、すべての労働者の賃金引上げ、雇用の安定確保を実現するため、全力をあげる。

2016年3月24日

公務員労働組合連絡会

以上