2016年度公務労協情報 36 2016年10月7日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

内閣人事局と人勧取扱い等に関わり議論−10/7
−書記長クラス交渉委員が内閣人事局人事政策統括官交渉−

 公務員連絡会は、10月7日13時30分から、本年の人事院勧告の取扱いに関する政府の検討状況を質すため、内閣人事局交渉を実施した。公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が出席し、内閣人事局からは三輪人事政策統括官らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会の吉澤事務局長が、「勧告から2ヶ月、臨時国会開会から2週間が経過したが、要求に対する今日段階の検討状況を伺いたい」と求めたのに対し、三輪統括官は次の通り回答した。

(1) 8月8日にいただいた「本年の人事院勧告・報告に関わる要求書」について、現在の検討状況を申し上げる。
(2) 去る8月8日に人事院から国家公務員の給与改定についての勧告が提出されたことを受け、8月15日に第一回の給与関係閣僚会議を開催したところ。
  本年の人事院勧告を受けた給与改定の取扱いについては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、国政全般の観点から検討を進めているところであり、早急に結論を得られるよう、努力してまいりたい。
(3) また、介護休暇制度の見直しに関する勧告及び育児休業等の対象となる子の範囲の拡大に関する意見の申出については、この勧告・意見の申出に沿って、必要な作業を進めているところ。

 これに対し吉澤事務局長は、以下のとおり、三輪統括官の考えを質した。
(1) 労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告尊重は当然であるにも関わらず、「国政全般の観点」を挙げているが、勧告尊重との整合性はあるのか。昨年の交渉では、経済、財政状況等を踏まえるとの見解だったが同様か。また、昨年と比較し大きな変化はないと考えるがどうか。
(2) また、政府が一方的に決めるのではなく、その決定にあたっては、あくまでわれわれとの交渉・協議、合意が前提であることを確認したい。
(3) 消費税増税の再延期により、「経済・財政再生計画」に大きな影響を与えることが危惧される。とくに来年度の予算編成については、社会保障の財源確保等が深刻な問題であり、あわせて公務員人件費への影響に強い危機感をもっている。本年改定について財政再生に関わって、何か検討がなされているのか。また、取扱い方針の決定にあたっては、給与制度の総合的見直し以外は容認できないことを申し上げておく。
(4) 民間企業における退職金等調査について、人事院に対し、8月1日に調査及び見解を要請したと認識。経緯を説明されたい。
(5) 2012年の臨時国会における退職給付の取り扱いに際して、5年に1回の調査では変動が大きすぎるという議論をしたが、今回、この検討は行ったか。
  民間の退職給付は徐々に変動する。あくまで民間準拠だとは言え、見直しで上下することへの準備等の問題がある。今回の調査結果に基づき見直す場合は、十分な交渉・協議を行い、合意の上で行うよう求める。
(6) 9月27日に第1回「働き方改革実現会議」が開催されたが、「働き方改革」は民間主体の話ではあるが、公務員についても、無関係ではないと考えるがどのように認識しているか。
  また、「民間準拠」か、「隗より始めよ」かの問題がある。今般の扶養手当の見直しについては、2年前の産業競争力会議における総理大臣の発言からスタートしていると認識している。いずれにしても、影響する場合、当然われわれと話し合ってもらわないといけない。定年延長問題についても一つのテーマだ。民間準拠というよりも公務主体で取り組むことも重要ではないか。

 これらに対し三輪統括官は、以下のとおり答えた。
(1) 労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するというのが政府の基本姿勢であり、その上で、社会経済情勢や財政状況等の「国政全般の観点」を踏まえて、検討・決定する必要があるというのがスタンスだ。現在、デフレ解消等をめざし、様々な施策が進められているところであるが、社会経済情勢・財政状況等については、昨年と大きな変化はないのではないかと考えている。
(2) 政府としては、勧告等を受けた内閣として検討を行っているところであり、しかるべき時期に閣議決定し、関係する法律案を国会に提出することになるが、その際には、皆様の意見を聞きながら進めてまいりたい。
(3) 本年の人事院勧告の取扱いについては、本年の実施や、それによる来年度以降への影響の有無等を含め、経済や財政の視点を踏まえ検討を進めているところである。他方、財政に関わるご指摘の点について、具体的な検討が必要となる場合には、ご意見を伺ってまいりたい。
(4) 国家公務員の退職給付については、2014年7月に閣議決定した「国家公務員の総人件費に関する基本方針」(以下、基本方針)で、概ね5年ごとに見直しを行うことを通じて官民均衡を確保するとしている。本年が前回調査から5年にあたるため、人事院に調査および見解の表明の要請を行い、10月1日から調査が実施されている。
(5) 基本方針が閣議決定されるまでは、確たるルールがなかったが、当時の議論を踏まえ、閣議決定の段階で一定の整理を行い、概ね5年ごととした。
  何年ごとに見直すべきかという議論はある。基本方針の閣議決定後初の調査でもあるため、今回はこのように実施させていただきたい。いずれにしても、今回の調査の結果を踏まえ、検討していく。その中で、みなさんの意見も伺ってまいりたい。
(6) 「働き方改革」の議論は公務員を除くものではない。われわれも関心をもっている。まだ具体的議論には入っていく段階にはないが、公務員に影響が及ぶ可能性も踏まえ、注視していく。
  「働き方改革」に関連して人事院が勧告、意見の申出を行えば、それを聞く。民間では普及していないもの、公務で「隗よりはじめよ」の観点で提起できるものもある。公務には特殊性もあるため、できることを行っていきたい。民間の影響が及ぶものについては、取り入れることができるものは取り入れていく。
  民間と同じ部分も違うも部分もある。国会待機の問題など、公務員独自の問題については対応をしていく。また、民間と共通の課題についても民間の対応を待つだけでなく、国民に説明しつつ、できることはやっていきたい。

 最後に、吉澤事務局長は、「勧告の完全実施に向けた検討を進め、閣議決定前には、山本大臣から正式な回答を求める。また、昨年は臨時国会が開催されず、給与法等の成立が越年する事態となった。成立が遅れれば、地方公務員等の給与決定にも大きな影響を及ぼすことになるため、政府として、早期の法案成立に向け、国会の審議日程を踏まえた対応を行っていただきたい」と強く求め、本日の交渉を締めくくった。

以上