2017年度公務労協情報 15 2017年3月24日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府、人事院から春の段階の回答引き出す−3/24
−公務員連絡会は回答確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」発出−

 公務員連絡会は3月24日、委員長クラス交渉委員が山本国家公務員制度担当大臣、一宮人事院総裁と2017春季段階の最終交渉を行った。この交渉で国家公務員制度担当大臣、人事院総裁は、それぞれ資料1、2の通り、春の段階における最終的な回答を示した。
 これに対して、公務員連絡会は代表者会議で、「これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に具体的で明確には応えていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、財政再建を含め公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。また、働き方改革実現会議における議論等を踏まえ、公務における対応等について、引き続き、政府及び人事院との交渉を継続する」との声明(資料3)を確認。27日の第3次全国統一行動では、人勧期の取組みの決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
 この日行われた国家公務員制度担当大臣、人事院総裁との交渉経過と回答内容は次の通り。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
 山本国家公務員制度担当大臣との交渉は、11時40分から行われた。
 冒頭、石原議長が、2017春季段階の最終回答を求めたのに対して、山本国家公務員制度担当大臣は、資料1の通り回答した。

 この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行き不透明な厳しい情勢のもと、先行・大手組合が4年連続の賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組みに全力を尽くしている。山本大臣におかれては、賃上げによる処遇改善が良質な公務公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 本年は、公務部門においても「働き方改革」を着実に実施し、すべての職員が良好な労働条件の下で、働き甲斐を持って勤務できるようにしていくことが重要課題となっている。そのためにも、適切な勤務時間管理の導入や超過勤務の縮減、同一労働同一賃金などを確実に進めなければならない。
(3) 東日本大震災から6年が経過するが、その後の災害も含め、改めて復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 多くの再任用者が短時間勤務を余儀なくされるなど、その本格的活用が進んでいないことに加え、新年度の定年退職者から、雇用と年金のギャップが最長3年間に伸びる。職員が希望する場合にはフルタイム再任用を保障しつつ、人事院の意見の申出に基づいた定年延長の必要性が一層高まっていることを認識していただきたい。

 そのうえで石原議長は、「きょうの回答では、大臣から、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会の意見を聞きながら、誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認する。回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と公務員連絡会としての意見を表明し、この日の交渉を終えた。

<人事院総裁交渉の経過>
 一宮総裁との交渉は、14時30分から行われた。
 冒頭、石原議長が、2017春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は本年の民間春闘の動向について述べた上で、現段階の考え方等を資料2の通り回答した。

 この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行き不透明な厳しい情勢のもと、先行・大手組合が4年連続の賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組みに全力を尽くしている。夏の勧告では、非常勤職員を含めて賃上げが実現するよう、積極的な対応を求める。
(2) 本年は、公務部門においても「働き方改革」を着実に実施し、すべての職員が良好な労働条件の下で、働き甲斐を持って勤務できるようにしていくことが重要課題となっている。そのためにも、適切な勤務時間管理の導入や超過勤務の縮減、同一労働同一賃金などを確実に進めなければならないし、両立支援策の改善とその円滑な活用を促進する必要がある。
(3) 東日本大震災から6年が経過するが、その後の災害を含め、改めて復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 多くの再任用者が短時間勤務を余儀なくされるなど、その本格的活用が進んでいないことに加え、新年度の定年退職者から、雇用と年金のギャップが最長3年間に伸びる。職員が希望する場合にはフルタイム再任用を保障しつつ、人事院の意見の申出に基づいた定年延長の必要性が一層高まっていることを認識していただきたい。

 最後に石原議長は、「きょうの回答で、諸課題について、お互いに認識の共有ができたと考えるので、公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていただきたい。回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、この日の交渉を終えた。


資料1−政府の2017春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答

2017年3月24日


○ 平成29年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたい。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

○ 非常勤職員の処遇改善については、昨年の実態調査結果や民間の同一労働同一賃金の実現に向けた検討を含む「働き方改革」の動向等も注視しつつ、関係機関とも連携し、実効が上がるよう、皆様のご意見も伺いつつ、今後の対応について検討を進めてまいりたい。

○ 女性活躍とワークライフバランスの推進については、超過勤務の縮減を含む「働き方改革」を着実に進めていくことが重要であり、政府一丸となって取り組んでまいりたい。あわせて、両立支援制度が一層活用されるよう、引き続き、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたい。

○ 雇用と年金の接続については、引き続き、平成25年の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。また、今後見込まれる再任用者の増加に鑑み、その能力と経験の一層の本格的な活用について、必要な検討を進めてまいりたい。
  あわせて、この閣議決定に基づき、年金支給開始年齢の63歳への引上げに向けて雇用と年金の接続の在り方について検討を行ってまいりたい。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。

○ 最後になるが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたい。


資料2−人事院の2017春季要求に対する回答
人事院総裁回答

2017年3月24日


1.賃金等の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。
○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応したいと考えています。

2.労働時間の短縮等について
〇 近年は、長時間労働の是正が我が国全体の課題とされており、公務においても、この問題に組織を挙げて取り組む必要があると認識しています。
  昨年の勧告時報告で述べたとおり、まず各府省のトップが長時間労働の是正に向けた強い取組姿勢を持ち、組織全体の業務量削減・合理化に取り組むことが重要であり、その上で、現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等の取組を徹底することが有効であると考えています。
○ また、現在、政府において、時間外労働の時間数の在り方の問題が議論されています。公務においては、適切な公務運営を確保するための十分な配慮が必要であることを念頭に置きつつ、人事院としても、民間労働法制における議論を注視していきたいと考えています。
○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等をみながら、改善を行ってきたところであり、職員団体の皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

3.非常勤職員の処遇改善について
○ 非常勤職員の勤務条件については、従来より、民間の状況との均衡や常勤職員の状況等を考慮し、措置してきたところであり、現在政府において進められている同一労働同一賃金の実現に向けた議論の動向等を注視しつつ、引き続き必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

4.高齢期雇用等について
○ 国家公務員の雇用と年金の接続については、閣議決定において、当面の措置として、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているとともに、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに雇用と年金の接続の在り方について改めて検討を行うとされているところです。
  人事院としては、雇用と年金を適切に接続させるためには、60歳を超える職員が60歳以前と同様の能力を発揮し、意欲を持って勤務できるような人事制度を確立していく必要があると考えています。そのためには、平成23年の意見の申出を踏まえ、定年延長に向けた仕組みを具体化していくことが必要と考えますが、当面、定員問題等を考慮しつつ、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるようにすることが必要であると考えており、引き続き、必要な対応を行ってまいりたいと考えています。
○ 国家公務員の退職給付については、閣議決定において、官民比較に基づき、概ね5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことを通じて、官民均衡を確保することとされており、昨年8月、内閣総理大臣及び財務大臣から人事院に対し、民間の退職金及び企業年金の実態調査の実施と見解の表明についての要請がありました。
  これを受け、昨年、民間の退職金及び企業年金の実態調査を実施し、現在、調査の集計を行っているところです。見解の表明に向けては、職員団体の皆さんの意見も伺いながら適切に対処してまいりたいと考えています。

5.男女平等・共同参画、ワーク・ライフ・バランスの推進
〇 人事院としては、ワークライフバランスの推進及び男女共同参画社会の実現を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など様々な施策を行ってきているところです。
  引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策等により、各府省の取組を支援するとともに、男女ともに働きやすい勤務環境の整備について、所要の検討を進めてまいりたいと考えています。

6.健康・安全確保等について
〇 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識に基づき、これまでも各府省と協力して積極的に取り組んできたところです。
  いわゆるパワハラの防止については、「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」の作成やシンポジウムの開催等の取組を行ってきており、また、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止についても、人事院規則10−15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)を新たに制定し、その防止措置を定めたところです。
  人事院としては、引き続き、健康安全対策の取組を進めてまいりたいと考えています。


資料3−2017春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声  明

(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2017年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 連合の2017春季生活闘争は、先行き不透明な厳しい情勢のもと、先行・大手組合が4年連続の賃金引上げを獲得し、それを中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての闘いが進められている。
  公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ・底支え」と「格差是正」を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の処遇改善をめざし、公務員労働者の賃金引上げ、公務部門における働き方改革の推進、定員の確保と超過勤務の抜本的な縮減、希望通りの再任用と定年延長などを最重要課題として位置づけ、具体的な取組みを進めてきた。
(3) 委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は@2017年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、公務員連絡会の意見を聞きながら今後の対応を検討していく、B超過勤務の縮減を含む「働き方改革」を着実に進める、C再任用者の一層本格的活用について検討を進めるとともに、年金支給開始年齢の63歳への引上げに向けて、接続の在り方を検討していく、D公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていくと回答した。また、人事院総裁は@賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、A長時間労働の是正に組織を挙げて取り組む、B非常勤職員の勤務条件について、同一労働同一賃金の実現に向けた議論等を注視しつつ、必要な検討を行う、C雇用と年金の接続について、定年延長に向けた仕組みの具体化が必要であり、当面、定員問題等を考慮しつつ、フルタイム中心の勤務実現に必要な対応を行うと回答した。
  これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に具体的で明確には応えていない。
  しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、財政再建を含め公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。また、働き方改革実現会議における議論等を踏まえ、公務における対応等について、引き続き、政府及び人事院との交渉を継続する。
(4) 東日本大震災から6年が経過したが、その後の災害を含め、改めて復興・再生は被災地と当該自治体の責に帰することなく、国はもとより国民全体の課題とする必要がある。そのためにも国民のセーフティネットである公務公共サービスに課せられた役割は大きい。われわれはその責務をしっかりと果たしていく。
  連合・公務労協に結集し、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合と連帯し、すべての労働者の賃金引上げ、雇用の安定確保を実現するため、全力をあげる。

2017年3月24日

公務員労働組合連絡会

以上