2016年度公務労協情報 26 2016年7月12日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/12
−明確な回答がなく、局長交渉では中身ある回答を強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月12日13時30分から、2016年人勧期要求に関わり、鈴木人事院職員団体審議官との交渉を実施した。
 冒頭、大塚副事務局長が「6月21日に提出したわれわれの要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、鈴木審議官は次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の民間給与実態調査は、5月1日〜6月17日までの期間で、熊本県を除き実施したところであり、現在集計中である。
 本年も、労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行って参りたいと考えている。
(2) 一時金について
 現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処して参りたい
(3) 諸手当について
 扶養手当については、5月26日に、本年の勧告において、配偶者に係る扶養手当について見直しを行うことを考えている旨をお伝えしたところであるが、引き続き、職員団体等の意見を聴きながら、必要な検討を進めて参りたい。
 その他の諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、対応して参りたい。
(4) 再任用職員の給与について
 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間の再雇用者に対する手当の支給状況を踏まえ、平成27年4月から再任用職員に対して単身赴任手当を支給している。
 再任用職員の給与の在り方については、今後も民間企業の再雇用者の給与の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら必要な検討を行っていくこととしたいと考えている

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
 超過勤務の適正な管理及び超過勤務の縮減については、事前の超過勤務命令等の管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、管理職員の意識改革を含めた業務の合理化・効率化などの取組を推進することが肝要である。今後とも、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。
(2) 45時間超60時間以内の超過勤務の割増率について
 民調による平成27年4月の民間企業の状況をみると、ご指摘の時間に係る割増賃金率を30%以上としている事業所の従業員の割合は、47.7%と半数程度となっており、引き続き、民間企業の動向を注視していく必要があると考えている。
(3) 両立支援制度について
 育児・介護のための両立支援策については、従来から、情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。今般、民間においては育児・介護休業法が改正され来年1月から施行されることから、公務においても同法の改正内容を踏まえた改正を同時期から施行できるよう、公務運営への影響等を考慮しつつ、必要な検討を進めてまいりたい。
(4) 女性国家公務員の採用等の推進について
 女性職員の採用・登用の拡大については、内閣人事局長を議長に全府省の事務次官級で構成される「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性職員の職域拡大も含め、政府全体で取組が進められている。
 人事院としても、今後とも引き続き、女性を対象とした人材確保活動等の強化や女性職員等を対象とする研修の実施、両立支援等を通じて、女性の活躍推進に資する環境整備に取り組んでまいりたい。
(5) 高齢者雇用施策について
 国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年の閣議決定に基づき、年金開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、人事院が平成23年に行った意見の申出を踏まえつつ、段階的な定年の引上げも含め改めて検討を行うこととされている。
 年金支給開始年齢の62歳への引き上げに当たっては、引き続き、平成25年の閣議決定に基づき定年退職する職員を再任用することにより対応する方針が政府より示されたところである。
 人事院としては、高齢層職員の能力及び経験の活用の観点から、引き続き公務内外における高齢期雇用の実情等の把握に努めつつ、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるよう取り組むとともに、平成23年の意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続の推進のため、関連する制度も含め、適切な措置がとられるよう、引き続き必要な対応を行っていくこととしたい。
(6) 福利厚生施策の充実について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処している。
 具体的には職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの配布、職員がセルフケアに関する知識を身につけるための自習用e-ラーニング教材の受講促進、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、「試し出勤」の活用等による円滑な職場復帰の促進等に取り組んでいる。
 さらに、今年度から実施されるストレスチェック制度については、これらの取組の中で周知徹底を図ることに加え、職場環境改善に係る研修の実施など各府省における円滑な実施に資する取組の検討を進めて行くこととしたい。
 職場におけるハラスメントは、職員の尊厳や人権を侵害し、勤務環境を害するものであり、その防止に努めることは重要な課題であると認識している。
 妊娠・出産・育児休業・介護休暇等の利用に関するいわゆるマタハラについては、本年3月に事業主に対して必要な措置を講ずること等を義務づける育児・介護休業法の改正法が成立したところ、公務においても厚生労働省が検討中の指針の内容を踏まえながら、具体的に検討してまいりたい。
 また、いわゆるパワハラについては、昨年度パワハラ防止ハンドブックを作成・配布したところであり、その活用を図るなど、パワハラ防止に関する意識啓発を推進してまいりたい。

3.非常勤職員制度等について
 非常勤職員の給与については、類似する職務に従事する常勤職員の俸給月額を基礎として決定すること等を内容とする指針を、平成20年8月に各府省に対して発出し、指導等を行ってきている。
 昨年3月に行ったフォローアップ調査の結果、概ね指針の内容に沿った運用が確保されていることが確認できたところであるが、一部の官署において、通勤手当に相当する給与の取扱いが常勤職員と異なること等が見られたため、これらの府省に対し改善を促したところ、現在では、既に改善を実施した、あるいは、改善を検討しているとする府省が見られるところである。
 今後も、指針の内容に沿った運用の確保が図られるよう、取り組んでまいりたい。
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応して参りたい。
 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 勧告作業及び月例給与について
@ 民調は、どの程度の調査完了率になったのか。国公実態はどんな状況か。平均年齢や給与水準はどうなっているのか。
A 集計中とのことだが、官民較差についてはどのような状況か。
B 民間の賃上げは3年連続で、水準は昨年より若干下がったが、昨年よりも賃上げの広がりが見られ、中小・地場も健闘している。他方、中国経済の調整にイギリスのEU離脱も加わって、世界経済は不透明。日本経済の好循環につなげていくためには、地域経済への波及を含めて、公務員賃金の影響は大きい。是非とも、引上げを勧告していただきたい。
(2) 一時金について
 一時金については、集計中であるとしても、各種調査結果を見ると、民間では全体として昨年に比べ上がっており、月数増を要求している。本年は、非常勤職員など社会的配慮を踏まえた配分を強く求めておく。
(3) 諸手当について
 諸手当について、公務員宿舎の廃止や昨年の民調結果では民間の最高支給額の中位階層が3万円以上に上がっていたことも踏まえ、住居手当の総合的改善を求めている。また、扶養手当については、人事院から本年の勧告で見直すことを考えているとの提案があった。春の交渉で、民間準拠原則の下、原資配分の問題であることをお互いに確認してきた。引き続き、十分な議論と合意を求める。
(4) 再任用職員の給与について
 人事院も内閣人事局も再任用職員の本格的活用を重要課題に位置付けている。再任用職員が意欲を持って能力を発揮するためには、まずは処遇の改善が必要だ。一昨年の勧告で、手当の支給拡大が図られたが、単身赴任に伴う住居の手当を措置しないことは整合性に欠ける。生活関連手当についても、生活実態を踏まえた改善を求める。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
@ ワーク・ライフ・バランスの実現には、「働き方改革」が不可欠だ。先頃公表された新規採用者に対するアンケート調査でも、超勤縮減を始めとした「働き方改革」が重要であることが、浮き彫りになっている。
  本年は、とくに事前の超過勤務命令の徹底と厳格な勤務時間管理に踏み込んでもらいたい。昨年の秋民調では、民間企業の勤務時間管理について調べているが、その結果について伺いたい。
A 公務では、客観的な勤務時間管理が行われていないことが、慢性的な長時間労働を招いたり、不払い超勤などの原因になっているのではないか。本年の勧告で、一歩前に進めるべきだ。「より実効性のある」という回答であり、現時点で何か検討していることがあれば伺いたい。
B 実際に超勤を縮減するために、縮減目標を設定すること、少なくとも半減をめざすことや720時間の上限目安時間は禁止的に運用することを繰り返し求めてきたが、超勤実態の改善は進んでいない。
  共働きが確実に増えている中で、女性活躍促進、育児・介護との両立を図るためには、超勤縮減が不可欠であり、人事院の決意を示していただいて、本年の勧告で踏み込んでもらいたい。
C 民間の制度改正を踏まえた、両立支援策の検討状況はどうなっているのか。柱立てがもう固まっていないとスケジュール的に厳しいと考えるが、どんな状況か。
(2) 高齢者雇用施策について
@ 雇用と年金の接続については、公務の場合、定員の問題があって、職員がフルタイムを希望しても、短時間勤務にしか就けず、再任用者が本格的に活用されていない。人事院が本年年次報告で提案した、「再任用に係る過渡的扱い」について、何らかの措置が講じられるよう、本年の報告でも重ねて指摘すべき。
A 再任用の実態を踏まえれば、公務の再任用には限界がある。遅くとも、年金支給開始年齢が63歳となるときまでには定年延長が実施されるよう、改めて政府に申し入れるべきだ。
(3) 福利厚生施策の充実について
 新たに導入されたストレスチェック制度については、各府省の責任において確実に実施されるものと認識。ハラスメントについては、とくにパワハラが問題化している。回答にあったハンドブックから、さらにもう一歩進めてもらいたい。

3.非常勤職員の制度及び処遇改善について
@ 非常勤職員の処遇を改善するため、ぜひとも給与の引上げを実現して頂きたい。
  給与改定時期について、常勤職員は4月に遡っても、非常勤職員の場合、各府省によって取り扱いが異って、不公平感が生じている。人事院として、改善策を検討すべきではないか。
A 給与決定指針については、通勤手当や期末手当等が十分に支給されていない実態がある。引き続き、丁寧な点検を行って、支給すべき手当は確実に支給するよう各府省を指導して、遵守の徹底を期してもらいたい。加えて、勤勉手当に相当する給与も支給できるよう見直しを検討すべきだ。
B 休暇・休業制度については、年次休暇の弾力的取得について若干の改善が図られたが、公務員連絡会の基本的考え方は、常勤職員との均衡であり、無給となっている休暇などについて、順次改善していただきたい。
C 非常勤職員をめぐっては、様々な課題が残っており、同一労働同一賃金の議論もある。抜本的な改善に向け、引き続き話し合ってもらいたい。

 これに対し、鈴木審議官は以下の通り回答した。
(1) 民調の完了率について、今年についてもほぼ例年並みの水準を確保できる見込みである。国公実態調査については、現在、最終的な取りまとめを行っているところ。官民較差については集計中であるため、現時点で回答できることはない。
(2) 一時金について、人事院としては、民調結果を踏まえて適切に対処することが基本と考えている。
(3) 住居手当については、公務員宿舎の縮減、宿舎料の段階的値上げの影響も含め、実態を踏まえ引き続き検討していく必要があると考えている。扶養手当については、本年勧告で見直すことを提案したところであり、民間の状況も調べている。皆さんの意見も伺いながら本年の勧告に向けて、鋭意作業を進めて参りたい。
(4) 再任用職員の手当等については、民間の状況や再任用の実態を踏まえて検討するという基本姿勢で、今後とも対応して参りたい。
(5) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応については、今年の勧告時報告に向けては、職員の在職状況等を見つつ職員団体等の意見も聴きながら検討していく。
(6) 秋民調については現在集計中であり、調査結果がまとまり次第、円滑で負担の少ない勤務時間管理方法について、一歩進んだ形で検討してまいりたいと考えている。
(7) 超勤縮減の重要性は、人事院としても認識しており、この間、民間における超勤縮減の好事例の調査を行うとともに、各府省にヒアリングを行ってきたところ。昨年報告では、管理職員による事前の超勤命令の徹底や意識改革の重要性などを盛り込んだところであり、さらに具体的な施策をどのように打ち出すかが検討課題となっている。
(8) 両立支援策の改正内容については、いただいたご意見も踏まえながら、本年勧告に向けて、鋭意検討を行っているところである。なお、公務における両立支援策については一定の充実が図られてきたところであるが、ワーク・ライフ・バランスの実現に向け、超勤縮減策とともに、利用しやすい職場や勤務環境の整備をあわせて進めていく必要があると考えている。
(9) 雇用と年金の接続について、人事院としては、定数改定期において、各府省に対しフルタイム再任用の状況等をヒアリングし、できる限り対応してきたところであり、引き続き、皆さんにもご協力いただきながら対応していきたいと考えている。
(10) 定年延長については、適切な措置が取られるよう必要な対応を行っていまいりたい。
(11) ハラスメント対策については、今後も必要な検討を行ってまいりたい。
(12) 非常勤職員の給与については、人事院としては、給与改定への対応を含め、各府省と連携するなど、必要な対応を行ってまいりたいと考えている。また、休暇・休業制度については、民間とも均衡を図る必要もあり、民間企業における状況を調査することも検討していくべきではないかと考えている。

 また、各交渉委員からは、勤務時間管理の徹底、両立支援策の充実、希望通りの再任用に向けた具体的対応、扶養手当見直しについての慎重な検討、などについて要望が出された。

  最後に、大塚副事務局長が「本日の回答は、集計中、検討しているというような話だけで、両立支援策の見直しを除いて本年の報告・勧告がどういうことになるのか、まったく明らかにならなかった。月末には各局長との交渉を行うので、その際には、月例給、一時金の改善を中心として公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上